トワルと息が合わずピンチに陥った創斗。大ダメージを受け、膝から地面へ崩れ落ちた。そこへボア・モッドMarkⅡの斬撃が迫りくる。
「はあっ!」
その時、空から何かが飛翔して来た。変身済みのエフェクトだ。彼女は羽を広げ、滑空するとヴァリアブルの体を引っ掴む。そのままヴァリアブルごと飛び上がった。斬撃が空を切る。
「逃ガスカ!!」
両の剣を振り上げるボア・モッドMarkⅡ。向ける先にはエフェクト。腕を動かそうとしたその時、背後から飛んできたニードルが突き刺さりスタンが発動した。
「ナッ!?」
目だけを動かし後ろを見るとそこにはアンビシャス。傍らにはトワルの体をおんぶした錬児の姿もあった。
スタン状態なのはボア・モッドMarkⅡだけではない。アント・モッド達も同じくスタン状態で動けないでいた。
「二人共、一旦引くよ!!」
エフェクトの指示の元、アンビシャスと錬児が後退。あっという間に工業団地にはボア・モッドMarkⅡ達が取り残された。
「そんな事があったのか」
D.A.T.Aの医務室。ベッドの上で上体を起こした体勢の創斗。彼の前で話を聞いていたのは心護と玲だった。あの後、話を聞きつけ訪れたのだ。二人は丸椅子に座りながら創斗を見る。
「大した怪我じゃなくて良かったな」
「はい」
創斗の体は背中を覆うように包帯が巻かれている。攻撃を諸に食らったせいだ。それでもハイパースパイダーの装甲は厚く、まだマシな方。
「それでトワルちゃんは?」
「……それが、ここに来た途端にすぐどっか行っちゃって。おかげでプランBも言えずじまいなんですよ」
「プランB! そうなっちゃったかぁ〜」
あちゃ~と言いたげに自らの額を叩く玲。彼女もまた、プランBがどんなものか知っているが故の反応だ。
「まぁいい。お前達がアーシリーコードのメンバーと出会った工業団地なんだが、あの一帯は猪野建設って言う会社が工事を任されていた。が、調べみると猪野建設はペーパーカンパニーだった」
「それって!」
「あぁ。アイの奴が裏で手を回したんだろう。俺はこれからそこへ向かってみる。お前は安静にしてろ」
心護はそう言い残し、部屋から出て行こうと立ち上がった。
「待って、私も行く。建設してた塔みたいなのに興味あるし」
その背中へ声をかけ、玲も立ち上がる。二人は共に部屋を後にした。
アーシリーコードのアジト内。アイの前で毒島が頭を下げる。
「申し訳ございませんでした! まさか後をつけられていたとは思わず」
「……まぁ、過ぎたことは仕方ありません」
この世の終わりのような絶望した表情の毒島。そんな彼を見下ろすアイ。彼女の顔に変化は見られず、表情は読み取れない。
「バレたのなら仕方ありません。撤去してきてください」
「撤去……ですか……?」
「幸いにも塔の正体はバレていません。中身を調べられる前に撤去すれば残りの所在も掴めないでしょう」
アイがパソコンに手を翳す。すると画面がひとりでに動き出す。切り替わって現れたのは塔の所在地を示す地図。赤い点が複数点滅していた。
「とは言え、塔が見つかった責任は取ってもらいますよ」
アイが一つのメモリアライズバッジを差し出す。それは牙を剥く毒蛇のレリーフが刻まれたメモリアライズバッジだった。意表をつかれ驚く毒島へアイが笑った。
D.A.T.Aの会議室。トワルはパイプ椅子の上で体育座りをしていた。
創斗が医務室に運ばれるのを見届けた後、トワルは無言で逃げ出した。そして辿り着いたのが会議室だった。部屋の中には彼女以外に誰もいない。
「はぁ……」
小さくため息をつく。静寂漂うこの場では小さなため息でさえ、鮮明に聞こえる。それが何よりも煩わしい。トワルは顔を顰める。
その時、会議室の扉が開く。部屋に入ってきたのは和明だった。
「長官さん」
トワルが顔を上げ、住まいを正す。和明はいつも通りの鉄面皮で暫し彼女を見つめた後、ゆっくりと近づいてきた。そして、口を開いた。
「悩み事かね?」
「はい。実は……」
トワルが事の経緯を話す。黙って話を聞いていた和明は、話が終わると近くの椅子に腰を下ろした。まっすぐな視線をトワルに向ける。
