戦国BASARA 勘違い天女とバケツ人魚と 作:サボテンダーイオウ
ようやく悲鳴を上げながら逃げまくっていた金吾を捕まえたお市は闇手で金吾を捕らえ自分ももう一つ出した闇手に掴まり移動し狗楽の傍まで戻ってきた。
天海さまは「掴まってしまいましたか。つまらないですね~」と落胆しているのかなんなのかわからないが素直にお市についてきた。
場所は外からお城の中へ移動した一行。
城の人間たちに異様な目つきで見られていることをまったく意に介さず平気な顔しているのは、ずぶとい根性からなっているのだろう。
強く成長したものだ。
ここに天姫がいたら涙を流して妹の成長ぶりを喜んだことだろう。
しかし、いたらいたらで狗楽はウザったい顔を隠すことなく姉に見せるに違いない。
ここに天姫がいなくてよかったかも。
さて、狗楽とお市はと言うと…。
げっぷ、と女の子らしくない足を組んだ様を躊躇いもなく見せる狗楽と、うごうご蠢いている闇手を従えつつ狗楽の横にちょこんと座っている市。
おなかいっぱいと自分のさっきまでよりは多少膨らん満腹感を得られたおなかをさすって
「いや~。御馳走様でした!めっちゃ美味いし、やっぱ『伝説の鍋』ですね。でも本音言うとご飯と一緒に食べたかったんだけどね」
「その体にあの大鍋の量が収まっていると思うと引き裂いて中身を調べたくなりますねうふふふ」
「天海さま目が怖いよ」
「なんかヤバそうな人がお坊さんしてるんですね、気配が闇っぽいですよ。…市さん闇手出してひねりつぶそうと準備しちゃダメだよ」
「……人魚さんがそういうなら、市、我慢する」
どうやらお市にとって天海はどうにも気に入らない奴みたい。彼女がこんなに好戦的になるなんて相当厄介な奴と思うし、何より狗楽も直感していた。
コイツ、ヤバいなと。なので長いは無用である。
狗楽は一応形ばかりの礼を言った。
「そいじゃお世話になりました。あ、ところでご飯たらふく無料(ただ)で食べられる所知ってます?」
しかしホントに語りばかりで本音は次なる食べ物を求めての情報確保だった。
「人魚の胃袋ってホントどうなってるのっ!?」
「うふふふ解剖したいですね~。噂の人魚とは珍妙ですからね~」
「失礼な坊さんですね、人の中身みたいなんてセクハラだ」
狗楽の言葉に反応した市は小首傾げてこう狗楽に問うた。
「せくはら?世苦葉裸?」
「市さん、字が違うからソレ。なんかすっごい意味が違いそうだから。まっ、金吾さんでしたっけ?さすが戦国一の美食屋だけあるよ。あんな『伝説の鍋』作っちゃうくらいだから!」
「えっ!そんな伝説の戦国一の美食屋だなんて…嬉しいなぁ」
なんか狗楽の言葉をまぜこぜにして褒められた事を喜ぶ金吾。まったく素直な奴である。すでに彼は美食屋になっている事を誰も突っ込まない。
「そうだっ!褒めてくれた御礼に人魚さんに教えてあげるよ。僕が尊敬する伝説の畑野菜を育てる達人の事をっ!」
「伝説の野菜っ!?マジですか!!それって無料(タダ)で食べられるのかな!?」
「勿論、あの人は心の広い人だから膨大な野菜を育てているだけあって心も畑並に広いのさ。僕が尊敬する人だよ…」
「やべぇ、マジですか!?…うぅ食いたいその伝説の野菜を喰ってみたいっ!」
「大丈夫、地図をあげるよ。人魚さんなら無事にたどり着けるはずさ」
この時の金吾は狗楽ヴィジョンにはキラキラ輝く魔法使いのように見えた。
さながら自分は継母にいじめられるシンデレラ。でも継母の方が彼女に似合っているとも言えなくもない。
ガシッ
「ありがとう、伝説の鍋スターさんっ!」
狗楽は嬉しさのあまり金吾の手を両手で握りしめた。
「伝説の…鍋すたー?」
聞きなれぬ言葉に金吾は、違和感を感じたが、それは同時に電流をも彼の体に流した。
「そう、これは極めた者だけに特別に与えられる称号…今日から金吾さんは『鍋スター』と名乗るがいいっ!」
くわっと開眼し狗楽は言い放った。
スガーンっ!
