仮面ライダーヴァリアブル   作:puls9

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file2 チェイス・トゥ・ザ・フューチャー

鳴り響く金属音。激しくぶつかり合うのは蜘蛛の戦士、仮面ライダーヴァリアブルと蟷螂の怪人、マンティス・モッド。マンティス・モッドの鎌を軽快に躱し、ヴァリアブルはベルトを操作。周囲に張り巡らせた蜘蛛の巣を飛び移りながら連続攻撃。そして、

 

<スパイダー!>

<ヴァリアビリティストライク!!>

 

必殺のライダーキックが炸裂。マンティス・モッドが爆発した。倒れるスーツ姿の男性。バイクに乗ったヴァリアブルがその場を後にする。そこで動画が止まった。

 

「以上が付近の監視カメラから入手した映像です」

 

暗かった会議室の照明が灯される。スクリーンの横に青年が立っていた。紺色のビジネススーツに身を包んだ青年、戎 心護(じゅう しんご)が視線を向ける。そこには所々に白髪を交えた壮年の男性、平 和明(たいら かずあき)が厳かに座っている。

 

「なるほど。怪人になったと思われる男性の容体はどうなっているかね?」

「はい。近くの病院に搬送しましたが命に別状は無いようです。今朝方意識を取り戻しました。……ただ、これまで(・・・・)と同様に記憶が曖昧で事情聴取には時間がかかりそうです」

「そうか。あの仮面の戦士の方はどうだ?」

「それなんですが。途中までは監視カメラに映っていたのですが。故障なのか一部のカメラに映像が映っておらず、そこから先の行方は知れません」

 

心護が悔しげに唇を噛む。正義感の強い彼にとって敵か味方か分からない存在が野放しになっている現状は耐え難いものなのだ。

 

「お待たせしました〜!」

 

その時、勢い良く扉が開いた。心護と和明が振り返る。そこには息を切らした少女が扉を支えにして立っていた。丸眼鏡をかけダボダボの白衣を着たその姿は研究者と呼ぶに相応しい出で立ちだ。とはいえ髪は鳥の巣のようにぼさぼさで、白衣もよれよれのシワだらけ。本人のガサツさが如実に表れていた。

 

「遅いぞ、夢崎! 会議はとっくに始まってるんだぞ!」

 

心護が少女に怒号を飛ばす。しかし、彼女は悪びれるでもなく片手で謝意を示しながら近づいてくる。

 

「ごめんごめん。重大な発見をしたからそれで許してよ〜。ね、心護?」

「……重大な発見とは何かな? 夢崎技術顧問」

 

和明が聞き返す。

 

「それはですね。驚かないで聞いてくださいよ」

 

和明の方を見ながら少女、夢崎 礼(ゆめざき れい)は口元に笑みを浮かべる。そして、USBを取り出すとパソコンに差し込んだ。スクリーンの映像が切り替わる。映し出されたのは弾丸のデータ。

 

「この仮面の戦士が使っていた銃弾なんですけど。これまでアタシ達を助けてくれたあの銃弾と一致したんです」

「なんだと!?」

 

心護が目を剥いて驚く。

祭波市に初めて怪人が出現したのはおよそ半年前。市内の警察官達が応戦するも歯が立たず、多くの被害が出た。この事態を重く見た政府はこの街にある組織を設立した。

Delete Action Trial Attacker。略してD.A.T.Aと呼ばれる治安維持部隊だ。平 和明を長官に据え、技術顧問に夢崎 礼、そして実働部隊隊長に戎 心護が就いた。

その初陣は散々たるものだった。D.A.T.Aの最新装備であっても怪人に決定打を与えられなかったのだから。泥沼の消耗戦。次々と倒れていく仲間達。心護も死を覚悟したその時。どこからともなく発射された弾丸が怪人を撃ち抜いたのだ。それ以降も怪人が現れてはD.A.T.Aが対応し、どこからともなく発射された弾丸がとどめを刺すという事態が続いていた。混乱を避けるべく表向きはD.A.T.Aが怪人を倒したとして公表しているが実際の所は全くの偽りなのだ。

勿論、希望達も指をくわえて黙っている訳では無い。事態を打開するべく日々修練に励み、研究を重ねている。それでも中々思うような成果を上げられていないのが実情だ。

 

