わんだふるぷりきゅあ!!~わんだふる♡わーるど~ 作:重要大事
7月中旬
アニマルタウン 市街地
夏の日差しがじりじりとアスファルトを焼き、熱気が街の空気にじんわりと広がっていた。そんな中、かなえは日陰を選んで歩きながら、一冊の雑誌に夢中になっていた。
表紙には鮮やかなスパイスと湯気立つカレーの写真。見出しには「この夏食べたい極上カレー特集」や「スパイスの黄金比」といった、食欲をそそる文字が並んでいる。
ページをめくるたびに、北海道スープカレーの名店や、本格インドカレーの紹介が次々と目に飛び込んでくる。ジンギスカン入りのカレー、牛スジを使ったカレー、スパイス香るベジタリアンカレー。どれもこれも魅力的で、読むだけで胃が鳴りそうだった。
「ふむ……なるほど、ほうれん草と牛の乳の加工品を使ったパラックパニールに、豆を使ったダールタルカか」
かなえは雑誌の一ページを見つめながら、軽く顎に手を当てる。緑鮮やかなパラックパニールの写真の隣には、スパイスたっぷりの豆カレー、ダールタルカの黄金色が映えている。同じカレーという括りでありながら、ここまでバリエーションが豊かだとは——改めて、カレーという食の奥深さを思い知る。
「やはりカレーは奥が深い……」
思わず呟くと、なんとなく誇らしい気持ちになる。知識が増えた気分というのは、なかなか悪くない。
雑誌を片手に、かなえはさらに数歩歩いた。ちょうど公園の前に差し掛かったとき、不意に目に留まったのは――猫たちが円を作って集まっている光景だった。
「……猫集会か?」
一匹、二匹……いや、それ以上いる。街中の猫たちが、まるで何かの会議でもしているかのように、じっと中央を見つめている。その中心に、見覚えのある白い猫の姿があった。
「あれは……ユキ?」
驚きつつ、かなえは雑誌を閉じ、興味深そうに猫集会を眺めるのだった。
輪の中心では、一匹の恰幅のあるボス猫がどっしりと座り、威厳たっぷりに周囲を見渡していた。そんな彼に向かって、ユキが奇譚のない意見を投げかける。
「ボス、あなた少し太ったんじゃない?」
ボス猫は鋭い瞳を細め、低くニャーと呟いた。ユキはすかさず首をかしげながら、涼しい顔で続ける。
「太ってるくらいがちょうどいい? 少し食べなくても大丈夫って……一理あるけど、いざってときに動けなくならない?」
その言葉に、周囲の猫たちも一斉に鳴き交わし、どうやらユキと同じ意見であることを伝えているらしい。小さな三毛猫がボスの横腹をちょんと突き、黒猫がくぐもった声でニャーと同調する。
ユキは満足げに頷き、誇らしげな表情で言った。
「ほらみなさい。みんなもそう思ってるみたいよ」
その様子を見ていたかなえは、くすりと笑いながら声をかけた。
「楽しそうだな」
しかし、その声にユキはびくっと肩を揺らし、振り向いた途端、目を見開いた。
「な、なんであなたがここにいるのよ!?」
かなえは雑誌を片手に軽く肩をすくめる。
「いては駄目なのか?」
かなえの言葉に、猫たちは一斉に静まり返り、興味深そうに二人のやりとりを見つめていた。
ユキは小さく肩を揺らしながら、あからさまに落ち着かない様子で視線を逸らす。そして、誰に聞かれたわけでもないのに、わざわざ言い訳じみた説明を始めた。
「べ、別にいいじゃない。私が普段どこで何をしようと、あなたには関係ないわ。今日は月に一度の猫集会があって、それで集まっていたのよ」
かなえは腕を組みながら、ふむ、と考え込むような素振りを見せる。
「前々から思っていたんだが、なぜツンデレというのは、聞かれてもいないことについて勝手に喋るんだ?」
「う、うるさいにゃー! 誰がツンデレよ!」
耳をピクッと動かしながらユキは反論するも、どこか焦ったような様子が隠しきれていない。普段は落ち着き払っているはずの彼女が、妙に感情的になっているのが自分でも気に入らないのだろう。
