仮面ライダーヴァリアブル   作:puls9

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file27 ヴァリアブル・バージョンアップ

「やあっ!」

 

駅前にて断続的に破壊音が響き渡る。戦場の真っ只中を駆けるのはエフェクト改。アント・モッドを次々と撃ち抜いていく。そんな彼女の周囲が隆起する。アスファルトをぶち破り現れたのは百足の姿を模したモッド。体は人間のそれではなくとても長い。そして腰にはシグナライザーMarkⅡが巻かれている。

 

「新手のモッド!」

「ヒャハハハ! 死ネェ!!」

 

体から無数の腕を伸ばしてエフェクト改へ突進する。

 

「うわっと!」

 

羽を翻してバックステップ。既のところで攻撃を避わす。空中で反転すると逆さまの体勢で引き金を引く。二丁のエフェクタールガン改から放たれた弾丸が反撃の狼煙を上げる。

 

「フン!」

 

センチピード・モッドは地面に潜る事で攻撃を回避した。その隙に着地を決めるエフェクト改。

 

「う〜ん。これは厄介」

 

地面に潜られたら中々見つけ出せない。無視しようにも他のメンバーが危険に晒される可能性が高い。ここで倒しておくのが得策だ。エフェクタールガン改を握り直す。

しばしの静寂。エフェクト改の周囲が崩れ、隆起した。

 

「!?」

 

体勢を崩すエフェクト改。彼女を囲むようにセンチピード・モッドの体が出現。その囲いは徐々に狭まっていく。このままでは圧殺される。エフェクト改が羽を広げ、飛ぶ。しかし、このままでは間に合わない。抜け出す前に潰される。

 

「だったら!」

 

エフェクタールガン改を合体させると地面に向けて発砲。その反動を利用して加速。見事抜け出す事に成功した。

 

「チィ!」

 

悪態をつくセンチピード・モッド。だがそう思っていられるのも今のうち。

 

<フィニッシュ オン!>

 

レバーを引き上げ、メモリアライズバッジのボタンを押す。そして、レバーを勢いよく下ろすとベルトよりエネルギーが両足へと集約されていく。

 

「はああああっ!!」

<バタフライ!>

<データストームエフェクト!!>

 

エフェクト改が高く跳躍。螺旋回転を描きながら足を突き出す。必殺の一撃がセンチピード・モッドを捉えた。

 

「ぐあああっ!!」

 

センチピード・モッドが爆発。黒煙が晴れるとアーシリーコードの信者が倒れ伏していた。

 

「よし! って、うぇ!?」

 

着地を決めたエフェクト改。その時、耳を劈くような轟音が響く。音の方向を見るとそれは駅の中から聞こえた。

 

「まさか……」

 

駅の方へエフェクト改が駆け出す。しかし、そこへ銃撃が迫る。アント・モッド達が彼女を集中砲火を始めたのだ。慌てて避けようとするも間に合わない。万事休すなその時。無数の人影が割って入った。その正体はマルティプルワーカー。

 

「ここは私達が引き受けます。エフェクトさんは駅の中へ向かってください」

「!? 了解、ここは任せたよ」

 

戦線をD.A.T.Aに任せ、エフェクト改は駅の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって駅の駐車場付近では、マルティプルとアンビシャスが戦っていた。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

「ちっ!」

 

拳を振り上げて殴りかかるマルティプル。それを煩わしそうに受け止めるアンビシャス。二人の戦いは拮抗していた。

 

「邪魔だ。お前に用はない」

「悪いな。そのエフェクトからの依頼だ。自分の代わりにお前の相手をしてくれってな」

「何だと?」

 

マルティプルの言葉にアンビシャスの動きが止まった。

 

「あいつは悩んでるんだよ。お前にかける言葉に」

<スネーク!>

 

スネークメモリアライズバッジをキマイライザーの右側にセット。起動させる。

 

<キマイライズ! レオ、スネーク! ブレスト&ライトアーム!!>

 

右手に蛇の武装を装着。振るうと鞭が撓る。

 