「これまでとどめを刺したやつと仮面の戦士が同一人物なら何故今更になって姿を現した?」

「さぁ? それは本人に聞いてみた方が手っ取り早いんじゃない?」

 

心護の問いかけに礼は肩をすくめた。

 

「いずれにせよ仮面の戦士が敵か味方かはっきりさせる必要はある。戎隊長。もし現場にて機会があれば接触を試みてほしい」

「……了解しました。平長官」

「では。これにて定例会議を終了する」

 

和明は立ち上がるや否や会議室を後にした。心護と礼は敬礼しながらそれを見送る。

 

「複雑な顔してるね、心護」

 

近寄ってきた礼が心護の顔を覗き込む。何が面白いのかニヤニヤと笑っている。対称的に心護の顔は険しくなる。

 

「当たり前だ。結局のところ、俺達は何一つ成せていない。力が欲しい。皆を守れるような力が」

 

拳を握りしめる心護。礼はかけていた丸眼鏡を直すと背を向けた。

 

「じゃあ、アタシももっと頑張りますかー!」

 

うーん、と伸びをすると歩き出す。

 

「心護が皆を守れるように新しい武装を作っとくよ」

 

ニヤニヤとした顔つきのまま手を振って去っていく。それを見届けると心護も覚悟を決めた表情で歩き始めた。

 

「さて、訓練でもするか」

 

そのまま会議室から出ていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「こんちゃっす! エレクトロ伝導でーす!」

 

インターホンを鳴らし、創斗が声をかける。そんな彼をトワルが咎めた。

 

「挨拶はちゃんとしてください」

「ちゃんと言ったつもりなんだが……」

「全然言えてませんよ……」

 

トワルがジト目で創斗を睨む。このまま目を合わせていては説教が始まってしまう。創斗は慌てて目を逸らした。

二人は今、とある民家の玄関前にいた。表札には馬場と書かれている。

 

「いらっしゃい、創ちゃん!」

 

扉を開けて年配の女性が姿を現した。柔和な笑みを浮かべて創斗達を歓迎する彼女の名は馬場 鈴花(ばば すずか)。この家の主にしてエレクトロ伝導の常連さんの一人だ。

創斗達のいる祭波市目蟹区は祭波市が科学都市として名を馳せる以前から暮らしている人の多い区画である。住んでいる人々の多くが高齢者。その為、機械の扱いに不慣れな者も多い。そこで創斗達、エレクトロ伝導の出番だ。壊れた機械の修理や点検等を現地に赴いて行う。今ではこの地区にとって欠かせない存在となっているのだ。

 

「お久しぶりです。馬場さん」

「創ちゃんも元気そうで良かったわ。勿論、トワルちゃんもね」

 

茶目っ気たっぷりにウインクをする鈴花。トワルはすまいを正す。

 

「ありがとうございます。今日はどういったご用件でしょうか?」

「それがねぇ。昨日から洗濯機の調子がおかしくて。お願い出来る?」

「任せてください! 必ずやわたしとソートとで完璧に仕上げてみせましょう!!」

 

トワルが胸を叩きながら言う。これが人間であったならば鼻息荒くして意気込んでいるのだろう。だがあいにくトワルの体は金属製なのでそのような事にはならないのだけれど。

その時、鈴花の後ろから人影が現れた。現れたのは創斗より少し下の年代くらいの少年。長い前髪から切れ長の目が覗いている。服装は紺色のジャージで手には網に包まれたサッカーボールを持っていた。

 

「あら? 出かけるの圭介(けいすけ)ちゃん?」

「……」

 

圭介と呼ばれた少年は鈴花の言葉に答えず創斗とトワルの間を強引に抜けていく。そして、傍に置かれていた自転車に跨るとさっさとでていってしまった。

 

「ごめんなさいね、二人共。うちの孫が」

「あぁ、いえ」

 

申し訳なさそうに謝罪する鈴花。それに対し創斗は手で制して気にしていない事をアピールした。

 

「何か怒らせるような事をしてしまったのでしょうか?」

 

口元に手を当てトワルは眉を寄せる。

 