「あなたといると調子が狂うのよ!」
感情を爆発させるように言い放った途端、周囲の猫たちが「にゃー?」と不思議そうに鳴いた。日頃、プライドの高い姐御肌のユキに慕っている猫たちにとって、これは意外な光景だったらしい。
それでも、すぐに「面白いものを見た」と言わんばかりの反応が返ってくる。三毛猫がくすくす笑うように尻尾を振り、黒猫は長いあくびをひとつ。好奇心旺盛な子猫たちは、ユキの周りに集まって「にゃにゃっ」と楽しそうに声をあげた。
「……なんなのよ、もう!」
ユキは思わず尻尾をばたつかせ、恥ずかしそうに顔を背けたが、かなえはただ肩をすくめ、雑誌をパラパラとめくる。
「まぁ、猫というのはこういうのを楽しむ生き物だからな」
彼女の言葉に、猫たちは再び「にゃーん」と鳴き、まるでその意見に賛同するかのように、ユキを取り囲むのだった。ユキはそんな猫たちの視線に戸惑いながら、ふいっとそっぽを向く。
「あなたに猫の何がわかるのよ?!」
ぷくっと頬を膨らませ、ユキが鋭く言い返す。すると、かなえはふっと笑い、雑誌を片手に軽く持ち上げた。
「そうだな。少なくとも、こういうのが好きだというのはわかるぞ」
そう言って、かなえは雑誌の一ページをユキに見せつける。そこには、湯気を立てるスパイスたっぷりのカレーと、その上に贅沢に乗った鮭の切り身が映っていた。
「にゃ!」
ユキの瞳が、一瞬にして輝きを増す。そして、その瞬間、周囲の猫たちの視線も一斉に雑誌の写真へと釘付けになった。小さな三毛猫が前足をそわそわと動かし、黒猫がゴクリと喉を鳴らす。まるで、写真の中の鮭カレーが今にも飛び出してくるかのように、彼らの期待に満ちた視線が集まっている。
しかし——。
「……って! 人をおちょくるのも大概にしなさい!」
ハッとしたように顔を赤らめ、ユキはバシッとかなえの雑誌を指で弾いた。
「私と遊んでいいのはまゆだけよ!」
鼻息荒く宣言するが、まるで効果はない。かなえはそんなユキを見ながら、どこか愉快そうに肩をすくめた。
「つくづくからかい甲斐のあるやつだな」
その言葉に、ユキの耳がピクリと動く。しかし、それ以上反論するのも癪だったのか、再びプイッと顔を背けてしまう。その様子を見て、猫たちは「またやってる」とでも言いたげにクスクスと鳴き交わすのだった。
「! ニャー」
ふと、ボス猫が低くと鳴いた。その声音には、さきほどまでの呑気なやり取りとは違う、何かを警戒するような響きがあった。
かなえとユキがその声の主に目を向けたのと同時に、周囲の猫たちも一斉に耳をピンと立てる。そして、その視線の先——公園の茂みの奥から、小さな影がふらふらと揺れるように姿を現した。
それは、一匹の子猫だった。
痩せ細った身体はガリガリに骨ばっており、被毛はぼさぼさに乱れている。足取りは弱々しく、今にも崩れ落ちそうなほどふらついていた。大きく開かれた瞳はどこか虚ろで、鳴くことすらできないのか、かすかに口を開閉しているだけだった。
「……!」
ユキの表情が一瞬にして険しくなる。彼女はすぐに子猫へと駆け寄ろうとした——が、その前に、子猫の足元がぐらりと揺れた。
次の瞬間、子猫の小さな体が力尽きたように前のめりに倒れかける。
「なっ……!」
それを見たかなえが反射的に駆け出す。だが、その瞬間、ユキの身体が光に包まれた。
まばゆい光が一瞬、公園の木々に影を作る。そして、猫だったユキの姿が、人間のものへと変わっていた。
「ユキ!」
人の姿になったユキは、素早く子猫のもとへ駆け寄ると、その小さな身体をそっと抱き上げた。
「……なんて痩せてるの……!」
その腕におさまった子猫は、折れそうなくらい軽く、さながらぬくもりを失ったような頼りなさだった。ユキはそっと子猫の額に頬を寄せるようにして、鼻をクンクンと近づける。
「ひどい衰弱……お腹が空いて、ここまで出てきたのね……!」
