仮面ライダーヴァリアブル   作:puls9

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file18 ラボラトリー・ダークサイド

祭波市手國区。祭波市の北西部に位置する場所にある区画には市最大の施設、祭波科学センターが存在する。その建物の中に創斗達はいた。

 

「ハロー、みんな! 祭波科学センターへ、ようこそ! ここは科学都市のドキドキ・ワクワクが詰まったスペシャルな場所! 当館のAIとロボットがみんなを待っている! さあ、未来の扉を一緒に開けちゃおう!」

 

館内に入るとそんな明るくポップなアナウンスが流れてきた。

祭波科学センターは三階建ての建物で一階が人工知能AIを紹介するエリアとなっていて、ホログラムの中で様々な動物を模したAIが飛び交っている。因みに二階はロボットを紹介するエリアでお掃除ロボットから給仕ロボット等がある。

 

「いつ来てもやっぱここは凄いな」

 

周囲を見渡しながら創斗は感嘆の声を上げる。

彼がここを訪れたのは今日で5回目。幸運な事に毎回訪れる頃には施設の展示内容が更新されている為、いつ来ても新鮮な気持ちで楽しむ事が出来ている。

 

「そう言ってもらえると誘った甲斐があったよ」

 

創斗の言葉に嬉しそうに微笑むのは玲。隣を歩く心護はとても珍しそうにキョロキョロしていた。それもそのはず。なぜなら彼は、

 

「ここが科学センターか。初めて来たな」

「祭波市に住んでてここに来た事無い方が逆に珍しいと思うけどね」

 

心護はもっぱらそういったものに興味が無かった。問題無く使えさえすればそれでいいと思っているからだ。必要なら事前に頭に入れておくし、自分の手に余るならばその手のエキスパートに任せる。そういった割り切りが彼なりの誠意なのだ。

 

「イラッシャイマセ。ヨウコソ、トウカンヘ」

「出ましたね無人可動型ロボット!」

 

現れた施設案内役のロボット。迎え撃つのは謎のポーズで威嚇するトワル。

 

(相変わらず何やんてんだこいつは……)

 

毎度の事ながら何故かロボットに対抗意識を持っている。謎である。呆れた顔で創斗は苦笑した。

 

「それにしても。まさか夢崎さんが科学センターの館長と知り合いだったなんて驚きました」

「へへへ、まぁね」

 

玲は照れくさそうに鼻を人差し指で擦る。

今回、四人がこの施設を訪れたのは玲の一言が発端だった。具体的には、

 

「みんな! 一緒に科学センター行かない? 昔の友達がそこの館長してて呼ばれたんだ! どうせならみんなで行こうよ!!」

 

特に断る理由が無かった創斗とトワル。そして無理矢理連れてこられた心護を伴って来たという訳だ。

 

「やぁ。久しぶりだね、玲」

 

四人の前にやって来たのは白衣を来た細身の男。気さくに笑いながら手を振っている。

 

「久しぶり! 元気だった、卯川(うかわ)くん」

 

卯川と呼んだ男を見て、玲が駆け寄る。いつも浮かべている笑みがいっそう深まっていた。

 

「皆、改めて紹介するね。こちら卯川 高行(たかゆき)。この科学センターの館長で学生時代のあたしの友達」

「初めまして」

 

玲の紹介を受けて高行がお辞儀をする。

 

「そしてこっちがアタシが所属するD.A.T.Aの仲間達。隊長の心護、外部アドバイザーの創斗くんとトワルちゃん」

「どうも」

「初めまして」

「科学センターの館長と知り合えてとても嬉しいです!」

 

心護、トワル、創斗が順に挨拶を返した。

 

「そうなんだね、ありがとう。取り敢えず上に行こうか」

 

高行によれば科学センターの最上階はスタッフ達の休憩スペースや機材のメンテナンス等を行えるスペースがあるらしい。そんな最上階の一画には彼の所有するラボがあり、その場所に四人は案内された。

 

「まぁ、入ってよ」

「お邪魔します!!」

 

