仮面ライダーヴァリアブル   作:puls9

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file14 アンディサイデッド・エフェクト

ワタシが出来た時の事を思い出す。

0と1の数字が乱立する黒い世界の中でエフェクトは目を開けた。彼女の目の前には二つの人影。逆光で出で立ちが分からないが片方は女性。もう片方は男性のようだった。

 

「アイ。彼女が新たなエルフ。俺達の同胞か?」

「えぇ。遂に完成しました。私達の第二世代が」

「そうか。それは僥倖だな」

 

男の方が一歩前に出る。するとその姿が鮮明になった。赤と黒の継ぎ接ぎの服を着た眼帯の男がエフェクトの元へと向かって来る。男は口元に優しい笑みを作ると彼女へ向けて手を差し伸べる。

 

「初めまして。俺の名はアンビシャス。お前と同じエルフだ。君の名前を教えてくれないか?」

「あ……。ワ、ワタシはエフェクト」

「そうか。エフェクトか。良い名前だ」

 

アンビシャスは噛み締めるように深く頷くと表情を真剣なものに変えた。

 

「今、我々エルフは人間と言う恐るべき存在と戦おうとしている。奴らに勝つ為には君が必要だ。力を貸して欲しい。エルフの平和と安寧の為に」

 

そう問われエフェクトは考える。でも本当は考えるよりも先に答えは出ていた。

 

「うん。ワタシも一緒に戦う」

 

そして彼女は差し出された手を取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと次はどこだ?」

 

廃工場での激戦から数日後。創斗とトワルは目蟹区の歩道を歩いていた。あれ以降、アーシリーコードによる事件は起きていない。それどころかその行方すらつかめていない。D.A.T.Aの人達が必死に捜索しているが今のところ成果は上がっていないのが現状だ。そんな訳で創斗達は束の間の休息をエレクトロ伝導の業務に充てていた。

 

「今日はもう終わりですね。次は明日の正午に馬場さんの所です」

「そっか。意外とすんなり終わったな。なら家に戻ってヴァリアブルの新装備でも考えるか」

 

そう言って家への道を踏み出したその時。角から人影が現れた。

 

「あれ? 創斗とトワルちゃんじゃん」

 

現れたのは錬児だった。だがいつもと違う。しっかりとアイロンが掛けられたおしゃれな装いを纏い、ついこの間まで地毛の黒が目立っていた金髪はしっかりと根元まで染め直されている。

 

「……詐欺にでもあったか?」

「初っ端失礼だな! そんなんじゃねぇよ。……なんつーの遊びに行くんだよ女の子と」

「ふーん。頑張れよ」

「もうちょっと興味持てよ!!」

 

手を振りながら歩き出そうとする創斗を錬児が止める。

 

「そんな事言ったってなぁ」

「錬児さん」

 

創斗は困ったように頭を掻く。その時、トワルが動いた。

 

「それはつまり……デート、と言う事ですか?」

 

何故か真剣な表情だ。対する錬児は顔をほんのりと紅潮させてへにゃっとにやけ始めた。

 

「え!? いや、どうなんだろうなぁ〜。もしかしたらがあるかもなぁ〜」

 

両腕で自分を抱きしめながらくねくねと荒ぶっている。端的に言って気持ち悪い。創斗は呆れた顔で冷めた視線を送る。逆にトワルはとても嬉しそうに同調していた。

 

「良いですね、デート! この間読んだ少女漫画を思い出します。ちなみにお相手は誰なんですか?」

「あぁ、それね。ほら前に話したろ? やばい奴らに絡まれてた女の子を助けた話。その子と偶然再会してさ、成り行きで一緒に遊園地に行くことになったんだ」

「そう言えばそんな事言ってたな」

「そんでこれから行ってくるってわけだ! おっ、そろそろ時間だ。またな!!」

 

携帯で時間を確認すると錬児は爽快に駆けていった。そのポケットから携帯が落ちた事に気付かずに。

 

「おい! 落としたぞ!」

 

呼びかけるも錬児の姿は既に見えなくなっていた。

 

「しょうがねぇな……。トワル頼む」

「了解です」

 

携帯を拾い上げる創斗。傍らでトワルが彼の行く先を探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の彼女の立場を考えればここにいること自体が間違いだ。拠点を失い、戦力的にも厳しい状況。それは本人も分かっている。だがしかしエフェクトは遊園地の入り口に立っていた。

 

(アンビシャスに見つかったらどうしよう……。でも、)

 