ユキの声は、どこか震えていた。
一方、かなえもすぐにユキの横にしゃがみ込むと、子猫の様子を覗き込む。
「……まずいぞ。息も浅いし、下手をすればこのまま……」
その言葉に、ユキはぎゅっと唇を噛みしめる。しかし、次の瞬間には鋭く顔を上げ、しっかりとかなえを見つめた。
「とにかく、フレンドリィ動物病院へ連れて行くわよ」
「! ああ、そうだな」
その真剣な目を見て、かなえは一瞬驚いたが、すぐに口角を上げ、軽く肩をすくめた。
「大丈夫よ……もうひとりじゃないから」
一方で、ユキは子猫を抱きしめながら、そっとその耳元で囁くように言った。
その言葉が、かすかに震える子猫の耳に届いたのかどうか。弱々しくも、子猫の目がわずかに瞬いたように見えた。
*
アニマルタウン フレンドリィ動物病院&サロン
診察台の上では、衰弱した子猫が柔らかなタオルに包まれ、かすかに胸を上下させている。そのすぐそばで、ユキとかなえが静かに様子を見守っていた。
陽子は丁寧に聴診器を当て、子猫の呼吸音を慎重に確認した後、そっとそれを外した。額にかかる前髪を払いながら、小さく息をつく。
「大丈夫、今のところ容体は安定してるわ」
その言葉に、ユキとかなえはほっと胸を撫で下ろした。しかし、陽子の表情はまだ完全には晴れていない。
「ただ……かなりの栄養失調ね。体温も低く、脱水症状も出てるわ。おそらく、かなり長い間まともに食事を取れていなかったんでしょう」
ユキは子猫の小さな身体を見つめながら、ぎゅっと拳を握りしめた。
「そんな状態で、ひとりでどこを彷徨ってたのかしら……」
低く呟いた声には、怒りと悲しみが滲んでいた。
かなえは腕を組みながら、ふっと眉をひそめる。
「そもそも、どこから来たんだ? 野良という感じではなかったし……」
「そうね……」
陽子は思案するように視線を落としながら、子猫の身体を優しく撫でた。
「毛並みこそ荒れていたけど、完全な野良というよりは……誰かに飼われていた痕跡があるわ」
「やっぱり……」
ユキの目が細くなる。
「この子、爪が妙に削れてたわよね。それに、耳の中も汚れていたけど、もともとはケアされていた形跡があった……」
陽子は静かに頷くと、カルテにメモを取りながら続けた。
「となると、可能性としては――飼い主に捨てられたか、あるいは……」
陽子がもう一つの可能性に言及しようとしたその時、診察室の扉が慌ただしく開かれた。
「お母さん、大変だよ!」
息を切らせながら入ってきたのは、制服姿のいろはとまゆ、そして悟だった。彼らは学校から帰宅したばかりらしく、まだ鞄を肩にかけたままの状態だったが、そんなことを気にしている余裕もなさそうだった。
「まゆ……どうしたの?」
ユキが眉をひそめながら視線を向けると、悟が慎重に抱えている小さな身体が目に入った。それは、一匹の子犬だった。
子犬は、衰弱しきってぐったりとしたまま悟の腕に身を預けていた。痩せ細った体は骨ばっていて、白い毛並みは泥と埃でくすんでいる。体温が足りないのか、小刻みに震えているのがわかった。
「息が弱いんです……このままじゃ……!」
まゆの声がかすかに震えていた。その両手もまた、悟の腕の下で小さな子犬の背中をそっと支えている。
陽子はすぐに診察台の上の子猫を見て、一瞬だけ躊躇したが、すぐに決断した。
「すぐにこっちに運んで! 診るわ!」
「うん!」
いろはは悟とまゆとともに診察台へと駆け寄り、慎重に子犬を横たえた。その間も、ユキの表情はますます険しくなっていった。
「一体何があったんだ?」
かなえが腕を組み、険しい表情で三人に事情を尋ねる。診察室の空気は張り詰め、ユキも無言のまま子犬の様子を見つめていた。
「それが……」
いろはは少し息を整え、慎重に言葉を選びながら説明を始めた。
「学校の帰り道で、ゴミ捨て場の近くからかすかな鳴き声が聞こえて……。最初は気のせいかと思ったんだけど、どうしても気になって近づいてみたの。そしたら、この子が一匹で震えていたんだよ」
