仮面ライダーヴァリアブル   作:puls9

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file36 サスピシャス・ビヘイビア

アーシリーコードのアジトにて。

毒島がチップを差し出した。それを受け取るアイ。

 

「よくやりました」

「いえ。こちらこそ助けていただきありがとうございます!」

 

チップを手で弄ぶアイ。その中にはヴァリアブルを始めとした仮面ライダー達の戦闘データが入っている。そんな彼女に毒島は頭を下げた。

 

「これで計画を次の段階へ進められそうです」

 

アイが顔を上げる。彼女の前にはおびただしい数の装置。視線は中の一つ、培養槽のような形をした装置に向けられていた。

 

「毒島。あなたはしばらく大人しくしていなさい。D.A.T.Aに素顔がバレましたし。来たるべき日に向けて力を溜めておいてください」

 

そう言って取り出したのはシグナライザーMarkⅡ。かつてアンビシャスが使用し、前回奪い取ったシグナライザーを改造した代物だ。

 

「これを私にですか!?」

「ええ。あなたの活躍を鑑みても相応しいでしょう?」

「ありがとうございます! この毒島、より一層アイ様の為に励んで参ります!!」

 

シグナライザーMarkⅡを受け取り、毒島は恍惚の表情だ。

 

「ところで"塔"の方はどうなってますか?」

「問題ありません。今のところ順調です」

「そうですか。引き続き、計画を進めてください」

「かしこまりました!」

 

一礼して去っていく毒島。それを見届けたアイはゆっくりと立ち上がる。そして、培養槽型の装置の前に来るとそっと手を触れる。

 

「もう間もなくですね」

 

ほくそ笑むアイ。装置の中には人型の機械が目を閉じ、佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トワルは悩んでいた。ここ最近の周囲の反応に。

 

「おう。おはよう」

「おっは~」

「おはようございます。戎さん、玲さん」

 

エレクトロ伝導に心護と玲がやって来た。挨拶もそこそこに二人はそっと創斗に近づいた。

 

「例の"アレ"だが、場所は押さえた」

「ありがとうございます」

 

どうやら内緒話のようだ。しかし、トワルの高性能な音声認識精度ならば簡単に拾えてしまう。

 

「エフェクトちゃん達は今てんやわんやっぽいよ。特にエフェクトちゃんとアンビシャスくんは初めての経験みたいだし」

「光景が目に浮かびますね」

 

この事柄はエルフ二人も絡むものらしい。訳がわからず、トワルは頭の上に疑問符を浮かべた。

 

「何のお話しですか?」

 

とても気になり、彼女は声をかける。すると、三人の視線が集中。店内はしんと静まり返った。異様な空気が漂い始め、トワルは心の内でたじろぐ。

 

「あーっと……」

「なんていうかね〜」

「別に何でもねぇよ。ただの世間話だ」

 

心護と玲は気まずそうに笑う。対照的に創斗はいつも通りの口調であっさり告げる。顔は心護達の方を向いていた。

トワルは分かる。今の彼は明らかに誤魔化しているのだと。何故ならこういう時の創斗は相手の顔を見ないようにするのだから。

 

「わたしには出来ない話ですか?」

「……そんなところだ」

 

やはり顔を向けず、創斗が首肯した。

疎外感がトワルの胸を埋め尽くす。イライラが募り始めた。

 

「そうですか……」

 

気付かれないようにそっと息を吐き、何とか苛立ちを抑えた。それでも怒りはほんの少しだけ残っている。これ以上ここにいたらまたぶり返してしまうだろう。そう思い、トワルはエプロンを脱いだ。

 

「どうやらわたしはお邪魔なようですね。早退させてもらいます」

 

トワルは作業台の上にエプロンを置き、足早で店内を後にする。

 

「あ、おい!」

 

創斗の制止は間に合わず、店内に三人が取り残された。誰がともなく顔を見合わせる。

 

