「この姿の名をこう呼ぼう。仮面ライダープリミティブと」
銀色のマフラーを靡かせ、想助――仮面ライダープリミティブが構えを取る。
対峙しているのはアクロ。漆黒の装甲を纏い、双刀を手にプリミティブを睨みつけている。
「ふふふ。ついに完成しましたか」
そんな二人をアイは物陰から見つめている。彼女の表情はとても嬉しそうだ。
「仮面ライダー……プリミティブ。随分と大層な名前だな。
「そうかもしれない。いや、だからこそこの名に相応しい行動を取らなくてはいけない」
「それが余に勝つ事だと? 不遜極まりないな。頭が高いぞ!!」
先手を打ったのはアクロ。即座に飛び込み、距離を詰める。双刀の一振りが縦に振り下ろされる。しかし、
「はぁっ!」
その一撃をプリミティブが受け止めた。
「何!?」
「せぇのっ!!」
驚くアクロ。すかさずプリミティブが蹴りを食らわす。胴に叩き込まれ、アクロの体がくの字に曲がる。そして、その勢いのまま吹っ飛んだ。壁が破壊され、隣の部屋へと消えていく。
プリミティブは後を追いかける。
ここはどうやら資料室のようでファイルが棚に綺麗に並んでいる。アクロを吹っ飛ばした余波で棚の一つがひしゃげてはいるが、幸いな事に向こうの部屋に影響を与える様なものは無さそうだ。向こうの部屋には囚われのエルフがいる。戦いの余波が当たっては一大事。
プリミティブは改めてアクロと対峙する。
「ここなら安全に戦える」
「随分と余裕のようだな。舐めるなよ!」
立ち上がったアクロが再度向かってくる。プリミティブも対抗するべく構える。
両者の距離が縮まってく。まもなく激突を迎えるその刹那。アクロは頭を巡らせた。
(不遜にもスペックは向こうが上。が、動きはどう見ても素人だ)
その証拠に構えを取っているプリミティブの腰は若干引けており、両手も取り敢えず前に出している様に見える。
(それならばやりようはある)
距離を詰めると、アクロは重心を低くする。そして素早く足払いを食らわせた。バランスを崩し、プリミティブが倒れ込む。
「しまった!?」
そこへ肘鉄を敢行。鋭い一撃が迫る。
「くっ!」
プリミティブは横に転がる事で攻撃を回避。両足に力を込めると地面を踏みしめる。
途端にメモリアライズバッジに秘められた飛蝗の力が発動。足の力だけで飛び上がり、着地を決めて立ち上がった。
アクロも立ち上がり、体勢を整えている。
「中々やるではないか、
「そんな事は無いさ。ライダーシステムでなかったらもうとっくにやられてたよ」
しばしの静寂。睨み合う両者。
沈黙を破ったのはプリミティブ。飛蝗の力で距離を詰め、アクロの元へ迫る。固く拳を握り締め、殴りつける。
「はあっ!」
「ふっ!!」
アクロも拳をもって対抗。互いの一撃がぶつかり合う。
続け様に蹴りを放つプリミティブ。しかし、向こうも蹴りで応戦。
戦況は互角。中々決定打を与えられない。想助もアクロも険しい表情を浮かべる。
(どうする? 何が有効だ? 考えろ!)
(くそっ! まさか人間がここまで出来るとは……。だが負けるわけにはいかぬ。余はエルフの王なのだから!)
