仮面ライダーヴァリアブル   作:puls9

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file25 トゥルース・リヴィールド

「はい。そちらは避難を優先してください」

 

暗がりの部屋の中で内線を手に通信を行っているのは望月 仁美。その表情はいつになく真剣だ。

 

「え? 自分も向かう? 待ってください、向かうのはうちだけで充分ですよ!!」

 

思わず声を荒げる。しかし、向こうの主も譲らなかったようだ。

 

「……了解です」

 

渋々といった形で了承する。受話器を置くと彼女はため息を吐いた。そして、両手で頬を叩く。

 

「仕方ない。万事上手くいくように祈るっすよ」

 

気を取り直した仁美は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

D.A.T.A基地。建物の外内問わず激しい戦闘音が響いている。地上ではエフェクト改とヘッジホッグ・モッドMarkⅡが戦闘を繰り広げていた。両腕と背中の針をミサイルのように飛ばしてくる。

 

「やぁ!!」

 

それを二丁の銃で撃ち落としていく。されど数は向こうが上。落とし損ねた針が彼女に襲いかかる。

 

「くっ……この!!」

 

羽を広げて回避。針はそのまま後方のD.A.T.A基地に突き刺さる。途端に爆発音。基地の外壁が壊されていく。

 

「ハハハ! 良イゾ良イゾ!!」

 

楽しげに笑うヘッジホッグ・モッドMarkⅡ。仮面の奥でエフェクトは鬼気迫る表情。素早く距離を詰めた。そして回し蹴りを叩き込む。ヘッジホッグ・モッドMarkⅡが左腕で受け止める。

 

「何楽しんでんの! あの中にはそっちの仲間も一緒にいるんでしょ!」

「ソレガドウシタ? 我ラノ命ハトウノ昔二、アイ様二捧ゲタモノ。コノ作戦ヲ完遂出来ルナラバ命ナド惜シクハ無イ!!」

 

悍ましい事を平然と語るヘッジホッグ・モッドMarkⅡ。流石のエフェクト改にも動揺がはしる。動きを止めて俯いた。そして、小さく呟く。

 

「させない」

「ナニ?」

「これ以上は壊させない!!」

 

覚悟を口に出し、エフェクト改は片方の銃をぶん投げる。

 

「ノワァ!?」

 

予想外の行動に驚くヘッジホッグ・モッドMarkⅡ。大きな隙が生まれた。エフェクト改が飛び蹴りをかます。胴に蹴りを叩き込まれ、ヘッジホッグ・モッドMarkⅡが地面を転がる。

 

「あなたに誰も殺させないし、あなたの仲間も死なせない。エルフとして、元アーシリーコードとして。ワタシが守ってみせる!」

 

レバーを引き上げ、メモリアライズバッジを押す。

 

<フィニッシュ オン!>

 

レバーを勢い良く下ろすとエフェクト改の足にエネルギーが充填されていく。羽を広げて跳躍すると、両足を突き出し螺旋回転。一直線にヘッジホッグ・モッドMarkⅡの元へと向かっていく。

 

<バタフライ!>

<データストームエフェクト!!>

 

必殺技の一撃が炸裂。ヘッジホッグ・モッドMarkⅡが爆発した。煙が晴れると神経質そうな男が気絶している。近寄ろうと歩き出したその時。それを阻むように人影が降りてきた。アンビシャスだ。

 

『こちら、戎。モッドは倒した。そっちはどうだ?』

「こっちも完了! と、言いたいとこだけど無理っぽい」

 

心護から通信が入る。直後、飛来した何かがD.A.T.A基地を急降下。轟音が響く。正直今すぐ向かいたいが、こちらもそれどころではない。

 

「アンビシャスが目の前にいる。戦闘を始めるから怪我人の誘導お願いね」

 

それだけ言うとエフェクト改は通信を切る。改めてアンビシャスに向き直った。

 

「変な感じだね。こんな場所で向かい合うなんてさ」

「……俺もだ」

「引いてくれると嬉しいんだけど……無理だよね?」

「あぁ。それは出来ない」

 