診察台の上、子犬は弱々しく体を丸めている。まるで、そこが唯一の安全な場所だと信じているかのように、身を縮こまらせていた。
「捨てられていたのか?」
かなえの問いに、いろはが少し眉をひそめ、視線を落とす。すると、隣で子犬を支えていた悟が口を開いた。
「それは……わからない。ただ、どうしても違和感があるんだよね」
悟は慎重に言葉を選びながら続ける。
「あの場所、周りには人の気配もなかったし、誰かが意図的に捨てていった感じがしないんだ」
その言葉に、かなえがじっと悟を見つめる。
「? どういうことだ?」
「いや……もし誰かがこの子を捨てたなら、普通はもっと目立たない場所を選ぶと思うんだ。でも、あそこは人通りが多いわけでもないし、逆に目撃される可能性がある場所でもない。なのに、この子はそこで衰弱していた……」
悟は腕の中の子犬をそっと見下ろしながら、自分自身に問いかけるように呟いた。
「もしかしたら、逃げ出してそこにたどり着いたのかもしれない……」
診察室に静かな緊張が広がる。まゆは子犬の小さな頭を撫でながら、ユキの方を振り向いた。
「そういえば……ユキはどうして鷹目さんと一緒に?」
ユキは一瞬言葉に詰まるように沈黙したが、すぐに落ち着いた声で答えた。
「私は……この子猫を保護したのよ」
そう言って診察台の上の子猫に視線を落とす。その目には、静かながらも確かな怒りが宿っていた。
「この子も……飢えと衰弱で倒れていたわ」
その言葉を聞いた瞬間、いろはとまゆ、悟の表情が変わった。
「まさか……」
「ええ、今回の件、偶然じゃなさそうね」
ユキの言葉が、診察室の空気をさらに重くした。誰もが、この子猫と子犬の背後にある「何か」を感じ取っていた。
*
アニマルタウン 住宅街
午後3時過ぎの住宅街は、まだまだ日差しが強く、アスファルトがじんわりと熱を持っていた。風が吹くたびに街路樹の葉が揺れ、どこかの家から洗濯物を干す柔軟剤の香りが微かに漂ってくる。
そんな中、一人と一匹が歩道をゆったりと歩いていた。
「うふふっ、やっぱりこうやってお散歩するの、楽しいね~♪」
こむぎはご機嫌にリードを握りしめながら、隣を歩くうさぎ姿の大福を見下ろす。
「…………」
対して、大福はやや不機嫌そうに耳をピクリと動かしながら、短い足でぴょこぴょこと歩き続けていた。
「大福、ひょっとして怒ってる?」
こむぎが覗き込むように尋ねると、大福はそっぽを向きながら短く返す。
「別に。怒ってねーよ」
「じゃあどうしてムスってしてるの? ひょっとして、わたしと一緒にお散歩するの、いや?」
「ちげーよ。ただ、勝負事とはいえ……まさかあっち向いてホイに負けて、その罰ゲームでウサギ姿で散歩させられることになるとはな……」
大福は小さくため息をつきながら、地面を見つめる。その耳がわずかに垂れているのを見て、こむぎはクスリと笑った。
「でも、こむぎが勝ったんだから、これは約束通りだよ!」
こむぎは得意げに胸を張ると、軽くリードを引きながら足を止めた。
「それにさ、やっぱりウサギの大福をお散歩できるって、すっごくかわいいよね~♪」
その言葉に、大福はピクッと耳を動かしながら、不満げにため息をつく。
「かわいいとか言うな……」
「え~? だって、大福ってモフモフで、お耳もぴょこぴょこして、ちょこんって歩く姿が本当に……」
「やめろっ! それ以上言うと、本気で怒るぞ!! オレはかっこいいウサギなんだ!」
「うん。大福は出会ったときから、かっこいいウサギだよ」
むくれた大福がピョンっと軽く跳ねると、こむぎはクスクスと笑いながらその様子を楽しんでいた。
そんな和やかな雰囲気の中——ふと、こむぎが足を止める。
「……ん?」
鼻をひくひくと動かし、周囲を見回した。
