D.A.T.A基地の研究室。パソコンと向かい合いながら、しきりにキーボードを叩くのは創斗。彼の前には複数のパソコンが置かれており、様々な設計図が画面に映し出されている。
「おっ、頑張ってるねぇ〜」
ひょっこりと顔を出したのは玲。いつも通り口元に笑みを浮かべていた。創斗は振り返ると彼女に感謝を述べる。
「夢崎さん。ありがとうございます。設備を貸してくれて」
「何言ってるの。あたし達はもう仲間なんだから遠慮しない遠慮しない。って、これ、新しいメモリアライズバッジ?」
玲が指差したのはメモリアライズバッジの設計図。
「はい。ここの設備ならいつもより捗って最高ですね。もうすぐテストプレイに移れそうです」
「そっか。そりゃあ良かった。……こっちのやつは何?」
彼女が次に注目したのは別の設計図。それはヴァリアブルドライバーに似たドライバーの設計図だった。
「これはプリミティブドライバー。父さんが最初に設計したライダーシステムで、ヴァリアブルドライバーの原型になったやつです」
以前にも言った通り、ヴァリアブルドライバーは創斗が一から作ったものでは無い。想助が設計したライダーシステムを創斗達専用に改造した物だ。
「これが伝導 想助が作ったライダーシステム……!」
玲が感嘆の声を上げる。どことなく恍惚の表情だ。
「でもどうしてこれを?」
「実はライダーシステムを強化する装置を作ろうと思いまして。そこで原点に立ち返ろうかと」
創斗がパソコンを操作して画面を切り替える。現れたのは窪みのある丸型の横にグリップとスイッチが付いた装置だった。
「まだ構想段階ですけど、上手くやればヴァリアブルのパワーアップに繋がるはずです」
「困った事があったら言ってね。相談に乗るよ」
「ありがとうございます!」
創斗が返事をする。
その時、研究室のドアが開き、心護が入ってくる。いつもより疲れた顔をしていた。
「戎さん、お疲れ様です。どうでしたか? 尋問の方は?」
「駄目だ。怯えまくってて話にならん」
先日確保した根津 光彦。今はD.A.T.A内の隔離施設に収監されている。そして、D.A.T.A管轄の元で尋問が行われたのだ。ところが、根津はあらゆる質問に対しまともに回答をしないのだ。
「何を聞いても、喋ったら殺される。俺はまだ死にたくない。の一点張りだ」
「それは……。アーシリーコードはそれ程までの力があるのって事ですか?」
「どうもそれだけじゃないみたいだ。リーダー格の狐坂に尋常じゃないくらい怯えてる」
心護が肩を竦める。
「取り敢えず辛抱強く当たっていくさ」
「そうですか……」
「それよりテストプレイだ。実戦投入も間近だ。早いに越したことはないだろ」
そう言って手を玲に向ける。試作品を渡せとの事のようだ。玲は試作品を渡す。そこで彼女はふと動きを止め、今気付いた事を告げる。
「そういえば。今日、トワルちゃん見てないね。何してるの?」
「あぁ。トワルは、他の女性隊員達と女子会に行きました」
「え?」
玲が間の抜けた声を出す。
「真名子も行くって言ってたな」
「あたし……誘われてない……」
重い沈黙が部屋を満たす。そう。何を隠そう夢崎 玲は女性で、まだピチピチの二十代(後半)なのだ。
「あー、そう言えば! お昼って決まってますか? おれ、良いラーメン屋知ってるんですけど。どうですか?」
「お、おう! 良いな! どうだ夢崎? 一緒に行かないか? 今なら奢るぞ!」
気を遣った二人が明るい声で言う。
「脂マシマシ肉多めでもいい?」
「も、勿論だ。良いぞ!」
「っしゃー! 今日はヤケ食いだー!!」
玲のやけっぱちな声が響き渡った。
「それで? これからどないするん?」
郊外の廃工場で狐坂が言う。相手はアンビシャス。彼は鋭い目付きで狐坂を見る。
「人間に支配されているエルフを救い出す。お前達は伝導 創斗とD.A.T.Aの相手をしろ」
それだけ言うとアンビシャスはエフェクトと共に歩き出す。
「へぇ、救い出すねぇ……。居場所分かっとるん?」
楽しげにニヤつきながら狐坂が聞く。
「既にアイが監視している。お前が気にする必要は無い」
「貴様!」
声を荒げたのは猪原。今にも掴みかからん勢いだ。それを制したのは狐坂だった。
