戦国BASARA 勘違い天女とバケツ人魚と 作:サボテンダーイオウ
天姫side
只今天姫は愛しの愛しの狗楽に出会えて嬉しいはずなのに絶望的な境地にたたされております。天姫は向こう側にいる狗楽に必死に懇願します。
『狗楽ー!待ってお願いだからそれだけはやめてー!』
『邪魔しないでよ、ねーちゃん。わたしにはこれしか残されていないんだから』
普段の狗楽と思えないくらい冷徹な瞳で姉を見つめる愛しの妹。
彼女の隣には、見た目からして怪しさ爆発状態している濃すぎる『闇』を纏った日本人形みたいな少女が寄り添っておりました。
『いやそれは違うでしょ!?なんで私と旅するのが嫌でそんな闇の中でも闇クラス的な気配纏ってる女の子の方がいいわけ!?』
『だって市さん可愛いもん。ねー?』
どうやら彼女は『市さん』と言うらしい。狗楽が同意を求めれば彼女はさっきまで無表情だったのが一転して、わずかに頬染め、嬉しそうに狗楽の手を取り
『市嬉しい』
と言いました。天姫はショックどころじゃない。
地獄に叩き落されたような顔して必死に対抗しようと口を開きます。
『ガーン!私だって可愛いじゃん可愛いじゃん!狗楽の事だってめっちゃ大好きなんだよ!?なんでどこぞの馬の骨かわからん小娘に大事に大事に育てた妹奪われなきゃいかんのよ!』
が、一生懸命愛情を注いで育てた妹は
『育てられた覚えないし。正直ウザったい』
と、言い放ちました。
『!?』
天姫の中で狗楽の蔑んだ目で見られ『ウザったい』という言葉が何度も何度もリフレインします。放心状態の天姫に狗楽は、お市さんなる小娘の手をとって嬉しそうに駆けていきました。
『これから暴飲暴食に旅に出るぞー!市さんと一緒なら百人力だー!』
『市頑張る。人魚さんの為に』
『うん、わたしも頑張ってこの戦国の世にある絶品の料理食べつくしてやるんだ』
彼女の食欲はそこがない。そのことにショックから立ち直った天姫が再度訴えます。
『狗楽!お前はどこまで食を極めるつもりだー!?そのうち腹減ったとか言ってゴミあさりすんるじゃないかっておねーちゃん心配なんだよー!?』
『うるせ。いつもの市さんお願いします』
『うん』
小娘はおどろおどろしい気配を出しながらあるものを私に仕向けてきた。
『闇手の『やみー5っ』ていうんだ。それで可愛がられてよ?』
『『やみー5っ』って何!?イヤーなんか襲ってくる!ギャー!』
断末魔みたいな叫びだして天姫は必死に逃げます。逃げて逃げて後ろちらっと見たら
『可愛がってくださいbyやみー5って看板持ちながら襲ってくる!?』
恐ろしい、アレに握りつぶされたらひとたまりもないでしょう。
どこが可愛いんじゃっ!
と天姫は泣きながら必死に逃げます。そこで誰かの手の感触で目が覚めました。
誰の手でしょう?
