戦国BASARA 勘違い天女とバケツ人魚と   作:サボテンダーイオウ

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御逢いしとうございました……!!

徳川家康side

 

あやつは何だ……?

 

剥き出したごつごつした岩石のところに家康は立ち見下ろしていた。

あちこちで戦いを挑み繰り広げる侍達。それぞれの旗を掲(かか)げ、それを目標にして斬り合う。またはその主君が決めた色によって選別し、斬る。

それは、敵だからだ。主君の敵。皆、それぞれの色を見て斬り合う。血が飛沫(しぶき)をあげて。日の煌めきに、それぞれの刀は鈍く光かえしてその血で噎(む)せ、色が違う主君に仕える侍達の中におかしく異物がいた。

 

それは、そこに端然といた。周囲に流れる事無く周囲をその乱れを崩すことなく、佇んで。それはそこに居て居ぬ者。いや、居て異彩を放つ者。

そして何ともいいえぬ覇気を放ってそれは、そこに居た。

目元まで覆う仮面、結い上げた長い髪を靡(なび)かせ、向こうの中国の服を身に纏う異国の者。

下げた業物であろう日本刀。そいつはそこに居た。

見下ろす位置にいる家康で、そいつは見上げる者なのに。

ワシは押されていた。その遠目から放つ覇気にそれはあの魔王を思い起こさせる。

だが確実に違う者がそこにいた。そこに佇んで。

 

石田三成side

 

その方はまるで光の如く現れた。

 

黒く艶やかな結い上げた髪を舞わせ私の視界を遮ってバサリと無駄な音を立てず割り込んだ。それは新たな君主の邂逅だった。激しい戦闘を互いに繰り返す。

 

家康に刀を蹴り上げられ私は手を放す。

 

「グワァ!」

 

蹴り上げられた手を押さえ私は素早く後退し蹴られた刀を取ろうとする。家康はそのわずかな隙さえ逃さずそのまま私の懐まで飛び込み急所をついてついてこようとする。私は咄嗟に鞘でその拳を払う。

 

「クっ!なかなか!だがお前はここで終わる!」

 

「ほざくな家康!貴様がここで秀吉様に許しを請う紅の飛沫をあげながらこの土に還れ!」

 

払う動作と共に掌底を家康の顔面へと叩き込む。だが簡単に受け止める。

そのまま私は後ろへ大きくと飛ぶ。だが、

 

「な?!」

 

突き出た岩に足を取られそのまま背から地面へ倒れこんだ。

 

「止めだ、三成!」

 

そういって家康はこちらへ走り込み拳を振りかざす。

そこにバサリと私と家康の間に割り込んだ。視界が艶やかに広がる黒髪に遮られる。

 

「「?!」」

 

そのまま家康へ見えない速さで刃を向け首筋で止める。

ギリギリの淵で踏み留まる家康。拳は私の手前で止まっていた。

 

「お、まえは……」

 

家康はそう口にする。

そう、見知ったように口にした。留まりきれなかったせいで刀が首筋に食い込み血を流す。割り込んだ者はこう口を開いた。

 

「我が名…知りたいか。我を、知りたいのか」

 

そう想像していたよりずっと若い、鈴が転がす声で言葉を紡いだ。

 

「……貴殿、は三成の知り合いか?だからこうして乱入したのか」

 

家康は敵意むき出しのままだが、戸惑いを隠せずそう睨みながらそう問いかけた。

私にはこのような知り合いはいない。そう声を出そうとしたが、

 

「……」

 

無言の重圧に私は喉が凍りついた。

 

喋るな。

 

この者の背はこう語った。……余計な事をいうなということか?

 

だがそのものはゆっくり振り向き私を見た。

その者は……その方は目元まで覆う仮面を被り紅く映える唇ほっそりした輪郭、向こう中国の服を身に纏っていた。その仮面に奥に潜む瞳は覇道を行く天下をとり頂点に立つ者の、瞳だ。そして、

 

「知らぬ」

 

こちらだけわかるようにその口元を笑んで。

ああ、この方はこの方は秀吉様と似ている……?。

 

 

徳川家康side

 

「知らぬ」

 

その者はいや、少女はそう言うと首筋に当てた刀を戻した。あっさりと。

ワシは呆れた。この敵の前で刀をしまうなどと。戦意喪失して体勢を整え拳を下げた。

 