「違うのよ。娘の旦那さんが大怪我しちゃってね。経済的にも人手的にも大変って事でうちに帰ってきたの。でも圭介ちゃん、向こうで約束してたみたいで」

「約束?」

「そうなの。圭介ちゃん、向こうの方で友達と全国大会に出るんだ!って張り切ってたそうなの。それなのに突然こっちに引っ越す事になっちゃったから、気持ちの整理が出来ていないのよ」

「そうなんですね」

 

頬に手を当て暗い表情をする鈴花。トワルも心配そうな顔で見つめている。

 

「ごめんなさいね、暗い話を聞かせちゃって。さて! それじゃあ気を取り直して、洗濯機の修理お願いしようかしら」

 

パンッと手を叩き、鈴花が明るい声で言う。そして、二人を家の中へと招いた。

 

「おじゃまします」

 

トワルが続く。

 

「約束……ねぇ……」

 

創斗は後ろを振り返る。しかし、そこに馬場 圭介の姿は当然見えない。軽くため息を吐く。そして、気を取り直すと創斗は家の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

馬場 圭介は何度目か分からないため息を吐く。自転車を押しながら当てもなく歩いている。ぼんやりと流れる街の風景は彼の心を苛立たせるものばかりだった。

 

「何で俺ばっかり……」

 

思わず呟いてしまう。

圭介は前の街でずっとサッカーをしていた。そして友人達と約束したのだ。必ず全国に出て、日本一になろう、と。でもその約束を果たす事は出来なくなった。父が大怪我を負ったからだ。その結果、歩くのもままならない状況になってしまった。だから引っ越す。理由は分かる。家計や母にかかる負担が大きいし自分にはどうしようもないのだから。だがそれでも、納得出来ないという感情が腹の底に溜まり、うまく消化出来ないでいた。

ピロンッ、と唐突に電子音が鳴った。黄昏れていた意識が現実に引き戻される。おそらく携帯にメールでも入ったのだろう。とは言え見る気にもなれず無視する。すると再び電子音が鳴る。今度は電話の着信だった。

 

「なんだよいったい……」

 

イライラを募らせながら携帯を取り出す。すると画面にノイズが走った。

 

『ハロー! おはよう! こんばんは! みんな大好き、エフェクちゃんねるの時間だよ〜!!』

 

画面の向こう。数字が不規則に漂う黒い世界で快活な声と共にエフェクトが決めポーズを取る。

 

『ワタシはエフェクト。アーシリーコードのエフェクト。そして、迷える蛹を羽化させるデジタルアドバイザー。よろしくね、馬場 圭介クン♪』

 

不敵に笑うエフェクト。圭介は冷や汗をかいて慄いた。

 

「デジタルアドバイザー?」

『そうそう、デジタルアドバイザー。だからキミの事も知ってるよ。約束を果たせなくなって〜いじけてるのも』

「っ!?」

 

図星を突かれ圭介は苦い表情を浮かべる。

 

『でもそれはキミのせいじゃないよね? 悪いのは周り。キミの気持ちに気付けないでいた人達のせい』

「俺は……悪くない……」

『そう。だからさぁ。我慢はやめようよ。そこにある力で鬱憤を晴らしちゃおうZE☆』

 

エフェクトがいたずらっぽく笑って指を指す。指し示す場所、電柱の足元にトランクケースが置かれていた。圭介は恐る恐るケースを開ける。中にはモッドライザーと馬のレリーフが刻まれたクリアブラウンのメモリアライズバッジ。

 

『さぁ、張り切っていってみよう!!』

<モッドライザー!>

 

圭介がモッドライザーを腰に巻く。

 

<ホース!>

 

ホースメモリアライズバッジをモッドライザーにセット。全身が黒いアンダースーツに包まれ、ベルトから伸びたチューブが頭に接続される。そして背後からエネルギー状の馬が出現。前足をあげ、嘶きのポーズを取った。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

『でんれ〜い!!』

 

悲鳴をあげる圭介。そんな彼の状況を見ながら楽しげにエフェクトが宣言した。

 

<ハック! クラック! バーサーク!!>

<アーシリーコード:ホース! ダウンロード!!>

 

背後の馬が分割され圭介の体に貼り付く。ブラウンのラインの入った銀色の装甲を纏った怪人、ホース・モッドへと変貌を遂げた。

 

