戦国BASARA 勘違い天女とバケツ人魚と 作:サボテンダーイオウ
これは狗楽がまだ生き神様扱いされて間もない頃の話。
そう、どっかのおっさんに間違えられている姉がどっかの独眼竜に捕まる前の御話。
グッジョブ村の村長の娘が隣村、レッツゴー村の村長の息子に恋をした。
けど、そのグッジョブ村とレッツゴー村はお互いいがみ合っていて、とても良い交流関係にあるとは言えなかった。何かしら嫌味をつけて日々、お互いの足を引っ張り合いをしていたのだ。低レベルな子供の喧嘩みたいなもんである。そんな娘はとても悩んだ。
悩んで悩みまくって、ある神様に願ったのだ。
『どうかこの想いを伝えてぇだ~。なんとかしてくんろ~』
その願いは何と聞き届かれた。
おどろおどろしい闇が突如、娘の背後下に出現し、そこから闇手に握られた状態で
ずもももももっと大食い娘と第五天魔王が現れる。
「純粋な乙女の悩み!この狗楽様が叶えてしんぜよう~」
娘は驚いた。驚いた理由は登場の仕方ではなく自分の願いを叶えてくれるというポイントにだ。
「本当だが!?」
「ええ勿論!サァ貢物を寄こすのだっ!たくさんたくさんね?腹減って動けない~力はいらないとお願いかなえられない~」
「!?わかっただっ!」
娘は脱兎のごとく走り去り、そして数分後、荷車にたくさんの食べ物を運んで持ってきた。そしてキラキラと目を輝かせる狗楽の前で頭を下げ
「おねげぇしますだ~!」
と一生懸命お願いして走って行った。というわけで…狗楽は貢物である食いもんをバクバク食べながら
「どうしよう市さん。恋のキューピット役なんてやったことないよ」
「人魚さん悩んでる。市どうしようどうしよう」
狗楽の為にぷちパニック起こす市。だが狗楽が気楽に声をかけた。
「悩んでるけどそんなに深刻にとらないでよ市さん。大丈夫だから」
「本当?」
「うん」
そういうと市はまた元に戻った。いつもの闇お市に。
相変わらず食べる手は止めない狗楽がハタッ!と気がついて叫んだ。
「そうだ!ここはバレンタインにちなんでチョコを贈るとかアリかもしんない」
そうなんです、普通の世界ならバレンタインの時期です。
日にち過ぎてますけどそこは異世界なんで気にしません。
っていうか気にさせません。狗楽はバケツに向って唄った。
「バケツよバケツよバケツさん~♪可哀想な村娘の為にバレンタイン用のお菓子の材料出してくださいな~♪」
すると赤いバケツはガタ、ガタガタガタ!と激しく揺れ始め、びゅん!びゅ!びゅーん!何かを出現させた。
「よっしゃ板チョコと薄力粉にベーキングパウダー、バター、卵に塩んでもってグラニュー糖……これはチョコクッキーですな!!お市さんみたいな初心者でもおっけーなやつ!!」
「市、も作るの?」
狗楽が持つ材料を不思議そうに見ながら市がこてんと首をかしげる。
「うん、楽しいからやろうよ。それと『ヤミーシリーズ』も手伝ってね」
狗楽命名闇手こと『ヤミーシリーズ』達が、やる気満々に手を出している。
「そいじゃLet's cooking!」
気合十分やる気十分。
でも狗楽は全ての食べ物を芸術的センスで見た目も奇抜なものに仕上げてしまう究極の腕の持ち主。
そしてお姫様なので料理などほとんどしたことがない闇お市。
それに意気揚々と頑張るつもりでいる闇手こと『ヤミーシリーズ』
これらが合わさって作るお菓子ってどんなお菓子?
