『という訳でして。ヴァリアブルの仲間を人質に取ることに成功しました!』
「……そうですか。よくやりましたね」
意気揚々と語るのは恰幅の良いあの男。彼の言葉を聞きているのはアイ。タブレットの越しに通信を受け取ったのが幸いした。彼にアイの表情は見えないのだから。今の彼女はとても軽蔑した表情を浮かべている。
『えぇ! そうでしょうとも! そこで佇んでるだけの者よりわたしの方が役に立ちますよ!!』
そんなアイの様子を知らないが故に恰幅の良い男は得意気に一層笑みを深くする。彼はアイの入ったタブレットを持っている毒島に一瞬だけ視線を合わせると嘲りの色を見せた。
「……」
毒島の眉がぴくりと動く。
「そうですか。では引き続き頑張って下さいね」
『はい! お任せ下さい!!』
その言葉を最後に通信が切れる。室内は嵐が過ぎ去ったかのように静まり返った。
「まったく……余計な事をしますね。……毒島」
アイが小さくため息を吐くと毒島を呼ぶ。その声はとても低い。聞いた者の背筋を震え上がらせる程に冷たい。
「お前に命令を与えます」
「なんなりと」
「一部始終を見ておいて下さい。もし作戦が失敗したならば判断は貴方に任せます」
「かしこまりました」
アイの言葉を聞いた毒島が恭しくお辞儀する。彼が出ていくとアイはぽつりと呟いた。
「それにしても。あの男、誰でしたっけ?」
「お前は……」
「エフェクト……」
河川敷の茂みの中。不法投棄されたゴミ山に倒れていたのはボロボロのゴシックドレスを着た少女、エフェクト。彼女の目に光は無く、暗い眼差しでこちらを見ていた。
「あ~あ、見つかっちゃったか。……いいよ。もう生きてる理由も無いし、さっさと殺しなよ」
投げやりな声でそう答えるとエフェクトは目を伏せて上を向く。完全に自暴自棄になっているようだった。
「動けないのか?」
「そーだよ」
「なら後回しだ。一刻も早く錬児を助けないといけないからな」
「え? 錬児が……?」
踵を返し始めた創斗をエフェクトが呼び止めた。ついさっきまでの態度とはうって変わって彼女は真剣な顔をしている。
「待って! どういう事?」
「今さっき拐われたんだよ。お前達アーシリーコードにな」
「!?」
エフェクトが起き上がろうと体を動かす。しかし体の大半が破損している以上起き上がれるはずもなく、弾みでゴミ山から転げ落ちた。地面にぶつかった拍子に手足が軋み、ひび割れがさらに進行する。
「ぐっ……」
苦虫を噛みつぶしたような表情で彼女は地べたを這いずり動き出す。
「エフェクト。どこへ行くつもりですか?」
「決まってるでしょ。錬児の所! 場所は分かんないけど」
土で服が汚れるのも厭わずに這い進むエフェクト。
「行ってどうする?」
「……それは」
創斗の問いに動きが止まる。地面を見つめながら考え込む。
「……わかんない。わかんない……けど、助けに行かなきゃて思ったんだ」
彼女がぽつりと言葉を紡ぎ出す。
「錬児って変なやつだよね。ワタシはエルフでアーシリーコードなのに助けようとしてくれる。正体がバレててもそれは変わんない……」
「……あいつは変にお人好しだからな」
「ワタシは人じゃないのにね」
そうエフェクトは悲しげに苦笑する。
「……アンビシャスが言ってたんだ。ワタシ達エルフは人間なんかより優れた存在なんだって。だったら尚更。ワタシが優れた存在であるなら、助けて貰った恩はちゃんと返さないといけない」
彼女は前へと体を動かす。必死に。体を壊しながら。
「……ソート。お願いがあります」
見かねたトワルが創斗に向き直る。覚悟を決めた眼差しが創斗に突き刺さる。
「彼女を、エフェクトを手伝ってあげませんか?」
「……お前、何言ってんだよ?」
「事は一刻を争いますし、わたし達とエフェクトの目的は一致しています。錬児さんを助けるには人手は多い方が良い筈」
真っ直ぐな視線に耐えかねて、創斗は目線を外す。偶然にもその視界の先にはエフェクトがいた。彼女もまたこちらを見ていた。
