戦国BASARA 勘違い天女とバケツ人魚と 作:サボテンダーイオウ
狗楽side
「狗楽ちゃん、次は何しよう」
「……」
「狗楽ー!ねぇねぇ、曹操叔父様がまた庭改造して、今度はどどーんと巨大な樹木を植えたんだ!綺麗だから明日はその下で花見しよう!そうしよう!」
「………」
「私久々に狗楽ちゃんの作るご飯食べたいなぁ~。肉まん作って作ってよぉ狗楽ちゃん」
「…………」
「狗楽ちゃん無視?私無視?ねー、狗楽ちゃん、狗楽ちゃん、私の可愛い狗楽ーちゃぁぁぁあん!」
「……………ッ!ウザイ!」
バッッッッッシィィイイイインっ!
わたしのハリセンが炸裂した。
「ホゲェェエエ!」
彼女はハリセンを喰らいごろっと転がって痛そうに頭を抱えた。
風を切る速さで喰らわせたハリセンはふぅぅううと少し煙がたっていた。
成程、煙がたつほどわたしは我を忘れ攻撃を喰らわせたのか。なんと恐ろしきわたしの無意識なまでの本能の脊髄反射力。目の前で転がる彼女―――我が姉、天姫。
ここは三国で彼女は天女と呼ばれているほどの絶世を超えに超えた美少女。
この争いに満ちた戦争を終わらせ、彼女は国を繁栄させる天女として生きながら崇められている。わたしたちがいる所は魏でお城にいる。
まぁ、今はひっそりと屋敷に潜みながら暮らしているが。そしてこの国では彼女のブロマイドが露店でよくよく売られている。
男性もそうだが女性のファンが強いらしい。新作がでるたびに三分もしないうちに完売する。今この国では天姫を崇拝する女性が多くしめほとんどの男性が見向きしなくなったという異常事態が発生している。このままでは少子社会になってしまう可能性大だ。
この国では天姫以上の理想すぎる男性はいないようだ。天姫一色となっており、わたしはすごく居心地がよくなかったり。
まぁその女性を特に魅力させる彼女はわたしの寝台に転がりつつうぅと唸る。
わたしはハリセンを肩に担ぎごそごそと荷造りする。すると姉はこの音に気づき、
「狗楽ちゃん何処行くの?」
「アンタが存在しないところだよ」
神速で近づきわたしの肩をがしっと掴み逃がさんとした。わたしは逃れようとしたが姉の馬鹿力で逃れられない。姉は少し血走った顔で、
「狗楽ちゃん家出?家出するの!狗楽ちゃん家出て放浪するの?!そして海へ出てひとつなぎの大秘宝、ワンピースを目指すのっ!?認めないっ、認めないからねっ!海賊になるんだったらおねーちゃんも一緒に海賊になるからー!」
と姉は叫んでわたしをぎゅっとちぃかぁらぁの限り抱きしめた。加減なんてない。
「ぐぇ!」
こ、殺される……と口から洩れた時、バァァアアンとバリケードして閉めた扉が開かれた。
「狗楽が家出だとぉぉおおお!」
そう聞きつけて曹影動ことパパが入ってきた。
かなり長距離から走ってきたのだろう。端正すぎる顔に汗が滴る。
あれだ、パパは歩くフェロモンだからこの光景を見た女どもはキャー!などと言って気絶するに違いない。姉も歩いて声など女性は聞けばバッタバッタと倒れていく。
さすがフェロモン親子。血は微妙に遠いけどつながってるしだんだん日を追うごとに似てきている。そんなフェロモンパパはわたしに近づきガシッと抱き着いた。
「どうした狗楽!この家に不満があるのか!だから、家出するのか!不満があるならいってみろ!パパが全て壊滅してやるから!」
姉も巻き込まれるように抱きつかれたことに不満なのか、
「パパ、あっち行ってよ!」
とぐーを喰らわせて、跳ね飛ばした。
「がは!」
転がる父親。年頃の娘を持つと大変だなぁと他人事のように考えた。
パパは天姫にぐーで殴られ、天姫に殴られた!とえぐえぐ泣き出した。
おい、何三十過ぎたおっさんが泣きだすか。やめんか、みっともない。
それから姉は何処が悪いの狗楽!このおねーちゃんが全て撃滅してあげる!と泣きながらそこで泣いている三十過ぎおっさんと同じようなことを言った。
わたしは冷静に、別にないよ。あんたが離れればいいんだよ。
と返せば、
「せっかく久々に三国に帰ってきたのに、酷いよ狗楽ー!」
と言っては泣きだした。おいおい、天女。伝説の天女。本当にイメージ台無しだよ。
あんたのしつこさ異常だよ。そして、こうしてパパと天姫はえぐえぐ泣いて、わたしは女の子たちが溢れる避難部屋へ移動するのを諦めた。
わたしは仕方なく姉を泣き止ませるため、一緒に寝た。久々に寝たね。
いやここずっと一緒に寝てるけど。姉はそれは安心して綺麗な顔で寝た。
わたしはそれを眺めて喋らなきゃ天女なのにねーと残念感がぬぐえなかった。
そのままうとうとと眠りにつく。二人で健やかに寝た。
そしてわたしは漂う。何もない空間に。久々にみるこの浮遊感。
何処までも連なる闇。でも感覚は告げる。此処は前と同じ感覚。
そしてわたしは半分眠りながら呟いた。
「あー、腹減ったハラペコリ☆」
「お前は夢に来ても食う事しかないのか?」
わたしの詩人溢れる呟きに、無粋な誰かが突っ込む。
「それ、詩人風でもなんでもないから!ツッコミどころ満載だから」
また突っ込まれた。ふ、情緒がないな。やはりボンクラな神だからか。
仕方ない、そういうことにしておくか。わたしは心が広いからな。