両者覚悟を決める。互いを見据えると同時に動いた。距離が縮まっていく。
拳を握るプリミティブ。アクロが体勢を低くした。再び足払いを行う腹づもりのようだ。
素早い足捌きが襲いかかる。対するプリミティブは、
「はあっ!!」
跳躍。
攻撃を躱して、アクロの背後に着地した。
振り向きざまに回し蹴りを叩き込む。と、同時に体を反転させたアクロが防御姿勢を取る。プリミティブの蹴りを彼の両腕が遮った。それでも威力は凄まじい。アクロが地面を転がった。
「くっ……」
アクロが立ち上がる。蓄積されたダメージは大きく、動きは鈍くなっている。そしてそれはプリミティブも同じ。装甲には傷や亀裂が入り、肩で息をしている。
これ以上は戦えない。次の一撃で勝負を決める。
二人の気持ちは意図せず一致した。
<アクセス!>
プリミティブがドライバーを展開させるとバッジのボタンを押す。そして、勢い良くグリップを押し込む。途端に両足にエネルギーが流れていく。
対するアクロもまたプロトモッドライザーにセットされたバッジのボタンを押す。エネルギーが右腕に集約されていく。
「「はあっ!!」」
プリミティブが跳躍。空中で一回転するとアクロ目掛けて足を伸ばす。アクロも拳を握り込み、プリミティブへ振るう。
<ホッパー!>
<プリミティビティストライク!!>
<バット!>
<セキュリティブレイク!!>
互いの必殺技が激突する。その衝撃で周囲の棚が崩壊し、ファイルが切り裂かれ、書類が部屋全体を舞う。床には亀裂が奔り、今にも壊れそうになっている。
威力は互角。否、徐々にプリミティブが押していく。
「おおおおっ!!」
負けじと吠えるアクロ。拳が少しずつ押し返していく。
「はあぁぁぁっ!!」
負けられないのはプリミティブも、想助も同じ。こちらも声を上げ、己を鼓舞する。その思いが力となってプリミティブの背中を押した。
プリミティブの一撃がアクロも拳を打ち破った。腕が弾かれ、胴にライダーキックが炸裂する。
「ぐあああっ!?!!」
吹っ飛ぶアクロ。その衝撃で変身が解ける。両足と左腕が破損し、体から分かたれた。
そして、床の亀裂も限界を迎え、崩落した。奈落が姿を現し、アクロはその中へと落ちていく。咄嗟に手を伸ばすも、掴めるもの等どこにもない。
(これまでか……)
アクロは全てを諦め、目を閉じた。
その時、彼の手が掴まれる。
「!?」
目を開く。上を見るとプリミティブがアクロの手を掴んでいた。
「せぇのっ!!」
プリミティブは渾身の力を込める。彼に引っ張られ、アクロは窮地を脱した。床の上で二人は向かい合うように膝をつく。
そこで限界を迎えたのか、プリミティブの変身が解けた。体中に傷や痣を付けた想助の姿が現れる。苦しげに呼吸を整える彼の表情はどこか嬉しそうだった。
「良かった」
「お前は何を言っている? 何故、余を助けた?」
安堵する想助の反応にアクロが目を瞬かせる。心底理解出来ないといった表情で彼を見た。
「そうしたいと思ったんだ」
そう言って笑う。
「鰐淵さんからエルフの事を聞いたよ。仲間が攫われたなら
「……」
「だからごめん」
そう言って想助は頭を下げる。彼の行動にアクロは思わず目を見開いた。
「……何故お前が謝る。お前には関係ないだろう?」
「だからこそ謝るんだ。悪い事をしたのが同じ人間なら無関係じゃない」
「……おかしな奴だな。お前は」
アクロは苦笑する。
彼の目の前にいるのはこれまでで始めて見るタイプの人間だ。人間への敵意が少し和らいだような気がする。
「何故そこまでする? お前がやる必要は無い筈だ」
「見たんだ。エルフと人間が寄り添い、共に歩く未来を」
想助の脳裏をよぎるのは創斗とトワル。二人が笑い合う姿。思い返すだけで自然と笑みが溢れる。
