戦国BASARA 勘違い天女とバケツ人魚と 作:サボテンダーイオウ
天姫side
どうも、天姫です。
私は今三成さんのお城とやらに向かっています。徳川さんとの戦いもお開きした状態であのままいても仕方がないのでお城に帰るそうな。なんと私もお城に招かれまして一緒に帰宅の列に加わっています。三成さんが馬を用意してくれてわざわざ馬に乗るときに補助してくれたり、パカラパカラと馬さんに揺られている最中にも私の背後にぴったりとくっついて来てくれたりしてくれたんだけど、なんか至れり尽くせりで私の方が申し訳ないくらいだった。
「天姫様、どうぞ」
「有無」
三成さんが竹筒に入った水を差し出してくれた。
ごくごくとそれを飲む。
しばし馬に揺られていると三成さんが休憩しようぜ?と誘ってきた。
「天姫様、しばし体をお休め下さいませ。貴方様の御身がこの三成にとても大切なのですから」
「よかろう」
ちょっとお尻が痛いのでその誘いに乗った。馬から降りてちょっと体を伸ばした。
三成さんは私の傍で地面なのに膝を付き、私の体を動かす様を観察している様子だった。
たぶん私の衣装が珍しいんだと思う。一応三国の世界から直接そのままの格好で来てしまっているからだろう。
まぁ、ここは日本だし当たり前と言えば当たり前だが、その視線が三成さん一人だけで収まっているならここまで気にすることはないのだ。
そう、大勢の視線が一気に私に集中しているのだ。
三成さんの兵士さん達に、あの全身包帯グルグルで変な乗り物に乗ってる男の人だ。
彼はどこか私と接するときに一線を引いているような感じがした。
だって、私を見ても驚いた様は多少はあったとしても落ち着き払った態度で
「見事にございますな、天女様」となんで天女なのか知らないがそう賛辞の言葉をかけてきたのだ。アレだね、たぶん私がムカついて徳川さんの兵士とか蹴散らしまくったから敵方である三成さんの軍の方が分配が上がったから嬉しい誤算なんだろうよ。
たぶん三成さんにとっては大谷さんは軍師みたいな立場みたいだしね。
しかし、ちょびっと体を動かしながら気になることがあるんだよねー。
三成さんが率いる部隊の兵士さん達が私の顔を見つめてくるのだ。
こう、珍種を見るような?
もしかしてさっきの暴れまくった様子を見ていて怖がられたのかな?
うーん、ちょっとこれはマズイか…。だって三成さんと一緒に行動する事はこの先決まってるし、三成さんのお城?とかでも
私はピタリと体を動かすのをやめ腕を組んだ。
うーんいきなり謝っても許してくれるだろうか。
っていうかいきなり謝罪してもびっくりするだけだよね、はてどうしようか。
「…天姫様、いかがいたしましたか!?」
三成さんがすごい形相で詰め寄ってきた。ちょっとビビった私だけど仮面をつけていたので表には出なかった。
「……ちと、面倒でな」
うーん、どうやって兵士さん達と仲良くなろうかな?
「っ!?…天姫様、……どうかこの三成を必要下さりませっ!!私ではお役にたてぬとお思いなのですか!?」
いきなりガシッと手を取られてクワっと強面な彼。こっちは反動で彼に引っ張られてしまった。なんでそんなに必死になってるの!?
もしや、私と一緒に謝ってくれるとでも言うのか?
「……三成、そなたならば可能か?」
「勿論にございますっ!」
耳にキーンとするようなデカい声で彼は嬉しそうに言った。
なに、コレ。もしかして彼は謝罪しまくるのが好きな人なんだろうか。
それとも善意で言ってくれているのか。
どっちにしろありがたいことだ。
「三成、傍におれ」
後ろで見守ってるだけでも励みになりますよ!
「…天姫様…!」
超嬉しそうなんだけど、ちょっとこの人の事が心配になったお昼時であった。
私はその後、三成さんが温かく見守る中、兵士さんたちと仲良くなることに成功したのだ。
さすが、上に立つ人がいるだけでも違うよね。
さて、道中色々問題が発生したものの、無事に三成さんが拠点とするお城に着くことができたのだ。
もちろん、私はそのお城を目にしたとき、固まってしまった。
というか、動きすら目の前の存在に目を奪われたのだ。
「天姫、様?」
だって、大阪城だよ?すごくない!?豊臣秀吉に仕えてた三成さんが大阪城にいるのはなんとなく予想がついたけど、やっぱり目の前にしてすごいと感じてしまう。
「……懐かしいのう…」
思わず感嘆しか出ないというか、私と狗楽が住んでいた世界での大阪城を見に行った時を思い出してやっぱり、戦国時代で見るのはスケールが違いすぎるわ~、と思ったのだ。
軽く旅行気分を味わえた感じがして得したようだ。
「……貴方様のご帰還をずっと夢見ておりました、この三成感無量にございますっ!」
え?なんで三成さんが私が大阪城見物してた事、知ってるの?
もしかしてテレパシーとか?私の心見透かされてるのかしら?
予想外な展開だわ!?どうしよう、ここは平静を装ってあとで対処しなくては!