グッジョブ村の村長の娘は狗楽から渡された箱包みを持って隣村、レッツゴー村の村長の息子を密かに呼び出した。
「なんだべ?」
「あ、えっと…そのー」
娘はもごもごと口を動かすが、気持ちが落ち着かないというか緊張しまくっていた。
だが頑張って気持ちを伝えた。
箱をずいっと驚く男の前に出し
「お!オメェなんかにやるつもりじゃねぇけんどよ!しょうがねぇからくれたやるだ!あ!勘違いすっじゃねっぞ!?べっ、別におめさんのことなんかなんとも思ってねーだかんな。失敗したからくれてやるだけだっ」
娘はツンデレ体質でした。
「ほぉ~、見事な箱にはいっとるだがなぁ~?本当に失敗作だが?だったら俺じゃなくてオメェの村の男にやればいいんでねぇが~?」
男は意地の悪そうに笑いました。男はドS体質でした。
「っ!!?いいから開けてくんろ」
「………」
男はとりあえず娘の言う通りに箱の中身を開きました。すると、
そこには、緑色の奇怪な物体が
『ギロッ!!』
と黄色い瞳で男を睨みつけていました。
「………」
男は何も言わずに箱をしまい直しました。
そしてもじもじしている娘に向って言いました。
「これ何処で拾ってきただが?」
「!?違うべっ、食べれるんだべ。なしてそんなこと言うだか?」
娘はショックで涙目に。男は冷静に指摘します。
「今視線があったべ」
「気のせいだべ」
「だったらオメェが箱開けてみれや」
「べ、別に?いいだべよ!」
娘はまた無駄にツンデレ発動。そして男の言う通りに箱を開けます。
そして緑色の奇怪な物体が『ギロッ!』と黄色い瞳で娘を睨みつけてくるのも思わずに娘はその物体の躰の一部をもぎ取ります。
『ギャァアアアアアアア!』
奇怪な物体は悶絶ものの叫びを発しました。娘はその体の一部を男に差し出します。
「ほ、ホラ!食うてみれっ」
男は信じられないような顔をしながらも、その物体を娘から受け取り口に運びました。
すると、どうでしょう。男の口に広がるのは、なんとも甘美な味。
まるでこの世のものとは思えないような味でした。確かに物体がこの世のものとは思えない形をしているので正解と言えば正解です。娘は男にそっぽを向きながら説明しました。
「生き神様に聞いただべ、他の場所の風習で『ばれんたいん』っちゅーのがあるらしいというんを。……愛を…伝える…日……らしい、だべ」
『愛』
その言葉を娘から聞かされた男は破顔した。
「おら…おめぇのその態度。嫌いじゃねーぞ」
「!?……だったら、オメーの嫁に行ってやってもいいだぞ…あ!!勘違いすっだねーぞ?!おめぇんとこ嫁の貰い手がねぇーって聞いただがそないなこと思っただけ」
『だから勘違いすんじゃねーべ』と娘の台詞は出るはずだった。
けど、出なかった。途中で、男に抱き締められたから。
「だったらまずは親父さんに報告しねとだな?」
耳元で囁かれたその言葉に、意味を理解した娘は涙した。
つまり、世間で常識的な『お義父さんっ!!娘さんを僕に下さい』発言なのである。
「家の父さんは一筋縄じゃいかんべよ、ろみお?」
「上等だべ、な?その方が愉しそうだべさ。…じゅりえっと」
戦国版ロミオとジュリエットな二人でした。
その後二人は色々試行錯誤してなんとか夫婦として認められることに
なりました。
めでたし☆めでたし
◇◇◇
さて、狗楽が作った叫ぶチョコクッキーもどきが若い男女を結ぶ役目を果たしたのはご存知であろうが、なんと驚き!それが恋を叶えてくれるラッキーアイテムみたいに世に噂で流れ出したのだ。
若い娘が想いを遂げられずに悩んでいると何処からともなく闇手に握りしめられた生き神様と第五天魔王が現れ、救いの品を与えてくださるとか。そして若い娘は恋い焦がれる男にそれを差し出すと、恋が実るという。まさに恋する乙女にとって夢のような話。
まさにバカ売れ状態。若い娘たちはこぞって貢物をを大量に用意し、狗楽とお市に頼むのだ。
『どうか、そのお力で恋を実らせて下さいませ!』
と。狗楽は気軽に「おっけー」と言うのでチョコクッキー作りに大忙しです。
お市も最初は顔をしかめていましたが、
今じゃ楽しそうに闇を振りまきながらお手伝いをしております。
それは『ヤミーシリーズ』達も同じこと。
それはそれは楽しそうに材料を潰したり混ぜたり握ったり
ちゃんとお手伝いをしておりました。
緑色の奇怪な物体で『ギロッ!』と黄色い瞳で見つめる者をある意味虜にさせて容赦なく睨みつけるチョコクッキー。
それは段々と噂が広まる内にこう名付けられることになりました。『ちょこ・りーと』と。
その『ちょこ・りーと』。実は若い娘ばかりを虜にさせていたわけではありません。
有名な戦国武将をも虜にさせておりました。
豊臣秀吉の生まれ変わりと謳われる豊臣に属する重臣、『狂王』として恐れられる石田三成です。戦がない時は、万全な豊臣とする為日夜、天姫様の為、執務に励んでおります。