「なるほど。つまり、君は周りに秘密にされていたのがショックだった。と言う事だね」
「そう……ですね」
トワルは俯いた。膝の上に乗せている拳から力が抜け、中途半端に開いた。
「これまでソートから秘密にされた事は何回かあるんですけど、今回みたいに皆から秘密にされた事は無くて、それでなんて言うか……。感情が抑えられなくて、ソートに酷い事を言っちゃって」
トワルは今にも泣き出しそうな表情をする。和明はその様子を見て少し考え、彼なりの持論を伝える。
「初めての経験で戸惑ってしまったのだね。それは良い経験をした」
「え?」
「何事も初めての経験では戸惑うものだ。だが、この経験はこれからの事に役立つだろう。自分が戸惑った時、どうなるのか分かったのだから」
「あ……」
トワルは顔を上げ、和明を見る。彼女の瞳は大きく開かれていた。和明はぎこちなく微笑む。それでもその優しさはしっかりとトワルに伝わった。
「本題に戻ろう。君は彼らからの秘密を悪い物とは考えていない。でなければ自分を責めたりしないだろう。ならばするべき事は一つのはずだ」
「はい!」
トワルは立ち上がると力強く頷いた。
「ありがとうございました!」
勢いよく頭を下げ、感謝を述べる。トワルは笑顔を浮かべながら会議室から駆け出した。
「ソート!」
医務室の扉が勢いよく開け放たれる。扉が音を立てたのに合わせて、創斗の肩がびくりと跳ねた。
「うおっ!? びっくりした!」
「ごめんなさい!!」
驚く創斗へ向けてトワルが謝罪した。
「わたし、とても酷い事を言った」
「別に気にしてねぇって」
創斗がぶっきらぼうに笑う。トワルも顔を上げて微笑んだ。
「ソート達が何かを秘密にしてるのは分かってる。でも、もう聞かない。よくよく考えて見れば、ソート達がわたしの利にならない事をするわけないし」
「なんだ今頃気付いたのかよ」
創斗がベッドから立ち上がる。トワルが創斗へ近づいた。
「もう充分休んだし、そろそろ出かけようと思う」
「体は大丈夫?」
「おう。背中は少し痛いけどな」
そう苦笑してみせる創斗。
「ならソートの背中はわたしが守ります」
「ああ、任せたぜ」
二人は頷き合い、同時に歩き出した。
工業団地。そこではアーシリーコードの信者が扮した作業員達が忙しなく動いていた。アイの指示を受け、解体作業を執り行っていた。
「急げよ。奴らが来るぞ!」
檄を飛ばすのは髭面の男。首に巻いたタオルで額の汗を拭っている。
その時、足音が近づいてくる。振り返るとそこにはエフェクト、アンビシャス、心護。彼女らの後方には玲もいる。
「ちっ! 来やがったか!」
悪態をつく髭面の男。
その間に三人は各々のドライバーを腰に巻く。
<シグナライザー改!>
<シグナライザーMarkⅡ!>
<キマイライザー!>
続けて取り出したのはメモリアライズバッジ。
<バタフライ!>
<ビー!>
<レオ!>
バッジをドライバーセット。エネルギー状の蝶と蜂が周囲を旋回。獅子が後方で雄たけびを上げる。
「「「変身!!」」」
<Wake Up Date! バタフライ・エフェクト!!>
<シグナライザー、カスタマイズ!>
<Burn Up! Cool Down! ビー ・アンビシャス!!>
<アーシリーコード、アップグレード!!>
<覇王! 魔王! 百獣の王!!>
<データベース:レオ! ガオー!!>
ドライバーを操作して、エフェクト改、アンビシャスMarkⅡ、マルティプルへ三人が変身を遂げた。
「さぁ、大人しく投降しろ。俺達はその塔に用がある」
代表してマルティプルが声をかける。
髭面の男の返答はモッドライザーMarkⅡを腰に巻く事だった。だがそこへ待ったが入る。
「そうは行きません」
両者の間へ割って入ったのは毒島。彼を見て髭面の男が笑顔になる。
「毒島さん!」
「ここは私にお任せを。この場所を勘付かれた不始末、付けさせていただきます」
そう言って取り出したベルトを腰に巻いた。
<シグナライザーMarkⅡ!>
「「!?」」
「あれは俺の……」
毒島が腰に巻いたベルトを見てエフェクトと心護が驚く。アンビシャスは仮面の奥で険しい表情を作った。