空気が妙に重い。それまでの柔らかい午後の空気とは打って変わり、どこか生臭く、湿った不快な匂いが鼻をつく。
「こむぎ……」
大福もまた、耳をピンと立て、警戒するように周囲を見渡した。
「ねぇ、大福……なんか、すごくクサくない?」
こむぎは鼻を押さえながら、顔をしかめる。
「……ああ、これは……獣臭、だな」
大福の表情が険しくなる。単なるゴミの臭いではない。もっと濃厚で、獣の体臭が染みついたような、不快な臭気だ。
ふたりが臭いの元を探るように視線を巡らせると、住宅街の一角、古びた木造家屋の方から強烈な悪臭が漂っていることに気がついた。
「……あのおうちだよ」
こむぎが小さく呟く。
そこには、塀の一部が崩れかけた、古びた一軒家が建っていた。壁には黒ずんだ汚れが広がり、窓ガラスはくすんで中の様子が見えない。郵便受けには溢れかえったチラシが無造作に詰め込まれており、明らかに長い間放置されているように見えた。
「ねぇ、大福……もしかして、あの中に……」
「……ああ、たぶん、何かいるな」
大福は低く呟くと、じっとその家を睨む。
住宅街の静かな午後に、ひときわ異質な空気が流れていた。
こむぎは少し考え込むように家を見上げると、大福のリードを軽く引きながら歩き出した。
「おい、どうする気だ?」
「ちょっと確認しに行く!」
大福の問いに、こむぎは迷うことなく答えた。そして、そのまま古びた木造家屋の玄関へと向かい、躊躇なくインターフォンを押した。
「ごめんくださーい!」
こむぎの明るい声が静かな住宅街に響く。しかし、返事はない。インターフォンから音が鳴る気配もなく、ただ湿った静寂が漂うばかりだった。
「……いないのか?」
大福が首をかしげる。しかし、こむぎは諦める様子もなく、玄関の引き戸に手をかけた。
ガタ……
軽く押してみると、思いのほかあっさりと扉が開いた。
「……鍵、かかってない?」
「お、おい! 勝手に入っていいのかよ?!」
大福が焦ったように跳びはねるが、こむぎは意に介さず、玄関の敷居をまたいだ。
「大丈夫だよ。少し確認するだけだから!」
「いや、それが一番ヤバいんだろ……!」
大福の静止を完全に無視し、こむぎはさらに奥へと進んでいく。仕方なく、大福もため息をつきながら彼女のあとに続く。
玄関を抜けた先の廊下は、うす暗く、湿気を帯びた空気が重く漂っていた。足元には埃が溜まり、長い間掃除されていないことがうかがえる。
そして――。
「……なんか、ますます臭くなってきた……」
こむぎは鼻を押さえ、顔をしかめる。
先ほど外で感じた獣臭が、ここではさらに濃くなっていた。何かが腐敗したような、不快な臭気が鼻をつく。
「……この奥からだな」
大福は鼻をひくひくと動かしながら、奥の部屋を睨む。その向こうには、さらに強烈な異臭が漂っていた。
こむぎと大福は慎重に奥の部屋へと足を進めた。鼻を突く強烈な悪臭が、ただでさえ薄暗い室内をさらに重苦しくしている。廊下を歩くたびに、靴裏にべたつく感触がまとわりつき、湿気とともに嫌な気配が肌を刺す。
やがて、二人は一番奥の部屋にたどり着いた。
扉は半開きになっており、向こう側の薄闇に何かが蠢く影が見えた。こむぎはゴクリと生唾を飲み、意を決してドアを押し開ける。
そして――。
「っ……!!」
目に飛び込んできた光景に、こむぎの呼吸が止まった。
そこには、おびただしい数の猫や犬がひしめき合い、薄汚れた床にへたり込んでいた。部屋の隅には、糞便が山のように積み重なり、腐った餌の残骸や毛玉が散乱している。湿った空気は、濃縮された悪臭と混ざり合い、吐き気を催すほどの異様な空間を作り出していた。
衰弱した動物たちの体は痩せ細り、毛並みはべたつき、まともに立つことすらできないものもいる。瞳に光を失い、力なく横たわる猫。餌を求めるように震える犬。
そして、何より――。
すでに動かなくなってしまった小さな影。