そこにフラリと、奇妙な箱を持ってやってきた大谷。
怪訝そうに三成は問いただします。
「なんだその奇妙なモノは」
「若い娘どもの間で流行っておるらしいぞ。『ちょこ・りーと』と言うそうだ。入手困難な故しかもその入手方法すら極秘裏に隠されていて仕入れるのに苦労したわ。明後日、殿と茶のお約束を頂いておるから丁度いい。…ククっ、三成。其方も殿に献上してみてはどうだ?」
「フン、馬鹿馬鹿しい」
と面白そうに言ってくる刑部の言葉を斬り捨てます。が、視線はどことなくそれに注がれています。
箱に入ったそれはどことなく、『闇』らしい気配を纏わせているからです。
「殿も生前は男とはいえ今やお綺麗になられた。多少なりとも菓子はお好きかもしれんな」
そういって大谷は「ではな」と言い残して部屋を出ていった。
「………」
残された三成は、何とも不満そうな顔でだんだんと機嫌が悪くなっていきました。
彼の頭の中ではさぞや嬉しそうに大谷に微笑む、天姫の姿が情景に浮かんでいたのです。天姫様は。『ちょこりーと』を口に含んだ瞬間、華のように顔をほころばせて『吉継』と刑部の名を呼ぶ。刑部は頭を垂れながら返事をする。
『ハッ』
ゆらり、ゆらりと扇を仰ぎ天姫様は小鳥がさえずるような御声で言うのだ。
『ようやった。褒美を取らす』
『そのようなもったいないお言葉、有難き幸せにござります』
音もなく天姫様は檀上を降りられ、頭を垂れる刑部の前までお止まりになり刑部に顔を上げるようご指示なさる。
『面を上げよ』
『ハッ』
刑部が顔を上げるとそこには仮面を取られた御姿で天姫様が佇んでおられた。
『我の為に身を粉にして奮起しておる其方に褒美をやろう』
最上級の褒美を、な?
天姫様はとろけそうな微笑みをまんべんなく振りまき、刑部の頬に指を添わせ
近づきそうな麗しい唇に刑部はついと瞳を閉じる。
わなわなわな……
「許せるかァアアアアアアア!」
自分で妄想しといて自分で納得できずに叫ぶ三成。
ウガァ~と例にゴリラが服を着ていた場合の怒りの表現として自分が着ている服を破り捨てる勢い、まさに今それが三成である。さすがに自分が来ている着物を破ることはないが、彼の怒りは収まらない様子。
何としてでも刑部より先に。『ちょこりーと』なるものを手に入れねば!
と三成は仕事放り出して『ちょこりーと』入手作戦を実行した。といってもなかなかに情報は集まりません。何と言っても若い娘どもに人気ありまくりな品物。幾ら忍を使って探させても最初から短期間で入手できるほど安くはないのです。
城を飛び出してまで一生懸命に探しまくった三成でしたがとうとう入手方法は見つかりませんでした。一人森の中でいつになく項垂れる三成。
「…クッ、…どうすれば良いのだ…!」
天姫様がお喜びになられるお顔を拝見できるのは、私だけで良いのだ!
そんな恋に恋する乙女な男の前に彼女はやってきました。
「純粋な乙女の悩み!この狗楽様が叶えてしんぜよう~」
その願いは何と聞き届かれた。おどろおどろしい闇が突如、三成の背後下に出現し、そこから闇手に握られた状態でずもももももっと大食い娘と第五天魔王が現れたのだ。三成は、すぐさま抜刀し
「貴様っ」
と警戒して距離を取ります。が、狗楽は全然怖がった様子などなく反対に威嚇しまくる三成をなだめます。
「まぁまぁ~そんなに警戒しないで。わたしは恋を叶えるキューピットなだけだから」
「怪しい奴が何をほざく、大体『きゅーぴっと』とは何だ?」
彼の意見はまともです。でも常識が通じない狗楽の前じゃ無意味です。
「え?実らない恋を叶えて欲しいんじゃないの?だからわたし来たんだけど?」
「なんだと!?…『恋』を叶える……貴様、嘘偽りではないだろうな…この私を欺けんぞ」
今にも斬りかからんとする三成に、狗楽は遠慮なく毒を吐く。
「なんですか?この後ろ向きな性格?暗すぎる、これじゃあ相手も嫌になるわ」
ガーン!
ショックを受ける三成。
ああ、天姫様に嫌われる?!このままでは……このままでは…!
「ぁ……ああぁあああっ!」
そうだ、これも全てあの男の所為、あの男の所為なのだ!
三成は絶叫する。
「いえやすぅぅうぅううう!!」
とりあえず八つ当たり対象に徳川家康を選んだ。狗楽はその発言を聞いてびっくりした。
「え?相手って男なの?戦国時代でこんなのあるんだ。すっげ~」
勝手に勘違いして三成の相手が男じゃ誰も祝福してくれないからじゃあわたしが応援してやるかと言う風に決めたらしく
「お市さん、この人の恋応援してあげようよ!うちらが応援しないで誰が応援するのさっ!」
「人魚さんが言うなら市頑張る」
こうして狗楽とお市と『ヤミーシリーズ』達は三成の為『ちょこ・りーと』を作ることにした。無論、貢物は用意させてだ。