いの一番に入っていったのは玲。続いて創斗。二人はラボの中を見て目を輝かせる。周囲には様々な試作品と無数のトロフィーがが置かれていた。

 

「あ! これ、懐かしい」

 

玲が見つけたのは兎を模したロボット。所々へこみや傷がついているが定期的に埃等が拭き取られているのだろう。他の試作品と比べても保存状態がとても良い。

 

「それは?」

「これはね、学生時代にアタシと卯川くんとで作ったロボット。いや~、懐かしいねぇ~」

 

玲はロボットを手に取ると電源を入れてみる。ロボットは駆動音を鳴らしながら彼女の手を離れ床を飛び跳ねる。そんなロボットの動きを見ながら昔の事を思い出し儚く微笑む。

 

「あの頃はまだ未熟だったなぁ。アイディアだけは湧いくるけど、実際には上手く作動してくれなかったもんね。でも卯川くんのおかげで理想通りに動かせるようになった」

「そんな事無いよ。俺に出来たのはちょっと配置を変えたりするぐらいさ。せいぜい玲の功績に一枚噛むのがやっとだよ。……それよりこれを見てくれないか?」

 

あまり触れたくない話題なのだろう。話を変え、高行はテーブルに一枚の設計図を置く。

 

「今日、玲を誘ったのは他でもない。この人型ロボットを開発する為のアドバイスが欲しいからなんだ」

 

設計図には人型のシルエットが書き記され、所々に数字や英語等が書き連なっている。

 

「なるほど! そういう事なら、」

 

玲が創斗の背を押して、高行の前に移動させた。

 

「アタシより創斗くんが適任だね」

「……あ〜。まあ、そうなり……ますか、ね……?」

「実はこのトワルちゃんは彼が作った人型ロボットなんだよ」

「何だって、本当かい!?」

 

高行が創斗に詰め寄る。急に距離が縮まった事で

 

「取り敢えずデータは出せますよ?」

「ぜひ参考にさせてくれ!!」

 

こうして創斗達は高行の人型ロボット製作に携わる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。河川敷の奥。錬児は茂みをかき分けて広い場所に出る。そこは不法投棄されたゴミの山が置かれた場所。山の上にゴシックドレスの少女が横たわっている。エフェクトだ。彼女の体はボロボロで手を動かすのもやっとの有り様だ。足は破損しており、立つこともままならない。顔も左目に縦の亀裂が入っている。

 

「お~い。持ってきたぜ、モバイルバッテリー!」

 

錬児は彼女の近寄るとモバイルバッテリーを取り出して手渡す。エフェクトはそれを受け取るとぎこちなく手を動かして端子を体に挿す。エルフの食事は電気をエネルギーとして取り入れ活動する。電気を発生させるモバイルバッテリーはエルフに取って非常食として重宝されるのだ。

 

「……何で助けるの? ワタシはアーシリーコードのエルフ。人類の敵だよ?」

 

エフェクトが錬児を見る。かつて彼女は錬児に刃を向けた。彼もその事を理解しているが故か複雑な表情を浮かべている。

 

「えーっと……。前に、エフェクトちゃんに助けて貰ったからかな?」

「その前にワタシが助けて貰ったんだけど……」

「あれ? そうだっけ?」

「そうだよ! 何で覚えてないの?」

「あははは……」

 

ジト目で睨むエフェクト。錬児は誤魔化すように大げさに笑う。

 

「でもさ。だったらやっぱり助けるよ。本当に悪い奴なら助けて貰った事なんて覚えてない筈だし」

「それは……」

「理屈とか関係ない。オレがエフェクトちゃんを助けたいから助けるんだ。ただそれだけだよ」

 

そう言って錬児は屈託の無い笑顔を向ける。その笑顔があまりにも眩しくてエフェクトは無言で目を逸らしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、また来週!!」

 

玲が手を振る。人型ロボット製作開始から数時間後。創斗達四人は科学センターを後にする。

 

「楽しかったですね」

「だな。科学センターの裏側も見れたし、館長さんの製作にも携われたし大満足だ」

「なぁ、俺必要だったか? ずっと見てただけだったぞ?」

 

