戦国BASARA 勘違い天女とバケツ人魚と 作:サボテンダーイオウ
天姫side
どうも、ワープ機能を隠し持っていた毛利さんに無理やり見せた貰ったまでは良かったんですが中身見る為に前につんのめり過ぎた為にはんばワープ体験してしまった天姫です。突然ですが、私、声が出ません。久しぶりだわ、この感覚。
前に復活の世界に初めて堕ちた時も、声が出なかったがあれはそれなりに事情があってああなったまで。だが、今回の事故は私の考えを遥かに超えている。
というか、なんで誘拐される結果なのか皆目見当つかないんだけど?あの眼帯男には誘拐されるし、魘されている間に、なぜか強面のおにーさんが甲斐甲斐しく介抱してくれていたみたいで目が覚めたら思わず『やみー5』が襲ってきたのかと思って逃げてしまったがそれが彼に多少なりともショックを与えたようで、なぜか必死に怪しいものではないと
主張してくる強面のおにーさん。
いや、あの眼帯男と同類かと思ったけど全然そんなことはなかったから。
その場は素直に頷いたは頷いたがその後が大変だった。
喜多さんとかいう綺麗なおねーさんが本来私の世話をしてくれていた人らしい。
そのおねーさんがいない間に、強面のおにーさんが入室していたことが発覚すると喜多さんは般若の面被ったみたいに、超機嫌悪くなって強面のおにーさんを蹴りだすような勢いで廊下に放り出した。ピシャリと襖を閉めて彼女は一言こちらに向き直って笑顔で。
「驚かせてしまいましたね。小十郎が貴女に何か不埒な前などなさいませんでしたか?」
私は全力でブンブン!と首を横に振った。
これは彼の生死にかかる問題であると直感したからだ。
ここで私が縦に頷いたものなら…あの強面のおにーさんは、喜多さんに何かされる!!
なんかこの人って、親友の燐華に似てるとこがあるような気がしてならない。気のせいであればいいが。
「そうですか、それはようございました…どうかご安心くださいませ。安易に男が入れぬよう今度は気を付けますから」
良かった、何とか納得してくれたみたい。
でも喜多さんは、すすっと私が座っている布団の横に来て、何か思案顔。
「…もしや、どこかおかしいと感じる所はありませぬか?」
そう問われ、私は声が出ないことを伝える為に喉をぽんぽんと手で軽く示した。
喜多さんはどこか確信めいた声でそっと私の手に両手を添えてきた。
まるで、安心させるように微笑みながら。
「…やはり……薬師を呼んでおいて正解のようですね。…心配なさらないで。きっとよくなりますわ」
「?」
なぜか気遣われた。意味がわからないが善意で言ってくれているので私はコクンと頷いた。この後に訪れるであろう予想外な出来事がさらなる不運を呼び込むとも知らずに。
※
伊達政宗side
俺が拾った娘は昏々と三日は眠り続けた。
そう、三日もだ。その間俺も娘の部屋に入ることを喜多に禁止されどうにもイライラしちまったがようやく娘が目を覚ましたと報告を受けこうして足を運んだ次第だ。
娘は、俺が来ても一切顔を向けることはせず布団の上で正座し視線は庭に向けるばかり。俺はドカッと布団の横に足を組み声をかけてやる。
「よう、具合はどうだ」
「………」
「なんだよ、無視か?」
「………」
一切、俺の言葉に耳を傾けず、顔すら動かなさい娘に俺は違和感を覚えた。
その華奢な肩に手を伸ばそうとしたとき
「殿」
傍で控えていた喜多が娘に聞こえぬように内々に話があると俺に耳打ちしてきた。
「…また来るぜ」
俺はそれだけ言い残し娘の反応を確認しないまま部屋をでた。娘の部屋から少し離れた場所で俺は喜多と向き合い
「で、何があった」
と問いただした。喜多の焦った様子は見て取れた。
俺が娘に触れようとしたのを意図的に止めた気がしたからだ。
「恐れながら、殿…あの娘、言葉を発さないのではなく『発せられない』様なのです」
「どういうことだ」
「薬師を呼びました所、病などは患っていないとのことですが、それよりも厄介なのが娘はどうやら心に深い傷を負い、自らを閉ざすことで何とか今の状態を保っている様子とのこと。むやみやたらに刺激しては、あの娘何を考えるかわかりませぬ。身分は知れませぬが、武家の娘であるのは確実と喜多は思いまする。ですから、何卒……あの娘の琴線に触れるようなことは…」
「自害するかもしれねぇって、か?」
コクンと喜多は重々しく頷いた。
「……」
その可能性も捨てきれねぇ。武家の娘ともなれば、生きて恥を晒すよりも家名の為に命捨てることなどなんの躊躇いもないはずだからな。一族全てが死んだ中、おめおめと生き残っている娘。それが悔しくて悔しくて仕方がないと思っているのか。
だから、無理やりに連れてきた俺を憎んでいる?なぜだかわからないが、
「Bring it on」『上等じゃねぇか』
と俺は言っていた。そして足はまた、娘の部屋に向いていた。後ろで喜多の慌てた声を聞きながら。
「殿?…あ!お待ちをッ!殿っ!」
バシンッ!勢いよく開け放った先に突然の俺の入室。娘は紫の瞳をこれでもかと大きく見開き、俺を凝視した。
「…お前の名前を決めたぜ」
最初に出会った時からどこかあいまいでハッキリしない娘だった。
武家の娘と言うのも只の推測に過ぎん。
「お前は鈴だ」
全てが推測で、謎ばかりじゃねぇか。だからこそ、この娘に似合う名。
「?」
「理解したか?今日からお前は鈴だ」
名を送ってやるお前に、似合う名を。心を閉ざしていると言うのなら以前の名など捨ててしまばいい。俺が囲ってやろう、安全な檻の中に。
「In that case you should honor」『光栄に思う事だな』
どうせ異国の言葉、娘に理解できようとは思っていない。
だからこそ言った。俺が拾ったんだ、俺が名をつけて当然だろう?
