仮面ライダーヴァリアブル   作:puls9

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file5 エフェクト・バトルエントリー

「ここか……」

 

そう呟く創斗の後ろを車が一台通り過ぎた。隣ではトワルが立っている。

ここは祭波市の都心部に位置する区画、赤出味区。この地区には保育園から大学まで、学校関連の施設が点在している。また、学生向けのアミューズメント施設も充実しており、少し歩けばゲームセンターやカラオケ等があったりする。

 

「行くか」

 

創斗達が足を踏み入れたのは祭波市でもよく知られる名門校、祭波テクノロジー大学。その校門を抜けて目の前の大きな校舎へと向かっていく。

 

「ヨウコソ、デンドウサマ。オマチシテオリマシタ」

 

そう言って出迎えたのは小型の車輪が付いた台座の上に人型が合体したデザインのロボット。テクノロジー大学なだけあってハイテクな物があるらしい。入り口に綺麗に並んで鎮座しているロボットの一体に来客専用のカードを翳すと動き出したのだ。  

 

「ソレデハ、ゴアンナイイタシマス」

「いいえ。それには及びません。わたしの頭の中にこの校舎の地図が入っておりますから!」

 

そう言うロボットに待ったをかけたのはトワルだった。ロボットを見るやいなや創斗を庇うように前に出ると険しい表情で睨みつけている。どうやら対抗心を剥き出しにしているらしかった。

 

「そうか。そんじゃあ、案内を頼む」

 

軽くため息をつくと創斗はロボットに言った。

 

「何で!? ここに! わたしが!! いるでしょ!!!」

「だってお前、こないだ道間違えたじゃん……」

「なっ!?」

 

この間の事。修理の依頼を受け向かった先の道がかなり入り組んでおり、トワルが意気揚々と任せろと言ってきたので一任したのだが、ものの見事に間違えたのだ。ちなみに目的地は一つ手前の家だった為事なきを得たのだが。

そんな事があったので今回はロボットにお願いすることにした。それがお気に召さなかったらしい。

 

「ぐぬぬ……。ソートの馬鹿! もう知らない!!」

 

そう言うとトワルはプンプン怒りながら大股で踵を返す。

 

「あー。……後でカラオケにでも連れて行くか」

 

確か雨恋ケロッピーズのニューシングルが数日前に発売されたと言っていた。カラオケでもそろそろ配信されている頃だろう。心ゆくまで熱唱させれば気も晴れる筈だ。そう思い直すと創斗はロボットを伴って廊下を歩き始めた。

 

「失礼します」

 

目的の場所はすぐに見つかった。第四研究室と書かれた部屋の扉を開ける。中には天然パーマの男性が座っていた。男性はこちらを見るとにこやかに笑いかける。

 

「久しぶりだね、創斗くん。元気そうで良かったよ」

「お久しぶりです、兎羽さん。それとも兎羽教授の方が合ってますかね?」

「どっちでも構わないさ。それにしても、大きくなったねぇ~」

 

兎羽 雅彦(とば まさひこ)。かつて創斗の父、想助の研究施設で働いていた人物だ。父の死後、この祭波テクノロジー大学で今日まで教授をしている。

兎羽は椅子から立ち上がると懐かしむような顔で創斗を見る。

 

「それで今日はどうしたんだい?」

「実は先日、父さんのパソコンにあったファイルのロックがやっと解除出来たんです」

「想助さんの……」

 

兎羽の顔が真剣なものに変わる。

 

「そのファイルはメールのやり取りが保存されたものでした。プライベートなものじゃなくて、仕事上のだったんですけど」

 

そこで創斗は言葉を区切る。ここからが本題だとばかりに。

 

「そのメールの最新履歴の差出人名にはアーシリーコードと書かれていました。兎羽さんに心当たりはありませんか?」

 

創斗の話には嘘がある。実はファイルのロックが解除出来たのは九年前。当時の創斗はその事を警察に伝えたがそれ以降進展は無かった。では何故、創斗が今更になってこんな話を蒸し返しているのかと言うと、それは音楽フェスの際に相対した怪人の変身音声が原因だ。その耳で確かに聞いたのだアーシリーコードの名を。怪人と父の死には関係がある。そう確信した。

 

「アーシリーコード……。すまない、心当たりは無いかな。因みにそのメールの内容って何だったんだい?」

「メールの内容は地図でした。……父さんの死んだ現場、街外れの研究施設への」

「!?」

 

兎羽の目が大きく見開かれる。

想助の命日、街外れで大きな爆発が起きた。駆けつけた警官達は現場を見て大いに驚いたらしい。というのもその現場は誰も知らない施設だったのだ。施設の中には多くの死体が転がっており、その内の一体が想助だった。しかし関係者達は皆、首を傾げた。その施設と想助を結びつけるものが無かったのだから。創斗を除いては。