それを聞いてエフェクト改は臨戦態勢に入った。しかし、アンビシャスは構えない。

 

「アイの目的はD.A.T.Aを壊滅させる事。だが俺の目的は違う」

「じゃあ何が目的?」

「お前を連れ戻す。どんな手荒な真似をしてでもな。たとえお前が望んでいなくとも」

 

アンビシャスが構えを取る。仮面の奥でエフェクトは深呼吸をした。気持ちを落ち着かせる為に。そして言葉を紡ぐ。虚勢を張った強気な言葉を。

 

「やれるものなら、やってみなよ。ワタシは負けないよ」

 

エフェクト改が駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、地下一階ではマルティプルがフォックス・モッドMarkⅡと一進一退の攻防を繰り広げていた。球体より放たれる無数のビーム。それを何とか躱していくマルティプル。避わす度に基地内が壊れていく事に彼は仮面の奥で悔しげに歯噛みする。

 

<スネーク!>

<キマイライズ・レオ、スネーク! レフトアーム&ライトアーム!!>

 

胸の獅子が左手に移動。ガントレットとして装備すふ。右手には蛇の鞭が装着された。

 

「はあっ!」

 

獅子のガントレットでビームを弾き、蛇の鞭でフォックス・モッドMarkⅡの腕に巻き付いた。

 

「おらぁ!!」

 

そのまま振り回す。フォックス・モッドMarkⅡが壁に激突。壁が破壊され、近くの部屋の中にふっ飛ばされた。

 

「ククク。ヤルネェ……」

 

されどダメージは微量。背後の尻尾を巧みに使って衝撃を抑えたのだ。フォックス・モッドMarkⅡはゆらりと立ち上がる。

 

「今度ハ、コチラノ番」

 

無数の狐の面が外れる。そして近くで倒れていた隊員達の顔に張り付いた。途端に隊員達が起き上がる。彼らはホルスターから銃を引き抜くとマルティプルへと銃口を向ける。

 

「これは!?」

「コノ仮面ヲ付ケタ者ハ、俺ノ操リ人形ニナルノサ。行ケ!」

 

フォックス・モッドMarkⅡが合図を送ると操られた隊員達が一斉に発砲する。

 

「ちっ!」

 

マルティプルは舌打ちしながら後方へ飛び退く。充分に距離を取り、どう動くかの思案を始める。

 

(一度情報を整理しよう)

 

眼前にはフォックス・モッドMarkⅡ。そして、それを守るように陣取る操られた隊員達。

ここから事態を打開するにはフォックス・モッドMarkⅡを倒す必要がある。しかし、隊員達が間違いなく邪魔してくるだろう。手札が足りない。状況を逆転させる一手が。

その時、背後から誰かが走ってくる。

 

「心護、お待たせ! 受け取って!!」

 

現れたのは玲。彼女は近付いてくるとマルティプルに向かって何かを投げた。慌てて受け取るとそれはメモリアライズバッジだった。

 

「これは……アントメモリアライズバッジ?」

「ただのアントメモリアライズバッジじゃないよ! キマイライザー用の特注品!!」

「そうか。なら、ありがたく使わせてもらう」

<アント!>

 

メモリアライズバッジをキマイライザーの中央スロットに取り付ける。

 

<キマイライズ・アント、レオ、スネーク! ブレスト&レフトアーム&ライトアーム!>

 

現れたのは無数の蟻。それが胸を中心に両膝、両肘等の重要箇所に追加装甲として張り付いた。マルティプルが足を踏み出す。重量が増えた為か床を踏み締める度にみしりと軋む。

 

「これならいける!」

 

マルティプルがフォックス・モッドMarkⅡを目指して前進。

 

「サセルカ! 撃テ!!」

 

号令を受けて操られたD.A.T.Aの隊員達がマルティプルに発砲。しかし、その弾丸は分厚い装甲の前に弾かれる。マルティプルには傷一つ付いていない。驚くフォックス・モッドMarkⅡ。その間にも両者の距離は縮まりつつあった。