「えぇ。アイ様が奪取し、改造を施して、私に下賜してくださったものです。新たな力を奮わせていただきます」
取り出したのは牙を剥く毒蛇のレリーフが刻まれた紫色のメモリアライズバッジ。毒島が不敵な笑みを浮かべながら起動させる。
<ヴァイパー!>
メモリアライズバッジをドライバーにセット。エネルギー状の毒蛇が出現し、毒島を包み込むようにとぐろを巻く。
「変身」
<Warm Up! Melt Down! ピット・ヴァイパー!!>
<アーシリーコード、アップグレード!>
彼の体が黒に紫色のラインが入ったアンダースーツを纏う。そこへバラバラになった毒蛇が装甲となって装着された。毒蛇が牙を剥く仮面が貼り付き、その上にクリアパープルのバイザーが合体する。
腰からロングソードを引き抜き、切っ先を対峙する三人のライダー達へ向けた。
「私めは仮面ライダーピット。アーシリーコードに従いし、忠実なる下僕。アイ様に代わり貴様らに天誅を下す」
毒島――ピットが動き出す。
「はあっ!」
徐々に速度を上げるとアンビシャスMarkⅡへ飛びかかった。掛け声とともに剣を振り下ろす。
「ふっ!」
それを真正面から受け止めるアンビシャスMarkⅡ。剣とガントレットがぶつかり合う。
「まずは貴様からだ。裏切り者のエルフ。アイ様に反旗を翻した報いを受けさせてやる!」
追撃の一閃を放つピット。アンビシャスMarkⅡはバックステップで攻撃を避わす。
「成る程。ここまで来ると筋金入りだな」
そう独りごちるアンビシャスMarkⅡ。鋭い目でピットを見据える。
その時、銃口がピットを捉えた。エフェクト改がエフェクタールガン改を連射。ピットは咄嗟に剣で防御姿勢を取った。
「ワタシ達の事も忘れないでよ」
「俺の事もだ!」
その隙に距離を詰めたマルティプルが迫る。取り出したのはゴートメモリアライズバッジ。ベルトの右上のスロットに取り付けた。
<キマイライズ・レオ、ゴート! ブレスト&ライトアーム!>
右腕に山羊の角を模した武装が装着される。そして、渾身の力で振り回す。
剣で受け止めたピットだったが、マルティプルの力が強かった。後方に弾かれた。
すかさず銃口を構えるエフェクト改。
「洒落臭い!」
ピットが吠えた。剣を振り回した瞬間、刀身が鞭のように撓りながら伸びる。
「「「!?」」」
伸びた剣は立てかけられた鉄パイプや木材、周囲の障害物を切り裂きながら迫る。慌てて回避行動を取る三人。
何とか直撃は免れたものの装甲にはかすり傷が付いている。
「蛇腹剣か。厄介だな」
切れ味もさることながら、その距離はもっと驚異的。その有効射程はエフェクタールガン改やアンビシャスMarkⅡのニードルより長い。おかげでピットは近づく事なく安全に攻撃が出来ている。それどころか攻撃を躱し続ける度に後退させられ、塔との距離も離れていく。
「くっそぉ〜!」
「落ち着け、エフェクト。塔の方は問題ない」
悔しげに唇を噛みしめるエフェクト。そんな彼女を心護が諭す。
「あいつらが来た」
遠くでエンジン音が響いた。エフェクト達の戦闘エリアの向こうで騒ぎ声が生まれ始めた。その意味を察したエフェクトは仮面の奥で笑顔になる。
「よし! こっちはあいつの足止めだね!」
気合を入れ直し、エフェクト改はエフェクタールガン改を握り直した。
エンジン音を響かせて、創斗とトワルがヴァリアルストライカーに乗って爽快に現れた。
新手に髭面の男と作業員の一部がモッドライザーを腰に巻く。
<ボア!>
<アント!>
「電令!」
装甲を纏い彼らはボア・モッドMarkⅡとアント・モッドに変貌。武器を手に臨戦体勢に入る。
「トワル!」
「はい!」
ヘルメットを外し、バイクから降り、二人はモッド達を見据える。トワルの腰からヴァリアブルドライバーV2を外し、創斗は自分の腰に巻きつけた。
<ヴァリアブルドライバーV2!>
<スパイダー! パワーアップ!>
メモリアライズバッジとパワーアップスイッチを起動し、ベルトにセット。二枚の設計図が二体の蜘蛛へ組み替わる。
「『変身!!」』