黒ずんだ毛皮の間に覗く骨ばった肢体は、ここにいた命の終わりを静かに物語っていた。
「……っ」
視界がぐにゃりと歪む。息が詰まるような衝撃に、こむぎの膝ががくりと折れ、その場に尻餅をついた。
「う、そ……」
声が震え、出せない。涙がにじむ。目の前の光景が現実とは思えない。
「こむぎ!」
大福はすぐにこむぎの傍に駆け寄った。彼女の肩を支えると、優しく彼女の顔を覆うように手をかざす。
「見るな」
低く、静かな声だった。しかし、その声音には確かな強さと、彼女を守る意志が込められていた。
次の瞬間、大福の体が淡い光に包まれ、彼の姿が変わっていく。
光が収まる頃には、そこには人間の姿の大福がいた。彼はそっとこむぎの頭を引き寄せ、彼女の目を覆ったまま、もう片方の手でポケットのスマホを取り出す。
それは悟から持たされていたものだった。「何かあったら、すぐに連絡しろ」と言われていたものの、まさかこんな形で使うことになるとは。
画面を素早く操作し、発信ボタンを押す。
「……もしもし、悟か? すぐに来てくれ。場所は――」
大福は淡々と状況を伝えながら、こむぎの震える肩をそっと抱きしめた。彼女がこの光景をまともに見てしまえば、どれほどの衝撃を受けるか、それは痛いほどわかっていたから。
何より今は、冷静に事を運ばなければならない。
「……ああ、頼む」
通話を終えると、大福は静かに息を吐き、こむぎの頭を優しく撫でた。
「大丈夫だからな」
その言葉は、こむぎに向けられたものなのか、あるいは、自分自身への誓いだったのか。
異臭に満ちた部屋の中で、大福はただ静かに、こむぎが落ち着くまで寄り添い続けた――。
日が傾き始め、辺りが茜色に染まり始めた頃――。
住宅街の一角に、数台の車が到着した。車体には「アニマルタウン動物保護センター」の文字が記され、荷台にはいくつものキャリーケースやケージが積まれている。
「状況は?」
「まだ詳細は不明ですが、動物たちの状態はかなり悪いようです」
「わかった。すぐに中を確認しよう」
車から降りた職員たちは、手際よく防護手袋をはめ、マスクをつけながら民家の玄関へと向かう。その後ろでは、ケージや輸送用のキャリーケースを運ぶスタッフの姿もあった。
玄関の扉を開けた瞬間、外にいた職員たちは思わず顔をしかめた。
「……これはひどいな」
充満する異臭、床にこびりついた糞尿、そして弱々しく鳴く動物たちの声。
「まずは衰弱している個体から運び出そう。急いで獣医のチェックを受けさせないと」
「了解です。成犬と成猫は一度ケージに分けましょう」
職員たちは次々と動物を保護し、慎重に運び出していく。痩せ細った犬が、スタッフの手に怯えたように身を縮める。衰弱し、かすかに震える子猫がタオルに包まれる。動物たちの瞳には、不安と疲れが色濃く滲んでいた。
その様子を少し離れた場所から見つめるこむぎと大福。
こむぎはまだショックを完全には拭い去れず、両腕を抱え込むようにしながら、じっと動物たちの姿を見つめていた。
「……これで、みんな助かるの?」
小さな声がこぼれる。
大福はこむぎの隣に立ちながら、静かに答えた。
「助かるやつもいる。だが……間に合わなかったやつもいる」
「……」
こむぎの喉が詰まる。そう、現実は残酷だった。すべての命を救うことはできない。すでに動かなくなってしまった動物たちは、静かに袋へと入れられ、職員たちの手で慎重に運ばれていた。
こむぎは拳を握りしめ、唇を噛む。
「もっと……もっと早く気づいていたら……」
そう呟いたそのとき――。
「こむぎー!」
聞き慣れた声が響いた。
顔を上げると、いろは、まゆ、ユキ、悟、かなえの五人が駆け寄ってくるのが見えた。
「こむぎ、大丈夫!?」
駆け寄るなり、いろはは真っ先にこむぎの肩に手を置いた。その瞳には、心配の色がにじんでいる。
「……いろは……」