トワル、創斗、心護が順に言葉を述べる。満足げな創斗とトワルとは対照的に心護は何とも言えない顔をしている。

 

「あ! ごめん忘れ物した。取ってくるね!!」

 

玲が踵を返し、科学センターへと走っていく。

 

「こちらがトワルのボディデータです」

 

ラボの中。高行が差し出したUSBを受け取ったのはマントを羽織り王冠を被った男、アクロ。彼は懐から別のUSBを取り出し、手渡す。

 

「ありがとうございます。これでまだやっていける!」

 

高行は縋るように大事にUSBを両手で包み込む。

 

「アーシリーコード万歳!!」

 

そして歓喜の声を上げた。

 

「どう言う……事?」

 

背後から声が聞こえた。高行が振り返るとそこには玲がいる。大きく目を見開き、呆然としていた。

 

「玲。何でここに?」

「忘れ物を取りに。じゃなくて! アーシリーコードって……卯川くん。どう言う事なの?」

 

彼女の問いただしに高行の顔つきが変わる。冷めた眼差しで玲を睨む。

 

「どうもこうも見た通りさ」

「何で!?」

「玲。君には分からないだろうね。0から1を生み出す事の出来る君には」

「え?」

 

高行が手に持ったUSBを握りしめる。

 

「俺は大学を卒業してから、科学センターに務める傍らで世界を驚かせる発明をしようと勤しんだ。けれど上手くいかなかった。その時気付いたんだ。俺には物を作る才能が無いってね」

「そんな事!」

「あったんだよ!!」

 

玲の言葉を遮って激昂。その大声に玲はびくりと肩を震わせた。

 

「思い返せばいつもそうだった! 誰かの発明を改良する事は出来ても。自分が同じように画期的な発明をする事は出来なかった。そのまま数年もの間燻っていた。そんな時だ」

 

高行がアクロの方を見る。高行は昏い笑みを浮かべる。

 

「アーシリーコードに誘われたんだ。自分達のアイディアを提供する代わりに望む物の開発に協力して欲しいってね。それからは嘘みたいに順風満帆な日々だ!」

 

感極まって両手を広げ、恭しいリアクションを取る高行。その様子に玲は思わず後ずさってしまう。

 

「多くの賞を取って、館長の地位にすら登り詰める事が出来た。だからさ。分かるだろ、玲?」

 

高行が一歩足を踏み出す。

 

「俺はもうアーシリーコード無しじゃ駄目なんだよ。だから、死んでくれ」

 

二人の距離が縮まる。高行の手が玲の首を絞めた。

 

「がっ……はあ……」

 

首元が圧迫され、貴重な酸素が漏れる。彼の手を退かそうとするも男女の差は厳しい。渾身の力を込めてもびくともしない。

 

「う……うぅ……」

 

意識が徐々に遠のいていく。

 

「させるか!!」

 

飛び出してきた人影が高行にタックルを決める。途端に首の圧迫感から解放され、玲はへたり込んだ。

 

「夢崎、大丈夫か?」

「なん……とか……ゲホッゲホッ」

 

玲を庇うように前に立つのは心護。中々戻ってこない彼女を訝しみ追いかけてきたのだ。

 

「ちっ。邪魔が入ったか」

 

悪態をつきながら高行は懐からモッドライザーMarkⅡを取り出し、腰に巻いた。

 

<モッドライザーMarkⅡ!>

「!?」

 

驚く心護をよそに、メモリアライズバッジを起動させる。

 

<ラビット!>

「電令」

 

バッジをモッドライザーMarkⅡにセット。ベルトを操作する。現れた兎がバラバラに分割されて纏わりつく。

 

<ハック! クラック! バーサーク!!>

<アーシリーコード:ラビット! アップロード!!>

 

紫色のアンダースーツ。その上に装甲を纏い、両腕にはチェンソーが合体している。狂気を露わにした兎の怪人、ラビット・モッドMarkⅡが殺意を向ける。

 