※
片倉小十郎side
魘されているようで額に汗を流し手を天井へ必死に伸ばしている。
娘の口が動く。『 』と。誰かの名だろうか、しきりに呼び続ける。
そしてこうも言っている。娘は何度も何度も口をこう動かした。『助けて、助けて』と。
額に浮かぶ汗、俺は思わず手を出していた。拭いてやろうとでも思った。
だが、手ぬぐいを持った手が届くその瞬間、
「………っ………!?」
パチリ、とひらいた瞳。俺はその瞳の色に驚きを隠せなかった。
深い吸い込まれそうな『紫』の色。娘は俺の姿を見るなりすぐに「!」と反応し娘は布団から猫のように飛び出し障子側へとじりじりと逃げる。
「落ち着け、俺は怪しいものでは」
「………っ…」
華奢な体を自分の腕で抱き締め首を振り続け縮こまるように小さく小さくなろうとする。
その顔色、まさに怯え。娘は心に傷を負っている。
襲われかけてのだろう。その身に刻まれいる男という生き物に対して恐怖を抱いているようなのだ。想像を超えるような酷い仕打ちを受けたのであろう。同情の念が湧き上がる。
「娘、安心しろ。ここはお前にそのような仕打ちをする者はおらぬ」
「………」
娘は俺の言葉に顔を上げた。視線を向けてくる。疑念の視線を。あれは誰も信じぬという表情だ。
「俺が信じられぬのも理解できる。だが政宗様は決してお前に危害を加えようとして連れてきたわけではない」
「………」
警戒の色は消えない。
「信じられぬ、か?」
俺にしては弱弱しい声になってしまった。娘の反応が気になるのだ。気になって、仕方ない。
「…………」
娘は、ゆっくりと首を横に振った。多少、娘の俺に対する視線は和らいだような気がする。
「…そう、か…。すまんな…」
そのことになぜか安堵する己がいた。
(この感情はなんであろう?と問いかけながら)
◇◇◇
狗楽side
「有無、苦しゅうない面を上げよ」
「ははぁ~」
「生き神様~おねげぇしますだ~。雨を降らしてくんろ~」
「貢物を寄こせ~」
「ははぁ~」
唐突ですが、わたしは今生け神様として祀られています。
もう!人魚って呼ばれたり生け神様とか呼ばれたり忙しいんだからね、わたしもぷんぷん☆どうして、祀られているかというと。話は簡単になる。
ある日、わたしは『伝説の野菜職人』がいると『鍋スター』から聞きわたしはその人物を求めて捜しに捜しに捜しに歩いていた。
その間、お市さんに食料調達に行かせわたしはそれはもう捜しまくった。
山にいると聞きゃ木の実を食べつくし、なぎ倒し燃やし山火事にさせ、海にいると聞きゃあ大物の魚を仕留めて仕留めて仕留めて、焼いては煮て捌いて骨まで残さず食いつくし、町の中にいると聞きゃ名物全てを食べつくし、村にいると聞きゃごちそうになって食べまくった。これだけ捜しているのに全く見つからない見つからない。
落胆しながらご飯も喉を通りまくり食料が底につきつつある日、またごちそうになった村でこんな事を頼まれた。
「雨を降らせてくれたら、もっと良いものくわせるのになぁ」
と。わたしはその言葉にこう答えた。
「バチコイ!」
親指をたててわたしはバケツを気前よくひっくり返したのだった。
そして―――。
「生き神様!どうかどうかどうか雨を!」
「待て待て、もっとこちらにその食べ物を渡せ」
「生き神様こちらの村にも雨を!」
「安心せい。焦らずとも雨は降らす。それよりそちのごちそうをはようこっちに」
「「「「生け神様ぁぁぁぁああああ!」」」」
「はははは!もっともっと私を崇めてごちそうをよこすのだー!」
右見ても、左を見ても、押し寄せる御馳走の数々。
わたしはお市さんと豪華な御輿に祀られ、奉納してくる御馳走をを片っ端から喰らいまくっていた。主に、わたししか喰ってないけどさ。
おじさん達が「雨を雨を!」とうるさくて叶わないが、
「キャー!生き神様今日も小さいのにあの食べっぷり本当に素敵!」
「生き神様私の妹になってぇ!」
「生き神様こっち向いて!雨もいいけどあたしの家に来て!」
「違う今日は私の家にくるのよ!」
「もうなんでもいいから、生き神様近くでみたい!」
女の子たちが年を問わずにおじさん達を押しのけ、わたしの元へと押し寄せてきた。
「「「「「「「今日も素敵な雨を降らせてぇー!」」」」」」