 

「当時の警官の人にも聞かれたと思いますがおれにも言わせてください。何か父さんから聞いていませんか?」

「いいや。何も聞いてないよ」

 

申し訳なさそうに兎羽は首を横に振った。

 

「そうですか。実は父さんの知り合いに聞いて回っているんです。兎羽さんの知っている父さんの知り合いを知りませんか? 出来れば紹介していただけると嬉しいんですが……」

「本当に想助さんの事を調べてるんだね」

「はい。警官は事故死だって言ってましたけど、やっぱり不自然な所もあったので。おれは諦めきれないんです」

 

まっすぐに見つめる創斗。そんな彼を見て、兎羽は目を細めて小さく笑う。

 

「分かった。僕も協力するよ。ただ、想助さんの知り合いのリストアップには時間がかかるかもしれない。出来たらそっちに送るよ」

「ありがとうございます!」

 

ぱっと目を輝かせる創斗。自身の連絡先を教えると、深々と頭を下げて部屋を後にした。

 

「いや! 来ないでください!!」

 

部屋から出た時、声が響いてきた。その声に聞き覚えがある、なんてものじゃない。紛れもなく声の主はトワルだ。創斗は思わず駆け出した。廊下を走り抜け、声のした方角――中庭にたどり着く。周囲を見渡すと、中庭の片隅にトワルはいた。彼女の前には一人の女性がいる。ぼさぼさの髪に丸眼鏡、ダボダボの白衣を着た女性が手をワキワキさせながらトワルににじり寄っている。

 

「大丈夫だよ〜。怖くないよ〜。ちょ~っと体を隅々まで調べさせてもらうだけだからねぇ〜」

 

女性が一歩前に出れば、連動する様にトワルが後ろへ下がる。二人の距離は縮まらない。訳では無い。

 

「あ……」

 

トワルの背中が壁にぶつかる。これ以上、下がる事は不可能になった。

 

「それでは、夢崎 玲。行っきま〜す!!」

 

女性がトワルへと飛びかかった。慌てて創斗は駆けるが間に合わない。

 

「トワル!!」

 

それでも悪足掻きとして手を伸ばす。

 

「ソート!!」

 

トワルもこちらへ手を伸ばす。その手が繋がる事は無いと知りながら。トワルと女性の距離が徐々に縮まっていく。そして、どこからともなく駆けつけた人影が女性の脳天に鉄拳を見舞った。

 

「ぎゃん!?」

 

途端に地べたに沈む女性。

 

「何してやがる、このバカ野郎」

 

腹の底から絞り出した様な低い声で人影が言った。その人影に創斗達は見覚えがある。

 

「あ……あんたは、確かD.A.T.Aの!?」

「戎 心護さん!?」

 

そこに立っていたのはD.A.T.A実働部隊隊長の戎 心護だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にすまない」

 

場所を変えて大学の食堂にやって来た一同。心底申し訳なさそうな顔で心護が頭を下げる。

 

「ごめんなさい」

 

隣で女性こと玲も頭を下げた。

 

「いや〜。久しぶりに大学きたらさぁ、見たこともないロボッ娘がいたらさぁ。つい興奮しちゃって。あたしは夢崎 玲。よろしくね!」

 

玲は眼鏡の位置を直しながら言った。キュピーンと眼鏡のレンズが輝いたような気がした。

 

「伝導 創斗です」

「ト、トワルです……」

 

創斗は普通に、トワルはおっかなびっくり自己紹介を返す。

 

「あ~っと。それで、お二人はどうしてこの大学に?」

 

話題を変えるように創斗が言った。

 

「在学時代の資料を回収しにね。上手くいけば新しい兵器を作れそうだし」

「兵器……」

「お前達もフェスの際に遭遇したから分かっていると思うが、現状のD.A.T.Aの戦力だけでは怪人の撃破は難しい。ヴァリアブルと言ったか。ここ最近はあいつに助けられてばかりだ」

 

険しい表情で心護が言う。その悔しさを表すように空になった紙コップが徐々に握り潰されていく。そんな彼の様子に創斗は目を細めて聞く。

 

「戎さんはどうしてD.A.T.Aに入ったんですか?」

「俺はこの街が好きだ。ずっとこの街で暮らしていたってのもある。でもそれだけじゃない。この街に命を救ってもらったんだ。だからこそ、今度は俺がこの街や市民を守りたい。そう思ってるんだ」

 

迷いなくそう言い切った心護。だが、すぐに我に返って照れを隠すように咳払いをした。

 

「まぁ、綺麗事ではあるんだがな……」

「そんな事無いですよ。おれはカッコいいって思います」

 

そんな心護に創斗は笑顔で答える。これは間違い無く創斗の本心だった。その時だ。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

「宇佐見君!!」

 