すると、目の前の娘の整えられた眉がだんだんと吊り上っていく。
さっきまでのぼうっとした表情とは一転、頬は赤みがおびていき血の血色がよくなっていく。ぎゅっと小さな手が拳を作り、屈辱に耐えて耐えているように見える。震えているのは、抑えようとしているからか?
まさか、俺の言葉理解したのか?
睨み、そうコイツは俺を睨んでいる。憎々しげに宿命の敵相手でも見るかのように俺を射抜く。
やはり、面白い娘だ。この俺をこうも違う意味で魅了させる女は見たことがない。
謎の娘。イイものを拾ったぜ。俺は。
鈴は初めて俺に感情を見せた。怒りという名の感情を。
(所有権を主張する御殿様)
◇◇◇
天姫side
こいつ馬鹿じゃないですか!?って叫びたかった。なんで私が名前つけられたこと光栄に思わなくちゃいけない訳?どこまで俺様なんだコイツ!
思わずぶん殴ってやろうかと拳作ったけどどうやらワープを渡った代償は声が出ないという事だけじゃなかったらしい。手に力が入らないのだ。
いつものあの尋常ではない力が、まったくと言っていいほど拳に宿らない。
なんで?なんで?緊急事態だ、これでは暴れられないではないか?この怒りを爆発させられないなんて切なすぎる!
とパニクリつつも相手に悟られないように一生懸命メンキ切って睨みまくった。
ここで負けていられねぇ!女が廃るワァァァァアアア!という根性で睨んだ。
すると眼帯男はフッとほくそ笑みやがって、「じゃあな」と部屋を出ていきやがった。
待たんかいこの野郎ォォオオオオオオオオ!なんて嫌味な奴!?
何が鈴だ!なんで名前つけられなきゃいけないわけ!?
私はペットかよ!わたしゃ、ペットですかい!?餌欲しけりゃここで飼われろと?
無理やり誘拐されてあげくの果てにペット扱い!なんたる傲慢、なんたる俺様だろうか!
戦国時代にこんな性癖のある人間がいたことにショックを受けるが今はそれに浸っている暇はない。
冗談じゃねぇ!こんなとこいられるか!
誰があんな男を『御主人様~♪お帰りなさいませ~』と言うか!?メイドじゃねっつーの!
………違うか…。戦国時代にメイド喫茶はねぇーわ。
とにかく、やることは一つ。私は、逃げることにした。
こんな得体のしれぬ所絶対いたくないというかあの男がムカついてたまらない。こんな扱いされたの生まれて初めてだ!
私は布団から飛び起きて庭から逃げることにした。素足で歩くことは多少我慢できようが、いかんせん場所がよくわからない。あの眼帯男が武将であるならばここは奴が収める城である可能性が高い。整えられた部屋にあの偉そうな男は喜多さんから殿と呼ばれていた。
なので身分はわかった。が、出口はどこだ?複数の気配がザワザワと騒ぎ出したのを気配で感じる。どうやら私がいなくなったのがばれたか?これはマズイ!
私は適度に身を隠せる木々に忍び身を潜ませる。するとすぐ脇を兵士らしき男たち数人が歩いていく。
………フゥ、どうやら無事に切り抜けたようだ。
しかし、困ったことになった。あのワープからこんな状態にまで陥ってしまうとはまったくついていない。そもそも夢見も悪かったし、ね。
あんな狗楽、絶対偽者だ。
だって私の可愛い狗楽ちゃんがあんな蔑んだ視線で私をみるはずないものっ!