「やっぱ追いかけた方がいいですかね?」

「だろうな。経験上、その方がいいと思う」

「経験上って……」

 

心護の発言に創斗と玲が言葉を詰まらせた。彼の言う経験上の相手は十中八九、真名子ことアイの事なのだから。

 

「おれ、追いかけます」

「店番は任せろ」

 

エプロンを脱ぎ捨てて、立ち上がると、創斗は店から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

目蟹区の商店街をトワルが歩く。ふくれっ面でずんずんと歩くその様にすれ違う人々は思わずぎょっとした表情を浮かべている。しかし、肝心のトワルはそんな人々の様子は目に入っていない。彼女の内を占めているのは疎外感と除け者にされた怒りだった。

 

(何なんですか皆して……。わたしにも教えてくれたっていいのに……)

 

顔を俯け、トワルは立ち止まる。

だがそれが間違いだった。すぐそこの店の扉が開き、中からエフェクト、錬児、アンビシャスが出てきた。各々手には袋を携えている。

 

「いや〜。良いのが見つかって良かった!」

「だな! 俺もこういうの久しぶりだからワクワクしてる!」

「近いぞ、お前達」

 

笑い合うエフェクトと錬児。両者の間にアンビシャスが割って入る。とても不愉快そうな表情だ。

 

「え〜、何〜? アンビシャス、ヤキモチ妬いてるぅ〜?」

 

悪戯な笑みでからかうエフェクト。アンビシャスの眉間の皺が深くなる。

 

「大丈夫だよ。錬児とは何にもないよ、今は」

「"今は"?」

「え!? "今は"って言った!?」

 

エフェクトの意味ありげな発言に錬児は目を見開き、泡を食う。対するアンビシャスはと言うと。ゆっくりと錬児の方を向いた。

 

「お前は確か……ヴァリアブルの仲間だったな」

「あ、はい。櫂善 錬児って言います」

「そうか。エフェクトとはどんな関係だ?」

 

鋭い視線が錬児を捉える。下手な事を言うならば命はない。そんなプレッシャーを感じ、彼は思わず縮こまった。端から見た構図はさながら蛇に睨まれた蛙のよう。

 

「どんなって……友達?」

「えぇ!? 酷〜い! ワタシ達、もっと仲良いでしょ!!」

 

錬児の状況を知ってか知らずか、エフェクトはその手を取った。そして、

 

「未来があるかもしれないし……」

「え゛!?」

「は……」

 

顔を赤らめ、視線を外す。錬児はエフェクトの方を見やる。その瞬間、これまで以上のプレッシャーが向かい側から放たれた。錬児は恐る恐るアンビシャスの方に顔を向けた。

 

「少し話をするぞ」

<シグナライザーMarkⅡ!>

「待って! 死んじゃう!!」

 

一歩後退る錬児。一歩前へ踏み出すアンビシャス。助けを求めるように周囲を見回す錬児はトワルと目が合った。

 

「「あ……!」」

 

エフェクトとアンビシャスもトワルを認識した。

 

「やっほ~、トワル! 元気?」

 

にっこり笑うエフェクト。しかし、トワルの目は誤魔化せない。彼女は見た。エフェクト達がトワルを認識した瞬間に持っていた袋をそっと背後に隠すのを。ここでも除け者だ。トワルは思わず歯噛みする。ぎりりと軋む音が鳴る。

 

「……」

 

顔を背け、トワルは無言でその場を離れた。

 

「ええっと……」

 

予想外の事にエフェクトは困惑した表情で錬児とアンビシャスを見回す。対する二人も困ったように曖昧な顔を浮かべた。

 

「おい! トワル来なかったか?」

 

そんな三人の元へ声がかかる。声の主は入れ違いになるように現れた創斗だった。

 

「何かあったの?」

「"例のアレ"が勘付かれつつある」

 