「ソウダ! ヤクソクヲハタセナイナラ! コンナマチ、ブッコワシテヤル!!」

 

ホース・モッドが足に力を込める。瞬間、アスファルトに亀裂が奔り、姿が消える。否、凄まじいスピードで祭波市の街を爆走し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ〜。終わった終わった……」

 

嬉しい事に洗濯機の修理は滞りなく終わった。その帰り道。肩をぐりぐりと回しながら創斗は歩く。彼の隣にはトワルが並んでいる。

 

「さぁ、お店に戻りましょうか」

「……それなんだけどよ、トワル。馬場 圭介を探してくれないか?」

「気になるんですか?」

 

質問に質問が返された。彼女は真っすぐに創斗を見つめる。

 

「まぁな。おれも約束を果たせなくなった側だし……」

 

創斗が俯いた。彼の言葉にトワルにも思うところがあり、表情を暗くする。

 

「ソウスケとの約束……ですか?」

「あぁ」

 

伝導 想助(そうすけ)。今は亡き、創斗の父。彼はエンジニアだった。自らの手で設立した研究機関で日夜研究に励み、人々の役に立つ発明を多く手掛けていた。そんな父の影響か創斗もまた見様見真似で何かを作っては想助に見せていた。いつか父さんをあっと驚かせる発明をする。それが幼き日、創斗が父と交わした約束だったのだ。しかしそれは想助の死をもって永遠に叶わなくなってしまった。

 

「だからってわけじゃないけど。やっぱ放っておけなくてさ」

「ふふ。分かりました。探してみましょう」

 

そう言ってトワルが目を探索しようとしたその時だ。背後の方で轟音が上がった。創斗とトワルが振り返ると道路標識の看板が空高く飛んでいるのが見える。

 

「ソート! 伏せて!!」

 

トワルが創斗を押し倒す。目を白黒させる創斗。彼らの脇を何かが物凄いスピードで通過する。その威力は凄まじく、衝撃でガードレールが宙を舞っていた。

 

「なんだ今の!?」

「っ……あれは……怪人です!」

「マジか!?」

「はい。マジです!」

 

トワルは機械の体だ。目にはカメラ機能が付いている。故に見間違いはないだろう。ならばやる事は一つだ。

 

「トワル!」

 

創斗は慌てて立ち上がるとトワルを連れて物陰へ向かう。

 

<ヴァリアブルドライバー!>

 

彼女の腰からヴァリアブルドライバーを外すと自分の腰に巻き付ける。とたんにトワルの目から輝きが消えた。

 

<スパイダー!>

 

メモリアライズバッジのスイッチを押し、ドライバーに取り付ける。背後から現れた設計図が蜘蛛の姿を形成した。

 

<スタートアップ・ローディング! スタートアップ・ローディング!>

「『変身!!」』

 

創斗とトワルの声が重なる。グリップを勢い良く押し込み、バッジがドライバーの真ん中へ移動した。

 

<世界を守るライダー! 我らを繋げるスパイダー!!>

<メモリアライズ! バッチグー!>

 

そして、蜘蛛の力を宿した仮面の戦士、ヴァリアブルへと変身を遂げた。どこからかエンジン音を響かせ、丁度いいタイミングで無人のヴァリアルストライカーがやって来た。トワルが遠隔操作で呼んで来てくれたのだ。ヴァリアブルはヴァリアルストライカーに跨るとアクセルを踏む。

 

「行くぞ、トワル!」

『えぇ。行きましょう!』

 

ヴァリアブルが追跡を開始した。

 

 

 

 

 

 

「アハハハハ!! コワレロ、コワレロ!!」

『はい、進行方向右に修正! 対向車来るよ。ぶっ飛ばせ〜!!』

 

アスファルトをズタズタにしながら本能のままに疾走するホース・モッド。唯一理性的な所と言えば、そんな彼に出される指示を聞くくらいのもの。目の前の車という車を弾き飛ばしながら進む。背後よりクラクションが鳴った。複数の黒いバンが出現し、ホース・モッドに追従する。その内の一台の窓が開く。身を乗り出し拡声器で叫ぶのは心護。

 

「治安維持部隊D.A.T.Aだ! そこの怪人、速やかに止まれ!!」

 