二つの声が響き渡る。創斗達四人が一斉に飛び出し、廊下に出る。そこにはこちらへ逃げてくる兎羽と彼を追いかける怪人の姿があった。長い耳の付いた出っ歯の顔。それは兎を模した怪人、ラビット・モッド。ラビット・モッドが跳躍。ひとっ飛びで兎羽の頭上を越えて回り込む。

 

「くそっ!」

 

心護がホルスターから銃を取り出す。しかし建物内での発砲は流れ弾が怖い。廊下には騒ぎを聞きつけた生徒達もいる。心護は引き金を引けずにいた。

 

「トワル!」

「はい!」

 

創斗とトワルは頷き合うとその場を離れる。そして、人気のない物陰に隠れると、トワルの腰からヴァリアブルドライバーを外した。

 

<ヴァリアブルドライバー!>

 

ドライバーを自らの腰に巻きつけるとホルダーからメモリアライズバッジを取り出し、起動。

 

<スパイダー!>

<スタートアップ・ローディング!><スタートアップ・ローディング!>

「『変身!!」』

 

バッジをドライバーに取り付け、グリップを押し込む。

 

<世界を守るライダー! 我らを繋げるスパイダー!!>

<メモリアライズ! バッチグー!>

 

ヴァリアブルに変身を遂げるとすぐさま引き返す。民衆をかき分けラビット・モッドの元へ行くと拳を叩き込む。

 

「ギャァ!」

 

ラビット・モッドが床を転がる。

 

「ヴァリアブル!?」

「よう。こいつの相手は任せろ。皆の避難を頼む」

 

心護にそれだけ言うとヴァリアブラスターを取り出し、ラビット・モッドを連れて校舎から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ラビット・モッドを連れてたどり着いたのは駐車場。雨除けも兼ねている為か屋根が付いている。

 

「コノオッ!!」

 

ラビット・モッドが回し蹴りを放つ。

 

『ルート展開。避けてください』

「了解」

 

その一撃を易易と避わすヴァリアブル。ブレードモードのヴァリアブラスターで反撃。ラビット・モッドの装甲が火花散り、もんどりを打つ。

 

「この分なら新作は必要なさそうだな」

 

ホルダーから取り出したのはクリアオレンジのメモリアライズバッジ。それをしまうと体勢を整えつつあるラビット・モッドへとどめを刺す準備に入る。

 

「ちょ~っと待ったぁ!!!」

 

その時、人影が両者の間に割って入る。それは藍色のゴシックドレスを纏った少女、エフェクトだった。

 

「何だお前? 危ないぞ!」

『待ってください! あの子、機械(・・)の体です!』

「なんだと……!?」

 

仮面の奥で目を見開く創斗。知って知らずかエフェクトは口元の笑みを深くする。

 

「そこまでだ悪党共! これ以上モッドはやらせないぜ!」

「モッド? 怪人の事か!」

「早く行って」

「ア、アァ!」

 

ラビット・モッドが逃走する。慌てて追いかけようとするヴァリアブルをエフェクトが阻む。

 

「お前、何者だ?」

 

少女はそれに答えず、何かを取り出す。それはレバーの付いたバックルだった。エフェクトはそれを腰に巻き付ける。

 

<シグナライザー!>

 

エフェクトはシグナライザーと呼ばれたバックルのレバーを上に上げる。途端に上部がガバッと開き、スロットが露出した。そして、エフェクトはクリアネイビーのメモリアライズバッジを手にする。

 

<バタフライ!>

 

起動したそれをシグナライザーにセット。サイバーチックな音楽と共に無数の蝶が出現する。

 

「へ〜んしん!」

 

シグナライザーのレバーを勢いよく下げる。展開した上部が閉まり、バッジを液晶の中に隠す。

 

<Wake Up! バタフライ・エフェクト!!>

<アーシリーコード、シグナライズ!>

 

黒のアンダースーツに変わるエフェクト。無数の蝶が腕や足、胸の装甲となって纏わりつく。最後に特大サイズの蝶が顔に張り付き仮面と変わる。

 

「ワタシはエフェクト。アーシリーコードのエフェクト。そして〜、仮面ライダー(・・・・・・)エフェクト。よろしくね♪」

 

複眼が輝くとともに藍色の装甲を纏った戦士、仮面ライダーエフェクトが降臨する。

 

『アーシリーコード!?』

 

エフェクトの言葉にベルトの中で息を呑むトワル。

 

「今、なんて言った」

 

ヴァリアブルが――創斗が低くドスの効いた声で問いかける。

 

「ん〜?」

「お前みたいな奴が! 仮面ライダーを名乗ってんじゃねぇ!!」

 

創斗の脳裏に浮かぶのは父の顔。衝動のままにヴァリアブルがエフェクトへ迫る。そして、拳を振り上げた。

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