戦国BASARA 勘違い天女とバケツ人魚と   作:サボテンダーイオウ

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毒と思わなければ毒ではない。

さて、狗楽が盗賊まがいの行動をとり、長曾我部元親のアジトを無意識に崩壊させた後、お市と共にまた放浪の旅に消えその被害を受けた長曾我部元親の話が各大名の耳に噂として入った来たのは1か月後の話。

その話とはまた別に、なんと徳川家康に討ち取られたはずの豊臣秀吉が再び現世に舞い戻ったという噂が世間に流れ出したのである。

その容姿はこの世のものとは思えないほどの美しさを放ち、人ではない力を持ちながら圧倒される覇気で敵を薙ぎ払うという異国の衣装を身に纏った女。つまり天女として生まれ変わったという。

誰もが疑うことなくその事実を真実として受け止めた。

大阪城内部では、『秀吉様の天下がまた訪れる』とか『あの世から舞い戻った方と知れば、誰もが恐怖におびえ諸大名たちも恐れおののくに違いない』などなど城にかつての豊臣の栄華が再び訪れるのだと歓喜する武将たちでにぎわっていた。

大概の者はその天女である、新たな殿とも呼ぶべき主、神崎天姫の素顔はまったく垣間見えた者はいなかった。理由は、恐れ多くとてもその美しき顔(かんばせ)を覗きみることなど許されないことと認識している事と、彼女自身が普段から仮面を肌身離さずいるので、素顔を晒す事を嫌っていると認識したのだ。

ある一部の者は友人であり豊臣の軍師としての竹中半兵衛を喪しているという仮説もあったりするが、あくまで本人以外しか知らないものだろう。

まぁ、本人の知らぬ所でどんどんと噂が広まり、それは全国へとあっという間に広がっていったのであった。

 

その話はまた今度にしてさて、その本人である神崎天姫は、只今軍議なるものに出ております。

 

一段高い檀上の中央の位置に座り、なんで私ここにいるのかな~?と疑問を感じながら頬杖をつき、一段下、天姫の近くに控えている三成始め、大谷以下無き秀吉を敬い慕った武将たちが顔を合わせていた。

それぞれが『今が好機!』とか『殿のご決断は!?』とか話しかけてくるのはもしかして皆で狗楽探しを張り切っているからなのかな?

 

だったら納得もいくわ。こうして私のいる位置も私を中心として動くからこうして真ん中で皆の顔を見えるようにしているわけなんだわ。そして皆さんどうもありがとう!と叫びたい。

見たこともない私の妹を捜索するために、味方同士で意見を言い合ったりこのやり方のほうが効率的だとか作戦を立ててくれてるのが嬉しすぎてすこし涙が滲んでしまった。

それを隠す為自分の目頭部分を手で覆ってしまったくらいだもの。

私の行動に皆さんの気配に変化があった。

さっきまでがやがやしていたものが一気にお葬式のように静かになる。極端すぎるよ。

でも大谷さんの発言がどうにも場の雰囲気をおかしくしてしまった。

 

「殿、実は面白き噂がありましてな。ぜひお耳にと、ククっ」

 

「刑部、今はそのような事」

 

三成さんが不愉快そうにしてるけど、大谷さんはますます笑ってるように思えた。

包帯巻いてるからわからんけどね。

 

「この日の本に妙な噂が渦巻いておりまするぞ。歩く人魚が出現したと」

 

「大谷殿、それはもしや人魚なる珍魚が我が日の本を闊歩していると言う!?あの噂か!?」

 

「左様」

 

コックンと頷く大谷さんは少し可愛いと思ってしまったどうでもいい私。

 

……人魚って歩けたっけ?根本それかよって感じなんだけど最初の疑問はソレでしたね。

え?人魚!?人魚ってアレですか?日本の人魚ってグロテスクなイメージが強いんですけど。絶対可愛いとは思えないわ~。

ていうか、今それ関係ないよね?狗楽探しが今のとこのテーマなはずでは?