そう言われて大人しく止まる馬鹿はいない。ホース・モッドは足を止め、振り返ると、勢い良く足を振り回した。

 

「!? 避けろ!!」

 

心護の乗ったバンが急ハンドルを切って避わす。そのまま路肩に激突して急停止。そして、共に走っていたもう一台はホース・モッドの一撃を諸に食らい横転。破裂音と共に黒煙が上がった。

 

「ハハハ! ザマァミロ!!」

 

高笑いするとホース・モッドが再び走り出す。その時、エンジン音を響かせ、一台のバイクが横転したバンを飛び越しながら現れた。

 

「あれは!?」

 

心護が目を見開く。現れたのはヴァリアブル。車道に散らばった瓦礫を軽快に避けてホース・モッドへと迫る。

 

『来たな、ヴァリアブル!』

 

忌々しげにエフェクトが言う。

 

「なぁ、トワル。一つ確認しておきたい事があるだけどよ」

『なんでしょうか?』

「あの速度の状態で攻撃したらさ、中身は無事だと思うか?」

『難しい所ですね。向こうの装甲がどの程度かは不明ですし……』

 

今のホース・モッドの時速は60Kmを優に超えている。その状態で攻撃を食らわせたら攻撃のダメージにプラスして速度分のダメージが加わってしまう。その場合、変身者の命を保証出来ない可能性が高い。

 

「なら、どうにかして足を止める必要があるわけか……」

 

逡巡の後にヴァリアブルはスピードを上げ、ホース・モッドと並走する。

 

「おいおい。随分とノロマなんだな? 遅すぎてあくびが出るぜ。」

「ハ?」

『はぁ?』

「追いつけるもんならやってみな。まぁ、無理だと思うけどな」

 

鼻で笑いながらヴァリアブルは挑発すると、さらに加速してホース・モッドを追い越した。

 

『ねぇ? スピードもっと上げられるよね?』

「アタリマエダ! シッカリナビゲートシロ!」

「『アノヤロウ。ブッコロシテヤル(あの野郎。ぶっ殺してやる)!!」』

 

エフェクトとホース・モッドの心が一つになった。スピードを上げ、ヴァリアブルを追いかける。

 

「くそっ!」

 

視界の先でヴァリアブルとホース・モッドが消えていく。居ても立ってもいられず心護はバンから飛び出すと彼らを追って駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

公道を走るヴァリアブルの背後からホース・モッドが迫る。彼が駆ける度にアスファルトが破壊され轟音が響く。その大きな音はプレッシャーとなってヴァリアブルの、創斗の心に圧をかけてくる。仮面の奥で冷や汗が頬を伝う。

 

『ソート落ち着いて。大丈夫です。このペースを維持すればそう簡単には追いつかれません』

「あぁ、分かってる」

『目的地は既に検索済みです。最短ルートを表示します』

 

複眼に無数のデータが展開される。それに従い、ヴァリアルストライカーを操作するヴァリアブル。道が進むにつれて徐々に人通りが少なくなってくる。

そして、

 

「着いた!」

 

目的地に辿り着いた。場所は祭波市郊外付近の去年潰れたショッピングモールの駐車場。ここならば周囲を気にする事無く戦える。

 

「ミツケタゾ!!」

 

ヴァリアブルがバイクから降りるとタイミング良くホース・モッドも到着した。戦闘態勢を整え、ヴァリアブルが一歩、また一歩と距離を詰める。

 

「センテヒッショウ!!」

 

ホース・モッドが最速で懐へ潜り込んだ。強烈な膝蹴りが炸裂。ヴァリアブルの体がくの字に曲がる。

 

「オラァ!」

 

そこに追撃。回し蹴りがヴァリアブルの側頭部を捉えるはずだった。ヴァリアブルの体ががくりと真下に移動。ホース・モッドの蹴りが空を切った。

 

「!?」

 

見ると地面に置かれたヴァリアブルの左手から糸がで繋がっていた。

 

「巻き取りが間に合って良かったぜ」

 

すぐさまヴァリアブラスターを引き抜くと銃口をホース・モッドの胸元へと押し当てる。そして引き金を引く。

 

「ガハッ!」

 

銃弾がヒット。ホース・モッドが吹っ飛んだ。

 

