仮面ライダーヴァリアブル   作:puls9

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file13 ヴァリアブル・パワーアップ

遡る事少し前。ちょうどヴァリアブルがコボルトと戦闘を始めた頃。工場内では心護達D.A.T.Aのマルティプルワーカー部隊とアンビシャスとエフェクトが対峙していた。

 

「今日をお前達の命日にしてやろう」

<ビー!>

<バタフライ!>

 

アンビシャスとエフェクトがメモリアライズバッジを起動させ、シグナライザーへとセットする。途端に無数の蜂と蝶が彼らの周りを漂い始めた。

 

「「変身」」

<Burn up! ビー ・アンビシャス!!>

<Wake Up! バタフライ・エフェクト!!>

<<アーシリーコード、シグナライズ!>>

 

蜂と蝶が装甲となって纏わりつき、二人は仮面ライダーへと変わる。

 

「総員構え!」

<アンテックライフル!>

 

マルティプルワーカー達が一斉に銃を構える。だが、引き金が引かれるよりも早くアンビシャスのニードルが発射された。

 

「くっ!」

 

咄嗟にバックステップで回避する心護。しかし躱し損ねた者達はスタン状態に陥ってしまう。

 

「は~い。よそ見しない!」

 

隊員達に気を取られた心護の背後からエフェクトが飛び出してきた。手に持ったエフェクタールガンを発砲。弾丸は心護の背中へと着弾した。

 

「ぐあっ!!」

 

地面へ倒れた心護は苦悶の声を上げた。しかしすぐさま立ち上がるとワークライザーを操作する。

 

<アンテックバトン!>

<アンテックシールド!>

 

警棒と盾を構え、アンビシャスへと向かって行く。放たれたニードルをアンテックシールドで受け流し、アンテックバトンを勢い良く振り抜く。

 

「ちっ!」

 

体を捻り、攻撃を回避するアンビシャス。負けじと心護が追撃。アンビシャスの脇腹を捉えた。装甲が火花散り、後退る彼へさらなる一撃が振るわれる。

 

「させるかー!」

 

そこへ割って入ったのはエフェクト。二丁の拳銃を交差させてアンテックバトンを防ぐ。そして、羽を展開し、誘爆性の粒子を散布した。

 

「!?」

 

咄嗟に避けようとした心護。その肩にニードルが突き刺さる。見るとアンビシャスが手をこちらへ向けていた。たちまちスタン状態に陥り体が動かなくなる。

 

「しまった!」

 

無慈悲にもエフェクトが発砲。粒子が誘爆を繰り返し、心護を包み込む。

 

「うああああっ!!」

 

爆発が止み、煙が晴れるとそこには地面に倒れ伏す心護の姿。痛みを堪え立ち上がろうと体を動かす彼の背中をアンビシャスが踏みつける。

 

「ぐあっ!」

 

さらなる激痛が心護を襲う。その様子を見てアンビシャスは鼻で笑った。

 

「どうした? 所詮、人間ではこの程度か」

「て、てめぇ!」

 

顔だけを動かし、心護が睨む。その傍らを別のマルティプルワーカーが転がり変身が解ける。

 

「!?」

 

見ると隊員達がエフェクトに倒され、変身を解除されていた。残っているのは心護のみ。幸いにもまだ命は失われていない。それも時間の問題ではある。彼の額を嫌な汗が伝う。

 

「安心しろ。すぐに同じ場所に送ってやる。もっとも地獄があるならばの話だが」

「ふざけんな! 第一お前らはなんでそんなに人間を敵視する!」

 

心護の言葉にアンビシャスの動きが止まる。

 

「知っているからだ。お前達人間は他種族であれば平然と傷つけられる恐るべき生き物だと言う事をな」

「そんな事は無い! どうしてそう言い切れる!」

「俺のこの目はお前達人間によって失われた」

 

アンビシャスはそっと手を添えた。仮面の複眼にすら光が宿っていない左目へと。

 

「この苦しみを同胞達に味わせる訳にはいかない。あらゆる危険性を排除する必要がある」

「だから滅ぼすってのか?」

「そうだ。全てはエルフの平和と安寧の為に」

 

アンビシャスが心護を見据える。憎悪の籠もった瞳で。

 

