東京エリアは滅亡の危機に瀕していた。東京エリアの防壁であるモノリスが、白化していたのだ。モノリスが崩壊すれば、ガストレアが内部に侵入してしまう。
「進撃の巨人かな???」
「違うだろ」
「なんでしたっけ? おにーさんの前髪みたいにモノリスがスカスカで弱々の雑魚雑魚で、東京エリアがヤバいって話でしたっけ??」
「なんなの? 俺の前髪に恨みでも有るの?? お前にめちゃくちゃ言われるから、髪切ってきたんだけど!!」
「スカスカ度が下がって、イケメンになりましたね。非常に、嘆かわしい。没個性的なイケメンモブです。芋砂と前髪がアイデンティティみたいなところが有ったのに……」
「無いからな!!!! そんなもの無いからな!!!」
「嘉手納プロモーター。聖天子様の前ですよ。静かにしてください。だからモテない恋愛ざこさこおにーさんなんですよ」
「お前ぇ、覚えてろよ……」
嘉手納と明香は蓮太郎ペアと共に聖天子に呼び出されていた。
「政府としては、ステージⅣのガストレア、アルデバランに対し、レールガンモジュールを使用することを決定しました」
「なら、俺たちを呼び出す理由なんて無いだろ」
「レールガンモジュールの要員です。狙撃手である嘉手納プロモーターと、ティナ・スプラウトさんには、レールガンの予備要員となって欲しいのです。自動発射システムが有りますが、何分、あまり運用されていないので……」
ステージⅣのガストレアは、強大な敵だ。だが、レールガンには叶わない。楽勝なはずだった。
嘉手納が起動したシステムは明らかに狂っていた。全然違うところを狙っている。聖天子は修理したので使えると言っていたが、そんなことはなかった。
「おい! 蓮太郎! このシステム、ポンコツじゃねぇか!!」
「聖天子様も修理したばかりと言っていただろう。仕方ない」
「ティナちゃん。俺たちで、照準を合わせるぞ!」
「うわっ。なんかキメ顔してる。まぁ、100均で売ってそうな量産型イケメンで残念って感じですね。私は好きですけど」
「なんなの?? 貶しているようで、微妙に褒められてる?」
嘉手納が怪訝な顔をしながら、明香を見る。
「デレたんですよ。バランみたいな前髪が消滅してイケメンになったので」
「バラン??」
「スーパーのパック寿司に入っている緑の草です」
「アレか。そんな名前が有ったのか。って違うわ。バランじゃねぇよ」
「ま、イケメン芋砂なんですからカッコいいところ見せてくださいよ。やっちゃえ! お兄さん!」
「任せろ! 東京エリア救ってやるぜ」
嘉手納とティナの狙撃は、正確に目標を撃ち抜いた。これにより東京エリアの危機は救われたように思われた。
「ッ、不味いッ」
アルデバランだけではなかった。ステージⅣガストレアはまだ存在していた。射撃特化型のガストレアである。プレアデスの名前も付けられていないソレは、アルデバランを失いながらも、カウンタースナイプを熟した。
音速を越えた水銀の弾丸が、レールガンモジュールを破壊しようとしていた。
「うっ」
「きゃ」
「なんだ??」
3人の悲鳴が広がった。しかし、その中に明香のモノはなかった。
「下がれ蓮太郎! ガストレアだ!!」
「なんつう大きさだよ!?」
「まさかッ??」
月まで届きそうな巨体のガストレアだ。狼をベースとし、堅牢な盾のようなものを構えていた。盾からは、銀色の液体が垂れている。傷付いているようで、赤い血が流れていた。
推定される脅威度はステージⅤ。蓮太郎は、死を覚悟した。
「明香??」
巨大ガストレアは萎むようにして消えていく。消えていくその中心には、少女が居た。
「…………見なかったことにしません??」
「明香……」
嘉手納は、突如出現したステージⅤガストレアの正体が薄々分かっていた。己のプロモーターだ。ステージⅣガストレアをバットで殴り殺すなど、彼女は明らかな異常性を抱えていた。