断言しろと言うのなら断言できる。
そんな愛しの狗楽は何処にいるのだろうか?おねーちゃん心配で胃に穴が開きそうです。昔は小食だったのに今じゃ大食いに進化してしまって喜ばしいと言えば喜ばしいのだがやはり食料問題がその内発生するのではないかと懸念してしまう。三国じゃ身分が結構いい方なので食べさせてもらっているようなもんだが、あまりに尋常ではない量に魏の曹操おじ様もそれなりに危機感感じているらしく狗楽専用の野菜畑とか作る始末だし。
ホント、スイマセンって感じで謝ってはいるけどもしこの戦国時代にいるのだったら同じような狗楽専用の畑を作らなければいけないのではないか?と思っちゃう。
いつまでこの世界にいるのかわからないが、この時代に『食糧難』という大混乱をもたらせて民を苦しめてはいけないでしょうしね。何より、姉である私の心臓がもたん。いろんな意味で。
「………」
溜息しか出ない。どっかに畑の作り方教えてくれる人でもいればな。いっそのこと、農家に弟子入りするか?とか思った私。
とにかく隠れてばかりいられないので移動することにした。
気配に気を配りながら裸足で歩いて、数十分。辿り着いた先に私は感嘆の声が漏れた。
広がる青々として尚且つ生き生きとしている野菜たち。
丹精込められた野菜たちは作り手の愛情が深いことがうかがえ知れた。
これだ、私が求めていたのは!これこそが、狗楽専用の畑そのものである、と。
(これが私の理想郷?)
※
片倉小十郎side
俺は姉上からあの娘…ではなかった、政宗様が名前をつけてらしい『鈴』がいなくなったと聞きつけそこらじゅう捜しまくった。
無論、政宗様には教えていない。執務どころではなくなってしまうからだ。それに多少なりとも煩くのは勘弁してもらいたい。俺は何処を捜しても鈴の姿は見当たらず何となしに思いついた畑の方へ行ってみる事にした。まさか、いるはずもあるまいと思った感がここで的中する思いもしなかった。葱畑にて見知れた小柄な背中を見つけた。
「…お前!?そこで何をっ」
「?」
鈴は首をかしげて俺を見やる。小袖一枚に、素足という形で。
どうやらしゃがみこんで畑に実る青々としたみずみずしい野菜たちを眺めていたようだ。
さきほどの彼女の顔はほころんでいて嬉しそうだった。俺は言葉を失うというか見惚れてしまった。
「………」
だが、ぼうっとしたままではいけないと頭を振り正気に戻る。しゃがみこんだまま動かない朧に近づき声を掛ける。
「鈴、急にいなくなるなど皆が心配しておるぞ」
「………」
鈴は指で目の前の野菜を指示(さししめ)した。
「…野菜が、どうした?」
「………」
鈴は一生懸命に何かを伝えようとしている。野菜を指で示した後、急に立ち上がり、何をするかと思ったら何かを振り下ろす動作をしきりに繰り返し始めた。
「なんだ、それは?」
小十郎は戸惑い、何と言えばいいのかわからなくなったが、鈴がしきりに気にしていた野菜のことを考えてみたら、勘で聞いてみることにした。
「もしや、……俺がこの野菜を作ったのか?と聞いているのか?」
「っ!」
鈴はバッと小十郎の前に身を乗り出し嬉しそうにぶんぶんと首を縦に振る。
「確かに俺が耕している畑だが」
俺はまた、勘で言ってみた。
「……『興味がある』と言っておるのか?」
ぱぁぁああ!と分かりやすいほど鈴は笑顔になった。俺はその子どもっぽさに笑いがつい出てしまう。
「………フッ……」
「?」
鈴は意味がわからずじまい。
「いや気にするな。わかった、教えてやろう。だが今は駄目だ。大人しく部屋に戻れ。皆が心配しておるしな」
これまたわかりやすいほどに鈴は悲し気に眉を下げシュンとしてしまう。内心、子犬みたいだなと思いつつ苦笑しながら俺は声をかける。
「明日、またここに連れてきてやろう。だから一人で来ようとは思うなよ?」
すぐに鈴は顔を上げた。答えはすぐにわかった。満面の笑みだったので。
丸わかりや娘だと思うておるとふと鈴の足元に視線が行く。
「それはそうと、お前裸足だったな…」
極自然な動作だった。別になんの下心もありはしない。
俺の無骨な手がきょとんとしている鈴の腰にまわり、ふわりと彼女の躰が浮く。
というか持ち上げられる。
「!」
「!?す、すまん!!悪気はない!」
「ただ裸足で歩くのは嫌かと思ってだな!だから手を伸ばした次第で決してお前に下心があるとかそんなんじゃっ………何が可笑しいのだ?」
鈴は声を出さずに笑う。視線が近い。鈴のすべらかな白い手が俺の肩に添えられた。
「お前と言う奴は……」
俺の焦った態度に笑ったのか。だが、悪い気はしなかった。
そう、いうなれば、『くすぐったい心地よさ』。妙に軽い、羽のような摩訶不思議な娘は独眼竜の重心である俺、片倉小十郎の心を確実に捕らえてきていた。