イナズマイレブンIG   作:とある世界のハンター

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入部届けと一等星

 

 

 

 

 

 

 

 入学式から数日。様々なオリエンテーション等を終えた名久里藍中新一年に、やっと部活への入部許可が降りた。昨日のホームルームで、新一年は必ず何かしらの部活への入部をしなければいけないというルールがあることが発表された。それを聞いた生徒は阿鼻叫喚の嵐に包まれた。しかし來斗にとっては、無関係な話であった。部活動紹介と称した各部活のパフォーマンス紹介が昨日あったが、來斗はサッカー部キャプテンのリフティングをしながら涼しい顔で話す姿に目を奪われていた。

 

「聞いてないわよこんなの〜」

 

「なあ、隣のクラスまで愚痴りに来ないとダメか? それ」

 

 知夏にとっては関係のある話であったようだ。小学生の頃はこれといったクラブ活動をしていなかった知夏は、中学でもその道を進もうと考えていたのだ。

 

「クラスの子たちは運動部に入るっていうけど、私運動できないし……文化部は選択肢が少ないし」

 

「音痴だし絵は下手だし料理はできないしな」

 

「うっさい、刺すわよ」

 

 片手に携えたペンに力が入る。

 

「なら、運動部のマネージャーとかじゃダメか?」

 

 授業開始の予鈴が鳴る。

 

「……ありね」

 

 苦虫を噛み潰したような顔はハツラツに塗り替えられた。ツインテールが犬の尻尾の様に揺れ動くその非日常を初めて見たクラスメイトは目をギョッとさせるが、当の本人達は一切気にしていない。

 

「予鈴鳴ったぞ。帰れ帰れ」

 

「分かってるわよ。じゃ、放課後ね」

 

「? オレは今日サッカー部行くから一緒に帰れないぞ」

 

 各部活動は今日から体験入部の期間だが、入部届自体の提出は昨日から受け付けている。來斗は昨日のうちに提出していた。入部届を提出した時点で、正式な部員となるためだ。

 

「サッカー部のマネージャーになるのよ。部活動紹介の時にいたキャプテンの人優しそうだったし。それじゃあね」

 

 即断即決。二つのムチで來斗の頬を叩きながら、踵を返して自分のクラスへと戻っていった。

 

「ねえ穂焔君。さっきの子、誰?」

 

内布(うちぶ)さん」

 

 來斗の顔の横からすっと覗き込んだのは、來斗と同じクラスの内布二夜(うちぶふたや)。垂れた獣の耳のようなアホ毛が特徴的な少女。パーソナルスペースが狭く、ここ数日で生徒達との距離感を縮め人気を集めている。特に男子では、來斗が頻繁に絡まれている。内布曰く、サッカー経験者同士仲良くできそうとの事。

 

「小学校入る前からの幼馴染。まー腐れ縁みたいな?」

 

「へぇ。ところでさ」

 

 猫のように滑らかな動き。するりと來斗の目の前に回り込んだ内布は、まっさらな入部届を來斗の机の上で見せびらかした。

 

「アタシも決めてないんだよね。部活」

 

「? ああ、ここ女子サッカー部ないもんな。どうするの? 運動全般得意って言ってたもんな。やっぱ運動部?」

 

「うーん。そのつもりだったけど」

 

 ふふっと消え入りそうな笑みが、内布の頭の中にだけ木霊する。

 

「ちょっと悩み中〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ⬛︎⬛︎⬛︎

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。來斗はホームルーム終了と同時に教室を駆け出し、いの一番にサッカー部の使用しているグラウンドの前へと到着した。名久里藍中学はグラウンドを二つ所有しており、一つは野球部や陸上部が使用し、授業でも使われえる第一グラウンド。そしてもう一つ。学校の裏口から出た先にある事実上サッカー部専用のこの第二グラウンドであった。

 

「専用グラウンド! スッゲー!」

 

 第一グラウンドに比べると狭いが、なんだか新しいような空気も感じる。

 

「失礼します!! 1年A組穂焔來斗! 入部希望です!」

 

 快活な挨拶とともにグラウンドのフェンスを開けて中へと入った。奥に見える部室らしき建物の前に4人の人影が見え、それに向かって駆け足で向かうと段々と声が聞こえてきた。

 

「おう。新入生じゃな?」

 