金吾は、戸惑いと歓喜が同時に訪れぷるぷると体を震えさせる。
「僕が、僕が『鍋すたー』…!?極めた者だけに特別に与えられる称号……」
感慨深く金吾は喜びに震えました。そしてゆらゆら揺れながら座る天海さまに嬉しそうに話しかけた。
「天海さま、僕やったよ!人魚さんに『鍋すたー』の称号をもらっちゃったよっ!」
「良かったですね金吾さん」
珍しく天海さまも嬉しい様子。金吾の無邪気に喜ぶ様を仏のように見守っています。
しかし彼の背後では大鎌がゆらゆら揺れていました。そう、天海さまは隙あらば人魚を解体しようと目論んでいました。
が、市がじとっと見つめ、牽制していたのです。
(市の人魚さんに手を出さないで)
「ふふふなかなか鋭いですね、お市様。記憶をなくしておいででもさすがあの御方の妹御。血が騒ぎますよ?クククっ」
両者ガチンコ睨み合いしておりました。
そんな二人をまったく意に介さず狗楽はグッと拳に力をこめ誓いました。
「よし、待ってろ!伝説の野菜職人!」
とりあえず目標は決まりました。伝説の野菜職人に会いに行きます。
※
ここで不思議。
狗楽の当初の目的は独り優雅に放浪の旅をして女の子にきゃーきゃーされながら、色々な人にあって自分を磨き、腕を磨き、逞しい自分になってねーちゃんを拳で殴れるような強い自分になりたいという風ではなかったか?
もはや狗楽の頭からはウザい姉のことなど綺麗さっぱり消えておりました。
彼女を突き動かすのは食を極めるという欲求のみ。
腹を空かせては戦はできぬといいますが、彼女の場合はいつも腹を空かせているので戦とは無縁な場所にあるわけです。反対に姉は戦ばかりと縁がございました。
今度天姫の方はというと安芸の毛利元就が謁見を賜りに参上するというイベントが発生しておりました。少なからずそこにプチイベントがあることは本人の知らぬ所。
新たな覇王#name2#天姫という豊臣の当主が誕生したという事実。
そして毛利元就が破られた事により諸国大名の均衡は崩れ始めた。
ここからは、本当の乱世が始まる。互いが譲り合いなどと言う生易しいものではない。
己が望むものの為、または愛しい者を守る為、様々な願いや欲望の為、国盗りの幕が開けたのだ。
各諸大名が豊臣を警戒する中、その事実を重く受け止めているのは何も名だたる武将ばかりではなかった。生前の豊臣秀吉と袂を分けた前田慶次。
彼もその事実に衝撃を受けた一人の若者であった。その前田属する加賀、前田家当主前田利家は、
「毛利元就が堕ちた、だと?」
臣下から告げられた報告。当主たる利家に動揺という二文字は許されない。
家長であるならば尚更の事。利家は深く息を吸い込み、ゆっくりと目を伏せた。そして己が妻に告げた。
「まつよ、戦が近いぞ……秀吉が黄泉から蘇ったとなれば…あの男は全てを飲み込まんとするはずだ…」
あの男はそういう男だ、と利家は語る。
「はい、犬千代様…」
夫が戦地に赴くのならば、まつめも参りまする、と深く意味を込めて頷く。
だが、そうやすやすと納得しない若者がいた。
「トシ、まつねーちゃん…。本当に信じれるか?アイツが…アイツが蘇ったなんて……!そんな、そんな夢物語が本当にあるって信じるのかよ…」
「慶次…」
ギリっと奥歯が鳴る。信じたくない、信じられない…。
「あの人を殺しておいて、アイツはまた蘇っただとっ!そんな自分勝手許されるかっ!アイツはあの人を裏切って俺を裏切った男だ…それを、それを!」
「だが、黄泉から舞い戻ったというのは事実のようだ。だからこそ我らは選択しなければならないぞ。あの男に下るか、または…戦うかを」
そうだ、これはもうすでに始まってしまっているのだ。
どちらかが敗北し、骸となるかどちらかが天を掴みとりこの日の本を制するか。迷ってる暇なんかない。
慶次は、ゆっくりと立ち上がった。慶次の相棒である夢吉が慶次の怒りに恐れ、小さな体を震わせた。しかし、慶次の深い悲しみをずっと傍でみてきたのも夢吉だ。
だからこそその怒り狂う慶次の肩に飛びあがり、「キキっ」と一鳴きする。
「俺、逢いに行ってくる。…アイツに……秀吉に…」
今まで言えなかった分、抑えてきた分、殺してきた分
ぜんぶ、全部全部!