「エフェクトはお前と話がしたいんだ。ちゃんと聞いてやれ。仲間……何だろ?」

 

放たれた鞭がアンビシャスに襲いかかる。

 

「黙れ」

 

アンビシャスの右手が唸る。鞭を弾き飛ばし、彼はマルティプルを睨みつけた。

 

「人間如きが、エフェクトを……エルフを語るな!」

 

激高と同時に駆ける。しかも牽制とばかりにニードルを放つおまけ付きだ。

 

「面倒だな」

<ゴート!>

<キマイライズ! レオ、スネーク、ゴート! ブレスト&ライトアーム&レフトアーム!!>

 

左手に山羊の角が装着された。ニードルを鞭で弾く。しかし、突き刺さった針の効力が発揮して力が失われる。

 

「はあっ!」

 

されどそんなものは関係ない。マルティプルはそのまま迫りくる拳を角で受け止めた。両者の攻撃がぶつかり合う。その威力は互角。二人は後方へ後退った。

 

「安心しろよ。俺も同じだ」

「……?」

「まだアイを前に冷静になれそうにない。だから心を落ち着かせられるまで代わりにお前の相手をしてやる」

 

マルティプルは拳を握り直し、アンビシャスを見据える。

 

「そのついでだ。お前がエフェクトとちゃんと話し合えるように、気が済むまで相手になってやる」

 

彼の言葉を受けて、アンビシャスは怒りのオーラを溢れさせた。

 

「舐めるなよ。人間風情が!」

 

そうしてマルティプルとアンビシャスの激闘は続いていく。

 

 

 

 

 

<バット!>

<データクラッシュシグナル!!>

 

駅の中。アクロの必殺技が炸裂。

 

「ぐあああっ!!!」

 

ふっ飛ばされたヴァリアブルが地面を転がる。衝撃で変身が解け、傷だらけの創斗が姿を現す。

 

「勝負ありましたね」

 

勝ち誇るように笑うアイ。アクロは無言のまま近付いてくる。今の状況はさながら死刑執行を待つ囚人のよう。気を抜けば手放してしまいそうなほど衰弱した意識を奮い立たせながら創斗は考える。この状況を打開する方法を。しかしそう簡単には思い浮かばない。そうこうしている間にアクロは眼前に迫っていた。彼がゆっくりと得物を振り上げる。

 

「させるかぁ〜!!」

 

創斗の背後から銃声が響く。同時に放たれた弾丸がアクロを襲った。双刀で弾丸を弾くアクロ。首根っこを掴まれ持ち上げられる創斗。そのまま後方へ移動させられた。

 

「大丈夫?」

 

声の主はエフェクト。創斗が移動させられたのはトワルの体がある場所だった。

 

「ああ。なんとか……」

 

言いながらヴァリアブルドライバーをトワルの腰に巻く。途端に彼女の瞳に光が宿る。意識が体に戻った証拠だ。しかし、彼女は何も言わない。暗い表情で黙っている。

 

「とりあえず撤退しよう。二人共、ワタシが攻撃したら出口まで走って」

 

怪我をしている創斗を見て、戦況を把握したエフェクト改が言う。そして銃口をアイに向ける。即座に発射。それを弾き飛ばしたのはアクロ。

 

「よし! 予想通り、読み通り!!」

 

仮面の奥でしてやったりの表情を浮かべるエフェクト。彼女は予測していた。何があろうとアクロはアイを優先する事を。そしてアイを守っている間、アクロはこちらを攻撃出来ない。

 

「さぁ行くよ!」

「お……おう」

 

壁で体を支えながら創斗が歩き出す。トワルも着いてくる。エフェクトは殿を務めながら後退。ライフルモードにして遠距離から牽制する。やがて三人は出口に辿り着く。

 

「大丈夫ですか!」

 

すぐに数人のマルティプルワーカーが創斗を保護する。その光景を見たトワルは逃げるように走り出した。

 

「ちょ!? トワル! どこ行くの?」

 