<世界を守るライダー! 我らを繋げるスパイダー!!>
<ウルトラ・メモリアライズ! ハイパー・バッチグー!!>
グリップを押し込み、創斗の体を銀色のアンダースーツが覆う。エメラルドグリーンの装甲が装着されヴァリアブルへと変身を遂げた。
「さぁ、行くぞ!」
『ルート展開!』
ヴァリアブルの視界に無数の選択肢が出現。即座に選び取った一つの道へ迷いなく駆ける。
掌より糸を発射してアント・モッドの一体へ絡みつける。そして、巻き取り機能を使って一気に迫った。
「『はあっ!」』
拳を突きだした瞬間、シンクロシステムが作動。ベルトよりエネルギーが拳に宿る。その一撃がアント・モッドの顔面を捉え、一発K.O.。
「ナッ!? ウ、撃テ!!」
瞠目するボア・モッドMarkⅡ。されどそれも一瞬の事。すぐさま部下達に指示を飛ばす。残るアント・モッド達がヴァリアブルへ銃口を向けた。だが、心を一つにした彼らの敵ではない。
姿勢を低くすると両足から糸を発射。アント・モッド二体の足を絡め取り体勢を崩す。そのまま振り回し、陣形を乱した。
「コノ野郎ガ!!」
これ以上はやらせまいとボア・モッドMarkⅡが突進。しかし、ヴァリアブルは慌てない。ドライバーからパワーアップスイッチを外すとメモリアライズバッジを付けかえて起動させる。
<モール! パワーアップ!!>
<ステップアップ・ローディング! ステップアップ・ローディング!>
ベルトにセットすると新たな設計図が二枚出現。それは二体の土竜に形を変えた。
ヴァリアブルがグリップを押し込む。装着されていた装甲が外れ、二体の土竜が装甲となって張り付いた。
<下から放つアンブロッカブル! 地面を進むモール!!>
<ウルトラ・メモリアライズ! ハイパー・バッチグー!!>
銀色のアンダースーツに両手両足にクローを身に着けたクリアブラウンの戦士。仮面ライダーヴァリアブル ハイパーモール。
「ふっ!」
その場で宙返りをすると地面へクローを突き立て潜り込んだ。
「!?」
ボア・モッドMarkⅡが慌てて急ブレーキをかける。周囲を見回し、ヴァリアブルの姿を探す。
「あらよっと!」
ボア・モッドMarkⅡの足元が隆起する。胴にクローが突き刺さり、空中へ放り出された。
「ノワァァァッ!?」
そのまま地面の中へ戻ろうとするヴァリアブル。ベルトを操作して厳かに宣言する。
「『たった今、勝利の道は繋がった!!」』
再び地面に潜り込んだヴァリアブルはアント・モッド達を囲むように円を描いて移動。その速度は徐々に上がっていき、砂嵐を作り上げていく。そして、円は段々と狭まっていき、遂にアント・モッド達は逃げ場を無くし、一箇所に集まった。
<モール!>
<ハイパーヴァリアビリティストライク!!>
足元の地面が隆起。シンクロシステムを発動させ、エネルギーを纏ったクローが渾身の力で振り上げられた。打ち上げられていくアント・モッド達は上から落ちてくるボア・モッドMarkⅡと次々と衝突。地面に叩きつけられ、モッド全員の変身が解除されるとそこにはクローを上へ伸ばしたヴァリアブルの姿があったのだった。
「向こうは負けましたか……」
所変わってエフェクト達とピットの戦い。射程範囲の長いピットの攻撃に防戦一方のエフェクト達。喧騒が静まった後方を振り返り、ピットがため息をつく。
「まぁいいでしょう。充分時間は稼げました」
そう言うと何かのスイッチを取り出した。彼はそのスイッチを躊躇なく押す。瞬間、甲高い破裂音と共に塔が爆破された。崩れ落ちた破片が重力に従って落ちていき、轟音と衝撃、砂埃を引き起こす。
「うっ!」
防御姿勢を取る三人のライダー。ピットがその隙間を抜けていく。砂埃で視界が悪い筈なのに、まるで見えているかのように。
「今日はここまでにしておきましょう。このまま戦っても不利ですからね」
そう言い残しピットはその場を後にした。
「夢崎、無事か!」
マルティプルが叫ぶ。すると、物陰から玲が姿を現した。衝撃で髪はぼさぼさになり、砂埃で服は汚れていた。
「ケホケホ! な、なんとか。けど、」