「一発、いいや、何発でもぶん殴ってやるんだっ!」
張り上げた声に想いを爆発させ、慶次は己が愛刀をどすっと持ち、重い一歩を踏み出した。
恋に恋せよ前田慶次。彼が向かう先は大阪城。
この世に再び降臨したという豊臣秀吉に天下御免の拳をお見舞いするため、滾る闘志が再び炎を燃え上がらせる。
ぶつかれぬ前に旅立った友にまた心の叫びをぶつけるために慶次は動き出す。
天女として生まれ変わった豊臣秀吉に一言物申す!
◇◇◇
眼帯してるとある男は言った。期待に胸ふくらませて。
狗楽がこの男を見たら破廉恥男だと必殺御免のハリセンをかますことだろう。
格好からして破廉恥だから。その本人はまったくそんなこと思っていない。
だって、海の男ってこんな感じなんだろうって理想があるからだ。
「俺の目で今の豊臣を見てみたい。あの男が欲するものが何なのか知りてぇんだ」
モブAは力んだ声で、拳を唸らせていた。毛利はそのモブAに顎で言う。
「面白い、やってみるがいい」
モブAはカチンときたが、くるりと回るとどこかに向かって、拳を突き上げ、叫んだ。
「ハン、面白くなってきたぜ」
そしてとある一行は変なモブAと毛利にひきつられて、の月を眺めるには最高と言われている大阪城にやってきた。目的は噂の豊臣秀吉に会うために。
一行は噂の豊臣と対面を果たした。
みなそれぞれ、緊張した面持ちをしている。
黄泉から舞い戻ったという天女と噂される、豊臣秀吉。その姿はまったく予想に反し女に着物を見事に着こなし黒髪を後ろで束ねた
まるで『姫君』とでも通用するような優雅さと気品さに溢れていた。
鼻筋はすらっとしていて唇は紅く紅をさしているわけでもないのに艶やかだ。
そして天女の視界は仮面によってさえぎられていてはっきりと顔(かんばせ)を確認することは出来ない。しかし、とにかく見た目でいえば身目麗しい少女。
噂の山猿のような天女というのはこの場で否定された。さて、息が詰まりそうな謁見その中で毛利はなんとも平然にして、
「此度こうして謁見に賜りし理由は、我が手土産に尼子晴久の月山富田の領地、こうして献上しに参ったからだ」
あの豊臣、否天女と顔を合わせながら態度デカく説明した。
「……」
天女はその結果を聞いても扇子を仰いでいた。
さすがの毛利もぴくりと眉を跳ねた。あまりにも反応がないからである。しかしそこは場を読む大谷。
「さすが毛利殿、此度の戦いとも簡単に制したと聞いておるぞ」
間に入ってとりなした。三成は面白くなさそうに、鼻を鳴らしただけ。
とりなしたところで空気は良くならなかった。
大谷の胃痛が慮れる。そこで大谷はいつも以上に黙る天姫になにかを思ったのか、
「殿、如何いたしましたかな?」
そう聞く。すると、
「………つまらぬ」
小さい声で一蹴した。
「毛利元就。其方、ほんに隠し事が下手よのぅ」
そう今まで興味なかったくせにちらりと平然としている毛利に一瞥をくれた。
毛利はそこで冷や汗をかく。やはり、と。
緊迫状態に陥り嫌な沈黙が支配しかけた時、気だるげに扇子を広げていた天女が
バシンっ!!
