仮面ライダーヴァリアブル   作:puls9

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file34 プランニング・ビギンズ

「お疲れ様でした」

 

民家の玄関口から創斗とトワルは外へ出た。創斗は肩から工具箱を掲げている。

本日はエレクトロ伝導の通常業務。依頼を受けて現地に赴き、機械修理を行なっていた。

 

「ありがとうございました」

「いえいえ、どういたしまして」

 

頭を下げる依頼主に笑顔で応えるトワル。軽く会釈をして、二人は民家を後にする。

 

「本日のお仕事終了っと」

 

大きく伸びをする創斗の顔は晴れやかだ。一仕事を終えた後の爽快感というのはとても気持ちが良い。その時、ぐぅ〜とお腹の音が鳴る。

 

「お腹でも空いたんですか?」

 

お腹をのぞき込むように見るトワル。創斗は腹を擦る。すると若干の空腹感が襲ってきた。

 

「そんなところだな。どっかで軽く食べてっていいか?」

「構いませんよ。後は特に何もありませんし」

「了解」

 

二人は歩く方向を変える。自宅ではなく商店街の方向へ。

 

「ん?」

 

その道すがら、いい匂いが創斗の鼻腔を刺激する。香ばしいソースの匂いだ。匂いに釣られ、創斗の足取りは自然とそちらの方へ変わっていった。

辿り着いた先は神社だった。脇の方に屋台が設置されている。どうやらそこが匂いの元のようだ。

 

「へぇ~。焼きそばか」

 

屋台の屋根部分には大きく焼きそばと書かれた暖簾が付いていた。近くに来ると本格的にお腹が空いてきた。財布を握り締め、創斗は屋台の前に来る。店員に注文を伝える。

 

「すいません。焼きそば一つ……!?」

 

店員を見た創斗が固まる。

 

「ソート、どうしたんですか? え……」

 

不審に思ったトワルが後から顔を出す。そして驚愕した。店員はつぎはぎだらけの服の上にエプロンを纏い、左目には眼帯がついている。

 

「「あ、アンビシャス!?」」

 

店員の正体はアンビシャスだったのだ。

創斗とトワルの驚き様にアンビシャスはバツの悪そうな表情を浮かべる。

 

「どうしたんだい? 問題でも起きたんか?」

 

騒ぎを聞きつけて奥から老婆が現れた。腰が悪いのか体をくの字に曲げ、杖をついている。眉をハの字に曲げているせいか不機嫌に見える。しかし、創斗達の姿を確認すると人当たりの良い笑顔に変わった。

 

「あぁお客さん。いらっしゃい。何かうちのが粗相でもしてしまいましたか? 申し訳ありません。こいつ本日からの新人でして、大目に見ていただけると助かります」

「あー、いえ、大丈夫です。知り……合い……?だったもんで。驚いただけです」

「おや、そうなんですかい。おい、お前さん! 知り合いだからって礼儀の欠いた態度はするんじゃないよ」

「分かっている」

 

ペコペコと創斗達に頭を下げていた老婆はアンビシャスの方を向くと元の不機嫌そうな表情に戻る。そして厳しい言葉を投げかけた。対するアンビシャスは不承不承に返事をする。

 

「それじゃ頼んだよ。あ痛てて!! 」

 

アンビシャスに激励を送るも束の間、老婆は腰を押さえてしかめっ面をした。そのままのそのそと奥へと引っ込んでいく。

 

「……ええっと、今のは?」

 

ややあってトワルが尋ねた。

 

「命の恩人だ」

 

よほど言いたくなかったのか眉間に皺を寄せている。

 

「で? 注文はなんだ?」

「え? あぁ、焼きそば一つ」

「分かった」

 

アンビシャスは傍らから袋麺を取り出した。慣れた手つきで封を切り、麺を鉄板の上に投入する。途端にけたたましい油のはねる音が響き始めた。彼は見事なヘラ捌きで麺をほぐしていく。

 

「単純な話だ。補給出来ず倒れていたところを助けられたんだ。その際にあの人間は腰を痛めてな、しばらく屋台を手伝う羽目になった」

 

エルフも無尽蔵では無い。電気を繋いでデータを補給する事で生き長らえる。人間で言うところの食事だ。

 

「今まではどうしてたんだ?」

「その時はそこら辺から盗電して補給していた」

 