玲が見上げる。マルティプル達も彼女の視線を追った。そこにはアーシリーコードが建設していた塔の残骸が無惨に散らばっているだけだった。
「あの、目隠しの必要ありますか?」
トワルが尋ねる。相手は創斗。両手で顔を覆い、創斗の先導を受けながら歩いている。前が見えないの為、彼女は今どこにいるのか見当がついていない。胸の内で少しだけ不安が過っている。
「大丈夫だ。もう着いたから。ほら、目を開けてみろ」
そう言われ両手を離す。
その瞬間、クラッカーの音が響く。
「「「お誕生日おめでとう!!」」」
目の前で錬児が、エフェクトが、アンビシャスが、心護やD.A.T.Aの隊員達が笑顔で彼女を見ていた。
場所はD.A.T.Aの会議室。華やかな飾り付けがなされており、とても明るい雰囲気を醸し出している。
呆気に取られ、トワルは目を丸くする。そして、助けを求めるように隣にいる創斗へ視線を向けた。
「今日の日付を検索してみろよ」
「あ」
日付を検索してトワルは今日が何の日か思い出す。
「そう、今日はおれ達が出会った日だ」
十年前。二人が出会った時に決めたのだ。この日をトワルの誕生日にすると。
「最近、ばたばたしてて忘れてました。けど、どうしてこんな大がかりに?」
「なんでって。今年から一気に知り合いが増えたからな。どうせなら、皆にも祝ってもらおうと思ってよ」
そう決めたが吉日。創斗は皆に頭を下げ、お願いしたのだ。もうすぐトワルの誕生日だから祝うのを手伝ってほしいと。
「どうせならサプライズにしようってやってみたんだが、慣れないことはするもんじゃないな」
苦笑しながら頭を掻く。
「バレてキレられた時はバラすしかないなって思ってプランBに変更しようとしたんだけど、必要なくなって助かったよ」
あの時、創斗は本当に焦っていた。まさかトワルがあそこまで憤るとは予想打にしていなかったのだから。
「まぁまぁ、取り敢えず早く渡そうよ」
エフェクトと錬児がトワルの前にやって来る。綺麗にラッピングされた包みを渡す。
「「誕生日おめでとう」」
「二人で服を選んでみたよ。後で着て見せてね」
そう言ってエフェクトが笑う。
続けて心護と玲。それぞれがラッピングされた箱を渡した。
「何がいいかな結構悩んだんだが、ストラップにしてみた。気に入ってくれると嬉しい」
「ふっふっふっ。アタシからはこれ。モバイルバッテリーの詰め合わせ! やっぱご飯が一番嬉しいよね」
「そりゃ、お前だけだろ」
ドヤ顔をかます玲。心護は呆れ顔で彼女を小突いた。
次はアンビシャス。相手がトワルだからか表情はとても柔らかい。
「正直意外でした。まさか参加するなんて」
「相手がお前だからな。一応は兄妹みたいなものだ。ならば祝うのは当然だろう。ちなみに中身は手袋だ。丈夫で絶縁性もある。何かの作業をする時でも使ってくれ」
それから次々とプレゼントが渡されていき、最後は創斗。
「おれからはこれだ」
渡されたそれを開ける。中にはハートの形が付いたネックレスが入っていた。
「まぁ、今年は色々あったけどその上でこう言うよ。お前と出会えて良かった。生まれてきてくれてありがとう」
創斗は破顔する。
トワルは目を伏せ、ぽつりと口を開く。
「わたしはソートが好き。錬児さんも、エフェクトも、戎さんや夢崎さん。アンビシャスも。皆が大好きです」
「ありがとうございます。わたし、生まれてきて良かったです」
そう言って彼女は笑った。その笑顔は今まで見た中でとびっきりの笑顔だと創斗は思うのだった。
「ハッピーバースデートゥー・ユー。ハッピーバースデートゥー・ユー」
アーシリーコードにあるアイの作業場。そこにアイの声が響き渡る。生誕の祝福を告げる歌を口ずさみながら彼女は培養槽に立てかけられた人型――黒髪の青年を模した人型にチップを差し込む。
「ハッピーバースデー ディア イマジナリー」
その瞬間、人型はゆっくりと目を開けた。イマジナリー。そう呼ばれた人型がゆっくりと培養槽から這い出してくる。そんな彼にアイはベルトとメモリアライズバッジを手渡す。
「ハッピーバースデートゥー・ユー」
遂に完成した最高傑作を前にアイが不敵に笑う。
新たな脅威はすぐそこまで迫っていた。