「知らないのに三成を助けるのか…。不思議な奴だな…」

 

ワシは呆れを隠し切れずそう返す。本当に不思議な奴なのだ。

そいつは呆れたワシや、かばった三成などを気にすることなく、数歩離れ、

 

「我にはどうでも良い、早く消えるが良かろう」

 

そう振り向きざまに覇気ある瞳でこちらの瞳を射抜いた。

此処は我の場であると言わんばかりの。弱い者は消え失せろ。そう視殺しながら。

 

「ほお!」

 

「くッ!」

 

ワシはコイツを面白いと思った。血を沸きただせる人を高ぶらせるものを持っている。

天性の上に立つ者の風格。

ワシは再び拳をそいつに向けた。

 

「…我が覇道、何人たりとも邪魔する事敵わん」

 

少女はそう殺意を強めながらにやりと嗤う。隣で構える三成もワシも敵ではないと嗤う。

 

小僧かかってこい。と瞳は愉しげに輝いて。

相手は余裕にこちらは張り詰め互いに睨み合う。

そして静かになりおかしいと思った家臣が軍勢を引き連れてこちらに来た。

三成の家臣とワシの家臣とが。

 

「家康様!」

 

「三成様!」

 

互いの家臣が押し合い圧し合いながらこちらまで岩場をなんとか上がりながら、やってきた。

だが家臣は少女を見て固まる。何故なら少女の尋常ではない覇気を肌で感じ恐怖したのだ。以下の侍も、だ。たった一人の黒髪の少女に大の男どもそれも二百利かない集団で、たったその姿を見ただけで。少女はその集団が来たことに気分を害しやはり刀をしまった。

この誰もが得物を少女に向けているのに。そして少女が顔を上げ、

 

「―――去ね」

 

そう軍勢で来た集団に向かって吐き捨てる。静かな怒りを見せて。

 

よくも余興を邪魔したな、屑共。

 

そう瞳は冷ややかだが灼熱のように熱く今にも退かない軍勢に少女は足を踏み出した。軍勢へ。

 

消えないなら我が消してやる。

 

ヤバイ。本能的に恐ろしさを感じた。このままこの場に留まるのは被害が大きすぎることになると察知する。ワシは内心慌てながらだが表面は取り繕い、

 

「……今回は引き上げるとしようか」

 

そうワシは家臣らに宣言する。いつもの声音を何とか出して上手く出せたかはわからない。

だがこの宣言で少女の怒りは収まった。ワシは向き直り少女に自分の名前を名乗る。

 

「ワシの名は徳川家康!貴殿とはまた逢えるような気がするな」

 

次に会う時は、きっと刃と拳を交えるだろう。

 

少女はそれに無言で答える。唇を笑みに浮かべた。

 

これるなら来い、小僧。

 

そう挑発しているように思えた。ワシはそれに好戦的な笑みを浮かべて答えた。そして、

 

「忠勝!」

 

と叫んでいつものように忠勝の背に乗り空へと駆けたのだ。

 

 

三成side

 

少女―――いや、その方は、家康が戦国最強武将の背に乗り空へ駆けて去っていった後をしっかり眺めていた。そう親しそうな表情を見せて。

私は歯噛みした。

 

家康め……!この方にそのような表情をさせる等!

 

私は奴の恨みでいっぱいになる。

そう歯噛みしている間に家康の軍勢は崖から降りていった。

私の家臣もそこに留まっていたが目だけ配って下がらせた。

家臣は何か言いたそうな顔していたが、睨むと一礼して軍を率いて崖を転がりながら降りていった。

私がそうしている間にその方はすでに崖先にいてそこから飛びおりようとしてた。

興味が失せたといわんばかりに。私は慌ててその背に声を掛けた。

 

「……お待ちくださいっ!」

 

思わず大声で声を掛けてしまった。

なんという事だ。静寂が好きな方だ、私のせいで気分を害してしまう。

だが、小さなことでビクビクしている私と違ってあの方は只何も言わずゆっくり振り返った。そんな事気にも留めないが話なら聞いてやると。

 

ドグンッ!

 

あの方の瞳を見て私の臓に刃物が刺さったような痛さが走る。

ああ、この方は、この方は……!