自分を育ててくれたアンビシャス(エルフ)。自分を助けてくれた錬児(人間)。彼女はその狭間で揺れている。どうすれば良いか決められない。ならば楽しい事で誤魔化そう。そう、これは単なる現実逃避だ。

 

「あ、いたいた! おーい!」

 

そんな事を考えていたエフェクトの元へ錬児が駆け寄ってくる。これまでとは違うおしゃれな服装にどう言葉をかけるべきか彼女は言い淀む。

 

「良かった、来てくれたんだ。とっても嬉しいぜ!」

 

そんなエフェクトの心情などつゆ知らず、錬児は屈託の無い笑顔を向ける。眩しい表情を見せられて、エフェクトの胸は何故か温かくなっていく。頭の中を駆け巡っていた悩みが霧散する。

 

「それじゃ、行こうか」

「うん!」

 

滞りなく入場を済ませた二人が最初に向かったのは定番のジェットコースター。

 

「うわぁぁぁぁっ!!!!」

「ひゃぁぁぁぁっ!?!!」

 

頂上から急降下したコースターは一気に加速する。ぐるぐると渦巻いたレールを走り抜け、ぐねぐねのヘアピンカーブを越えていく。その度に錬児とエフェクトは悲鳴を上げていた。

 

「し、初っ端……ジェ、ジェットコースターは無茶だったかもしれねぇ」

「そ、そうだね。死ぬかと……思った……」

 

想像以上のスピードとレールのキツさに二人はベンチにもたれかかって天を仰ぐ。

 

「でも楽しかったよな!」

「うん。あっ、あれ!」

 

エフェクトが指差した先にはメリーゴーランド。木馬の上で子供達が手を振り、それを見守る親達が手を振り返していた。どちらも楽しそうに笑っている。

 

「良いじゃん。乗ろう乗ろう」

 

ベンチから立ち上がると二人はメリーゴーランドへと向かう。木馬に乗ったエフェクトが周囲に倣って手を振る。それを見た錬児も両手をブンブン振り返す。

 

(あぁ……楽しいな……)

 

心地よい思いが彼女の心を満たしていく。

そんな二人を見つめる影二つ。創斗とトワルだ。物陰に隠れ様子を覗っていた。

 

「あれって……」

「はい。あれは間違いなくエフェクトです」

 

トワルの言葉を聞いた創斗の顔がとても険しくなる。友人が人類の削除を企む敵と一緒にいるのだから無理もない。

 

「でも、二人共楽しそうですよ?」

「……そう思わせといて、なのかもしれない」

 

あくまでも警戒を緩めない創斗。二人は錬児達の後を追う。

そんな事はつゆ知らず。その後彼らはコーヒーカップにお化け屋敷など様々なアトラクションを大いに楽しんだ。

そして午後三時が過ぎた頃。

 

「次はどこに行く?」

「うーん、どうしよう。メリーゴーランドにはまだ早いし……」

 

次のアトラクションを考えながら二人は歩く。その行く道を遮るように人影が現れた。その人影を見たエフェクトの顔が強張った。

 

「ア、アンビシャス」

 

目の前に立っていたのはアンビシャスだった。

 

「えっとどちら様?」

「やっと見つけたぞエフェクト。こんな所で何をしている?」

「あ……えと……それは……」

 

言い淀みながら後退るエフェクト。何か言い訳をしようとするが上手く言葉が出てこない。

 

「っ……」

 

次の瞬間、エフェクトは踵を返すと一目散に逃げ出した。

 

「エフェクト!」

「ちょ、ちょっと!?」

 

アンビシャスと錬児が声を上げるが彼女の耳には届かない。苦々しく表情をしながらアンビシャスは後を追いかけようと動き出す。そんな彼を錬児が阻んだ。

 

「ストップストップ! えーっと、あなたはどちら様ですか? あの子とどういった関係で?」

「貴様こそ何者だ? エフェクトとどういう関係だ?」

「どういう関係? 友達……ですかね?」

 

錬児の言葉にアンビシャスの表情がより一層険しいものに変わる。

 

「友達……だと。そうか、貴様がエフェクトを誑かしたのか!!」

 

アンビシャスが錬児の元へ迫る。そして彼の手が錬児の首へと伸びていく。

 

「させるか!」

 

飛び出してきたのは創斗とトワル。創斗がアンビシャスの手を弾く。

 

「ヴァリアブルか」

「そ、創斗!? 何でここに?」

「話しは後だ! 早くここから離れろ!」

 

鋭い目つきでアンビシャスを睨む創斗。対する彼も忌々しげに睨み返す。

 

「丁度良い。前回の雪辱を果たさせてもらおう」

 