そう可愛い合唱をしながら、おねだりしてきた。女の子にもみくちゃにされつつ、
「ふっ!じゃあ雨を降らそう可愛い子ちゃん達よ!」
わたしは満面の笑みでそう答え、女の子たちは『キャー!』と黄色の悲鳴を聞いた。
いつものようにお市さんが闇の手で女の子たちから私を回収して連れ去ってしまい、
女の子たちが怒りでおいかけてまくって恵みの雨を降らすの繰り返しです。
そんな道中、おなかがすいてぐ~ぐ~と大合唱しているので市さんが食料とってきてあげると闇手と一緒にうごうご蠢いてどこかに行ってしまっている間わたし一人で待っていることになった。
今の現在地を地図で当てはめようとしたけどはっきり言ってこの地図、わからん。アバウトすぎて地図としての機能があるのかどうかさえ不明だ。
だって、現在地が『ここ!』とか、目的地が怖そうなおっさんの顔が描かれた場所と地図に記してあるだけだ。あとは山、山、山。小学生の絵かよとツッコミしたいくらいの画力である。これで今現在どこにいるかを知れというのが難易度高すぎな話。
「…ああ~、野菜職人って何処にいるんだろ。腹減った…」
おなかを抑えて途方に暮れていると、ある気配が近づきつつあるのを敏感に感じ取ったわたし。
敵意はないようだ。ボケッとこちらに来る誰かを出迎えてみると随分と派手な男と出会いました。夢吉というちっちゃな子ザル連れた体躯のいい若者。彼の名は
「お!お前が噂の生け神様か?俺は、前田慶次。突然だけど恋してるか?」
といきなり初対面ですごい事突っ込まれたので至極真面目な顔してキッパリ言った。
「この世の全ての食材に恋してます」
前田慶次と名乗った若者は口を広げてあっけにとられた様子。なぜか汗たらしながら呟くように言った。
「………あ、そう。さすが生け神様だな。想像デカいぜ」
「おなかすいたので何か恵んでください。じゃないとわたしの魂が暴れてしまうので」
「は!?腹減った?生け神様がかよ……変な奴…」
「カウントダウンが始まってしまう!早く食料をっ!」
「ええ!?『かうんとだうん』って意味がわからねぇけど。チッ、仕方ねぇな…。出たばっかなのにまた戻ることになるのかよ、しょうがねぇ。利の家戻るか……。来いよ、案内してやるから」
まつねーちゃんなら料理うまいし満足するんじゃないかと慶次は思いました。
狗楽は素早い動きで立ち上がり慶次をびっくりさせます。
「よっしゃ!じゃあワープ機能使ってみよー!お市さーん!」
名前を呼ばれた人物は、頭上から丸い闇の円を描いた場所から闇手に掴まれた状態でずももももっとぶらんぶらんとぶら下がって狗楽の目の前に降り立ちます。普通の人ならトラウマものです。このシーン。が、狗楽は普通の人じゃないので平然と受け入れています。慶次は普通の人なのでおっかなびっくりです。
「人魚さん、市呼んだ?」
「うん、あのねご飯おごってくれるとこ連れてってくれるんだって!この若者が」
「……」
お市をようやっと目の前にして慶次は本物だと思い声を荒げます。
「お市様!?ホントに生きてた……俺のこと覚えてますか!?俺です、慶次です!」
しかし、市さんは知らないの一点張り。というか半分無視です。
「……知らない…。人魚さん『わーぷ』するの?」
「うん!お願いしまーす」
「うん、人魚さんがそういうなら」
足元に黒い黒い闇が出現。三人はずぶずぶっと引きずりこまれていく。
慶次は当然パニクリ夢吉も必死に逃げようとしてますが慶次がしっぽ掴んでいるので当然一緒に飲み込まれていきます。
「ウワァァアアアアーーー!?」
「キキっ!?」
しかし、まったく平気な人二人いました。
「あははは、これ面白いよな~。ハマりそう!」
「人魚さん喜んでる。市嬉しい」
平気どころか喜んでいました。二人とも違う意味で。そして、三人は闇手にそれぞれ掴まれた状態で地上に降り立ちます。まつねーちゃんの家にたどり着いたのは、時間で言うと3分くらいでしょうか。その間、慶次はデカい図体してぶるぶると子犬のように震えておりました。相当怖かったのでしょう。
災難だったね、慶次。でも狗楽に出会ってしまったのだからしょうがないので運が悪かったと思って素直に諦めた方が身のためだ。