「……確かにそうなのかもしれない、けど。おれはエフェクトを信用出来ない」
創斗が俯いて、拳を握りしめる。
「こいつの、アーシリーコードのせいで沢山の被害が出た。巻き込まれた人や唆されて道を外した人がだ。だから協力はしたくない」
思い浮かぶのはここまで被害にあった人達の顔。そして、亡き父の姿だ。それを思い出すだけで心の中を怒りが埋め尽くす。
「ソート……」
彼の言葉は痛いほど分かる。トワルもアーシリーコードが起こした被害には心を痛めているのだから。それでも、そのままではいけないのだとも思う。
「ならわたしを信じて。エフェクトを信じたいと思うわたしを信じて。……もしこの判断が間違いだったとしたらその時はわたしはどんな罰も誹りも受け入れるつもりです」
「……!?」
彼女の覚悟に創斗は思わず息を呑む。
「ねぇ、ヴァリアブル。ワタシと取引をしよう」
話の成り行きを聞いていたエフェクトが声を掛ける。
「もし錬児を助けるのに協力してくれたら、ワタシの全てをあげる。拷問したって良いし、殺してくれたって良い」
体の向きを変えて彼女は創斗に向き直る。
「だからお願い。錬児を助けるのに力を貸して」
「わたしからもお願いします」
二人の視線が創斗に集中する。彼女らの思いを受けて、創斗が出した答えは――
『この男を返して欲しければ町外れの廃墟に二人だけで来い。もし約束を違えれば人質の命は無いぞ。いいな?』
恰幅の良い男の連絡が入った。彼の指示に従い、創斗とトワルは廃墟に足を運ぶ。そこはかつて公民館として使われていた施設。しかし、過疎化の影響で訪れる人が少なくなった結果、周囲の草木は生え放題になり、建物も雨風にさらされてボロボロになっていた。
建物に入った創斗達を恰幅の良い男と取り巻き二人が出迎える。男の隣には椅子に拘束された状態の錬児が座っていた。
「よく来たな、ヴァリアブル」
恰幅の良い男が勝ち誇った顔で笑みをつくる。人質を取った事で既に勝った気でいるらしい。
「そちらのエルフ。こっちに来い」
「!」
「早くしろ。さっさとしないとこいつの命が無いぞ!」
男がナイフを錬児の首元に突き付ける。
「ひぃぃぃ!? た、助けて……」
恐怖のあまり錬児が悲鳴をあげた。その様子に男が苛立たしげに舌打ちをする。
「トワル」
創斗の呼びかけにトワルは頷くと、前へと歩き出した。
そして、男の元へたどり着く。
「よし。お前達、そいつを殺れ」
<モッドライザー!>
男の指示を受け、取り巻き達がモッドライザーを腰に巻く。
<アント!>
「「電令!」」
<ハック! クラック! バーサーク!!>
<アーシリーコード:アント! ダウンロード!!>
二体のアント・モッドが武器を構える。それに対して創斗は特に慌てる様子もない。
「……やっぱこうなったか」
ジャケットのファスナーを下ろして前を開けると腰にはヴァリアブルドライバーが巻かれている。
『そちらは任せましたよ、
「当然!」
ドライバーからトワルの声がした。では、今目の前にいる存在は? 男達の視線が少女の元へ集中する。それと同時に彼女が動き出す。恰幅の良い男に蹴りを食らわせたのだ。
「ぐへぇ!?」
吹っ飛ぶ男。少女へ銃口を構えるアント・モッド達。そして、
「悪いがお前らの相手はおれ達だ」
<スパイダー! パワーアップ!!>
「『変身!!」』
ヴァリアブル スーパースパイダーへと変身した創斗達がその邪魔をする。素早く糸を巻き付け外へ放り投げた。
「錬児、大丈夫?」
「その声……もしかしてエフェクトちゃん!?」
エフェクトが拘束を外す。錬児が立ち上がりながら目の前の少女を見る。
「うん。そうだよ」
少女の顔が泡立つ。やがて収まると服装はそのままにエフェクトの顔に変化した。
「ありがとう。助けてくれて」
「うん!」
しばし見つめ合い、笑い合う二人。そんな空間を壊す声が響く。
「やってくれたなぁ!!」