「……だ」

「何?」

「何が平和と安寧の為だ!」

 

心護が勢い良く起き上がると拳を振るう。しかしアンビシャスはその攻撃を難なく避ける。だが心護は諦めない。何度もパンチを繰り出していく。

 

「その犠牲になるのはエルフと何の関わりのない人達だろうが!!」

「だが、いずれ我らを脅かす存在になり果てるだろう。それは歴史が証明している。少しでも可能性があるならば殺すのは当然だ」

「ならばお前がやっている事はお前が言う人間と同じ事だ! 他種族を平気で傷つけられる恐るべき生き物だ!!」

「っ……」

 

心護の言葉にエフェクトが動揺する。対照的にアンビシャスの纏うオーラが険しくなった。これまで以上に怒気を孕んでいる。

 

「これは正当なる報復だ。お前達と一緒にするな!」

 

激昂し、回し蹴りを繰り出す。心護は腕を交差させて防ぐと押し返す。バランスを崩したアンビシャスが後退る。

 

「戎さん!」

 

現れたのはヴァリアブル。丁度二人の激突を正面から目撃出来る位置だ。

 

「それはこっちの台詞だ! お前達のような悪と俺達と共に戦ってくれるトワル(彼女)を一緒にするな!!」

<アント!>

<ピースメイクスマッシュ!!>

 

心護がワークライザーを操作。右手にエネルギーが集約される。その拳を勢い良く振るった。

 

「一緒に戦ってくれる? お前達が利用しているだけだろうが!!」

<フィニッシュ!>

 

対するアンビシャスもシグナライザーを操作する。メモリアライズバッジのボタンを押すとレバーを下ろす。

そして、|再びレバーを素早く引き上げるともう一度下ろした《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。

 

「!?」

 

驚く心護。アンビシャスの右手にこれまで以上の凄まじいエネルギーが集っていく。そのエネルギーはまるで蜂の毒針のように鋭く形を作る。

 

<ビー!>

<シャットダウンシグナル・バースト!!>

 

振り抜かれた一撃は心護の拳を弾き飛ばし、その胸へと突き刺さった。

 

「ぐあああっ!!!」

 

装甲は砕け、心護が吹っ飛ぶ。そして、地面を転がり変身が解けた。

 

「戎さん!!」

 

ヴァリアブルが慌てて駆け寄る。倒れる心護の肩を支えながら呼びかける。

 

「大丈夫ですか!?」

「がはっ……。で、伝導と……トワル……か……」

 

喋る度に口から血が零れ落ちる。顔は青褪めていて危険な状態だ。

 

「すま……ない……。負けてしまっ……た……。後は、頼む……」

 

そう言い残し、心護が意識を手放した。ヴァリアブルはそっと地面に下ろすとゆっくりと立ち上がり、アーシリーコードを見据える。

 

「『お前達は絶対に許さない!!」』

 

仮面の奥で怒りの形相をしながらファイテングポーズを取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわわわ!? 心護! 皆!!」

 

D.A.T.A基地の会議室にて。通信越しに状況を見ていた玲が慌てふためいていた。

 

「落ち着いてください、玲さん」

 

後ろから声をかけたのは真名子。

 

「取り敢えず後発部隊を向かわせましょう。中の人達を救出させるんです」

「そ、そうだね! そうしよう!!」

 

玲は頷くとインカムより指示を飛ばす。やがて一段落付くと椅子に深くもたれかかる。

 

「ふぃー。取り敢えず、後は祈るだけかなぁ……」

「そうですね」

 

真名子がコーヒーの入ったカップを置く。

 

「それにしても大丈夫なの? さっきまで体調崩してたのに?」

「えぇ。もう大丈夫です。心配をおかけしました」

 

創斗達が作戦を開始した頃、真名子は不調を訴え、ベッドで寝ていたのだ。その為か今の彼女は寝起きで髪も乱れている。

 

「病み上がりに無理をするものではありませんね」

 

そう苦笑する真名子を見て玲も笑う。

 

「うん、そうだね。あたしも気を付けないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。ヴァリアブルがアーシリーコードと対峙していた。

 

「各員に告ぐ。動ける者は動けない者を背負いながら撤退してくれ。こいつらの相手はおれ達がする」

 