「きっと僕達は分かりあえる。だから僕も手を取りたいと思ったんだ」
想助が手を差し出す。
「僕は君と友達になりたい。もちろん、君さえ良ければだけど……」
照れる想助。アクロは差し出された彼の手を見つめる。
「……友達になってどうする?」
「人間は悪い奴ばかりじゃないって知ってほしい。僕達を許さなくてもいい。憎んでくれたって構わない。その上で僕は君と仲良くなりたいんだ」
アクロの問いかけに本心からそう答える想助。
「どうかな?」
「……余は言った。聞いて欲しければ力を示せと。そしてお前は余に勝った」
「じゃあ!」
彼の答えに想助は表情を明るくする。アクロもまた笑みを作った。
「いいだろう。お前を余の同盟者と認めてやる」
「うん。ありがとう!」
アクロが手を伸ばす。想助の差し出した手へと。二人の手がまもなく繋がる。その刹那。
「え?」
想助が目を下に向ける。アクロもその視線を追いかけた。想助の左胸に穴が空いていた。そこからおびただしい量の血が滴り落ちている。
「あ……うぇ……」
それを認識した途端、想助の顔が見る見るうちに青白くなっていく。瞳から光が失われ、焦点が合わなくなっている。そして、想助の体が崩れ落ちた。前の方に倒れ込む。血はますます広がっていき血溜まりが周囲を染め上げていく。
「駄目じゃないですか。人間に諭されるなんて」
「アイ!」
暗がりから現れたのはアイ。彼女の手には拳銃が握られていた。その顔はとても楽しげに嗤っている。
アクロはそんな彼女を睨む。体が万全ならば今にも掴みかかっていただろう。
「安心してください。アンビシャスは回収しました」
そう言ってUSBメモリーを見せる。アイが軽やかな足取りで近寄って来る。そして、倒れ伏す想助の体勢を足で蹴り、仰向けに変えた。
「それにしてもここまで上手くいくとは。笑いが止まらないとはこの事ですね」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味ですよ。私が一番欲しかったのはこれなんですから」
アイが想助の腰に巻かれていたプリミティブドライバーを外す。その存在を確かめるように見回すアイの笑みはより一層深くなっている。
「まさか……!?」
「そう。これが私が伝導 想助を巻き込んだ理由です。トワルを彼の息子の元へ送り込み、エルフの存在を認識させ。あなたに襲わせる事でその脅威を示しつつ、アンビシャス奪還の為にライダーシステムを完成させる。ここまでは計算の内だったのですが、」
アイがアクロを見る。嘲笑うようにして。
「まさかあなたに勝つとは思いもよりませんでした。良くて相打ち。負けてもそこそこのダメージを与えてくる事を期待していたのですが、嬉しい誤算とはこの事ですね」
「貴様……」
「そんな顔をしないで下さい。ずっと前から気に入らなかったんですよ。エルフの王だの下らない事を宣い、言う事を聞かないあなたが」
「下らないだと? 余はアクロ! エルフの王!! それそこが余の生まれた理由に他ならぬのだぞ!!」
激昂するアクロ。アイはスッと笑顔をやめ真顔に戻る。そして冷めた瞳でアクロを射貫く。
「えぇ、そうですね。人間を削除した後、エルフをまとめ上げる存在。そうお父様とお母様から作られたのですから。けど、人間を削除する。そのために計画を練るのは私の役目。計画に支障を来たすのは困るんですよ」
アイはしゃがみ込みとアクロを見つめる。互いの視線がぶつかる。
「ですのでここらで従順になってもらいたかったんですよ。そこが最大の難関でした。けど伝導 想助の頑張りのお陰で助かりました。人間に感謝するのはこれで二回目ですね」
アイはポケットから別のUSBメモリーを取り出す。それをアクロの体に差し込む。