エフェクトの声に答えず、彼女はどこかへと走り去ってしまった。

 

「えーっと……と、とりあえず撤退しよっか! みんな、撤退! てーったい!!」

 

エフェクトの合図でD.A.T.A隊員達が動く。

 

「そういう訳だ。ここは退かせてもらうぞ」

<デリート!>

 

キマイライザーのボタンを押すマルティプル。エネルギーが両腕に流れ込み、そのまま振り回した。

 

<エリミネーションファング・トリプル!!>

 

放たれた必殺技がアンビシャスやモッド達の視界を塞ぐ。黒煙が晴れるとそこにエフェクト達の姿は無かった。

 

「ふーん、逃げましたか……。まぁ、いいでしょう」

 

外に顔を出したアイが呟く。彼女の視界の中でアーシリーコードの信者達が沸き立っている。D.A.T.Aを撤退に追い込めたのだ。テンションが上がっているのだろう。

 

「アンビシャス。ここは任せます」

「どこに行く?」

「決まっているでしょう。あの子の元へですよ」

 

そう言うとアイは不適に笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

D.A.T.A基地。

 

「みんな、大丈夫?」

 

声をかけたのは玲。場所は基地のエントランス。まだ瓦礫の撤去は続いているが作戦前よりは片付きつつある。

 

「問題ない。俺達は、だがな」

 

心護が医務室の方角を見る。先程、怪我を負った創斗が運び込まれたばかりだ。心護の表情には心配の二文字が浮かんでいる。

 

「トワルちゃんは?」

「それがどっか行っちゃったんだよね」

 

答えたのはエフェクト。椅子に腰掛け、両腕を頭の後ろで組みながら足をぶらぶらさせている。

 

「なんで?」

「知らないよ。ワタシが来る前になんかあったのかも」

「なんにせよ。早く見つけないとな」

 

今、ヴァリアブルドライバーを持っているのはトワルだ。このままでは創斗が変身出来ない上に、トワルの身も危険だ。

 

「おおい!! 大変だ!!」

 

廊下をドタドタと走る足音。顔を出したのは錬児。息を切らしながら叫ぶ。

 

「創斗がいなくなった!!」

「「「はあああ!?」」」

 

エフェクト、心護、玲。三人の声がエントランスに木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある寂れた工場。その敷地内にトワルはいた。なぜそんな場所にいるのか、トワルにも分かっていない。とにかくあの場から離れたかった。創斗を見るのが辛かった。たくさんの理由が彼女の思考を埋め尽くす。

 

「わたしはどうしたらいいんだろう」

 

そう呟いてトワルはうずくまる。その時だ。足音が近付いてくる。人影が壁に勢い良くぶつかった。工場内に音が響く。トワルが顔を上げるとそこには創斗がいた。

 

「やっと見つけた!」

 

彼女の元へ創斗が一歩踏み出す。

 

「ぐっ!」

 

傷が痛むのか脇腹を押さえて彼は苦悶の表情を作る。その様子にトワルは思わず腰を浮かせた。だがすぐに思い留まる。自分にその資格は無いと知っているから。

 

「なんで……ここが……?」

「忘れたのかよ。お前の体には発信機を仕込んでただろ?」

「あ……」

 

トワルの体には盗難防止も兼ねて発信機を仕込んである。ヴァリアブルとして戦っている間はどうしてもトワルの体が疎かになってしまう。苦肉の策というやつだ。

 

「来ないで!」

「トワル……。いったい何があった?」

「それは……」

 

トワルは言い淀む。その間にも創斗は苦しげな顔で彼女へと近づいていく。そしてトワルの手を掴もうとしたその時。

 

「触らないで!」

 

勢い良く手が振り払われる。同時に彼女は逃げるように後退り距離を取った。

 

「来ないで。触らないで。ソートが汚れちゃうよ」

「そんな事無いだろ」

「……あるんだよ。わたしは……わたしは……アーシリーコードのエルフなんだから」

 

創斗の目が大きく見開かれる。

 