麺にソースをかける。香ばしい匂いが漂い始めた。アンビシャスは表情を変えぬまま淡々とヘラを動かす。麺とソースが絡み合い、茶色の度合いが大きくなっていく。

 

「今はしないんですね」

「当然だ。俺はもうアーシリーコードじゃないからな。人間を見定める以上、こちらもそれに相応しい行動を取らなければならない。それだけの事だ」

 

やがて完成した焼きそばがパックに装われる。湯気が立ち込めたそれをアンビシャスが輪ゴムで止めると割り箸を添えて渡してくる。

 

「お前ってクソ真面目なんだな」

 

パックを受け取りながら創斗が告げる。するとアンビシャスは不愉快そうに鼻を鳴らした。

 

「なんにせよ。人間と仲良くやれているようで安心しました」

 

笑顔を浮かべるトワルはとても嬉しそうだ。同族が上手くやれていると分かって安心している。

 

「用が済んだならさっさと行け。邪魔だ」

「はいはい。後でエフェクトにも教えてやるよ」

「絶対にやめろ。教えたら許さんぞ」

 

ひらひらと手を振りながら背を向ける創斗。アンビシャスの怒りの声を聞きながら、創斗とトワルは屋台を後にする。そして、近くのベンチに腰を下ろした。さっそくパックを開けると焼きそばのいい匂いがする。

 

「いただきます!」

 

割り箸を割り、創斗は勢いよく啜った。

 

 

「うまっ!」

 

それはとても美味しい味。創斗は思わず声を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤出味区のとある建物。かつてホテルとして名を馳せたその場所は時代と共に客足が遠のき倒産。今では廃墟と化している。その廃ホテルの前に二つの人影がある。エフェクトと心護だ。

彼らはエフェクトから聞かされたアンビシャスの情報によりつい先ほどまでこの建物の中を探索していた。アンビシャス曰く、この建物こそがアーシリーコードのアジトである。そう聞かされたからこそ建物内に足を踏み入れたのだ。しかし、

 

「まさか誰もいないとはねぇ」

 

エフェクトが呟く。建物の中はもぬけの殻だった。人の姿はどこにもなく、多少の家具が散乱しているだけだった。

 

「恐らくアンビシャスが離反したからだろう。向こうもそれくらいは読めたはずだ」

「それはそう!」

 

その時、仁美が二人の元に走ってきた。

 

「戎隊長! ビンゴでしたっす!」

 

出会い頭にそう告げ、手に持っていたタブレットの画面を見せる。画面の中には廃ホテルから家具や機材をトラックに運ぶ人々の姿が映し出されていた。付近の監視カメラから得た映像だ。

 

「やはりか」

「どういう事?」

「この建物は広い。その中から荷物を運ぶなら時間もかかるし、目立つ。周辺のカメラや目撃者がいるかもしれないと思って聞き込みしてもらっていたんだ」

 

タブレットを覗き込むエフェクト。彼女に真意を伝えると納得したように頷いた。

 

「とりあえずこの映像の人間を特定するぞ」

「了解っす!」

 

画面の中で背を向けていた男が反転。その顔が映し出される。そこにいたのは毒島だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

新しいアジトの廊下を毒島は歩く。すると話し声が聞こえた。声は階段の踊り場から響いてくる。

 

「なぁ、もう無理なんじゃねえか?ここん所負けっぱなしだし。」

「だよな〜。いっその事ここ抜けてさ、情報をD.A.T.Aに売れば何とかなるんじゃね?」

「いいな! そうしようぜ!!」

 

見るとアーシリーコードの信者二人が手すりに身を預けて談笑している。毒島は彼らの前に姿を現す。二人組は彼に気付き、顔が気まずい表情に変わる。

 

「あ。じょ、冗談ですよ、冗談。なぁ!」

「そ、そうですよ。そんな事しませんって!」

 

そう言って愛想笑いをしながら逃げるように立ち去ろうとする。だが毒島がそれを許さない。素早く退路を阻むとモッドライザーMarkⅡを腰に巻く。

 

<モッドライザーMarkⅡ!>

<スコーピオン!>

「電令」

 

メモリアライズバッジをベルトにセット。起動させる。

 

<ハック! クラック! バーサーク!!>

<アーシリーコード:スコーピオン! アップロード!!>

 

毒島がスコーピオン・モッドへと変身。すぐさま背中から針を伸ばす。二人組の首筋に突き刺さると毒を注入した。

 