声の方を向くと恰幅の良い男が鬼のような形相を浮かべている。彼の手にはモッドライザーMarkⅡが握られていた。
<モッドライザーMarkⅡ!>
「ぶち殺してやる!」
男はバックルを腰に巻くとメモリアライズバッジを取り出し起動させる。
<フロッグ!>
「電令!!」
<ハック! クラック! バーサーク!!>
<アーシリーコード:フロッグ! アップロード!!>
男の体に装甲が纏わりつきフロッグ・モッドMarkⅡへと変わった。
「錬児、離れてて」
手で制しながらエフェクトは一歩前に出る。チラリと横を見るとアント・モッド達もこちらへ向かってきていた。
「ヴァリアブル。こっちはワタシに任せて」
『わかりました。向こうはわたし達で対処します。ソート行きましょう』
「……おう」
ヴァリアブルがアント・モッド達の元へ駆けていく。そして、エフェクトはフロッグ・モッドMarkⅡと対峙する。覚悟を決めた表情で彼女は懐から取り出したのは――
ゴトッと音を立てエフェクトの前に物が置かれる。それはバックル。シグナライザーに似てるが所々形状が変わっており、レバーに連動して展開する箇所は別パーツに変更されている。
トワルとエフェクトに懇願され、受け入れる事を決めた創斗。ボロボロのエフェクトをエレクトロ伝導に運び込むとすぐに作戦会議が行われた。最終的にあらかじめヴァリアブルドライバーにトワルの意識を移しておき、トワルの体をエフェクトが利用すると言う作戦に決まった。
早速その準備を始める。その最中に創斗がエフェクトの前にそのバックルを置いたのだ。
「これって……」
「お前のシグナライザーだ」
遊園地での戦いの後、シグナライザーの残骸はD.A.T.Aの解析に回された、そこから手に入ったデータはキマイライザーに流用される、では、残された残骸はどうするか。そこで手を上げたのが創斗。残骸を貰い受け密かに復元し、改良を施したのだ。
「正確にはそれを改良した物だけどな。名前はシグナライザー改」
「これをワタシに?」
「あぁ。ただし」
創斗が真剣な表情でエフェクトを見つめる。そしてここからが本題とばかりに切り出した。
「これはまだ一度もテストプレイを行ってない。安全確認も出力調整もだ。変身した際にどんな不具合が起きるかも。そもそも変身出来るかも分からない。下手すれば体に過剰な負荷を与える可能性もある」
エフェクトは思わずシグナライザーを見た。
「今、お前に渡せるのはこれしかない。それでも使うか?」
「……」
彼の言葉にエフェクトはしばし考える。その上で結論は最初から決まっていた。
「うん。使うよ」
シグナライザーに手を伸ばす。
「たとえどんな事が起きたってワタシは錬児を助けるよ。絶対に」
そして彼女はそれを手に取った。
あの日からずっと後悔していた。
彼女を人間と勘違いしてではあるが助けてくれた人がいた。それがきっかけで本当は滅ぼすべき存在では無いのではないかと思うようになった。でもそんな疑問を同胞達に言う勇気なんて無かった。だから心の奥にしまい込んで見ないふりを決め込んだ。詰まる所、逃げたのだ。
にもかかわらず
そしてヴァリアブルに敗北した。けれど何の因果か生き延びてしまった。もし生き延びた事に意味があるのなら今度こそは――
「決めたんだ。今度こそ、ワタシはワタシの意思で戦う。ワタシの望む未来の為に!」
<シグナライザー改!>
ベルトを腰に巻き、エフェクトは敵を見据える。
<バタフライ!>
メモリアライズバッジを起動させ、シグナライザー改に装着。無数の蝶が集まり大きな蝶へと成り周囲を旋回する。託された力を身に付け、少女は高らかに叫ぶ。
「変身!」
<Wake Up Date! バタフライ・エフェクト!!>
彼女は赤いラインの入った黒いアンダースーツを纏う。そして、蝶が胸元に停まって胸部装甲となり、装着時に放出された粒子が腕や足の装甲として変わる。
<シグナライザー、カスタマイズ!>
藍色の装甲を纏い、複眼を赤く輝かせ、蝶の戦士へ変身を遂げる。正式名称、仮面ライダーエフェクト改。