「ほんならこっちはこっちで好きにさせて貰うで?」
しかし、アンビシャス達は何も答えず廃工場を後にする。彼らがいなくなったのを見計らって狐坂が立ち上がる。
「んじゃ、猪原くん。うちらも行こか」
「おっす!」
狐坂達もまた動き出した。
一方その頃。トワルは喫茶店にいた。他のメンバーと共にテーブルを囲んでいる。
「わぁ。ここが喫茶店!」
周囲を見渡して感嘆の声を上げるトワル。そんな彼女に真名子が微笑む。
「トワルさん。喫茶店は初めてなんですね」
「はい。ソートはこういう所に全然行かないので」
「なんとなく分かります」
真名子がカップを手に取り、紅茶を飲む。他の隊員達も飲み物やお菓子を飲食しながら談笑していた。唯一、トワルのみ何も食べず飲んでもいない。トワルは機械の体。飲食が出来ない。
「紅茶って美味しいんですか? 」
だからこそ気になるのだろう。トワルが尋ねる。
「……そうですね。コクがあって、甘みと苦みが調和していて。とても美味しいですよ」
「なる……ほど……?」
真名子の言葉にトワルは首を傾げる。やはり実際に味わらないと分からないものがある。彼女の頭には疑問符が浮かんでいた。
「へぇ~、そうなんだ!」
話に加わってきたのは他のD.A.T.A女性隊員達。興味深げな視線を彼女に向けている。
「エルフってご飯食べないんだ。便利だね」
「いえ。この体では出来ないだけでエネルギー補給は必要ですよ」
「そうなの?」
「はい。エルフは基本的に電気をエネルギーとして補給する事で生きるんです」
「なるほど。教えてくれてありがとね」
女性隊員達が笑顔で感謝する。
「いえいえ。わたしの事を知ってもらえて嬉しいです」
それから皆で楽しく談笑する事一時間。そろそろ宴も酣と言うことで解散となった。帰り道をトワルと真名子は共に行く。
「今日は誘っていただきありがとうございます」
「どういたしまして。こちらこそ楽しかったですよ」
共に笑い合う両者。その時、目の前に人影が現れた。出てきたのはゴシックドレスの少女、エフェクト。
「エルフちゃん、見っけー!」
「アーシリーコード!? 真名子さん、気を付けて!」
トワルが前に出て真名子を庇うように立つ。そして、警戒の目をエフェクトに向ける。
「うっ!」
後方で声がしたと思うと人が倒れた。真名子だ。慌てて振り返るとそこには眼帯をつけた男、アンビシャスが立っていた。
「なっ!? 真名子さん!!」
今すぐ駆け寄りたいがアンビシャスが邪魔になっていて近付けない。トワルは密かに彼をスキャニングする。
(やっぱり機械の体だ)
目の前にいるのは自分と同じエルフ。それを確認すると、トワルは創斗に連絡を入れるのだった。
「何!? アーシリーコードが! すぐに行く。待ってろ!!」
連絡を受け取った創斗が叫ぶ。慌てて立ち上がるとラーメン屋の外へと駆け出していく。
「おい待て! ……すみません。お金ここに置いていきます! お釣りはいりません!」
心護も万札をテーブルに置くと創斗を追いかけんと立ち上がる。そこへ待ったをかけたのは玲。
「心護。付近の隊員を合流させて。例の
そうして不敵に笑う。彼女の手にはアタッシュケースが握られていた。
トワルが人間であったならきっと生唾を飲み込んでいただろう。目の前にはアンビシャス。後ろにはエフェクト。アスファルトに倒れ伏すのは真名子。気絶している。周囲に視線を走らせるが逃げ道は無い。そもそも、真名子を置いて逃げるわけにはいかない。トワルはアンビシャスを睨みつける。
「初めましてだな。俺はアンビシャス。お前と同じエルフだ」
「そしてアーシリーコード。わたし達の敵でしょう?」
彼女の言葉にアンビシャスの瞳が憐れむような視線に変わる。
「もうそんな風に言う必要は無い。お前は自由だ」
「それは、どう言う……意味ですか?」
トワルの警戒心が上がる。
「そのままの意味だ。人間の言いなりになる事は無い。俺達と共に来い」
アンビシャスが手を差し伸べる。
「お断りします! 誰かを平然と傷付けるあなた達と一緒には行けません」
「何ということだ。そこまで洗脳が根深かったのか」
「洗脳? わたしは自分の意思で決めています。あなた達こそ、何故人間を目の敵にするんですか!」