ヴァリアブルの指示に動ける隊員達は倒れている隊員達の肩を支えながら出口へと動き出す。

 

「そうはさせん」

 

ニードルを構えるアンビシャス。ヴァリアブルはそれを阻むべく攻撃を仕掛ける。ヴァリアブラスターで切りつけた。

 

「早く行け!」

 

アンビシャスを抑えながら檄を飛ばす。隊員達も動きを早くする。

 

「エフェクト!」

 

ならばとアンビシャスも指示を飛ばした。しかし、エフェクトの反応は鈍い。慌てて銃を構えた頃には隊員達は部屋を後にしていた。

 

「何をやっている!」

「ご、ごめん……」

 

完全な失態に彼女は俯く。アンビシャスは小さくため息を吐くと腕を動かし、ヴァリアブルの攻撃を振り払う。

 

「まぁ良い。こいつを倒せれば後は烏合の衆だ」

 

気を取り直してアンビシャスが拳を握り直す。エフェクトも自らの頬を叩いて気持ちを切り替える。

 

「トワル。行くぞ!」

『はい。ルート展開します!』

 

ヴァリアブルの視界に複数の道筋が現れる。右足を踏み込むと勢い良く前へ跳躍。一気に距離を詰めエフェクトの元へ。

 

「うわぁっ!?」

 

羽を広げ後方へ退くエフェクト。しかし一瞬だけこちらが早かった。ヴァリアブラスターが彼女の胸装甲に傷を付けた。火花を散らし苦悶の声を上げる。だが、彼女もただでは終わらない。羽から誘爆性の粒子を飛ばす。

 

「アンビシャス!」

 

エフェクトの呼びかけに無言で応える。ニードルが放たれ、粒子を射抜く。途端に爆発の連鎖が起きた。

 

<下から放つアンブロッカブル!地面を進むモール!!>

<メモリアライズ! バッチグー!>

 

爆発が晴れると地面から飛び出してきたのはヴァリアブル モール。その鉤爪がアンビシャスを襲う。

 

「くっ……」

 

既の所で横っ飛び。攻撃をギリギリで躱した。

 

『まだまだです! ソート!!』

「了解!」

<ホーク!>

<空から決めろアタック! 獲物を狙うホーク!!>

<メモリアライズ! バッチグー!>

 

すかさずヴァリアブル ホークへと形態を変え、飛行する。ヴァリアブラスターをガンモードへと変形させると銃撃を食らわせた。

 

「舐めるなよ」

 

アンビシャスの背中から蜂を模した羽が展開する。

 

「!? まさか!」

 

次の行動を察したヴァリアブル。予想通りアンビシャスが飛んだ。銃撃を躱しながら徐々に近づいてくる。

 

『ソート、後ろ!』

「よそ見は厳禁だよ!!」

 

背後から声がする。エフェクトもまた羽を広げて接近していた。激しく動揺するヴァリアブル。彼らの足にニードルが突き刺さった。スタンが発動して墜落が始まる。

 

「まずい!」

 

エフェクタールガンからマズルフラッシュ。銃弾の雨が降り注ぐ。両手で頭の直撃を回避するが、腹部に衝撃が奔る。アンビシャスの拳が炸裂したのだ。

 

「ぐあっ!!」

 

空中でぶっ飛ばされるヴァリアブル。メモリアライズバッジをスパイダーに戻すと進行方向へ蜘蛛の巣を発射する。幾重にも重なった蜘蛛の巣が勢いを殺していくがそれでも足りなかった。蜘蛛の巣が全て破れ、ヴァリアブルが壁に激突する。その拍子に三つのメモリアライズバッジが地面に散らばった。倒れ伏すヴァリアブル。そんな彼を見ながら着地を決めたアンビシャスは散らばったメモリアライズバッジを遠くへと蹴り払う。

 

「貴様の強みはバッジの切り替えによる多彩な戦術。これで詰みだ」

 

アンビシャスがニードルを向ける。そこに一切の油断は無い。

 

「詰み……か……」

 

ヴァリアブルが体を起こす。途端に放たれるニードル。その攻撃を天井のパイプへ伸ばした糸を巻き取る事で回避した。そのまま積み上がった廃材の上に着地する。

 