エフェクトの問いかけに深刻な表情で創斗が答える。頭を掻きながら溜息をつく。

 

「バレたのか?」

「具体的にはバレてない……と思う。けど、隠し事をしてるのは向こうも分かってるはず」

「じゃあ、どうするんだ?」

「……仕方ないからプランBでいく」

 

プランB。その言葉を聞いてエフェクトと錬児は残念そうな顔を浮かべる。

 

「取り敢えずトワルを見つけるのが先決だ」

「トワルなら向こうへ行ったよ」

「さんきゅ!」

 

エフェクトがトワルが立ち去った方角を指差した。創斗は礼を言うと追いかけるべく走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商店街を抜けて、トワルは宛もなく彷徨っていた。気付けばいつしか彼女は工業団地へ足を踏み入れていた。流石にここにいるのは迷惑だろう。立ち去らなくては。そう思っても中々足は動いてくれない。

その時、話し声が聞こえた。その声達は徐々に近づいてくる。トワルは思わず身を隠した。

 

「進捗はどのような感じですか?」

 

現れたのは二人の男性。一人は作業着を着たガタイのいい髭面の男。もう一人はトワルにも見覚えがある。毒島だ。

 

「おう。順調だ! アイ様に良い報告をしておいてくれや!」

「分かりました。このままよろしくお願いします」

 

毒島が踵を返す。髭面の男が手を振り見送る。毒島が見えなくなった頃、髭面の男が歩き出す。

 

「さて、もう一働きしますかね!」

 

やる気に満ち溢れた表情で工業団地の奥へと進んでいく。

一部始終を見ていたトワルは思う。ここには何かある。髭面の男に気付かれないように彼を尾行し始めた。

やがて男は作業場に到着する。そこでは無数の作業員達が忙しなく動いていた。器具や工具、重機を使い建設工事を行なっていた。それは見上げるほど大きな、

 

「塔?」

 

それは高く聳える塔。まだ作りかけで上に行くほど中身が見えている。

 

(取り敢えずソートに連絡を……)

 

そう思い通信を繋ごうとして、先程の事が脳裏をフラッシュバック。動きを止めてしまった。次の瞬間、背後に衝撃が走る。バランスを崩し、前へと押し出された。

 

「ひゃ!?」

 

何とか転びはしなかったものの、彼女の姿が衆目に晒された。振り返れば作業員が、先程までトワルが隠れていた位置にいた。作業員の目には敵意が見える。

 

「こいつは……、」

 

髭面の男がトワルの姿を見て、端末を操作する。画面にトワルの記録が映し出された。

 

「おい、お前ら! こいつは俺達の敵だ! 裏切り者のエルフだ!」

 

トワルを指差し、髭面の男が周囲の作業員達に叫ぶ。

 

「アイ様の命令は抹殺だ。お前ら気合入れろ!!」

<シグナライザーMarkⅡ!>

<シグナライザー!>

 

髭面の男と作業員達は一斉にベルトを腰に巻く。取り出したメモリアライズバッジは髭面の男がボア、残りはアント。

 

「「「電令!!」」」

 

<<ハック! クラック! バーサーク!!>>

<アーシリーコード:ボア! アップロード!!>

<アーシリーコード:アント! ダウンロード!!>

 

彼らはボア・モッドMarkⅡとアント・モッドに姿を変えた。各々が武器を携え、トワルへ迫る。

 

「させるか!!」

 

そこへ人影が飛び出してきた。トワルを守るように立ちはだかったのは創斗。鋭い目付きでモッド達を睨みつける。

 

「無事か?」

「ソート……」

「まぁ、色々あるだろうけど後だ! 行くぞ!!」

 

創斗はトワルの腰に手を伸ばす。彼女に巻きつけてあるヴァリアブルドライバーを掴んだ。

 

「あ……」

<ヴァリアブルドライバーV2!>

 

ベルトをトワルより外し、自分の腰に巻き付ける。すかさずメモリアライズバッジを取り出して起動させた。

 