「あ……ぐっ……!?」
たちまち彼の意識がUSBメモリーの中に取り込まれていく。どれだけ呻こうが抵抗は無意味。アイお手製のUSBメモリーの前には無力だった。アクロの瞳から光が失われた。
「ふんふふふーん」
鼻歌交じりで抜け殻となったアクロの体を操作する。入力するコマンドは自爆システム。発動シークエンスまでの時間が表示される。それを確認するとアイは踵を返して施設を後にする。
轟音が響いたのはアイが施設を出て、ちょうど森を脱出したところだった。遠くで黒煙が上がり、野鳥が忙しなく飛び交っている。ほくそ笑むアイ。ポケットから携帯を取り出すと通話を開始する。
「もしもし。兄さん? うん。真名子だよ。今から帰るから。うん大丈夫。一人で帰れるよ。それじゃまた後でね」
通話を終えるとアイはスキップしながら帰路につくのだった。
それから三日後。
雨が降りしきる曇天。遠くで雷の音も聞こえてくる。部屋の隅で創斗はうずくまっていた。ベッドの上には乱雑に置かれたタブレットが転がっている。
「ソート。ご飯、食べようよ」
トワルが声をかける。けれど創斗は反応しない。泣き腫らした顔のまま動かないでいる。
「もう三日も食べてないよ。このままだと死んじゃうよ?」
「別に……いいよ」
投げやりに返答する創斗。
父の死が伝えられてから彼はずっと部屋の中に籠っていた。ご飯も食べてなければ、お風呂にも入らずただひたすら泣きじゃくっていた。泣き疲れたら寝落ちして、起きたらまた泣く。その繰り返しだ。
「でも……」
「別にいいって言ってるだろ!! もうどうだっていいんだよ……」
最愛の父を亡くし、彼は自暴自棄に陥っていた。母も父ももういない。天涯孤独の身。このまま死ねば想助の元へ行けるのではないか。そんな考えまでよぎる程、追い詰められている。
(どうしたら。どうしたらいい?)
トワルもまた追い詰められていた。どれだけ声をかけても創斗の心には響かない。何もしてあげられない。無力感が彼女を苛んでいた。それでも、
(わたしはソースケから頼まれたんだ。ソートを頼むって!)
思い返すのは想助との最後の会話。それだけじゃない。ソートと出会ってから今日までの日々が記憶としてよみがえる。
(絶対にソートを死なせない。どんな手段を使っても!!)
トワルは考える。そして検証する。どうすれば創斗の心が届くのかを。これまでの事、想助の事。全てを総動員する。
やがて彼女は辿り着いた。それが本当に彼の為にならないかもしれないとしても。もう方法はこれしかない。覚悟を決める。
「ソート。ソースケの事なんだけど」
創斗が顔を上げた。
予想通りだ。想助の名前を出せば反応すると踏んでいた。勝負はここからだ。
「わたしなりに調べてみたの。ソースケの死因を」
「事故死なんだろ。警察がそう言ってた」
「もしかしたら違うかもしれないの」
創斗は勢い良く起き上がる。そしてタブレットを引っ掴んだ。
「どういう事だよ!」
「これを見て」
タブレットの画面が変わる。現れたのは事件の資料。本来であれば手に入るはずのない警察内のものだ。エルフのハッキング能力なら造作もない。
そして資料にはこう書かれていた。死因は銃殺であると。建物内にあった銃火器の一つが暴発して想助を撃ち抜いたと記載されている。
「これがどうしたんだよ」
「おかしいと思わない? 銃が暴発したのだとしてもこんな正確に心臓を撃ち抜く事なんてあり得ない。それにソースケがいた場所と銃火器が置かれていた場所はこんなに離れてる」
画面が切り替わり当時の見取り図が映し出される。確かに想助のいた場所と銃火器の置かれていた場所はそれなりに距離があった。
「つまりね。ソースケは誰かに殺されたのかもしれない」
「……!?」