「トワル、切り札を使うぞ」

『ソート? ……分かりました』

 

正直に言うと創斗に使う気は一切合切も無かった。コボルトとの戦闘でさえそれっぽい事を言って誤魔化したくらいだ。実戦形式の戦闘どころかテストプレイすら終わっていない代物。しかも相手はアーシリーコードの仮面ライダー達。ぶっつけ本番で使うのはリスクが大きい。

でも。彼の言葉を聞いてしまった。トワルの正体を明かした時から心の中で抱いていた懸念点。彼女の事を恐れ、密かに嫌悪されているんじゃないかという心配事。後方にいる玲達とは違い、前線に立つ者達から受け入れられているのかと言う不安。

だが、彼は、戎 心護というD.A.T.Aの隊長がその全てを打ち破ってくれた。そして、自分達に後を託してくれたのだ。ならば、こんな所で負けるわけにはいかない。

ヴァリアブルはパワーアップスイッチを取り出した。

 

「何だそれは?」

「パワーアップアイテムだよ。文字通りな!」

 

ベルトからスパイダーメモリアライズバッジを外すとパワーアップスイッチのスロットに接続。そして、グリップ上部の赤いボタンを押した。

 

<スパイダー! パワーアップ!!>

 

すかさずヴァリアブルドライバーにセット。これまでと違う待機音声が流れ出す。

 

<パワーアップ・ローディング! パワーアップ・ローディング!>

 

装甲が外れ蜘蛛の形に戻ると、ヴァリアブルの背後にもう一つ小さな設計図が出現して小さな蜘蛛の姿を象る。二匹の蜘蛛はヴァリアブルの周りを踊るように動く。

 

<世界を守るライダー! 我らを繋げるスパイダー!!>

<メモリアライズ! スーパー・バッチグー!!>

 

グリップを握り押し込む。途端に二匹の蜘蛛がバラバラになり、混ざり合い結合しながら黒のアンダースーツのほとんどが見えなくなる程びっしりと纏わりついた。これこそがヴァリアブルの新たな姿。仮面ライダーヴァリアブル スーパースパイダー。

 

「『たった今、勝利の道は繋がった!!」』

 

ヴァリアブルが跳躍。二人目掛けて飛び降りる。

だが、二人も黙ってはいない。ニードルと弾丸を発射して迎撃する。放たれた攻撃は寸分違わずヴァリアブルの元へ。しかし、その攻撃は当たらない。手から放った糸を利用した空中移動でニードルと弾丸を躱した。そしてそのままアンビシャスの背後へ頭から落ちてくる。

 

「ハァッ!」

「チィ!」

 

ヴァリアブラスターとガントレットがぶつかり合い、金属音を響かせる。宙に浮いている分ヴァリアブルが不利か。忽ちバランスが崩れ、地面へと落ちていく。すかさず狙いを定めるアンビシャスとエフェクト。しかし、二人の予想は裏切られた。

 

「「!?」」

 

足のくるぶしに取り付けられた発射口から糸が放たれ、ヴァリアブルは空中で静止する。そのまま糸を巻き取り上昇するとヴァリアブラスターで射撃。弾丸がエフェクトの手に当たり、彼女は片方の銃を取り落としてしまう。

 

「しまっ!?」

 

そこへヴァリアブルが再び降下。ブレードに切り替えて振り下ろす。バックステップで飛び退くエフェクト。その瞬間、彼らは狙いを変えた。左手から放った糸を巻き取りアンビシャスを斬りつける。

 

「くっ!!」

 

何とかガードをするアンビシャス。仮面の奥の彼の表情は険しい。

 

(だがこれで挟み撃ちだ)

 

アンビシャスの目の前には空中にいるヴァリアブルとその背後からこちらへ向けて駆けるエフェクトが見える。

 

『ソート。後ろから来てます!』

「おう!」

 

片足を後方へ向けると蜘蛛の巣が発射された。蜘蛛の巣はエフェクトを包み込み、動きを阻害する。ヴァリアブルはその勢いのまま彼女を飛び越えると糸でさらに巻きつけながら着地。そしてその場で回転を始めた。連動してエフェクトも回転する。

 

「あらよっと!!」

 