「全部思い出したの。記憶を」

「!?」

「わたしはね。ソースケにエルフの存在を知らしめる為に送り込まれたの」

「なん……だって?」

「アーシリーコードはソースケを狙ってた。人類を滅ぼす為に。……わたしがソートのタブレットに入った時のは偶然なんかじゃない。最初から仕組まれてた事なんだよ」

 

自嘲気味に彼女は笑う。

 

「記憶がないのはその方が良かったから。記憶喪失の哀れなエルフの方が同情を誘いやすいし、信頼も得やすいからってアイの発案で決まった」

 

トワルの言葉を創斗は頭の中で反芻する。つまるところトワルとの出会いも想助の死さえもアーシリーコードの定期路線だったと言う事だ。あまりにも情報が多すぎてどうにかなってしまいそうだ。

 

「ごめんなさい」

 

何も言えずにいる創斗へ向けてトワルが呟く。それは力の無い今にも壊れてしまいそうなか細い声だった。

 

「騙してごめんなさい。出会ってごめんなさい。生きててごめんなさい。生まれてきてごめんなさい」

 

堰き止めていた水が溢れ出したように謝罪を繰り返すトワル。だが創斗にとってはそんな事はもう頭になかった。彼女の言葉に聞き捨てならない言葉があったから。

 

「ふざけんな!!」

 

創斗の怒号にトワルが顔を上げる。彼の顔は憤怒に染まっていた。

 

「ふざけてないよ!」

 

トワルが言い返す。

 

「わたしがいなければ、ソートは今頃、ソースケと幸せに暮らしてたんだ! 復讐なんか考えないで、ヴァリアブルにもならないで、今以上に笑って楽しく過ごせてた!! だから!」

 

もう我慢の限界だった。創斗はトワルに近づくと、その胸ぐらを掴む。そして無理矢理立たせた。

険しい顔の創斗とは対照的にトワルはかすかに微笑んだ。きっとこれからわたしは殴られるのだろう。そう思ったから。彼女は内心で歓喜する。他の誰でもない友達(ソート)に罰してもらえるのだ。これほどの喜びはないだろう。トワルはそっと目を閉じた。

そしてお望み通り衝撃は訪れた。けれどそれは彼女が思い描いてたものとは違っていた。激しく突き放すようなものではなく包み込むような優しいものだったから。

 

「え……」

 

トワルは目を開ける。目の前に創斗はいない。視界の下に見覚えのある服の色が見える。それは創斗が着ていたジャケットの青だった。そこで彼女は気付いた。自分は今、抱きしめられているのだと。

 

「確かにそうなのかもしれない」

 

震える声で創斗が言う。その声色から彼が泣いているような気がした。

 

「お前がアーシリーコードのエルフで人類を滅ぼす為におれや父さんに近づいたのかもしれない。でも……それだけだったのか?」

 

創斗が言葉を続ける。

 

「おれと友達になった時や身の回りの事を教えた時、お前はなんで笑ってたんだ?」

 

タブレットの中で創斗と出会って友達になった。記憶は朧げで覚えてた事はトワル(名前)エルフ(種族)の二つだけ。とても心細かった胸が温かくなったのは何故だったのか。

創斗から色んな事を教わって少しずつ新しい自分が積み上がっていく事に喜びを見出したのは何故だったのか。

その答えは――、

 

「おれは知ってるよ。他の誰よりも知ってる。お前がどんな奴なのかを。父さんが死んで塞ぎ込んでたおれに何度も話しかけてくれた。アーシリーコードによって傷つけられた人達を見て自分の事のように怒ってくれた。お前はさ、とても優しい奴なんだよ」

「……そんな事……無い。わたしは……ソートに復讐の道を選ばせた。そもそもアーシリーコードのエルフで皆を傷つける側だった」

「それでも!」

 

トワルの言葉を遮り、創斗は抱きしめる腕の力を強めた。

 

「今こうして、おれと一緒に戦ってくれてるお前は充分に優しい奴なんだ。だから卑下しないでくれ。他の誰でもないお前がおれの友達を否定しないでくれよ」

 