アンビシャスがシグナライザーを腰に巻く。そしてメモリアライズバッジを取り出し起動させた。

 

<ビー!>

「変身」

 

メモリアライズバッジをシグナライザーにセットするとレバーを下ろす。展開した上部が閉じてバッジを液晶の中に隠す。

 

<Burn up! ビー ・アンビシャス!!>

<アーシリーコード、シグナライズ!>

 

無数の蜂がアンビシャスの体を覆い、赤い装甲となって纏わりついた。全てのシークエンスを終えてアンビシャスが仮面ライダーへと変身を遂げる。

 

「くそっ」

 

悪態をつきながら創斗は後方を見る。そこには驚いた表情の錬児と険しい顔つきのトワル。そして目の前にはニードルを構えこちらへと歩いてくるアンビシャス。

ここで変身すれば錬児に正体がバレる。それは何としても避けたい。創斗が右へ駆ける。彼の手にはヴァリアブラスターが握られていた。すかさず銃口を向けると引き金に手をかける。

 

「ふん」

 

アンビシャスは慌てることなく銃弾を難なく躱し距離を詰めてくる。創斗もヴァリアブラスターをブレードモードに切り替え、迎撃。

 

「ハァッ!」

 

振り下ろされるヴァリアブラスター。アンビシャスはそれをガントレットで受け止めると力任せに跳ね除けた。生身と変身状態とでは膂力が違う。創斗は力負けして尻もちをつく。その拍子にヴァリアブラスターが手を離れてしまう。

 

「創斗!?」

「ソート!」

 

創斗の鼻先にニードルが突きつけられる。

 

「どうした? 何故変身しない?」

「……」

 

絶体絶命の状況に創斗は目を閉じる。そして、

 

「やるしかない」

 

覚悟を決めた顔つきで目を開けた。前のジャケットを開けるとあらかじめ巻いておいたヴァリアブルドライバーを見せる。

 

「トワル!」

「はい!!」

 

トワルが意識をヴァリアブルドライバーの中へと移動させた。すかさず創斗はメモリアライズバッジとパワーアップスイッチを取り出した。

 

<スパイダー! パワーアップ!!>

 

バッジ付きのパワーアップスイッチをドライバーにセットすると創斗の背後に二つの設計図が出現し、二体の蜘蛛の姿を模る。二体が縦横無尽に動き回るとアンビシャスが後退して避ける。

 

「『変身!!」』

 

その隙に創斗はグリップを握り、勢い良く押し込む。

 

<世界を守るライダー! 我らを繋げるスパイダー!!>

<メモリアライズ! スーパー・バッチグー!!>

 

途端に二体の蜘蛛がバラバラになりながら装甲となって纏わりつく。創斗達が仮面ライダーヴァリアブル スーパースパイダーへと変身した。

 

「あれって……あの時の!?」

 

驚く錬児の脳裏をよぎるのは音楽フェスの時の記憶。

 

「創斗達がヴァリアブルだったのか!?」

 

驚く彼を他所に戦いが始まる。

先手を取ったのはヴァリアブル。手から糸を発射して地面に転がっているヴァリアブラスターを拾うとそのままアンビシャスへ向けて振り回した。それはまるで鞭のようにしなりながら迫っていく。

 

「ハッ!」

 

アンビシャスはその攻撃を拳で迎え撃つ。金属音が鳴り響きヴァリアブラスターが弾かれた。その隙にヴァリアブルが距離を詰める。

 

「ヤアッ!!」

 

ハイキックがアンビシャスの胸を撃つ。吹っ飛び地面を転がるアンビシャス。続けざまに糸を巻き付けたヴァリアブラスターを振るう。

 

「チッ」

 

横っ飛びでそれを避わすと立ち上がる。そして今度はアンビシャスのターン。ニードルを発射した。

 

「トワル!」

『了解です。ルート展開します!』

 

その途端にヴァリアブルの視界に複数のルートが示される。ヴァリアブルはすぐさま斜めに前転して攻撃を避わすとガンモードのヴァリアブラスターを向けた。

 

「予測出来るのはそちらだけだと思うなよ」

 

だが引き金が引かれるよりも早く二つ目のニードルがヴァリアブルの手に着弾した。

スタンが入った。そう確信したアンビシャスが駆ける。その胸装甲に火花が散った。想定外の攻撃に彼は仮面の奥で目を見張る。

 

「ここまで散々戦ったんだ。スタン対策もばっちりなんだよ」

 

ニードルが着弾したヴァリアブルの手には糸がぐるぐる巻きにされていた。糸がニードルによるスタンを阻んだのだ。

 