「改めて名乗ろう。ワタシはエフェクト。"元"アーシリーコードのエフェクト。エルフも人も関係なく、ワタシの友達を助ける仮面ライダーだ!」
ホルスターから取り出したのはアップデートで強化された二丁の拳銃、エフェクタールガン改。しっかりと両手に握りしめてエフェクト改が歩き出す。
「何テ事ダ。マサカ裏切リ者ガ増エルトハ……」
フロッグ・モッドMarkⅡが頭を抱えて嘆く。だがすぐに気を取り直すと口と両肩からビームを放射。三方向からエフェクト改へと迫る。
「カクナル上ハ! 貴様モ、アイ様ヘノ手土産二シテクレル!!」
その攻撃を軽い足取りで避わすエフェクト改。そしてエフェクタールガン改を発砲。連続で放たれた弾丸がフロッグ・モッドMarkⅡの胴を捉える。
「グァ!?」
フロッグ・モッドMarkⅡが地面を転がる。
「アイ様ねぇ……。それ信じて大丈夫なやつ? ワタシ、アイのせいで暴走した事あるんだけど?」
「当然ダ! アイ様ハ、コノ私ヲ選バレシ者ト仰ッテクレタ! 多クノ者達二見捨テラレタ私ヲ! ナラバ、アノ方ノ為二戦ウノハ当然ノ事ダ!!」
フロッグ・モッドMarkⅡが起き上がり、跳躍して距離を詰める。拳が振り下ろされた。対するエフェクト改も負けてはいない。攻撃を往なすと蹴りを叩き込んだ。後退るフロッグ・モッドMarkⅡ。
「そっか。でもこっちは錬児を誘拐されたんだ。悪いけど容赦はしないよ」
とどめを刺すべく銃口を向けるエフェクト改。その時、彼女に異変が起きる。
「うっ!?」
突如として体が重くなる。動きは鈍くなり、装甲からバチバチと火花が散った。激痛がエフェクト改を襲う。
「あ、あぁ……っ!? ……まさか不具……合?」
カランと音を立てエフェクタールガン改が床へと落ちる。
「ドウヤラ運ハ私二味方シタ様ダナ!」
すかさずフロッグ・モッドMarkⅡが攻撃。ビームで彼女をめった打ちにしていく。
「うあああっ!!」
不具合のせいでまともに動けずエフェクト改はひたすら攻撃を受け続ける。やがて限界を迎え、彼女は膝から崩れ落ちた。
「この野郎!!」
背後から鉄パイプがフロッグ・モッドMarkⅡに振り下ろされた。しかしその程度で装甲は破れない。攻撃した筈の鉄パイプがグニャリと曲がる。フロッグ・モッドMarkⅡが振り返るとそこには錬児がいた。物陰に隠れて様子を伺っていたがエフェクトのピンチに思わず飛び出してしまったのだ。
「錬児!?」
『錬児さん!?』
外でアント・モッドを相手取っていたヴァリアブルが異変に気付き声を掛ける。二人の方へと駆け出したいがアント・モッドが邪魔をする。銃弾が降りかかるせいで近づけない。
「錬児……逃げて!」
「嫌だ。今度はオレがエフェクトちゃんを助ける番だ!」
「ナンダ? マタ人質二ナリニ来タカ?」
フロッグ・モッドMarkⅡが錬児へと手を伸ばす。
「そいつはどうかな!」
そう言って懐から取り出したのは缶スプレー。近くに落ちていたのを拝借させてもらった。それをフロッグ・モッドMarkⅡの顔面へ噴射する。
「ノワッ!?」
視界が塞がり慌てふためく。その隙に錬児はエフェクト改の元へ。
「大丈夫かエフェクトちゃん」
「何で?」
「決まってんじゃん友達だからだよ」
彼は屈託なく笑った。
「うん。ありがとう」
口元に弧を吊り上げてエフェクトは微笑む。そして、
「こんのぉ!」
気合を入れると立ち上がる。
「だったら今度はワタシの番! ワタシが錬児を守る!」
痛みなんてなんのその。エフェクト改がフロッグ・モッドMarkⅡへと立ち向かう。
『ソート。わたし達も負けてはいられませんね』
「……だな」
彼女らの様子に気を引き締めるヴァリアブル。素早く重心を低くすると両手から糸を放つ。その糸はアント・モッドの足を絡め取る。
「はっ!」
手を引くと連動してアント・モッドも引っ張られ体勢を崩す。
<アクセス! 倍プッシュ!>