ハンマー投げの要領で投げ飛ばす。エフェクトが一直線にアンビシャスの元へ飛んでいく。予想通りならアンビシャスは避けない。仲間思いであるのなら。

 

「ぐうっ……!」

 

アンビシャスはエフェクトを受け止めた。勢いを完全には殺しきれずそのまま二人は地面を転がる。その隙にヴァリアブルはベルトを操作する。

 

<アクセス! 倍プッシュ!!>

 

二人を見つめ、ヴァリアブルはグリップを押し込んだ。そして空高くジャンプ。空中で大の字になると錐揉み回転しながら手足から蜘蛛の巣を発射していく。そのうちの一つに着地するとさらに跳躍。二人へ攻撃をしながら蜘蛛の巣から蜘蛛の巣へと飛び移っていく。

 

「うわっ!?」

「くっ!」

 

その攻撃はスパイダー形態の時と似ている。その際の攻撃は横からの攻撃に限定されていた。だが今の形態は違う。手だけでなく足からも蜘蛛の巣を発射出来るようになった結果、より立体的な攻撃が可能になったのだ。横だけでなく縦からの攻撃が加わり、より鋭く苛烈になる。

 

「エフェクト合わせろ!」

「分かった!」

<フィニッシュ!>

 

ヴァリアブルの猛攻に耐えながら二人がベルトを操作。真正面から蹴りを繰り出すヴァリアブルへ同時に拳を振り抜いた。

 

<バタフライ!>

<ビー!>

<<シャットダウンシグナル!!>>

 

ヴァリアブルのキックと二人のパンチが激突する。衝撃波が周囲に広がる中、両者一歩も譲らない。だが、性能とここまでに付いたスピードがヴァリアブルの背中を押す。エフェクトとアンビシャスが徐々に押され、そして二つの拳が弾き飛ばされた。

 

<スパイダー!>

<スーパーヴァリアビリティストライク!!>

 

ヴァリアブルの一撃が二人の胴を捉え、吹っ飛ばす。壁を破壊して工場の外へと投げ出され、ヴァリアブルの視界から消えた。ヴァリアブルは綺麗な着地を決めた。

 

『反応はまだあります。追いましょう!』

「おう!」

 

その時だ。ブシューと音を立てパワーアップスイッチから煙が上がる。なんなら焦げ臭い匂いも立ち込めてきた。

 

『!? 大変ですパワーアップスイッチが!!』

「あー、これはあれか……。予想以上の負荷でオーバーヒートしたな」

 

ヴァリアブルがパワーアップスイッチに触れる。高温に発熱したそれはスーツ越しにでも熱かった。

 

「あ、あっつ!?!!」

 

慌てて手を離し、素っ頓狂な声を上げる。慌てふためいてまるで奇妙な踊りをしているかのように右往左往し始めた。

 

『ちょ!? ソート大丈夫ですか!?』

「無理無理無理!! どうしよう外せないかも……」

『水! 水で冷やしましょう!!』

「馬鹿! 耐水機能もまだテストして無いんだぞ。壊れたらどうする!」

『そんな事言ってる場合ですか! 爆発したらわたし死ぬんですよ!!』

「待てよ! 糸で手を包めば熱く無いんじゃねえか?」

『それです! さっそく試しましょう!!』

 

この後何とか無事に外す事に成功した。だが、その頃にはアーシリーコードの二人の反応は消えた後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工場の裏手に広がる広大な森の中を二つの人影が一つになって歩いていた。エフェクトとアンビシャスだ。互いの肩を支えながら這々の体で歩みを進めている。

 

「くっ……。ヴァリアブルめ……!」

 

苦虫を噛み潰したような表情のアンビシャス。そんな彼を横目にエフェクトは工場での言葉が頭の中でリフレインしていた。

 

「ならばお前がやっている事はお前が言う人間と同じ事だ! 他種族を平気で傷つけられる恐るべき生き物だ!!」

「お前達のような悪と俺達と共に戦ってくれるトワル(彼女)を一緒にするな!!」

 

この言葉が頭を離れない。思い返す度に胸がキュッと締め付けられる。浮かぶのはあの日のアンビシャスの顔とあの日の錬児の顔。

 

「ワタシは……どうしたら……」

 

彼女は今、岐路にいる。

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