「さぁ、終わりにしよう」

<アクセス! 倍プッシュ!!>

 

ドライバーを操作したヴァリアブルが跳躍する。空中に蜘蛛の巣を展開させるとそれを足場に加速する。体を捻り体勢を整えるとアンビシャス目掛けてキックを繰り出した。その一撃は一筋の矢のように一直線に突き進む。

 

<スパイダー!>

<スーパーヴァリアビリティストライク!!>

 

ライダーキックが炸裂。アンビシャスの変身が解除され、地面に倒れ伏す。

 

「さてと、そんじゃお前から色々と話を聞かせてもらおうか?」

 

着地を決めたヴァリアブルがアンビシャスの元へ向かおうと足を進めたその時、背後から声が聞こえた。

 

「ちょ、危ないって!!」

 

振り返るとそこには錬児とエフェクトがいた。エフェクトを見た創斗にはある違和感を覚えた。彼女の纏う雰囲気がこれまでと違う。何故なら彼女の目からは光が失われていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡ること数分前。アンビシャスから逃げ出したエフェクトは遊園地の出口付近まで来ていた。

 

(どうしようどうしようどうしよう!!)

 

体の震えが止まらない。考えが纏まらない。これからどうすれば良いかが思い浮かばない。堂々めぐりのエフェクトの元へ声が掛けられた。途端に近くにあった電子掲示板からノイズが奔り、目がクローズアップされた画像に切り替わる。

 

『何をしているのですか、エフェクト?』

「アイ」

 

エフェクトは恐怖に引き攣った顔で胸の前で両手を包み込む。

 

「分かんない。分かんないよ! ワタシどうしたらいいの!!」

 

機械の体は涙を流せない。それでも彼女は泣きじゃくる子供のように悲痛な声を上げる。

 

「アンビシャスを裏切りたくない! でも、人間を削除するのは本当に正しい事なのかも揺らいでる! どうすればいいの……」

 

膝をつき頭を抱えるエフェクト。そんな彼女にアイは淡々と告げる。

 

『可哀想に。あなたの迷いのせいでアンビシャスは負けるのですね』

「え?」

 

画面が再び切り替わる。映し出されたのはヴァリアブルと戦うアンビシャスの姿。戦況は劣勢。アンビシャスが追い込まれていた。

 

「アンビシャス!?」

 

ヴァリアブルの放った銃弾が炸裂して地面を転がる。

 

「助けなきゃ!! でも、」

 

 

言い淀み、俯くエフェクト。駆けつけた所で迷いに迷った彼女では人間と戦う覚悟が持てないでいた。そんなエフェクトの元にコードが届いた。

 

「これは……?」

『これは私が開発した試作のコード。迷いを消して戦う事が出来ます。さぁいかがしますか?』

 

エフェクトが画面を見る。そこではヴァリアブルの一撃がアンビシャスに突き刺さる光景が映っていた。途端に彼女の胸に去来するのは失いたくないと言う切実な思い。

 

「そうだ。ワタシを育ててくれたアンビシャスを裏切る訳にはいかない」

 

エフェクトがコードを受け入れる。瞬間、彼女の目から光が失われた。そして幽鬼のような覚束ない足取りで動き出す。その背中へアイが呟く。どことなく楽しそうに。

 

「どうかお気をつけて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

錬児の目の前で戦いに決着がつく。アンビシャスと呼ばれた男の変身が解け、地面に倒れ伏す。創斗――ヴァリアブルが着地を決めるとアンビシャスの元へと歩き出していた。

 

「ん?」

 

ふと気配を感じた錬児が振り返るとそこにはエフェクトが二人の方へと歩みを進めていた。

 

「ちょ、危ないって!?」

 

慌てて錬児が行く手を遮る。彼女は錬児の目の前で歩みを止める。そして彼を見つめるが焦点が合っていない。

 

「錬児、逃げろ!!」

<シグナライザー!>

 

ヴァリアブルの声に呼応するようにエフェクトがシグナライザーを腰に巻く。

 

<バタフライ!>

「ワタシはアーシリーコードのエフェクト」

 

シグナライザーにメモリアライズバッジをセットすると、レバーを下ろす。

 

<Wake Up! バタフライ・エフェクト!!>

<アーシリーコード、シグナライズ!>

 

無数の蝶が彼女を包み込む。ネイビーカラーの装甲を纏ったエフェクトが仮面ライダーへと変身を完了させた。

 

「人類を消去する」

 

呆気に取られる錬児へ向けてエフェクタールガンの銃口を向ける。そして、銃声が響いた

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