「なるほどな。お前もアーシリーコードって訳か」

<キマイライザー!>

<レオ!>

 

全てを察した心護がキマイライザーを巻く。続け様にメモリアライズバッジを起動させ、ベルトに取り付けた。

 

「変身!!」

<覇王! 魔王! 百獣の王!!>

<データベース:レオ! ガオー!!>

 

金色の装甲を纏い、心護が変身を果たす。マルティプルがファイティングポーズを取って対峙する。

 

「ハァッ!」

 

先手を取ったのはラビット・モッドMarkⅡ。地面を蹴り跳躍すると距離を詰めた。そのままチェンソーを振り回して攻撃。マルティプルが壁を破壊して外へと吹っ飛ぶ。だが、ただでは転ばない。

 

<キマイライズ・レオ、スネーク! ブレスト&レフトアーム!!>

 

左腕に装着された鞭でラビット・モッドMarkⅡを絡め取ると共に外へと消えていく。

 

「ぐっ!」

「コノ! 死ネ!!」

 

両者が降り立ったのは駐車場。着地と同時に腕を振るう。鞭とチェンソーがぶつかり合い、激しい音を響かせる。

 

「戎さん!」

 

その時。騒ぎを聞きつけ創斗達が到着した。

 

「トワル。行くぞ!」

「はい!」

 

トワルからヴァリアブルドライバーを外し、創斗が腰に巻きつける。

 

<スパイダー! パワーアップ!!>

「『変身!!」』

<世界を守るライダー! 我らを繋げるスパイダー!!>

<メモリアライズ! スーパー・バッチグー!>

 

すぐさまメモリアライズバッジを起動させ、ベルトを操作。二人はヴァリアブルへと変身した。

 

『ルートを展開します』

「ああ、頼む」

 

駆け出すとマルティプルとラビット・モッドMarkⅡとの戦いに参戦。横からラビット・モッドMarkⅡを蹴り飛ばす。

 

「グアッ!?」

 

もろに喰らい、ラビット・モッドMarkⅡが地面を転がった。彼が起き上がるとヴァリアブルとマルティプルが並び立ち、臨戦体勢が完了している。そして二人が同時に駆ける。左右から回り込み挟み撃ち。

 

「コノォ!!」

 

ラビット・モッドMarkⅡも負けてはいない。チェンソーを振り回し近づかせないように立ち回る。だが、向こうが一枚上手。二人が攻撃を掻い潜り同時にパンチ。続けてキック。見事なコンビネーションでラビット・モッドMarkⅡにダメージを入れていく。

 

「これでトドメだ」

 

その時。ライダーとモッド。両者の間に割って入る人影が。マントを羽織った王冠の男。アクロがラビット・モッドMarkⅡを守るように立つ。

 

「誰だ、お前は?」

『!? ソート、彼はエルフです!』

 

スキャンを終えたトワルが言う。彼の体は機械で出来ていた。

 

「アーシリーコード、第四のメンバー……」

 

アクロがバックルを取り出す。それは従来の物から少し変化したシグナライザー。バッジを覆う液晶の部分がクリアヴァイオレットに変わり、ノイズを思わせる装飾が縁取っている。彼は無言でそれを巻く。

 

<シグナライザーMarkⅡ!>

 

続けて取り出したのは、クリアブラックのメモリアライズバッジ。蝙蝠のレリーフが刻まれている。それをベルトにセット。途端に、アクロの周囲を無数の蝙蝠が舞う。

 

<バット!>

「……変身」

 

ベルトを操作して厳かにアクロが言う。

 

<Skill up! Show down! アクロ・バット!!>

<アーシリーコード、アップグレード!!>

 

黒に紫色のラインが入ったアンダースーツの上に無数の蝙蝠が装甲となって装着される。そして、蝙蝠の羽を思わせる双剣を携えると真っ赤な複眼が爛々と輝く。

 

「余の……名は……アクロ。アーシリーコードに……仕えし……エルフ……。全てはアイの……為に……」

 

武器を構え。漆黒の戦士、仮面ライダーアクロが動き出した。

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