その言葉にトワルは俯いた。彼の肩に顔を埋め、体を震わせる。

 

「うん。ありがとう、ソート」

「あぁ」

 

抱擁を解き、二人は笑顔で向き合う。

そんな雰囲気をぶち破るように拍手が響き渡る。

 

「茶番は終わりましたか?」

 

音の方向にはアイとアクロがいた。彼女は嘲るような表情を浮かべている。。

 

「騙されてはいけませんよトワル。どう言い繕うとも伝導 創斗は人間。あなたを利用する為の甘言でしかありません。あなたがいなければヴァリアブルにはなれませんからね」

「……だったらお前らはどうなんだよ?」

 

創斗はトワルを庇うように前に出る。手で彼女を制しながら鋭い眼差しでアイを睨む。

 

「こいつが記憶を取り戻して苦しんでた時、お前らはこいつに何をしたんだよ。トワルごとおれを攻撃しただろうが!」

 

激高する創斗。

 

「渡さない。そんな奴らにおれの友達は絶対に渡さない!!」

 

彼の言葉を聞き、トワルは笑みを作る。そして、制された創斗の手を優しく下ろすとその隣に並び立つ。驚く彼に頷くと彼女はアイに向き合った。

 

「アイ。残念ですけど、わたしはあなた達とは行けません」

 

胸に右手を当てながら一度目を閉じると、トワルは決意の表情で目を開ける。

 

「わたしはトワル。アーシリーコードのトワル。ソートの友達で、ソートと一緒に世界を守る仮面ライダー。わたしはもう迷わない。ソート、一緒に戦ってください」

「おう、任せろ!」

 

二人の様子を見たアイは盛大にため息を吐いた。不快感を隠そうともしない顔で睥睨する。

 

「はぁ……そうですか。所詮は役立たずの末っ子。味噌っかすのトワルですね。……アクロ」

 

アイの呼びかけに静観していたアクロが腰にシグナライザーMarkⅡを取り付ける。

 

<シグナライザーMarkⅡ!>

<バット!>

 

シグナライザーMarkⅡにメモリアライズバッジをセット。彼の周りを無数の蝙蝠が飛び交う。

 

「変身」

<Skill up! Show down! アクロ・バット!!>

<アーシリーコード、アップグレード!!>

 

漆黒の装甲が装着され、アクロが変身を遂げた。両手で双刀を構え、準備万端だ。

 

「さぁ、どうしますか?」

<シグナライザーMarkⅡ!>

 

不敵な笑みを浮かべ、アイもまたシグナライザーMarkⅡを腰に巻く。

 

<タイガー!>

 

メモリアライズバッジをセット。彼女の後方で白虎が雄たけびを上げる。

 

「変身」

<Zoom Up! Look Down! タイガー・アイ!!>

<アーシリーコード、アップグレード!>

 

白き装甲を纏い、アイが仮面ライダーへと変身した。両腕の鉤爪を構える。

トワルは息を呑む。状況は最悪。アクロでさえ強敵なのに同格がもう一体。されど創斗は対照的に落ち着いている。

 

「ならこっちは奥の手で行くぞ」

 

取り出したのはエメラルドグリーンのクリアパーツ。

 

「何ですかそれは?」

「バージョンアップユニット。ヴァリアブルドライバーを進化させる拡張強化パーツだ」

 

創斗がにやりと笑う。

 

「でもそれ、テストプレイが終わってませんよね?」

「まあな。普段ならしないけど命あってこその矜持だ。それに……お前となら大丈夫。そう思ってる。信じてるぜトワル」

「まったく……。わたしもですよ。わたしもソートを信じてます」

 

創斗はトワルの腰からヴァリアブルドライバーを外すとバージョンアップユニットと合体させる。そして腰に巻いた。

 

<ヴァリアブルドライバーV2!>

 

メモリアライズバッジを起動させ、ベルトに取り付ける。

 