 

「コ、コノォ!!」

 

全ての球体を差し向け、マルティプルへ集中砲火。無数のビームが襲いかかる。

 

「はぁぁ!!」

 

しかし、その攻撃は効かない。あるものはガントレットで、あるものは鞭でビームを相殺し、それでもいなしきれなかったものは追加装甲で受け止めた。今度は多少傷が付いたが何の支障も無い。マルティプルがフォックス・モッドMarkⅡの元へと辿り着いた。

 

「ヒ、ヒィ!?」

 

踵を返し逃げ出すフォックス・モッドMarkⅡ。その足へ蛇の鞭が絡みつく。バランスを崩し、頭から床に倒れる。

 

「ブギャ!?」

「これで終いだ」

 

右手を振るい、フォックス・モッドMarkⅡが空中へと投げ出された。その間にマルティプルがキマイライザーを操作。

 

<デリート!>

<エリミネーションファング・トリプル!!>

 

エネルギーを纏った拳がフォックス・モッドMarkⅡの鳩尾に突き刺さった。

 

「ギャァァァ!!」

 

悲鳴をあげてフォックス・モッドMarkⅡが爆発。床にモッドライザーMarkⅡの残骸が散らばった。そして、マルティプルは気絶した男をキャッチして床に優しく下ろす。途端に操られていた隊員達が糸が切れた人形のように崩れ落ちた。

 

「心護、やったね!」

 

決着がつき、玲が笑顔で近寄ってくる。心護も変身を解いて頷く。通信を入れた。

 

「こちら、戎。モッドは倒した。そっちはどうだ?」

『こっちも完了! と、言いたいとこだけど無理っぽい』

「何?」

 

訝しむ心護。途端に轟音と共に何かが勢い良く急降下してくる。遠くの廊下の天井と床が破壊され、それは最下層へと向かっていった。直後、創斗達からの連絡が来た。

 

『こちらヴァリアブル。アクロと接触。これより戦闘を継続します!』

「!?」

 

驚く心護達。立て続けに今度はエフェクトから連絡が来る。

 

『アンビシャスが目の前にいる。戦闘を始めるから怪我人の誘導お願いね』

 

簡潔にそう述べて通信が切られた。

 

「心護、どうする?」

 

玲にそう言われ心護は考え込む。上も下も敵の増援が来ている。だが何故? D.A.T.Aにダメージを与えたいならばもう最初の三人だけでかなりの被害が出ている。これ以上行う必要は無い。

 

「何が目的なんだ? ……!? まさか!」

 

点と点が繋がる。

 

「夢崎。行くぞ!」

「ちょ!? 行くってどこに?」

 

急に駆け出した心護を玲は慌てて追いかける。心護はその言葉に答えず再び通信を開く。

 

「D.A.T.A隊員達に告ぐ。動ける戦闘員は地上と地下に、戦闘員は動けない者を連れてシェルターに向かえ。俺もすぐに向かう(・・・・・・・・)

 

通信を切ると玲に向き直った。

 

「決まってる。決戦にだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下三階。戦闘用フロアにてヴァリアブルとアクロが対峙していた。

 

「伝導。前にお前はこの言葉に反応していた。お前はおれの父さん、伝導 想助について知っているのか?」

 

そう尋ねる。対するアクロは静かに答えた。

 

「伝導……想助……。あの男の最期は……とても呆気なかった……」

「!? やっぱりお前が父さんを殺したのか!!」

「……」

 

ヴァリアブルの言葉を無視してアクロは双刀を構える。既に臨戦態勢だ。創斗の脳裏を駆け巡るのは父にまつわる記憶。

父の発明に目を輝かせた光景。自分の作った作品を褒めてくれた時の喜び。そして、そんな父が亡くなったと聞かされた時の絶望。

 

「お前だけは絶対に殺してやる!!」

 

仮面の奥で殺意を漲らせ、創斗が駆ける。ヴァリアブラスターをブレードモードに変形させ、勢い良く振り下ろした。しかしその一撃はあまりにも直線的。アクロは体を少し横にずらして避わす。