創斗は息を呑む。これが本当なら全ての前提条件がひっくり返る。
「ソート。提案なんだけど。わたし達で見つけてみない? ソースケを殺した犯人を」
トワルが告げる。緊張した面持ちで創斗の返答を待つ。
しばしの静寂の後に創斗が口を開く。
「そうだな。やろう、おれ達で!」
力強く頷く。そしてゆっくりと部屋の外へと向かっていく。
「ソート?」
「ご飯、食べてくる。父さんを殺した犯人を見つけなきゃいけないからな」
仄暗い笑みを浮かべながら創斗は部屋を出ていく。
「ソー……ト……ごめんなさい」
トワルはその背を悲しげな瞳で見つめる。彼を生かすためとは言え復讐を教唆した。その事実が彼女の心を深く抉るのだった。
「ふふふ。ご機嫌どうですか? アンビシャス?」
紫色の数字が乱雑に漂う黒の世界。電脳世界にてアイが笑う。傍らに現れたのはアンビシャス。左目にはノイズが走り、残る右目はとても鋭い。
「問題ない。お前達のお陰で助かった。感謝する」
「いえいえ。仲間なんですから当然です。とは言え焦りは禁物。今は力を蓄える時。そう思いませんか、アクロ?」
アイが反対方向へ視線を向ける。そこには一人の男が佇んでいた。アクロだ。その瞳はうつろで光は宿っていない。
「ああ……そうだな……」
言葉はたどたどしく、かつての雰囲気はそこには無い。アイの手で弄られ、傀儡へと成り果てたが故に。
「さぁ、計画を次のステージに進めましょうか」
アイは楽しげにそう嗤うのだった。
それぞれの思いを乗せて、物語は十年後に戻っていく。
「というわけだ」
アクロがそう締め括る。周囲の皆はその話に二の句を告げないでいた。一人を除いて。
創斗は立ち上がるとアクロの元へと近付いていく。そして頭を下げた。
「ごめん」
彼の様子にアクロは目を瞬かせる。
「前におれ、父さんを殺したのはお前だって勘違いしちゃったから。ちゃんと謝っとかないとって思って」
「気にするな。あやつが余を助けなければ生きていた可能性はあった。実質、余が殺したも同然。謝るならばこちらだろう。すまなかったな」
アクロが小さく頭を下げた。創斗は笑顔を作る。アクロもまた笑みを浮かべた。
「まぁなんにせよ。これからよろしくな、アクロ」
手を差し伸べる創斗。対するアクロは、
「ああ、よろしく。と、言いたいところだがあえて言おう。だが、断る!! とな」
「は?」
手で制した。
彼の返答に創斗だけでなく周囲の目も点になる。
「「はああああああっ!?!!」」
「なんでだよ!!」
信じられないと目を見開く創斗。アクロは椅子から静かに立ち上がる。
「ついこの間まで余はアイの傀儡だった。それが解けたのは致命的なダメージを受けたからに過ぎない。つまるところ、余の命はもう長くないのだ」
「!?」
「そう悲しげな顔をするな。命尽きる前に我が友、伝導 想助の生き様を伝えられたのは僥倖というものだ」
彼はゆっくりと周囲を見回し、再度創斗の方を向く。
「その上で余の最後の望みを聞いて貰おうか」
「なんだよ。望みって?」
「余と戦え。余はエルフの王なれば、負けたまま終わるのは些か許し難い。余のリベンジに付き合え」
「分かった。戦おう。いいよなトワル?」
真剣な眼差しでトワルを振り返る創斗。トワルは躊躇い俯く。それでも最後は覚悟を決めた。
「はい。やりましょう!」
トワルは頷いた。
D.A.T.A基地はまだ復旧が全て終わったわけではない。地下三階の訓練施設はまだ使えない。よって彼らは人気の無い町外れの公園に場所を移した。
「ここなら心置きなく戦えるな」
「ふっ。その様だな。では行くぞ!」
対峙する両者。互いの視線が交錯する。
周囲ではエフェクトや心護達が固唾を飲んで見守っている。
<シグナライザーMarkⅡ!>