<スパイダー!>

「変身!!」

『へ、変身!』

 

高らかに叫ぶ創斗。トワルはワンテンポ遅れてしまった。

 

<世界を守るライダー! 我らを繋げるスパイダー!!>

<ウルトラ・メモリアライズ! ハイパー・バッチグー!!>

 

二体の蜘蛛が装甲となって張り付く。創斗とトワルがヴァリアブル ハイパースパイダーへと変身を遂げた。

 

「トワル、ルートを展開してくれ!」

『え、あっ』

 

ファイティングポーズを取り、トワルに頼む創斗。

しかし、トワルの反応は薄い。ヴァリアブルの視界には何も表示されない。

 

「何やってんだよトワル!!」

 

さしもの創斗も思わず声を荒げてしまう。

 

「ドウシタ、来ナイノカ? ナラバ、コチラカラ行クゾ!」

 

ボア・モッドMarkⅡが両の剣を携えて突進してきた。ヴァリアブルは右腕を上へ伸ばす。掌から放たれた糸が鉄骨に絡みつく。糸が巻き取られ、ヴァリアブルが鉄骨に乗り上げ、ボア・モッドMarkⅡの攻撃を躱した。

しかし、そこへアント・モッド達が銃口を向ける。引き金が引かれ、無数の弾丸がヴァリアブルへ襲いかかる。

 

「よっと!」

 

鉄骨からジャンプ。弾幕を回避しながら、アント・モッド達の頭上へ。ヴァリアブルの次の一手は両手両足から放つ蜘蛛の巣。覆いかぶさるように四体のアント・モッドが絡み取られ、動けなくなった。

だがそれでもまだ三体も残っている。そしてそんな事はヴァリアブルも理解していた。だからこそ、彼は動けなくなったアント・モッドの一体の頭に着地すると、それを足場に距離を詰める。

左足から糸を放ち、フリーなアント・モッドの腕に絡ませた。

 

「あらよっと!」

 

ボレーキックの要領で足を振るう。連動してアント・モッドが吹っ飛び、残る二体にぶつかった。三体はまるでボーリングのピンのように倒れる。

仮面の奥でしてやったりの表情を浮かべつつ、ヴァリアブルが地面に降り立った。

 

『あ……。ソ、ソーt』

 

トワルが言い終わる前にヴァリアブルが背後からぶっ飛ばされた。攻撃を与えたのはボア・モッドMarkⅡ。ヴァリアブルは勢いよく重機へと叩きつけられた。音を立て、重機が破壊され、ヴァリアブルは地面に倒れ伏す。

 

「お前……戦いに集中……しろよ!」

 

攻撃を諸に食らったせいか、ヴァリアブルのダメージは大きい。肩で呼吸をしながらよろよろと立ち上がる。

 

『うるさい』

「!?」

『集中出来ないのはソートのせいでしょ!』

 

遂に堪忍袋の緒が切れた。トワルが叫ぶ。

 

『わたしに隠し事して! 除け者扱いして! どうして内緒にするんですか!!』

「それは、だな……」

 

何とか弁明しようと試みる創斗。

だが、今ここは戦場。少しの油断が命取りだ。

 

「撃テ!!」

 

ボア・モッドMarkⅡの号令の元、三体のアント・モッドが一斉射撃。幾重もの銃弾が炸裂。

 

「うわあああっ!!!」

 

集中砲火を食らうヴァリアブル。創斗が悲鳴を上げ、膝から地面へ崩れ落ちる。

 

『ソート!!』

「クタバレェ!!」

 

ボア・モッドMarkⅡがベルトを操作。エネルギーが両の剣へ集約されていく。

 

<ボア!>

<セキュリティブレイクⅡ!!>

 

両の剣が振り下ろされた。

そして、凄まじいエネルギーを纏った斬撃はヴァリアブルへと向かっていって――

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