「……お兄さん。やっぱり私が怖いんですよね? 私は13番目のステージⅤ。延珠ちゃんと同じ、七星研究所の試験体です。私のコンセンプトは、ガストレアウイルスの人間化。ガストレアウイルスによって作られた卵母細胞から産まれたのが私です。
生まれつき覚醒していた私は、イニシエーターとしては破格のカタログスペックを持っています。子供の姿をした化け物なんですよ。でも、お兄さんはそんな私を受け入れてくれましたよね。
明らかに異常だと思っていても、受け入れてくれました。私は、そんなお兄さんが大好きです。でも、お兄さん。今、私に怯えてますよね。必死に隠そうとしても分かりますよ。
雑魚なのに、必死に私を心配させないように恐怖を押し殺そうとしている。雑魚お兄さんは、本当に優しくて、その優しさに溺れそうです。
楽しかったですよ。雑魚お兄さんとのイニシエーターごっこ。弱いのに必死になって、私を守ろうとして、本当におかしかった。雑魚の癖に必死で。さようならお兄さん」
明香はそう言い残し消えた。嘉手納は、必死に叫んだ。
「俺は、怯えてなんかいない! 大人が、メスガキに負けるわけ無いだろ! お前みたいなメスガキに負けるわけない! クソッ! 戻って来いよ! 明香! 戻ってこい!」
嘉手納の必死の呼び掛けも虚しく明香は戻らなかった。
「伊予。大丈夫だぞ。明香の奴は優しい。多分、なんやかんやでお主のところに戻って来るだろう」
「そうだと良いな……」
「ほれ。元気を出さんか! お主は、東京エリアを救ったんだぞ」
「違う……救われたのは俺たちだよ。明香は、己を盾とし俺たちをガストレアの攻撃から守ったんだ。明香を傷付けたあの水銀。アレがガストレアの攻撃だった。秘密を晒してまで、俺たちを守ったんだ」
「うむ。明香は優しい奴だからの」
嘉手納は、嗚咽を隠せていなかった。
「嘉手納。明香の侵蝕率は大丈夫なのか?」
「ああ。アイツの数値は10%で推移している。アイツは、侵蝕率を操作できるんだ。気が付かなかった。明らかに異常だったのに…! たまに犬耳が出るんだ。アレが部分ガストレア化だ。今見せたのが、ガストレア化だろう。
俺は、アイツの内面と向き合おうとしなかった。俺はプロモーター失格だ」
「……実は、妾も明香に、治療をされておった」
「だからか。侵蝕率が急に下がったのは」
「むっ。蓮太郎、妾に嘘をついておったな。侵蝕率は大丈夫だと言っておったのに。明香は、妾を心配しておったようじゃな」
嘉手納と蓮太郎ペアは任務を成功させた。しかし、1人のイニシエーターを失った。
その後、アルデバランが連れてきていたガストレアは、殲滅された。殲滅したのはステージⅤと目されるガストレアだ。
聖天子によって名付けられたコードネームはウェアウルフ。銀の毛皮を持つ狼のガストレアであり、俊敏性と機動力に特化したガストレアだった。
また、ガストレアを殲滅した後に、煙のように消えたことから、擬態能力を持つと考えられている。
現場に赴いた民警は、ヒトの足跡を見つけた。そのことからヒトに擬態し、東京エリアに入り込んだと考えられた。ヒトに化けるガストレア。ゆえに
巨大な狼のガストレアは、市民に認知されているものの、それがヒトに化けて東京エリアに潜んだことは、聖天子ら上層部と、現場に行った蓮太郎たちしか知らない。
里見ペア。そして嘉手納伊予に課された任務は、東京エリアに潜入したステージⅤガストレア、ウェアウルフを討伐することだった。聖天子直々の機密度の高い依頼であり、報酬も高い。
「明香。絶対にお前を迎えに行く」
嘉手納と明香の暮らしていたアパートには、明香の手による置き手紙が有った。"雑魚お兄さんへ。家出します"
置き手紙には、それしか書かれていなかった。嘉手納は、手紙に涙の跡があることを見逃さなかった。
第三次関東会戦完!! 超ハイテンポ!! 4巻終了。早い!!
メスガキは曇らせるもの! お前がラスボスになるんだよ!!