「ぐあっ!?」

「や、やめ……」

 

みるみるうちに二人組の皮膚が紫色に染まっていく。やがて毒が全身に回り、二人は絶命。内側から溶けていき、体が消滅した。

 

「なにやら騒がしいと思えば。掃除お疲れ様です」

 

そこへアイが顔を出す。消滅した跡を冷めた目で見下ろしながら言う。

 

「アイ様!」

 

スコーピオン・モッドは変身を解き跪く。その完璧な所作にアイは満足そうに微笑んだ。そんな彼女へ毒島が言葉を紡ぐ。

 

「どうか進言させてください」

「構いませんよ。どうぞ遠慮なく」

「では。組織内でのアイ様への求心力が弱まりつつあります。このままでは瓦解しかねません。急ぎ対策を取らねばならないかと」

「なるほど」

 

毒島の進言にアイは頷く。彼女は目を閉じ、思案した。しばし踊り場に静寂が訪れる。されどそれも束の間。アイが沈黙を破った。

 

「致し方ありません。毒島、みんなを集めてきてください」

「何をなさるおつもりですか?」

「あなた達にお話ししましょう。私の真意。デジタルアップ計画について」

 

彼女の言葉に毒島は目を見開く。彼の瞳には不敵に笑うアイの姿が映し出されているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「毒島 蠍実(かつみ)。かつて大手企業に勤めていたらしいっすけど二年程前に退職しているみたいっす」

 

あれから数時間が経過した。聞き込み等を経て、監視カメラに映し出されていた男の素性が露わになる。廃ホテルの前でエフェクトと心護は仁美からの情報を通話で聞いていた。

 

「なんでも上司によるパワハラが原因らしいっす。そのせいで対人恐怖症を患ったんだとか」

「うへえ。可哀想」

 

毒島の悲惨な経歴にエフェクトは顔を顰めた。アジトの入り口。石造りの階段に座り込み、彼女は足をぶらぶらさせていた。

 

「毒島はアパートで一人暮らしをしていて、退職後は殆ど引き篭もり状態だったみたいっす。極力人前に姿を現さず、生活必需品も通販で購入してたらしいっす」

「なるほどな」

 

心護も相槌を打ちながら仁美の話を傾聴する。

 

 

「しばらくはそんな生活をしていたみたいっすけど、ちょうど去年の辺りにアパートを出ていったきり音信不通になったっす」

「つまりその頃にアーシリーコードと繋がりが出来たって事か」

「みたいっすね」

 

仁美が頷く。

傍らでエフェクトが立ち上がる。そして心護の元へと寄っていく。

 

「それでこれからどうするの?」

「取り敢えず長官に頼んで毒島を指名手配する。後は目撃情報から絞り込んで見つけ出す」

「その必要はありませんよ」

 

心護の後ろから声が聞こえた。振り返ると毒島が立っている。彼の腰にはモッドライザーMarkⅡが巻かれていた。

警戒心を強めるエフェクトと心護。心護は即座に通話を切る。

二人はそれぞれベルトを取り出した。

 

「なにやら私の事を嗅ぎ回っているようですね?」

「あぁ。この建物にお前が出入りしているって言う情報が手に入ったんでな」

 

建物を親指で差して心護が言う。

毒島は彼らを不快そうに見て、鼻を鳴らした。

 

「まぁいいでしょう。そちらからやってきてくれて好都合です」

<スコーピオン!>

 

メモリアライズバッジを起動させ、毒島がベルトにセット。彼の背後からエネルギー状の蠍が出現。威嚇をするように両手の鋏を動かしている。

 

「電令」

<ハック! クラック! バーサーク!!>

<アーシリーコード:スコーピオン! アップロード!!>

 

毒島がベルトを操作すると蠍がバラバラのパーツになって纏わりつく。彼の姿が変わる。両手に鋏、背中から無数の針を装備したスコーピオン・モッドへと。その姿を見てエフェクトと心護はベルトを腰に巻く。

 

「やるぞエフェクト」

「オッケー!」

<バタフライ!>

<レオ!>

 

二人はメモリアライズバッジを取り出し起動。ベルトに取り付けると蝶と獅子が二人の周りを回る。

 

「「変身!!」」

<Wake Up Date! バタフライ・エフェクト!!>

<シグナライザー、カスタマイズ!>

 