トワルが糾弾する。対するアンビシャスは手でそっと眼帯に触れた。
「人間は冷酷無比にして残虐極まる化け物だからだ。奴らは自らの繁栄と支配の為に他の生き物も平気で虐げる」
「確かに悪い事をする人間もいます。でも、全員がそうじゃありません。あなたは人間の良い所を知らないだけです!」
「ならばお前は人間の悪しき所が分かっていない。奴らは危険な存在。我らエルフの安寧と平和の為に削除するしか無いのだ!」
互いの主張が激しくぶつかる。両者一歩も引かない。怒りを孕んだ視線が火花を散らす。
「あまり強引な手は使いたく無かったが致し方がない。エフェクト」
「りょうか〜い!」
一瞬だけ敬礼をしたエフェクトは揚々とシグナライザーを腰に巻く。
<シグナライザー!>
続けてバタフライメモリアライズバッジを起動させシグナライザーにセットする。途端に無数の蝶がエフェクトの周囲を舞う。
<バタフライ!>
「へ〜んしん!」
シグナライザーのレバーが下ろされる。
<Wake Up! バタフライ・エフェクト!!>
<アーシリーコード、シグナライズ!>
無数の蝶が装甲となり藍色の戦士、仮面ライダーエフェクトへと変身を遂げた。
「くっ……。仕方ありません」
トワルは腰に巻いているヴァリアブルドライバーのホルダーからスパイダーメモリアライズバッジを取り出し起動させる。
<スパイダー!>
ドライバーにバッジをセット。
<スタートアップ・ローディング!>
<スタートアップ・ローディング!>
途端に現れるエネルギー状の蜘蛛。トワルの周囲を動き回る。鳴り響く音声の中で彼女は力強く宣言する。
「変身!」
<世界を守るライダー! 我らを繋げるスパイダー!!>
<メモリアライズ! バッチグー!>
黒のアンダースーツにエメラルドグリーンの装甲。トワルは仮面ライダーヴァリアブルへと変身した。
「へぇ~。そっちでも変身出来るんだ〜。でも勝つのはワタシだよ」
エフェクトがファイティングポーズを取る。
「ルート展開!」
ヴァリアブルの視界に様々な道筋が出現。その数三つ。一つは右からパンチ。もう一つは左から蹴り。最後の一つは後方に飛び退いてヴァリアブラスターで射撃。
(えっと……どれにしよう?)
しかしそこでヴァリアブルの動きを止まる。どれが一番最適か決めあぐねてしまった。その隙をエフェクトは見逃さなかった。
「そっちが来ないならこっちから行くよ!」
「くっ!」
慌てて後方へ飛び退こうとしたが一手遅い。飛び退く前にエフェクトの拳がヴァリアブルを捉えた。
「きゃあっ!?」
地面を転がり、ヴァリアブルがもんどりを打つ。
「あれれ〜、通常より弱いね〜。これなら楽勝かな♪」
仮面の奥で不敵に笑い、エフェクトは彼女に銃口を向けた。
息を切らしながら創斗は必死に駆ける。トワルのいる場所まで後少し。その時、死角から拳が襲いかかった。咄嗟に横っ飛びで避ける創斗。地面を転がりながら体勢を整え顔を上げると、そこにはガタイの良いスキンヘッドの男が立っていた。
「お前は、脱獄犯の!?」
D.A.T.Aから見せてもらった資料で確認したから分かる。立っていたのは猪原 正樹。好戦的な笑みでこちらを見ていた。
「こんな時に……」
「悪いな。そう言う役割なんだよ!」
猪原がモッドライザーを巻く。続けて取り出したのは猪のレリーフが刻まれたクリアブラウンのメモリアライズバッジを起動させた。
<ボア!>
モッドライザーにセット。猪原の背後にエネルギー状の猪が出現する。ボタンを押し込むとベルトから伸びたチューブが頭部と接続、妖しいエネルギーが流れ出す。
「うおぉぉぉっ!! 電令!!」
<ハック! クラック! バーサーク!!>
<アーシリーコード:ボア! ダウンロード!!>
猪がバラバラに分割され、茶色の装甲となって装着される。変身を遂げ現れたのはボア・モッド。そして、猪の牙を模した二振りの剣を振り回す。
「くそっ!」
悪態をつきながら飛び退く創斗。彼がさっきまでいた場所は振り下ろされた剣によってズタズタになった。すかさず突進するボア・モッド。ショルダータックルが鳩尾に突き刺さる。
「があっ!」
悲鳴を上げながら創斗が地面を転がった。