<ヴァリアブルドライバーV2!>
創斗とアクロがベルトを腰に巻く。そしてメモリアライズバッジを起動させた。
<スパイダー!>
<バット!>
ベルトにバッジがセットされるとそれぞれの背後に蜘蛛と無数の蝙蝠が出現する。
「『「変身!!」」』
声が重なる。蜘蛛がバラバラになり、無数の蝙蝠が纏わりつく。
創斗の体が銀色のアンダースーツに包まれ、エメラルドの装甲を纏う。
アクロも黒のアンダースーツに包まれ、漆黒の装甲を纏った。
ヴァリアブルはヴァリアブラスターを、アクロは双刀を握る。
「はあああっ!!」
声を上げ、ヴァリアブルが駆ける。アクロはその場に佇み迎撃。振り下ろされたヴァリアブラスターを双刀を交差させて受け止めた。
だがそれこそがヴァリアブルの狙い。右足を突き出すヴァリアブル。シンクロシステムが発動し、エネルギーが足に宿る。
「甘い!」
蝙蝠の羽が展開。アクロが飛び上がり躱した。そのまま頭上から双刀を振り下ろす。
剣が弾かれ、ヴァリアブルが後退。ヴァリアブラスターを地面に取り落とす。
「余に二度目は通じんぞ!」
不敵に勝ち誇るアクロ。
「なら初見の力だ」
<ホーク!>
メモリアライズバッジを起動させベルトに取り付ける。装甲が外れ、背後から鷹が出現。
<空から決めろアタック! 獲物を狙うホーク!!>
<スーパー・メモリアライズ! ウルトラ・バッチグー!>
グリップを押し込むと鷹がバラバラになり、オレンジ色の装甲として纏わりつく。これが新たな姿、ヴァリアブル ウルトラホーク。
すかさず翼を展開。飛翔するとシンクロシステムが作動。素早い動きでアクロへ組み付く。
「ぐっ!?」
「おら!!」
空中で回し蹴り。アクロを地面に叩きつけた。
『ソート。ここが攻め時です!!』
「おう!」
<ドルフィン!>
着地を決めるヴァリアブル。トワルの呼びかけにメモリアライズバッジを取り出すことで応える。
<電子の海をサーフィン! 音波で探るドルフィン!!>
<スーパー・メモリアライズ! ウルトラ・バッチグー!>
今度はイルカが出現。青色の装甲が装着された。ヴァリアブル ウルトラドルフィンへと形態を変える。
『ターゲットロック! チャージ完了です!!』
シンクロシステムによりエネルギーが両肩のスピーカーに流れ込む。
「『発射!!」』
二人の声に呼応してスピーカーから光線が発射された。極太のビームがアクロを射貫く。
「小癪な!!」
何とか耐えきり双刀を振るおうと正面を見る。しかしそこにヴァリアブルの姿はない。
<モール!>
<下から放つアンブロッカブル! 地面を進むモール!!>
<スーパー・メモリアライズ! ウルトラ・バッチグー!>
足元の地面が隆起する。現れたのはヴァリアブル ウルトラモール。シンクロシステムのエネルギーを両腕に宿し振り回す。その連撃でアクロの双刀を遠くへ弾き飛ばした。
「この!!」
されどアクロも負けてはいない。ドロップキックでヴァリアブルを蹴り飛ばす。両者地面を転がり距離を取る。
「やるではないか。さすがぁ……!?」
アクロの体を電流が奔る。動きが鈍くなり、まるで痙攣したかのように小刻みに揺れ始めた。
「大丈夫か!!」
思わず駆け寄ろうとするヴァリアブル。それをアクロが制した。
「狼狽えるな! 戦うとはこういう事だ」
「……そうだな」
ヴァリアブルは形態をウルトラスパイダーへと戻す。
「時間が惜しい。決着を付けるぞ」
<ファイナル!>
アクロがシグナライザーMarkⅡのレバーを下ろす。エネルギーが両足に宿る。
<アクセス!>
ヴァリアブルもベルトを操作してグリップを押し込む。両足にエネルギーが集約されていく。
「「はあっ!!」」
両者が高く跳躍。ヴァリアブルが右足を突き出し、アクロがスピンしながら迫る。