 

「もしや、もしや!」

 

私がそう口ばしってもその方は悠然と構え待っていた。

この覇気、この人をひれ伏せさせる雰囲気、覇道を何処までも突き進む瞳。

私は自然と片膝をつき頭を垂れた。

 

あの方の雰囲気に呑みこまれ押され、耐えられずだが耐える。

冷や汗が止まらない。真っ向から受ける。

あの方はそのまま私に呆れ去ってしまうのかと思われた時。

ジャリと地面を踏みしめる音が耳に入る。

顔をあげればあの方は私のような者に視線を合わせるために膝を着かれる。

そして私の肩に手を置いて、

 

「辛いか、苦しいか」

 

今までの私が遭って来た流れを見てきたかのように労わりの言葉を掛けた下さった。

ああ、この方には敵わない。そして、何でも見知っている。今までの戦国の動きも数多の者たちが歩んだ語りもこれからの先のことも。

この日の本、全て。だからこそこの方は。

 

「………辛くなどありませぬ」

 

この地へ舞い降りた。

 

「…こうして再び逢える事を夢見ていたのですから…」

 

そう、私もこの方の夢を見ていた。

ここ最近ずっと。この方の背を。この方の瞳を。

この方こそ日の本で君臨する在るべき御方。私はその事に涙した。

そして私は誓う。心から。いやこの命賭して!

私は肩に置いてくださったその手を両手で取り、

 

「貴方様が目指す道にどうか、どうか今度こそ!三成を御傍に!」

 

そう誓いの言葉を力強く宣言する。

その方は嫌がる事無くむしろ言うのが遅いぞ。とそっと笑う。そして、

 

「その言葉偽り、ではないな?」

 

もう一度再確認する。

言ったからにはもう後戻りは利かない。それでもいいのかと瞳で言葉で問われる。

 

まさか後戻りも何もない。

私はこの方についていくと命に賭けて誓ったのだから。

 

「ハッ!」

 

今度こそ私は失わせない。闇などあれだけで十分だ!

私は立ち上がり失礼のないようその方の手を取り立ち上がらせる手伝いを。

さも当然に手を取り立ち上がる。すると歩き出しながら私の名を呼ぶ。

前からそうしてきたかのように。

 

「三成」

 

「はっ」

 

その方はいや我が主はこういった。なんてことはないように。

 

「我が名は神崎天姫、である」

 

名を告げた。私だけに。私は立ち止まりその名を何度も胸に刻みつけた。

 

「…天姫様…それが貴方様の真なる名……!」

 

そう小さく呟くと天姫様は振り返り宣言した。

 

「永き道になろうぞ」

 

何処までもついてこいと、静かに。

 

「この三成、今度こそ、今度こそ!貴方様をお守りいたします!」

 

そう私は声を上げて何処までも地獄の果てでもついて盾になっても守ると。

天姫様は私の言葉に微笑を浮かべ目元を覆う仮面に手をやる。

 

「?!」

 

そのまま仮面を剥ぎ取った。今までついていたのが嘘のように、単に。

私は天姫様の素顔に息が止まる。

それは秀吉様が大事に保管していた絵巻の天女。

一度見せて貰った三国の伝説に居たといわれる天女の顔がそこに。この世にない美貌を持ち、国を繁栄させるといわれる天女。秀吉様が生涯一目だけでも見たがっていた天女がそこにいた。天姫様はこういった。

 

「かならず、手に入れてみせる」

 

この愚かな日の本を制し君臨し日を照らす明るき国というものを。

 

 

彼女は静かに怒りをみせながら、そう宣言した。

争いを続ける、今は見る影もない日の本に住む愚かどもに制裁をくわえるため。幾つもの玉を空中に操りながら、

 

「三成、ぬしは不幸を脱したか」

 

先にいる二人の影に問いかけることなく呟く。

 

「それとも、ぬしは、不幸よりも大きな災厄を招いたか」

 

黒髪に中国服を身にまとう少女を見ながら。

 

「これはこれは、天女は幸か不幸か、災厄か」

 

それは楽しげに呟き、

 

「どちらにしろ、この日の本は、大きく変わる。変動する、たった一人の天女によって」

 

狂ったように呟いて、呟いて、呟いて、呟いて。

 

「ひ、ヒヒヒヒ」

 

堪えた、笑い。だけど、

 

「ヒッヒッヒャヒャヒャヒャヒャア!」

 

狂いに狂ったとても愉しげな笑いを上げて。

 

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