『そっちも調子良さそうやな』
ボア・モッドの元に通信が入る。相手は狐坂。彼は現在、創斗達がいる場所から離れた住宅街の片隅にいた。その姿は既に狐を模した怪人、フォックス・モッドへと変えている。彼の周りには青白く輝く球体が複数浮遊していた。フォックス・モッドの足元には複数のD.A.T.A隊員達が倒れている。
「やっぱ殺すんは楽しいなぁ。そう思わへん? 後ろのあんさん?」
後方に倒れてるD.A.T.A隊員に声を掛けるフォックス・モッド。本来ならばモッドライザーの作用で闘争本能が増幅され、口調がままならなくなるのだが、並外れた狂気を持つ狐坂の口調は変わらない。
「くそっ! こんのぉ!!」
死んだふりで隙を伺っていたのだが、あっさりと看破され、隊員はやけっぱちになりながら拳銃を抜く。そして、引き金が引かれるより早く球体から放たれた一閃が心臓を貫いた。
「がはっ!?」
拳銃が手から滑り落ち、隊員も力無く倒れ伏す。フォックス・モッドはのんびりと近づくと隊員の首根っこを掴み顔を見る。そこには絶望の表情で事切れている遺体があった。
「あっはっはっは! これやこれや! この表情や! これだから殺しは辞められへん!!」
愉快に笑いながら、隊員だった遺体を投げ捨てる。
『さてと。お次は誰が相手してくれるんやろなぁ。楽しみやわ。猪原くん、そっちも頑張りや』
「オマカセクダサイ!」
視点を戻して、ボア・モッドが剣を振り下ろした。アスファルトが破壊され、破片が飛び散る。その度に体に傷を負いながら創斗は転がる。
(このままじゃ……)
ただでさえ生身の体とモッドではスペックに差がある。避けるのにも一苦労。下手を打てば即死の危険性もある。
「ハハハ! ヤハリアットウテキナチカラデジャクシャヲナブルノハタノシイナァ!!」
剣を交差させながら振るう。斬撃が創斗を襲う。袖が破れ、右腕から血が飛び散りる。
「トドメダァ!!」
迫るボア・モッド。そこへ銃声が響く。見るとそこには四人の隊員を従えた心護がいた。
「動くな! 大人しく投降しろ!!」
「ダレカトオモエバ、ヤクタタズノD.A.T.Aカ……」
ボア・モッドが馬鹿にしたように鼻で笑う。
「役立たず……か。ならその汚名は返上させて貰うぞ」
心護が左腕を見せつける。そこにはブレスレット型のアイテムが付いていた。彼の周りにいる隊員達の腕にも同様の装置が付いている。
「あれは!?」
「そう! あれこそが我らの新兵器、ワークライザー!!」
創斗の元へ駆け寄ってきたのは玲。得意気な顔をしている。
「さぁ、行くぞ!」
心護達はバッジを取り出し起動する。蟻のレリーフが刻まれたクリアグレーのメモリアライズバッジだ。
<アント!>
バッジをワークライザーにセット。途端に心護達の背後にエネルギー状の巨大な蟻が出現。続けざまにワークライザーのボタンを押した。
「号令!」
「「「「号令!!」」」」
<シャット! ガード! ファイト!!>
<データベース:アント! ロールアウト!!>
心護と共に隊員達が宣言する。蟻が分割され彼らの装甲となって纏わりつく。青い複眼が発光して変身が完了する。これこそがD.A.T.Aが作り上げた戦士、マルティプルワーカー。そのうちの一人、実働部隊隊長である心護が変身する唯一装甲に赤のラインが入った特別なマルティプルワーカーが一歩前に出る。
「さぁ、世界を救うぞ」
「「「「了解!!」」」」
士気は充分。彼らはワークライザーに付いた銃のマークが付いたボタンを押す。
<アンテックライフル!>
音声と共にグレーのアサルトライフルが出現。マルティプルワーカー達がアンテックライフルを構える。
「撃て!」
心護の言葉と共に、引き金が引かれ、エネルギー弾が次々と放たれた。激しい弾幕がボア・モッドを襲う。
「グァァァァ!?」
その一撃はヴァリアブラスターよりは軽い。しかし、高い連射性と数による暴力でボア・モッドの装甲に傷を付けていく。
「クッ!」
舌打ちをしながらボア・モッドは民家の影に隠れ、射線を切る。その隙に心護がアンテックライフルを投げ渡す。
「今だ。伝導、行け! ここは俺達が引き受ける」
「!? 分かりました、お願いします!」