と音を立て扇子を閉じた。
「「「?!」」」
天女はすっと扇子の先を、
「虫が、おるぞ」
毛利の背後に控えていたモブAと向けた。二人は一気に窮地に立たされた。
「っ!…何を申される…。我が、貴殿に策でもこうじたと?」
毛利はそう言い繕うが天姫のすぐ近くに控えていた三成がゆらりと立ち上がると、神速の刀をモブAへと切っ先を向け、
「貴様…我が主君を前にして狼藉を働こうというのかっ!?許せぬ、即刻貴様の首を落として天姫様の前に献上してくれる」「三成、よい」
天姫が最後を言わせることなく遮った。驚く三成。
「ハッ、しかし!」
言い募る三成に、
「三成」
天女は睨みを据えた。グンっと殺気が増し体が鉛のように一気に重くなった。
三成は天女の殺気に耐えられなくなり膝をつくと、
「申し訳、ありません…」
涙声でそう謝罪をした。スルリと檀上から降りてきた天女は頭を垂れる石田の前に片膝をつきすべらかな指先で石田の顔をくいっと持ち上げた。
「構わぬ、そちはようやっておるわ」
その様に恍惚とした石田は娘のように頬を染めた。
天女がそっと石田にだけ囁くように言った。
「我がいるのも其方があればこそ、である」
「…天姫、様…」
「今後もよう働け、我の欲するままに」
「……はい…」
三成はもう背後の存在など彼方へと飛んで行った。
その様子を見ていた大谷が軽い忠告をした。
「殿、お戯れが過ぎましょうぞ。お控えくだされ」
「ククク、そう言うな。吉継」
愉しいではないか。三成のこのような顔は、な?
涼やかな声、紅い唇。天女はこちらへと視線をやると、
「そこな『虫』、我は飽いた」
天女は言う。モブAに。愉しそうに、口端を吊り上げて。苦笑まぎれにモブAは立ち上がった。すると天姫を守らんとする三成を始め、大谷たちがかすかに牽制するのをモブAは視界で確認する。
「……ばれちゃあしかたねぇな…。豊臣秀吉公。また今世で出会おうとはな」
そう、毛利の従者役に紛れ込んでいたのが正装した長曾我部元親であった。それをいともたやすく見破ったのだ。
「………随分と似合わぬのう?」
「ハッ!お褒め頂ありがとうよ…」
「女であることと男である其方と何が違う?」
「は?そんな事見た目からして」「海は母よ、我を我の祖先もまた海から産まれし者。いうなれば…其方もまた我の兄弟よ」
だから違いなどありはしないと言う。
「…アンタの口からそんな事言うとはな。……何が目的だ…」
「知っておろう」
我の望みを、願望を。
「我は所望する、アレを」
織田信長をも超えてみせるという野望。この世の天下統一。いや、それ以上を望む。
「っ!!」
コイツは、大望を抱いている。遥か俺らよりもずっと雲の上を見据えて言ってやがる。
何だ、この覇気は。以前の秀吉公とは桁が違いすぎる。
この研ぎ澄まされた刃、それだけじゃねぇ。この目が離せないアイツから逃れられない呪縛のようなモノはなんだ?畏怖か、それとも圧倒的な力の前に震えているだけか?
「其方は見えなんだか?我の真なる願い、究極のアレを」
目の前の女は問いかけてくる。その答えを俺は知っているはず。そう壮大な『自由』という
まるで、俺自身を問うているようなだから、天女は俺の前に止まり紅い唇が口角を描く。
俺はそれに魅了された。何を紡ぐのか気になった。その先を、俺を虜にするその言葉を紡ぐんだ。
「其方が決めることあらず」
「我が、決めるのだ」
だから、お前は下れ。我を運ぶ足となれ。我を高みへと乗せていけ。その自慢の船でな。
「………フッ、いいだろう。秀吉公。…いいや、天姫。俺はアンタに惚れた。その心意気にその天を目指す高みを掴もうとする力に。俺はアンタに力を貸すぜ、その高み付き合わせてもらおう!」
俺も見てみたい、アンタが目指す高みとやらがどんな眺めなのか。
相応しいじゃねぇか、高みを目指すアンタと日の本一の海賊を目指す俺。出来れば、アンタの隣でな。
長曾我部元親はこの日、豊臣軍の傘下に入る事を決めた。
こうして天姫は毛利元就、長曾我部元親、尼子晴久らを豊臣の傘下とすることができたのである。