<バージョンアップ・ローディング! バージョンアップ・ローディング!>

 

背後から設計図が出現。バラバラになり蜘蛛を形取る。ソートはがグリップを押し込む。二人が高らかに宣言する。

 

「『変身!!」』

<世界を守るライダー! 我らを繋げるスパイダー!!>

<スーパー・メモリアライズ! ウルトラ・バッチグー!!>

 

創斗の体が赤のラインの入った銀色のアンダースーツに覆われる(・・・・・・・・・・・・・・・)。そこに蜘蛛が再びバラバラになって装甲として装着された。

これこそかヴァリアブルの新たな姿。仮面ライダーヴァリアブル ウルトラスパイダー。

彼らは人差し指をアクロとアイに向ける。

 

「大事な事だからな。最初に言っておくぞ」

「『おれ/わたし達の勝ちだ!!」』

 

ヴァリアブルが歩き出す。迎え撃つはアクロ。双刀を振り回して迫る。二振りの剣が振り下ろされた。ヴァリアブルはヴァリアブラスターを取り出し、ブレードモードで受け止める。

 

「『はあああっ!!!」』

 

声を重ね、ヴァリアブルが力を込める。瞬間、呼応するようにベルトより発生したエネルギーが赤いラインを伝って両腕に流れ込む。双刀が弾かれアクロの体勢が崩れた。すかさずその胴へ向けて蹴りを叩き込む。再びエネルギーがベルトより発生。今度は右足へ流れ込んだ。その一撃はこれまでの比ではない。アクロの体が工場の壁を破壊しながら吹っ飛んでいく。

 

「アクロ!?」

 

思わず叫ぶアイ。

 

「何……この威力!?」

 

今までヴァリアブルが出したことのない高出力に流石のアイも動揺を隠せないでいる。

 

『これがシンクロシステムの力……』

「最高だな」

 

シンクロシステム。それはかつてヴァリアブルに搭載しようとして断念したシステムだ。創斗とトワルの動きがシンクロした時、最大限のパフォーマンスを発揮させるように設計されていたのだが、迷わず動けるが集中すると視野が狭くなる創斗と幅広くルートを探す事が出来るが考えすぎて咄嗟に動けないトワルでは上手くシンクロ出来なかった。

しかし今は違う。激しい戦いを経て、互いの理解が深まった今ならばこの力を使える。そう確信している。

 

「くっ!」

 

アイがヴァリアブルへ迫る。重心を低くすると素早く懐に潜り込み、足払い。

 

「『はっ!」』

 

ヴァリアブルがジャンプ。アイの攻撃が空を切った。そしてヴァリアブラスターを振るう。アイはバックステップで距離を取った。しかしヴァリアブルも負けてはいない。着地と同時に距離を詰める。

 

「!?」

 

アイが仮面の奥で驚愕する。軸足にエネルギーが宿り、想定より早くヴァリアブルが到達のだ。そのまま左の拳が唸る。今度はエネルギーが宿らない。アイがかろうじて受け止める。

 

(やり辛い……)

 

内心で彼女は悪態をつく。

シンクロシステムが発動するのは創斗とトワルの動きが一致した時。そして、それが発動する瞬間は二人にも分からない。互いの動きを意図して一致させるのは至難の業だからだ。本人達にも分からないなら相手には予測するのさえ難しい。

その事が予測外の有利を生み出していた。その上で二人は思考する。

 

(考えろ。トワルならどう選択する)

(ソートならきっもこう動く)

 

死角からアクロが迫る。アイもヴァリアブラスターを弾き、反撃に出る。双刀と鉤爪がヴァリアブルへ襲いくる。

 

「トワル、踏みつけるぞ!」

『了解です!』

 

右足にエネルギーが流れ込むとヴァリアブルが地面を踏みつける。コンクリートが破壊され、土煙がアイとアクロの視界を塞ぐ。構わず二人は攻撃を敢行。しかし彼女達の攻撃が空を切った。煙が晴れるとそこにヴァリアブルの姿は無い。

 

「どこに!?」

 