 

「捨て置け」

 

「しかし」

 

私しつこいの嫌いな性分なんですよ。一回言えば理解できるでしょうに。

 

「三成」

 

「ハッ」

 

「我に」

 

「っ!?」

 

「二度も言わせる気、か?」

 

今初めていいますけどね。わかってくださいよ?

睨むつもりじゃないけど、眉間に皺は寄ってたと思う。

鏡でいちいち見てる訳ないので感覚としていう。

そうしたら三成さんがなぜか顔を青くして唇震えさせてもの凄い速さで頭(リーゼント)を畳にこすり付けたというよりも、叩き付けたのほうがしっくりくる。

眼にも止まらぬ速さだった。

私よりも土下座する体勢を作って行動するとは、侮りがたし。

 

「もっ、申し訳ありませんっ!?どうかっ、どうかお許しを―――!」

 

他の男の人たちも一斉に土下座してくるもんだから即行居心地が悪くなったし

私はそれ以上信憑性もない噂なんか聞きたくないので立ち上がり三成さんに背を向けた。

原点に戻りましょうよ。やっぱ狗楽探しがメインだからさ。

 

「我が向かうはただ一つ」

 

「っ、そ、それは…」

 

決まってるじゃないですか。

 

その意味を含めて笑ってみた。噂では彼は場所を瞬時に移動する技を会得しているという。つまりワープ。そこから狗楽が仮にできてきたとしたら、その御業を持っている人物は狗楽を知っているかもしれない。

私たちが出現する場所ってとにかく唐突なとこだったり意外な場所って事もたびたびあるから気になる箇所は徹底的に解明すべきだと私の脳が叫ぶのだ。

 

「日輪の申し子なる男よ」

 

とりあえず目指す場所は安芸に決まり!待っててね!愛しの狗楽よ。

今おねーちゃんが逢いに行くから!

 

 

天女が大阪城に入った事により城の人間や城下の民たちは喜び勇んで祭り三昧。

勇ましい天女の姿を模した絵など馬鹿売れしている。

特に男よりも女が買っている。歳は関係ない。しいていうなら年頃の女たち。

目がその絵を見る限り目がとろんとしてどんなカッコいい男が通っても見向きもしないという異常事態。なので城下の民たちの間で少し、ちょっとした問題になっていた。

男を見向きもしないということは伴侶を必要としないということで子供ができない。

このままではこの国の人口が激減するのではと男たちが囁いている。

一方、そんな問題を引き起こした当本人がいる大阪城では。

 

 

大谷吉継side

 

「殿自ら、お越しになられるとは何か不備がありましたでしょうか?」

 

目の前には気だるげに扇を仰ぎながら胡坐をかく、以前の豊臣秀吉様とは似ても似つかない容姿になった『殿』。とは思うていないがな……。災厄を招く存在は只の天女。

要は、天女と言われてる小娘に過ぎん。してはちと容姿が出来過ぎているがな。

その胡坐をかく、噂の天女。三成が暴走してしょうがない麗しき豊臣秀吉の生まれ変わりは我を睥睨しながら何を言うかと思えば、

 

「喉が渇いた」

 

そんな事をなんでもないように言う。

 

「では茶を持ってこさせましょう」

 

声を出そうとすれば、そよそよと風が我の顔に当たった。扇から仮面の目元だけをだしこちらに視線をやりながら、

 

「そなたが点(た)てればよい」

 

またなんでもないことのように平然と言う。平然としすぎて聞き逃すところだった。一拍間をあけながら、

 

「………我が…?」

 

感情を読み取られぬように平静を装う。

 

「…急に申されましても準備をしておりませぬ故…」

 