<覇王! 魔王! 百獣の王!!>

<データベース:レオ! ガオー!!>

 

蝶と獅子が装甲となって二人に装着された。

廃ホテルの前にエフェクト改とマルティプル。スコーピオン・モッドが対峙する。

 

<キマイライズ、レオ! ライトアーム!>

 

先手を取ったのはマルティプル。メモリアライズバッジを右のスロットへ付け変えると装甲が外れ、右腕に集中する。スコーピオン・モッドの元へ駆け出し、獅子のガントレットを振るった。

 

「はぁっ!!」

 

スコーピオン・モッドは鋏を開き受け止めた。ガントレットと刃がぶつかり合い、ギリギリと激しい音が響く。両者互角。

そこへ弾丸が発射された。それを察知したスコーピオン・モッドが後方へ飛ぶ。

 

「チッ」

 

見るとエフェクト改のエフェクタールガン改から硝煙が上がっている。弾丸は外れたが距離が離れマルティプルは体勢を整える事に成功した。

 

「流石ニ、二対一ハ不利デスネ」

「あれは!」

 

スコーピオン・モッドが左腕を持ち上げる。彼の左腕には先日アイが付けていた装置が付いていた。右手には蝙蝠のメモリアライズバッジを持っている。

 

「アイ様ヨリ賜ッタ力、使ワセテイタダキマス!」

<コピー&ペースト! バット!>

 

メモリアライズバッジを装置に取り付け起動させる。彼を挟むように二体のアクロトルーパーが召喚された。

 

「行キナサイ、アクロトルーパー!」

 

スコーピオン・モッドの指示を受け、二体のアクロトルーパーが動き出す。双刀を携え、それぞれエフェクト改とマルティプルへと向かっていく。

 

「……ねぇ、シンゴ? ワタシ達、もしかして甘く見られてる?」

「だろうな」

 

対する二人は冷静にアクロトルーパーを見据える。仮面の奥から怒りを滲ませながら。

迫りくる刃を避わすと背後を取った。すかさず銃を乱射するエフェクト改。弾幕がアクロトルーパーの動きを鈍らせた。

 

<アント!>

<ゴート!>

<スネーク!>

 

傍らでマルティプルが三つのメモリアライズバッジを起動させ、キマイライザーに取り付ける。

 

<キマイライズ、レオ、アント、ゴート、スネーク! ブレスト&ライトアーム&レフトアーム&ライトレッグ!!>

 

獅子の装甲が胸部へと付け変わり、右腕に山羊の角、左腕に盾付きの蟻の装甲、右足に蛇の鞭が装着される。

 

「おらっ!!」

 

右足を振るい、蛇の鞭が一体のアクロトルーパーの腕に絡みつく。さらに力を込め振り回し、もう一体のアクロトルーパーへぶつける。二体は折り重なりながら地面を転がった。

 

「よっと!」

 

エフェクト改が二丁の拳銃を合体させ、スナイパーモードに変形させる。そして、立ち上がろうとした一体に狙撃。弾丸が胴体に直撃し、再び地面に倒れる。

 

「へへん。このまま行くよ! ん?」

 

仮面の奥でドヤ顔をかますエフェクト。その頭上に影が差す。スコーピオン・モッドが死角から強襲してきたのだ。両手の鋏が口を開く。

 

「うぇ!?」

「させるか!!」

 

すかさず割って入ったのはマルティプル。左腕の盾で受け止めた。しかし、上から故に体重が乗った攻撃はとても重い。マルティプルが徐々に押し込まれていく。

 

「くっ」

 

さらに追い打ちをかけるスコーピオン・モッド。背中から無数の針をマルティプルの四方八方から伸ばした。とてもじゃないがこの攻撃を避けるのは難しい。

 

「気ヲ付ケロヨ。コノ針ニハ毒ガアルゾ」

 

勝ち誇るように笑うスコーピオン・モッド。間もなくマルティプルに突き刺さるはずだった。針が次々と弾かれる。

 

「!?」

 

エフェクト改がエフェクタールガン改を連射。その射撃精度は恐るべし。約七割を撃ち落とした。そして残る三割は、

 

「おりゃあ!」

<フィニッシュ オン!>

 

羽を広げ、右足にエネルギーを集約させ、エフェクト改が飛翔。空中で回し蹴り。

 

<バタフライ!>

<データストームエフェクト!!>

 