私は動揺を悟られないよう声を低くさせて、大きな城門をくぐった。
「…行くぞ…。三成」
「ハッ!」
その後に三成さんや、大谷さんたちが続いてくる。
ていうか、なんで私が先頭に立たなくちゃいかんのだ!?
納得がいかないが今はとにかく進むべし!
と自分に根性を入れ、大勢の家臣の人たちが驚愕し、そしてなぜか次々に頭を下げていく光景に言いようのない恐怖を感じながらも、用意された部屋でやっと腰を落ち着けさせることに成功したのだ。
それからが大変だったような気がするのだが、この話はまた次にしよう。
だって疲れたから寝るしかないでしょ。
※
石田三成side
いつも夢見ていた。あの御方の背中を、もうすこしで手が届く
届くはずなのに、私の手はあの御方に今少しで届かないのだ。
いつもいつもいつもイツモ口に出すのも悍ましく許し難いあの男が私から奪っていくのだ。
どんなに絶叫したか、届いたはずの手はまっすぐにあの御方だけを求めていたのに。
そして、いつも私が悪夢から目覚めた時、頬を濡らしているのだ。
己が果たせなかった主命、己が失ってしまった絆。
それを奪われたことに対して嘆き、それを為せなかったことに対して苦しみ。
いつも抜け殻のまま私は生きてきた。でもやっとそれが日の目を浴びる。
あの御方が蘇ったのだ。永久の世からこの腐りきった世界を正す為に今再び私の御傍へとご降臨なされた。
その御方が今私のすぐ目の前になんの乱れもなく私がご用意した馬を乗られておるのだ。
その佇まい寸分の狂いもなく馬を操り意のままとしている。
最初こそ、私が天姫様の補助を行うとは思わなかったがあの御方はそれを快く許してくださり、あまつさえそのお礼として私に微笑んでくださった。
その瞬間、私を包む痺れのようなものを一生忘れることなどできはしないだろう。
無論、天姫様への無礼な振る舞いをしたモノは即刻首を落としてやる。
後ろから天姫様の御姿を見つつ、まわりに敵の残党がいないか確認することも忘れてはいない。…、そろそろ天姫様は喉がお渇きではなかろうか。
差し出がましいかもしれないが、震える手を隠すことができずおそるおそる水筒に手を伸ばし、
「天姫様、どうぞ」
私が差し出せば天姫様は
「有無」
と勢いよく水を飲まれた。天姫様の飲まれる様に見惚れつつ、やはり喉がお渇きになられていたのかと後悔の念に襲われる。もっと早く渡しておれば天姫様に喜んでもらえたはず、と自分自身を恥じ次はもっと気をつけなければと奮起した。
その後列は順調に進んでいたが、天姫様の背中からお疲れの様子が見受けられ即刻列を止めさせた。
「天姫様、しばし体をお休め下さいませ。貴方様の御身がこの三成にとても大切なのですから」
「よかろう」
浅く頷き天姫様は馬上から降りようとなさったので、再びお手伝いさせていただいた。天姫様の御手を触る時、やはり男の私とはまったく違う小さくか弱い御手をなさっていることに改めて衝撃を受けてしまった。
この細く折れてしまいそうなお体の中に我が主、秀吉様の御魂がおられるという事を。
しかし、馬上から下りられた天姫様はしきりに体を動かしまるで無理をしている印象を受けた。
あの世から舞い降りてきてすぐに今世の体になじめるものだろうか?ましてや女子の体。
すぐに我らが信じるとわかっておられたのか?
さきほどから天姫様はしきりに体を動かす様子を私の前でなさるのだ。
まるで己の体の動きを隅々まで確かめているかのように。だが、それは急に止まった。
まさか、何か不調の兆しがあったのだろうか!?
私はいてもたってもいられず
「…天姫様、いかがいたしましたか!?」
不躾かと思ったが不安に駆られた私は自分を御せなかった。また、失うような事は二度と目の前で起きて欲しくない。いや、もう離したくないのだ。この手から二度と。天姫様は唸るように一言つぶやき苦渋に顔を歪めていた。
「……ちと、面倒でな」
やはりお体に異変が!?
「っ!?…天姫様、……どうかこの三成を必要下さりませっ!!私ではお役にたてぬとお思いなのですか!?」
気がつけば私は天姫様に顔を近づけ、その華奢な御手を握りしめてしまった。
どうしようもなかった。
どうか、どうか。貴方様が何処か消えてしまうような事があるならばこの三成を御傍にて仕えさせてほしい。それがあの世となろうと、この身朽ちても貴方様から離れることがないならば。本望だと知ってほしかった。
天姫様の声音はとても静かに私の動揺に震え荒れきった心に水面に響く風のように
すぅっと入ってきた。目を細め、私だけに聞こえるように
「……三成、そなたならば可能か?」
ああ、天姫様は私を御放しになる事はない。そう直感した。
「勿論にございますっ!」
「三成、傍におれ」
そなたは我のものだ、決して離れること許さぬ、と。
天姫様は瞳にその言葉を宿し私に命令なさる。
「…天姫様…!」
こんなにも私は貴方様に依存している、貴方様無くして私は生きる意味がない。
やはり、この御方の御傍が私の生きる場所なのだ。改めて実感できた己がその瞬間いた。