「……お前大分性格変わったな。ツッコミ狗楽はどうした」
それにしても腹が減った。
「そこの男食い物をよこせ」
「食い物寄こすから、お前しばらく黙ってくれ。話がすすまないから」
わたしは目の前にたんと山ずみに置かれた肉まんをすごい速さで頬張っていく。
もう肉まんはすでに無くなりかけている。そのわたしが素直に黙って食べている間目の前の男、神男はなぜか焦りながらこういった。
「いつも天姫ばかり単独で俺飛ばしてるだろ?別の世界に。だから今回はお前を飛ばしてみたらどうかなと考え付いたわけ。第一お前あそこにいたくねぇ。たまにはひとりでどっかいきてぇとか思ってたからこれは丁度いいやと。で、おまえをここに呼んだ。何処に行きたいかはお前次第だけど、何処行きたい」
そう早口でわかりやくまとめわたしに聞くころには、全ての肉まんはわたしのおなかの中に収まっていた。わたしは神男の言葉にこうかえす。
「独り優雅に放浪の旅をして女の子にきゃーきゃーされながら色々な人にあって自分を磨き腕を磨き逞しい自分になってねーちゃんを拳で殴れるような強い自分になりたいし修行できるそんな世界に行きたい。あ、ねーちゃんいらないから!」
「漢を極めたいのか?お前一応女の子でしょう!少しはこう華のあるようなことをいいなさい!」
「何、女の子であること強要するの?セクシャルハラスメントだよ。そんな存在消え失せろ」
「まだ天姫の方が可愛げあるわ。なんでこんな奴に執着していられるんだ?節穴なのか」
「わたしぃー戦国にいきたいなぁーてへ☆」
「キモい」
「死ね蛆虫」
そうしていると二人して、睨み合いになる。
バトルが勃発しそうになったとき、
「あぁ、神様よけてください!」
ひつじの声がしたかと思いきや、神男が反射的に避けた。
「へ?」
「あ…!」
神男が避けた物が、ほけたわたしへ。
神男がマズイ!みたいな顔をしたが、間に合わなかった。
その物体はバケツ。入っていたのは水でひつじが転んでバケツがとんでこっちにぶちまけたのだ。わたしはその水にかかってざぁー!とどこかへ流された。
※
流された。ザバーと。
グルグルと回転しながらわたしはその流れに逆らえることなく、巻き込まれに巻き込まれてその流れに一分くらいは洗濯機に洗われるようにぐるぐるされて、もはや肺が死にそうに何もなくなった時に、
ザバァァアアアアアン!
陸に打ち上げられた。魚のように。
「ゴハッ!」
わたしは桟橋みたいなところに顔面から叩き付けられさっそく水を吐いた。いや、水にしては。
「しょっぱ!」
わたしは全力で海水を吐き出した。
苦しそうにのたうちながらわたしはとりあえずなんとか立ち上がった。
足がぶるぶる震える。そりゃ死にかけましたもん、すぐに体に力入るわけないじゃん。
だがわたしは根性で歩き出す。
だって、ここ何処だかわかんないし敵が居たらすぐにヤラレルシ。
そんな隙見せられないじゃん。で、一歩踏み出してみたわけだけど、バコ。
「は?」
なぜか桟橋みたいなところにバケツが転がってわたしはそれにもろくそ足をのせて後ろへ倒れた。つまり、また海水へリターン。
「またかぁぁぁああ!」
そんな叫び声虚しくわたしはそのまま海へ。だけど。
「はれ?」
わたしは海の上にいました。
つまり海面すれすれで我が身は浮いていたのだ。
海に頭からダイブするぜぇぇぇぇええ!ということなく。
海から黒いでっかい手みたいなものが出てきて、それに人形を握るように受け止められていた。それからでっかい黒い腕は動くと桟橋の目の前まで。だが離してくれる気配はないので降りれない。だけどその降りれない目の前に、
「こんにちは可愛らしい人魚さん。市に逢いに来てくれてたの?」
桟橋に座り込み覗くように言う人物が。
市と名乗った人物は腰元まで長い黒髪に戦国らしい衣装だが大胆なまでにミニスカなまでの着物を短く太ももを露わに武具を身に着けて、綺麗なまでに整い過ぎた日本人形の女性がそこにいた。
「えっと、こんにちは……助けてくれたの?」
「市、人魚さんが海へ帰ろうとしていたから。市に会いに来てくれたのでしょ?」
「いや、わたしは人魚じゃないだけど」
「市に逢いにきてくれたんじゃないの……?」
話がかみ合わないうえ、女性は今度は涙をぽろぽろと流した。
は、これわたし泣かせたんかい!マズイマズイぞ!自分の信条に反することをしてしまった。可愛いこを泣かせないのがわたしの信条だ!
「そう逢いにきた!市さんに逢いたくて海から来たんだよ!えへへ」
ともはや半分やけくそになっていってみた。
すると女性はにっこり笑うと、
「じゃあ、お友達。ずっと市の傍に居てね可愛い人魚さん」
「え」
がしりと女性に腕を掴まれた途端、手がわたしを桟橋に降ろして音もなく黒腕が海へ消えていった。それから女性は新しい人形を手に入れたようにわたしを抱き込むとぎゅうと腰を絞めた。わたしの背骨がごりごり悲鳴を奏でた。
「ぎゃぁぁぁぁぁあああああああああああ!」
見知らぬ桟橋でわたしの悲鳴がこだました。
こうしていきなり知らない世界でわたしは旅を共にする女性をゲットした。
そのわたしが絞められている横で、後にわたしの相棒となるバケツがコロコロと虚しく転がったのだった。