その姿を見た瞬間、こむぎの中に押し込めていた感情が一気に溢れ出しそうになる。
「わたし……わたし……何もできなかった……」
こむぎは震える声で呟き、視線を落とす。
「動物たちは、あんなに苦しんでいたのに……どうして……どうしてこんなことに……」
拳を握りしめ、今にも崩れ落ちそうなこむぎの手を、いろははそっと握った。
「こむぎ、何もできなかったなんてこと、ないよ」
こむぎがはっと顔を上げる。
「こむぎが見つけてくれたから、みんな助かったんだよ。もし気づかずに放っておいたら、もっとひどいことになっていたかもしれない」
「でも……」
「わたしたちはね、何でも全部できるわけじゃない。でも、できることをしていけば、それが誰かの助けになるんだよ」
こむぎは唇を噛んだ。いろはの言葉は、まっすぐ心に響いた。
すると――。
「そうだよ、こむぎちゃん」
悟が軽く肩をすくめ、穏やかな声で続ける。
「二人は十分よくやったよ。こういうのは、誰かが気づいて、誰かが動かなきゃ何も変わらない。でも、二人はちゃんと気づいて、こうして助けを呼んだんだ。だから、今こうしてみんな助かろうとしているんだよ?」
「悟……」
「大丈夫だよ、こむぎちゃん」
まゆも優しく微笑みながら、そっと背中をさすった。
「こむぎちゃんがいたから、この子たちは助かるの。だから、そんなに自分を責めないで」
温かい言葉に、こむぎの目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。
「……そっか……」
小さな声で呟きながら、こむぎはぎゅっといろはの手を握り返す。その手は、少しだけ強くなっていた。
「ありがとう……いろは、悟、まゆ……」
いろははにっこりと微笑み、そっとこむぎを抱きしめた。
「うん、いつでも頼ってね」
夕日がゆっくりと沈み始め、空が茜から紫へと色を変えていく。
動物保護センターの職員たちは、最後の一匹まで慎重にケージへと収容し、静かに作業を終えようとしていた。
すべてが解決したわけではない。助けられた命もあれば、間に合わなかった命もある。けれど、それでも――こむぎは前を向こうとしていた。
強く、しっかりと、いろはたちの温もりを感じながら。
◇
アニマルタウン 私立湾岸第二中学校
翌日――。
雲ひとつない青空が広がり、校舎の窓からは心地よい風が吹き抜けていた。中庭には、元気に遊ぶ生徒たちの声が響いている。けれど、その賑やかさとは対照的に、廊下を歩くいろはたちの表情はどこか沈んでいた。
昼休み、いろはとまゆは教室の窓際で並んで座っていた。二人とも、昨日の出来事がまだ頭から離れない。
「こむぎちゃん、大丈夫……?」
まゆが小さな声で呟く。心配そうに指先をもじもじと弄りながら、視線を宙にさまよわせた。
「朝、顔は見たけど……ちょっと元気なかったよね」
いろはも同じように気になっていた。今朝、こむぎは普段と変わらないように振る舞っていたが、どこか笑顔がぎこちなかった。昨日のショックが、まだ抜けていないのは明らかだった。
「うん……ちょっと無理してる気がする。こむぎって、いつも明るいけど、落ち込むときは一人で抱え込んじゃうから……」
まゆは唇をぎゅっと結び、そっと両手を握りしめた。
「……そっか」
いろはは少し考え込むように視線を落とすと、ふと、廊下を歩いている悟の姿を見つけた。
「悟くん!」
いろはは立ち上がり、急ぎ足で彼に駆け寄った。悟は足を止め、軽く首を傾げる。
「ん?」
いろはは一瞬躊躇したが、意を決して口を開いた。
「悟くん、昨日のあれって……やっぱり……」
「……ああ、うん。多頭飼育崩壊……だと思う」
悟は静かに頷いた。その表情はいつになく硬く、言葉を選ぶように慎重に続ける。
「……多頭飼育崩壊?」
まゆが疑問を浮かべるように首を傾げた。
「うん……飼い主が無計画に動物を増やしすぎて、自分じゃ面倒を見きれなくなってしまうことだよ」