創斗はアンテックライフルを受け取ると駆け出した。その後ろ姿を見届けると、心護は民家の方へ向き直る。
「さぁ、猪原。まさか逃げないよな?」
「アタリマエダ!!」
<ボア!>
<セキュリティブレイク!!>
民家が破壊される。エネルギーを纏ったボア・モッドが民家をなぎ倒しながらこちらへと突進してきた。
「三名はシールドを展開。俺ともう一名でフォローする。迎撃開始!」
「「「了解!」」」
三人のマルティプルワーカーが盾のマークが入ったボタンを押す。
<アンテックシールド!>
出現したのは長方形の盾。上部の一部が透明になっておりそこから視界を確保できる代物だ。三人のマルティプルワーカーが前に構え、迎え撃つ。両者が激突し、激しい音と共に砂埃が舞う。やがて視界が晴れるとそこにはボア・モッドの攻撃を完全に防ぎ切ったマルティプルワーカー達の姿が。
「行くぞ! カウンターだ!!」
心護がワークライザーを操作。棒のマークが付いたボタンを押す。
<アンテックバトン!>
現れたのは警棒。持ち手以外の部分が透明になっており、起動するとイエローに発光した。
心護がアンテックバトンを手に駆ける。迎え撃つボア・モッド。心護はメモリアライズバッジとワークライザーを操作する。
<アント!>
<ピースメイクスマッシュ!!>
アンテックバトンがさらに激しく発光。そして、ボア・モッドの剣より早く振り下ろされた。その一撃が装甲およびモッドライザーに直撃。たとえ威力が弱かろうとも確実に倒せる戦法だ。
「ソンナ……バカナ……!?」
ボア・モッドが爆発する。黒煙が晴れるとそこには白目を剥いた猪原が倒れていた。
「やったー! あたし達の勝利!!」
ピョンピョン飛び跳ね、玲が喜びを露わにする。
「いや、まだだ。伝導を追いかけるぞ」
二名に猪原の拘束と搬送を任せ、心護達は走り出した。
「ぐぅ……」
ヴァリアブルが、トワルが地面に倒れ伏す。既に装甲はボロボロ。立つのも一苦労だ。
対するエフェクトは無傷。余裕綽々で迫る。
「このっ!」
ヴァリアブラスターを向けるも狙いが決まらない。正確には決められない。狙いは複数あるが有効打が分からない。トワルは考え過ぎてドツボに嵌っていた。
(どうしたら……)
「諦めてこっちに来なよ〜。ワタシもそろそろ終わりにしたいんだけど」
両者の距離が徐々に縮まる。エフェクトが回し蹴りのアクションに入った。
(しまった!?)
考え過ぎで動けなかった。今から避けても間に合わない。反射的にトワルは目を瞑った。そこへ銃弾が割って入る。
「!?」
体を捩らせ攻撃を避けたエフェクトが距離を取る。その隙にヴァリアブルの隣に並んだのは創斗だった。
「トワル。よく一人で頑張ったな。こっからは二人で行くぞ!」
「! はい、行きましょう!」
創斗がヴァリアブルの腰からドライバーを外す。その瞬間に変身が解け、トワルの体が力無く俯く。既に彼女の意識はドライバーの中だ。
<ヴァリアブルドライバー!>
<スパイダー!>
「『変身!!」』
二つの声が重なる。
<世界を守るライダー! 我らを繋げるスパイダー!!>
<メモリアライズ! バッチグー!>
今度は創斗がヴァリアブルへと変身を遂げた。
「トワル!」
『ルート展開!』
ヴァリアブルの視界に複数のルートが表示される。創斗はその一つを選び、迷いなく進む。エフェクトの右へ回り込み、鋭いパンチを繰り出した。
「おっと!?」
既の所で避わすエフェクト。そのスピードも威力も先程までとは断然違う。
「まだだ!」
追撃とばかりに蹴りを入れる。エフェクトのお腹に炸裂。お腹を押さえながら後退する。
「こんにゃろ!」
怒った彼女は羽を展開した。繰り出すは誘爆性の粒子攻撃。以前はかなりの大ダメージを受けた。だが、今は違う。
『もう既にタネは割れてます。ルート展開。決めてください』
「おうよ!」
再びヴァリアブルの視界にルートが表示される。彼らは掌から糸を発射。近くの電柱に巻き付けると巻き取って高速移動。粒子の範囲から逃れた。
「はあっ!」
すかさず今度は蜘蛛の巣を次々と発射。それはエフェクトからしても容易く避けられるもの。しかし、
(なるほどね。当たれば拘束。避ければトラップ。面倒いよこれ!)