「クソガッ! オトナシクヤラレロ! コッチハ、ハヤクコノマチヲハカイシタインダヨ!!」

「破壊? そんな事をして何になる?」

 

よろよろと起き上がったホース・モッドが怨嗟の声を上げる。その言葉にヴァリアブルは訝しんだ。

 

「コンナマチガアルカラ、オレハヤクソクヲハタセナクナッタンダ! ナラゼンブコワスノハトウゼンダロ!」

「約束? まさかお前、馬場 圭介なのか……!?」

「ダッタラナンダ! オマエニハカンケイナイダロ!!」

 

激昂し、モッドライザーを操作。

 

<ホース!>

<セキュリティブレイク!!>

 

エネルギーを足に宿して、ホース・モッドが縦横無尽に駆ける。

 

「あるさ。負けられない理由が増えたからな」

<ブレードモード!>

<アクセス!>

 

対するヴァリアブルはヴァリアブラスターを変形させるとメモリアライズバッジをセット。迎撃の姿勢を取る。

 

『ソート。来ます!』

「オラァ!!」

 

ヴァリアブルの死角からホース・モッドが必殺のボレーキックを放つ。だが、その一撃をヴァリアブルはするりと躱した。そして、刀身をホース・モッドに突きつける。

 

「『たった今、勝利の道は繋がった!!」』

『ちぇ〜。ま〜た負けかぁ〜』

 

負けを悟ったエフェクトがホース・モッドの中から気配を消した。それと同時にヴァリアブルがトリガーを引く。

 

<スパイダー!>

<ヴァリアビリティスラッシュ!!>

 

ヴァリアブラスターよりエネルギーが放出。渾身の力を込めて斬る。

 

「ギャアアアアアアッ!!!?!」

 

悲鳴を上げ、ホース・モッドが爆発した。爆風が晴れると地面に倒れる圭介の姿。

 

「あぁっ……ちくしょう……」

 

悔しげに顔を顰める彼にヴァリアブルが声をかける。

 

「なぁ。約束ってさ、別に一つじゃなくていいんじゃないか?」

「えっ……?」

「一つ果たせなくなったからってそこで終わるなよ。まだ生きてるんだから、その……なんだ? また新しい約束でもすればいいんじゃないか?」

 

ヴァリアブルが照れくさそうにそっぽを向く。これは自分の体験談だ。父との約束を果たせなくなった時、トワルと約束したのだ。父の仇を討つと。

 

「はは……そうか……そんな方法も……あったのか……」

 

上手くは言えなかったが思いは伝わったのだろう。圭介は憑き物の落ちた晴れやかな顔で笑うと気を失った。それを見届けるとヴァリアブルはバイクへ向けて歩き出す。

 

「待て!」

 

振り返るとそこには心護がいた。荒い息を整えながらヴァリアブルを真っすぐ見つめている。

 

「俺はD.A.T.A実働部隊隊長、戎 心護。お前は何者だ!」

「……ヴァリアブル。仮面ライダーヴァリアブル」

 

それだけを言うとヴァリアルストライカーに跨った。

 

「ヴァリアブル……」

 

呟く心護を尻目にアクセルを踏み込む。

 

「あっ、おい!?」

「そいつの事、頼んだぜ」

 

そう言いながらその場を後にした。すぐに追いかけたいところだが、そうもいかない。心護は倒れている圭介に近寄ると脈を測る。生きているのを確認するとすぐさま救急車を呼ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

後日。エレクトロ伝導の店内にて。創斗は机に向き合い、作業をしていた。その横にコーヒーの入ったマグカップが置かれる。見るとトワルが微笑んでいる。

 

「さっき外で馬場さんと会ったのですが。圭介くん、新しい約束をしたそうです。罪を償い終えたら、今度は全国の舞台で戦おうって」

「そっか。それは良かった」

 

創斗は口元に笑みを作る。そして、マグカップを持ち上げると口をつける。

 

「ところでソートは何を作ってるんですか?」

 

トワルが机を覗き込む。

 

「新しいメモリアライズバッジ。バリエーションは多い方が便利だからな」

 

机の上には工具やネジ等、そしてメモリアライズバッジのパーツが置かれていた。

 

「さてと、作業再開といきますか」

 

創斗はマグカップを置くと再び机に向き合うのだった。

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