ヴァリアブルは高く跳躍すると足を突き出す。エネルギーを宿した両足が二体のアント・モッドを捉えた。
<スパイダー!>
<スーパーヴァリアビリティストライク!!>
爆発が起きる。アント・モッドがいた場所で二人の男が気絶していた。
「行くよ!」
そしてエフェクトの方も佳境に入る。レバーを引き上げるとメモリアライズバッジのボタンを押す。
<フィニッシュ オン!>
レバーを下ろすとエネルギーがエフェクト改の右足に集中する。羽を広げ、飛翔。空中で足を突き出し錐揉み回転でフロッグ・モッドMarkⅡの元へ。
<バタフライ!>
<データストームエフェクト!!>
必殺の一撃がフロッグ・モッドMarkⅡに突き刺さる。大爆発を起こすフロッグ・モッドMarkⅡ。
「グワァァァァ!?!!」
そしてエフェクト改は不具合故に勢いが止められなかった。そのままに壁をぶち破り外へと飛び出していく。
「!?」
「エフェクトちゃん!?」
『エフェクト!』
ヴァリアブルと錬児が追いかける。近くの茂みにエフェクトはいた。変身が解け、体の至る所が破損している。つい先程までの状態に逆戻りだ。それでも彼女の表情は明るい。今度こそ自分の意思で動けたから。
「大丈夫か?」
「なん……とか……」
錬児が手を差し伸べる。エフェクトは手を取り起き上がろうとするが足が壊れているために立てない。バランスが崩れ、倒れそうになる。
そんな彼女の体を支え、肩に手を回して体勢を立て直させたのは変身を解除した創斗だった。
「まぁ、その……何だ……悪かったな。不良品を渡しちまって」
そっぽを向きながらぶっきらぼうにそう告げる。あまりにも不器用なその様子にエフェクトは思わず吹き出してしまった。隣で錬児も笑っている。ヴァリアブルドライバーからもトワルの笑い声が聞こえる。
「創斗は相変わらず素直じゃねぇな
『ふふふ。そうですね』
「うるせぇ! 余計なお世話だ!」
渋面を作る創斗。そんな彼にエフェクトは口元に笑みを浮かべた。
「ううん。ありがとう、ソートくん♪」
創斗と錬児。二人に支えられるエフェクト。そして四人は歩き出した。
「ふ、ふふふ。まだ運は尽きてない」
建物の中で恰幅の良い男は笑う。自分はまだ生きている。捕まってもいない。
「取り敢えずここを脱出して体勢を整えねば!」
「残念ですがそれは無理ですね」
現れたのは毒島。冷めた眼差しで男を見ている。
「なんだ私を嘲笑いに来たのか?」
「いいえ。始末しに来たのですよ。アイ様の命で」
「何だと!? ふざけるな! アイ様が私を見捨てるはず無いだろうが!!」
激昂する男。毒島はため息を吐くとモッドライザーMarkⅡを腰に巻く。そしてメモリアライズバッジを取り出す。それは金の縁取りがされた紫色のメモリアライズバッジ。
「まさかそれは!?」
「えぇ。アイ様が開発したMarkⅡ専用のメモリアライズバッジですよ。私はお前と違ってあの方に選ばれているので」
嘲るように笑いながらメモリアライズバッジを起動させる。
<スコーピオン!>
「電令」
ベルトを操作する毒島。現れた蠍が装甲となって装着された。
<ハック! クラック! バーサーク!!>
<アーシリーコード:スコーピオン! アップロード!!>
紫色の装甲を纏い、両腕に鋏、背中から無数の針を生やした怪人。スコーピオン・モッドへと姿を変えた。
「フッ!」
スコーピオン・モッドが針を伸ばす。それは男と取り巻き二人の体に突き刺さると禍々しいエネルギーを注入する。
「が!? がああああっ!!!」
みるみるうちに三人の顔色が悪くなり、苦しみ始める。
「蠍には毒があります。つまりお前達はここで退場と言う事です」
ドロリと三人の体が崩れていく。毒により内側から溶かされ、液体へと変わっていく。
「あ、ああ、あああ! アイ……様……」
その言葉を最後に男は完全に解け、その身が消滅した。それを見届けるとスコーピオン・モッドが踵を返し立ち去る。
創斗達が建物に戻る頃には既にそこに人の気配は無かった。