残る針を全て叩き落とした。それだけではない。空中に誘爆性の粒子を散布するおまけ付き。

 

「シンゴ、離脱して!」

「おう!」

 

マルティプルがその場を離れた。すかさず射撃。粒子が弾丸に触れ、爆発が起きる。

 

「ナァ!?」

 

爆発が連鎖していきスコーピオン・モッドが飲み込まれた。

その隙にマルティプルも動く。

 

「はっ!」

 

起き上がった二体のアクロトルーパーへ向かうと山羊の角で攻撃。反撃は蟻の盾で受け止め、蛇の鞭でカウンター。

 

<デリート!>

 

ベルトを操作。ベルトよりエネルギーが胴体、両腕、右足に流れ込む。

 

<エリミネーションファング・クアドラブル!!>

 

両腕、右足の武装からモチーフとなった動物がエネルギー体として放たれアクロトルーパー達を捉えた。最後に胸の獅子が口を開き、光線が放たれる。ダメ押しの一撃が炸裂。アクロトルーパーが光に飲み込まれ消滅した。

そしてスコーピオン・モッドを飲み込んだ爆煙が晴れる。

 

「!?」

 

そこにはスコーピオン・モッドと彼が新たに召喚したアクロトルーパー二体がいた。アクロトルーパーの体はボロボロで装甲がひび割れ、スーツは煤だらけになっている。二体は膝から崩れ落ちるとそのまま消滅。

 

「フゥ。危ウク死ヌトコロデシタ……」

 

新たに召喚されたアクロトルーパー達は盾として利用された。その為か、スコーピオン・モッドに大したダメージは見受けられない。

 

「こいつ……」

 

そのやり方にエフェクトは憤る。マルティプルもいつでも動けるように身構えていた。

 

「流石二潮時デスネ」

 

そう言うやいなやスコーピオン・モッドは跳躍。近くの民家の屋根に着地した。

 

「今回ハココマデトサセテイタダキマス」

 

民家から民家へと飛び移り、屋根を伝って走り去ってしまった。今から追っても間に合わないだろう。それを悟り、エフェクト達はスコーピオン・モッドを見送るしかなかった。

 

「逃げられた! 悔し〜いぃ!!」

 

変身を解き、エフェクトが地団駄を踏む。

 

「はい。至急、指名手配をお願いします」

 

心護も変身を解くとすぐさま和明に連絡を取った。

二人は険しい顔でスコーピオン・モッドが逃げ去った方向を見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

赤出味区にある神社の裏手。木にもたれかかり毒島が安堵の息をつく。そして、左腕に装備している装置を見る。途端に彼の脳裏にはあの時の光景が過ぎった。

 

「というのがデジタルアップ計画の全容です」

 

アイが語った計画の内容。それを聞いたアーシリーコードの信者達は色めき立つ。この計画が上手く運べばまさしく現状がひっくり返る。アイへの求心力は復活の兆しを見せていた。

かくいう毒島もこれまで以上にやる気に満ちあふれている。そんな彼の元へアイがやって来た。

 

「毒島。あなたには他にやってもらいたい事があります」

「何でしょうか? なんなりとご命令くださいませ」

「ではヴァリアブル達と戦い、データを取ってきなさい」

 

彼女は装置とバットメモリアライズバッジを差し出す。

 

「データを……ですか?」

「ヴァリアブル達を倒すにはより詳細なデータが必要です」

「かしこまりました。どうかこの毒島めにお任せください」

 

毒島は力強く頷き、装置とメモリアライズバッジを受け取った。そして、エフェクトとマルティプルと戦ったのだ。

 

「負けはしたが詳細なデータは取れた」

 

スマホを開き操作する。画面には先程の戦いの映像が流れている。特にマルティプルのメモリアライズバッジ四枚使用のデータが取れたのは間違いなく僥倖だ。それをさっそくアイの元へ送信する。

 

「さて、次は誰を狙うか」

 

そう思案した時、

 

「ありがとうございます!」

 

子供の元気な声がした。声の方を見ると焼きそばの暖簾が立てかけられた屋台が目に入る。そこには焼きそばの入った袋を手に頭を下げる少年と腕を組みながら彼を見下ろしているアンビシャスの姿。

 

「裏切り者のアンビシャス」

 

次のターゲットは決まった。毒島の目が鋭くなる。装置を左腕に取り付けると彼を狙うべく計画を考え始めるのだった。

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