 

「この!」

 

横薙ぎ一閃。双刀を交差させ、アクロが受け止めた。鈍い音がフロア内に響く。

 

『ソート、落ち着いて!』

「うるさい! さっさとルートを展開しろ!! こいつは絶対ぶっ殺すんだ!!!」

 

トワルの制止さえ意味を成さない。ただひたすらにアクロへの殺意だけが彼を動かしている。

 

「マルティプルワーカー部隊、現着! これよりヴァリアブルの援護に入る!」

 

その時、フロアの入り口が開き、四〜五人のマルティプルワーカーがなだれ込んできた。彼らはヴァリアブルを庇うように前に揃うと銃口をアクロへ向ける。そして一斉に発砲。無数の弾丸がアクロへと襲いかかる。だが、

 

「……」

 

その全てを両の刃で薙ぎ払っていく。そのまま、マルティプルワーカー部隊の元へと向かって歩み始める。

 

「くそっ!」

<アンテックバトン!>

<アンテックシールド>

 

警棒と盾を呼び出し迎え撃つマルティプルワーカー達。されどスペックは向こうが上。次々と蹴散らされていく。

 

「邪魔だ!」

 

ヴァリアブルがマルティプルワーカーの一人を押し退けてアクロへ向かう。翼を広げ旋回するとその背へ強襲をかける。急降下の勢いを利用して上段から振り下ろす。アクロもまた羽を広げると後方へ飛び退いた。ヴァリアブラスターが空を切る。

 

「ちぃっ! おい、そこどけ!!」

 

しかし創斗は諦めない。アクロに組み付いていたマルティプルワーカーを突き飛ばし、食らいつく。

 

『ソート、いい加減にして!!』

 

その手前勝手な戦いに遂にトワルの堪忍袋の緒が切れる。だがそれでも創斗は止まらない。完全に頭に血が上っていた。そして最悪の時が訪れる。

 

<アクセス! 倍プッシュ!!>

 

ヴァリアブラスターをガンモードに変形させ、パワーアップスイッチとホークメモリアライズバッジを取り付ける。銃口にエネルギーが集約されていく。

 

『駄目! 撃っちゃ駄目!! 当たっちゃう(・・・・・・)!!』

 

引き金が引かれる。放たれたエネルギーの弾丸は一直線にアクロの元へ。必殺の一撃が迫る中、アクロは悠然と立っている。そして、首を右へ傾げた。弾丸がアクロの頬を掠めて後方へ。

 

「ぐあああっ!!!」

 

そこにいたマルティプルワーカーの一人に着弾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまで計画通りに進行した。D.A.T.Aに壊滅的な被害を与え、仮面ライダー(邪魔者)はモッドに掛かり切り。つまり自分には絶対に目が向かない。それ(・・)は楽しそうに嘲笑う。

明かりの灯っていない暗い部屋の中。唯一の光源は目の前のパソコンのみ。それは鼻歌を歌いながらキーボードを操作する。まるでピアノを引くかのように。パソコンの中にはD.A.T.Aの機密データが映し出されている。後行う操作はただ一つ。エンターキーを押すだけ。それだけでD.A.T.Aの情報がネットの海に放出される。そうなれば最早D.A.T.Aは存続すら危うくなるだろう。

 

「やっぱり簡単でしたね」

 

結局の所、それにとってD.A.T.Aはいつでも滅ぼせたのだ。ほくそ笑みながら指をエンターキーへと滑らせたその時。部屋の明かりが付いた。それは瞬時に入り口の方を見る。そこには照明のスイッチに手を伸ばす心護がいた。傍らには玲の姿もある。

 

「お前が……内通者だったんだな」

 

彼の声は震えていた。瞳は揺らぎ、足取りは覚束ない。そして、絞り出すように口を開く。

 

「なんで……。どうしてお前が……。どうして何だ、真名子!!」

 

彼らの視線の先。パソコンの前に座っていたのは心護の妹、戎 真名子だった。

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