「やる気満々、しごきがいがあるなぁ!」

 

「ちょっと角威君、暴力はダメだよ!!」

 

「なぁに言ってんだ。かのイナズマイレブンでもそういった教育があったらしいじゃねえか。なあ日車?」

 

「ああそうだ。東京のダチが言ってたからな。間違いねえ」

 

「嘘だ! それはデマだ! 僕は認めないぞそんなこと!!」

 

 部室の前へと来た來斗を、この中で一番大柄な生徒が出迎えた。肩まで伸びた長髪と、大人と言われても違和感のない確固とした体格。

 

「拙者、獅子丸望叶(ししまるみか)と申す。ここにいるのは全員2年生じゃ。すまんが、3年生が来るまで待たれよ」

 

「僕は芦賀歩(あしがあゆむ)です。立って待つのもしんどいよね、部室の中で待ってて!」

 

 獅子丸の後ろから顔を出したのは、獅子丸とは真逆の体格の芦賀。目が隠れるほど伸びた前髪と、黒縁の眼鏡が特徴的。

 

「先輩方、ありがとうございます!」

 

 來斗は4人に頭をさげ、芦賀に連れられて部室へ入る。準備があるからと、芦賀は來斗を残して部室を出ていってしまった。

 部室は大きな机と10人程度が座れる椅子が周りに簡素に並べられえている。壁紙はグラウンド同様に新しい雰囲気を感じられる。ぐるりと一見してみると、過去のトロフィーや賞状が飾られていることに気付いた。どれも10年以上も前のものであるが、全て埃を被っておらず、大切に保管されていることが窺える。

 

「おぉスッゲ」

 

 來斗は噂では聞いたことがあった。過去の名久里藍中サッカー部はフットボールフロンティア全国大会常連であり、一時期は地区内最強と言われていたと。

 

「ホントだったんだねぃ。噂は」

 

 一息ついた時、部室の扉がガタガタっと開いた。

 

「穂焔君!」

 

「夾!」

 

 先日、不良に絡まれていたあの小金夾が部室へ入ってきた。廊下で挨拶することはあったが、時間のある時に会うのはあれ以来これが初だ。

 

「お〜? コイツが噂の?」

 

 小金の後ろから、巨人と形容しても良いような大柄の生徒が窮屈そうに扉をくぐって入ってくる。獅子丸よりも身長は高いが、少し細身の印象を受ける。鼻が高く、大人っぽい雰囲気も感じられる。

 

「そう。穂焔君、この子は安下那(あげな)ベガ君。日本とアメリカのハーフで、ボクとは小学校からの付き合い」

 

「おれっち、ベガ。よろしく〜」

 

「おう! 穂焔來斗だ。よろしくな、ベガ!」

 

「ういっ」

 

 ベガから差し出された手に快く返す來斗。確かにハーフというのならこの体格も納得だと、自分のものより二回り以上も大きい手に包まれた握手を見ながら実感した。

 

「サッカー上手いって? おれっち初心者だから、色々教えてくれよな〜」

 

「もちろん! 夾とはやってなかったのか?」

 

「あー、元々あんま興味なくて。でも一回だけ夾の試合観に行って、それで興味が湧いたんよな」

 

 そうして雑談をしていると再び扉が開き、知夏が合流してきた。

 

「なんで待ってないのよこのアホ來斗!! 刺すわよ!」

 

 知夏のツインテールムチ攻撃をスルーして、ベガは自己紹介を行う。知夏はベガの巨体に一瞬怖じけるも、すぐに切り替えてそれに返した。知夏とベガが自己紹介を終え雑談を再開しようとしたところで、更に再度扉が開いた。

 

「初めまして。新入生諸君。今日はここにいる4人と外にいる今来た1人、合わせて5人の体験入部です。自己紹介も含めて説明を行うので、外にお願いできるかな」

 

 そうして部室にいた4人は外へ出る。外に居るあと1人、という言葉に來斗は引っ掛かったが、その答えはすぐに分かった。

 

「やあ穂焔君」

 

「内布さん」

 

 予想していなかった人の登場に驚きを隠せず、話に行こうと傍に向かうがそれを中断するように、体験入部の始まりを告げられる。

 

「じゃあ揃ったね。これより、名久里藍中サッカー部の体験入部を始めます」

 

 

 

 

 

 

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