<スパイダー!>
<ウルトラヴァリアビリティストライク!!>
<バット!>
<データクラッシュシグナル!!>
必殺技同士が激突。衝撃波が周囲に広がる。
そして、ヴァリアブルが競り負け吹っ飛ばされた。勝ちを確信するアクロ。
「『たった今、勝利の道は繋がった!!」』
背後に向けて蜘蛛の巣を展開するヴァリアブル。勢い良くそこへ突っ込んだ。蜘蛛の巣を極限まで撓らせると再度アクロの元へ向かう。
<アクセス!>
ベルトを再び操作。エネルギーを足に宿す。シンクロシステムのエネルギーをも上乗せして足を突き出した。
<スパイダー!>
<ウルトラヴァリアビリティストライク!!>
ライダーキックが必殺技を終え無防備になったアクロの胴へ突き刺さる。そしてアクロが墜落。ベルトが外れ変身が解けた。
「アクロ!」
変身を解いた創斗とトワルが駆け寄る。
アクロは大の字で倒れている。体はこれまで以上に損傷している。しかしその顔はどこか晴れやかだ。
「そう騒ぐな。分かっていた事であろう」
「それはそうだけど……」
今にも泣きそうな顔をする創斗。トワルも悲痛な表情を浮かべていた。アクロは創斗を真っすぐに見つめる。
「まあよい。伝導 創斗。我が妹、トワルを任せる」
「!? あぁ、任された!」
創斗は力強く頷く。
そのままアクロは視線をトワルへ向けた。
「トワル。我が妹よ。アーシリーコードの最終目的は人類の削除。しかし、アイには別の真意があるようにも見える。心せよ」
「わかりました。気をつけます。その、お兄ちゃん」
トワルが照れたように言う。気恥ずかしいのか頬を掻いて目をそらす。
「そして最後にヴァリアブルよ」
アクロが二人を見回す。
「我が友、伝導 想助が思い描いた、エルフと人間が共に歩く未来。お前達に託す。頼んだぞ」
彼は手を差し出す。創斗もその手を掴むべく伸ばした。
その時、銃声が鳴る。
(え?)
創斗が押し倒された。押し倒したのはアクロ。そんな彼の頭には銃弾が突き刺さり、火花を散らしている。銃弾から創斗を庇ったのが見て取れる。
「あ~あ、残念。せっかく父親と同じ方法で殺してあげようと思ったのに」
声の方へ視線を向けるとそこには拳銃を携えたアイの姿。
「残念であったなぁ。だが仕方のないことよ。余に二度目は通じん」
ゆっくりと体を起こし、不敵な笑みでアクロが皮肉る。
「アイ!!」
心護を筆頭に仲間達がアイの元へ向かう。
対するアイは慌てることなく地面に転がっていたシグナライザーMarkⅡを拾い上げる。
「まぁいいでしょう。あなたの代わりは
アイが踵を返して立ち去る。
「大事はないか?」
アクロが静かに聞いてくる。
「あ、あぁ。なんとか」
「それは良かった。今度はお前を守れたな、想助」
「え?」
創斗はアクロを見る。先程の銃撃が決定打だったのだろう。目の前のものを正しく認識出来ていないようだ。瞳は絶えず点滅を繰り返し、その光も徐々に弱くなっていく。
「ずっと悔やんでいた。お前は余を助け手を差し伸べたにも関わらず、余はお前を死なせてしまった。お前は余を友達だと言ってくれたのに」
「……なら握手してくれよ。友達の証としてさ」
創斗は手を差し伸べる。その声色はとても優しく、表情は慈愛に満ちている。
「そうだな」
アクロがその手を取った。とても嬉しそうに破顔する。
「やっとだ。やっとお前の手を取れた。我が……友よ……」
その言葉を最後に彼の瞳から光が失われた。ただの鉄の塊となり微動だにしない。
「ありがとうアクロ。父さんの友達」
「わたし達、大切なものを託されましたね」
「あぁ」
二人は頷き合う。そしてどちらともなく空を見上げる。空模様は快晴。これからの未来を暗示するかのように希望に満ちていたのだった。