どうかお許しを…。

奴の前で頭を垂れるがその動作さえ上手くいかない。

自分の包帯まみれの手が震えている。なぜ震える。

震える必要はないではないか。単なる小娘に過ぎないのに。

だが、どぐん、嫌に鼓動がはねた。奴の視線が強くなったからだ。

見透かすかのような視線はいまだ我を射抜くかのように突き刺さる。

 

「では次だ」

 

衣擦れの音だけ頭上でし頭をあげた時女の姿はいなくなっていた。

奴は気まぐれを言ったに過ぎん。そう過ぎないのだ。

我に動揺と言う二文字を与えた存在は所詮気まぐれなものなのだという事を

一瞬でも奴は忘れさせた。

けど、それは些細な事と自分に言い聞かせ、その日の出来事は脳内から忘れ去った。

そして、その後小娘に連れなくどっかに行けと言われた三成が我が居た茶室に入ってきた。

三成は我の前へ来ると泣き崩れた。

仕方なく。茶を点てたのは言うもでもない小さな後日談だ。

 

 

次の日、また『女』は来た。呆気にとられた我の前に偉そうにして一言。

 

「茶を点てよ」

 

「……………」

 

この女は本当に何を考えているのか、皆目見当もつかん。

予想の範疇から飛び出た存在しすぎて、行動にすら意味がわからない。

傲慢で、高飛車。

静寂を好む割りに人がざわめくところに身を置こうとする。

本当に何を考えているのか。だから天女と呼ばれる所以か。

さて、どうしたものかと思っていた時に、我の中で一つ面白き案が浮かんだ。

ふっと笑うが、女は気づきもしない。

いや、気づかないふりをしているのか。だがそどうでもいい。試してやろうではないか。

この女が本当に太閤豊臣秀吉かどうか。三成が骨抜きになるほど全てを捧げるに相応しい値かどうか。

 

二人だけしかいない茶室に、静寂は降りる。女は一言もいわない。

我がしようとしていることも、見透かしていながらか。

茶筅をまわし終え、女の前に我が点てた茶を出す。

 

さて、どうでるか。

 

我の中で悪戯と予想できる展開が湧き上がる。

女はそれを一瞬だけ見やり手を伸ばした。さて、お前はどうとる。

 

女は、平然と何の躊躇いもなく茶器を手のひらに乗せゆっくりと口に入れていく。

 

我はただ、驚愕するしかなかった。

我が予想していた展開、それは飲まずにそのままかはたまた床に放り出すか、結局は飲まずして帰るだろうと考えていたのだ。しかし、目の前の女は喉を動かし茶を飲む。

目の前の光景に永遠ともいえる時間を感じた。

 

「吉継」

 

「…………」

 

「やはり」

 

「…………」

 

「茶は美味いのう」

 

コクリ、と喉が動き茶碗の中身が空になった。女は全て飲み切った。我が点てた茶を、だ。

 

「っ!」

 

あの女は殿ではない。

太閤ではないというに、その笑みを浮かべた姿に殿の姿が重なって見えた。

しかし、声は震えていた。我の声だ。絞り出すような音は我の声とは到底思えなかった。

 

「…左様に、…ございましょうか…?」

 

「有無」

 

目の前の存在は、何も変わらない態度で一言言うだけ。

毅然と着飾った言葉は一切なく心から思った事を口にしているだけ。

 

「有難き、幸せ」

 

頭を垂れた動作は自然に起こっていた。

この我の視界を揺らがせる、その正体を知らなくていい。

知る必要もない。知ったところで、我はもう認めた。我と『殿』だけでよい。

その後の緊急で設けられた軍議に殿は目の色変えてこういった。

我が向かうはただ一つ

 

「日輪の申し子なる男よ」

 

遂に動き出す、天女の覇道はもはや誰にも止められぬ勢いで、日の本を突き動かし、災厄か革命かを起こす。周囲を問答無用で巻き込みながら。

それは、天女が下りてきたことから決まっていたことかもしれぬ。

 

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