エフェクトは回避を辞め、エフェクタールガンで撃ち落としに掛かる。だがそれは大きな隙。ヴァリアブルがあらぬ方向へヴァリアブラスターを発射。弾丸は蜘蛛の巣から蜘蛛の巣へと跳ね回っていく。それはさながらピンボールのよう。そして、最終的に死角からエフェクトへと迫る。
「このっ!」
仰け反り攻撃を避ける。その足元に糸が巻き付いた。
「おりゃあ!!」
そのまま彼女を振り回すヴァリアブル。ぐるぐると回転して投げ飛ばす。近くの壁に激突するエフェクト。
「これで終わらせる」
<アクセス!>
グリップを押し込み、ヴァリアブルが高く跳躍。
「負けるかぁ!!」
<フィニッシュ!>
レバーを倒し、エフェクトも続く。
空中で一回転を決め、ヴァリアブルが蹴りを放つ。エフェクトも羽を広げ、ヴァリアブルへと足を突き出した。両者、激しいエネルギーを宿し一直線に迫る。
「!?」
激突する刹那、エフェクトが体を捻り、激突を避けた。羽を巧みに操り、方向転換すると、ヴァリアブルの背中へ回り、ボレーキック。
「これでおしまいだ!」
<バタフライ!>
<シャットダウンシグナル!!>
しかし、その一撃は空を切った。目の前にヴァリアブルの姿は無い。
「え!? どこ!?」
「ここだ!」
見ると左横にヴァリアブルがいた。咄嗟に糸を発射して、電柱に巻き付けて空中で移動を可能にしたのだ。そして、今ヴァリアブルの足場になっているのはあらかじめ発射しておいた蜘蛛の巣。蜘蛛の巣は撓りながら解き放たれるのを待っている。
「『たった今、勝利の道は繋がった!!」』
<スパイダー!>
<ヴァリアビリティストライク!!>
かくして蜘蛛の巣は解き放たれた。凄まじいスピードで距離を詰め、エフェクトの鳩尾へ直撃。
「うわぁぁぁっ!!!」
悲鳴を上げ、エフェクトが爆発。一足早くヴァリアブルが着地を決める。爆発を抜け、変身が解けたエフェクトが空中から投げ出された。このまま地面に激突したらただではすまない。エフェクトは衝撃に備え、目を閉じた。そして、エフェクトと地面との間に影が割り込んだ。
「ア、アンビシャス!!」
彼女を受け止めたのはアンビシャス。目を開けたエフェクトの顔が喜色に染まる。
「おい、無事か!」
丁度良く追いかけて来た心護達が合流した。彼らの視線がエフェクトをお姫様抱っこしているアンビシャスに注がれる。
「あいつは?」
「彼はアンビシャス。アーシリーコード、第二のエルフ」
「!?」
アンビシャスはエフェクトを優しく地面に置く。
「エフェクト。少しだけ待っていろ。すぐに終わらせる」
そう言うとアンビシャスはシグナライザーを取り出し、腰に巻いた。
<シグナライザー!>
続けて取り出したのは蜂のレリーフが刻まれたクリアレッドのメモリアライズバッジ。
<ビー!>
バッジをドライバーにセット。アンビシャスの周囲に無数の蜂が出現した。
「変身」
勢い良くレバーが下ろされる。
<Burn up! ビー ・アンビシャス!!>
<アーシリーコード、シグナライズ!>
無数の蜂が黒いアンダースーツを纏ったアンビシャスに纏わりつき装甲となって装着される。顔には蜂を模したアシンメトリーの仮面が張り付き、右側の複眼のみが黄色に輝く。
「あの姿は!?」
創斗は思い出す。大学から逃げるエフェクトを追いかけた際に妨害してきた謎のライダーの存在を。目の前にいるのは紛れもなくそのライダーだった。
「俺はアンビシャス。エルフのアンビシャス。お前達人間を削除する仮面ライダーだ」
静かなる殺意を滾らせ、仮面ライダーアンビシャスが戦闘態勢に入った。