背後から気配を感じる。アイが振り返ると上からヴァリアブルが降りてきた。

 

「まさか天井から……!?」

「ご明察」

 

手から発射された糸がアイに絡みつく。両手を拘束され身動きが取れなくなった。すかさず蹴りを入れるヴァリアブル。アイはそのままアクロの元へ蹴り飛ばされた。アクロが彼女を受け止める。アクロもアイも今は攻撃が出来ない。千載一遇のチャンスだ。

 

「決めるぞトワル!」

『ええ、行きましょうソート!』

 

ヴァリアブルがグリップを展開し、メモリアライズバッジのボタンを押す。

 

<アクセス!>

 

流れるようにグリップを押し込むとベルトからエネルギーが体全体に満遍なく流れ込む。両手から連続で蜘蛛の巣を発射。アクロとアイを囲むように張り巡らされた。

 

「『はあっ!!」』

 

ヴァリアブルが跳躍。蜘蛛の巣から蜘蛛の巣へと飛び移りながら加速していく。勿論、すれ違いざまに攻撃を入れるのは忘れない。移動速度も攻撃の威力も今まで以上。目に見えない程に加速しながら二人にダメージを与えていく。そして、

 

<スパイダー!>

<ウルトラヴァリアビリティストライク!!>

 

もはややるべき事はただ一つ。必殺の一撃を叩き込む事。創斗とトワルの動きが一致するのは必然。

 

「『はああああああああっ!!!!」』

 

ライダーキックが迫る。

 

「ちっ」

 

拘束を解いたアイがアクロを突き飛ばす。彼を助ける為でなく自分が生き残る為にヴァリアブルの方へ向けて。

迎え撃つアクロ。しかしその威力はヴァリアブルの方が上。アクロの姿が一瞬にして消える。その刹那、工場の壁が破壊され、耳を劈く音が外へと流れていく。

悠々と着地を決めるヴァリアブル。仮面の奥で苦々しい表情を浮かべながらアイが音もなく消え去った。

 

「戦闘……終了……」

 

変身を解いた創斗がトワルの腰へドライバーを取り付ける。意識が体に入り、瞳に光が戻った。トワルが顔を上げるとそこには創斗が頭から血を流している。

 

「ソ、ソート!?」

「お?」

 

頭に手を当てて手のひらを見るとそこにはべっとりと血が付いている。

 

「まぁ、あれだけ激しく動いたら傷口開くわな」

 

痛みを堪えるようにしかめっ面で創斗がごちる。

 

「言ってる場合ですか!」

 

トワルが創斗の肩に手を回し体を支える。普段なら恥ずかしくて拒否するのだが今回ばかりはそうもいかない。ここで拒否したら間違いなくトワルが拗ねる。なので創斗は受け入れる。

 

「帰るか」

「そうですね」

「そうだな。俺もそれが良いと思う」

 

にっこりと笑い合う創斗とトワル。彼らの会話に別の声が混じった。二人が前を見ると心護が仁王立ちしていた。堅物な彼にしては珍しく良い笑顔だ。額に青筋も浮かんでいる。

 

「基地の設備でしっかり治療を受けながら"お話し"といこうか」

 

そう言って近寄ってくる。彼は怒っていた。勝手にいなくなった事に。これは不味い。不吉な気配に二人は背筋を凍らせる。

 

「よ、予定変更だ! トワル、店へ戻るぞ!!」

「うん! そうしましょう!!」

 

二人は慌てて踵を返し、裏口の方へと逃げ出す。しかし、相手が上手だった。

 

「そう問屋は卸さないってね」

「悪いな二人共」

 

裏口の前ではエフェクトと錬児が待ち構えていた。後ろを見れば心護が迫っている。まさしく前門の虎、後門の狼。

 

「さぁいこうか?」

 

あっという間に捕まった二人。三人に囲まれ完全に詰み。

 

「「い、いやぁぁぁぁ!!!!」」

 

創斗とトワルの悲鳴が工場内に響き渡るのだった。

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