「そんな……」
まゆはショックを隠せず、胸の前で手を握る。
「昨日の場所……あの家もそうだったのかな?」
「可能性は高いね。飼い主はずっと放置していたか、もしくは本当にどうしようもなくなって逃げたのかもしれない」
「……そんなの、ひどすぎるよ……!」
まゆの声が震えた。
アニマルタウンで暮らす一人として、そしてユキという愛猫を大切にしている彼女にとって、この現実はあまりに悲しく、許しがたいものだった。動物は、人間の愛情を求めて生きているはずなのに――その愛が裏目に出て、こんな悲劇を生んでしまうなんて。
そんなまゆの様子を見て、悟は落ち着いた口調で言葉を継いだ。
「猫屋敷さん、落ち着いて。多頭飼育崩壊の背景は、単純なものじゃないんだ。特に、こういう問題は高齢者の飼い主に起こりがちなんだ」
「高齢者の……?」
まゆが眉をひそめる。
悟は少し考えながら、慎重に説明を始めた。
「例えば、一人暮らしの高齢者が、最初はたった一匹の猫を飼い始めたとする。でも、そのうち『寂しいから』『可哀想だから』って、保護したり、捨てられている猫を拾ったりして、どんどん増えていくんだ」
「でも、それならちゃんと避妊手術をすればいいんじゃ……?」
「それが、金銭的な理由や知識の不足で、手術を受けさせられないことが多いんだよ。動物病院での手術費用は決して安くないし、高齢になると、そもそも情報を得る手段が限られてることもある」
話を聞いた瞬間、まゆは息をのんだ。
「……だから、どんどん増えていって……?」
「うん。そして気づいた頃には、もう手に負えない数になってる。高齢者は体力も落ちてるし、掃除や餌やりが追いつかなくなる。結果、家の中が崩壊するんだ。加えて、自身の病気が見つかったりすると長期間家を空けることが多くなって、最悪自分のほうが先に……」
悟の言葉に、まゆは言葉を失った。
「でも……そんなの、悲しすぎる……」
「悲しいし、残酷な現実だよ。でも、当人たちは最初から『虐待しよう』と思ってるわけじゃない。むしろ、善意のつもりでやってることが、結果として動物たちを苦しめてしまうんだ」
「……だったら、どうすればいいの?」
まゆの声は震えていた。
「一番は、周囲が早い段階で気づくことだね。自治体や動物愛護団体が相談できる窓口を作っていたりするけど、高齢者はそういうところに頼ることを知らなかったり、恥ずかしがったりしてしまう」
「それで、どんどん悪化しちゃうんだ……」
「うん。そして、最終的に誰にも助けを求められず、昨日みたいな状況になる……」
「だとしても、遣る瀬無いよ」
まゆの声が震える。動物が好きな彼女にとって、その現実はあまりに悲しく、許しがたいものだった。
いろはもまた、改めて昨日の光景を思い出し、拳を握る。
「……どうしたら、こんなことが起こらないようにできるのかな?」
その問いに、悟は少し目を伏せ、静かに答えた。
「……簡単なことじゃないよ。でも、飼い主が責任を持って飼うこと、それが一番大事だと思う」
その言葉に、いろはとまゆは黙り込んだ。
昨日見たあの光景――あんな悲しい現実が繰り返されないようにするために、自分たちにできることはあるのだろうか。
誰もすぐには答えを出せず、それでも、三人の心にはそれぞれの思いが静かに芽生えていた。
*
アニマルタウン 犬飼家
午後の日差しが静かに差し込む犬飼家のリビング。外では穏やかな風が吹いているというのに、部屋の中の空気はどこか沈んでいた。
こむぎはソファの隅に座り込み、耳を垂らしたまま、じっと床を見つめている。尻尾は動かず、ふわふわの毛並みもどこか元気がない。
しょんぼりと項垂れるその姿は、いつもの明るく元気なこむぎとはまるで別人のようだった。
「こむぎ……大丈夫か?」
剛がそっと声をかけるが、こむぎは微かに耳をぴくりと動かしただけで、返事をしない。
「昨日からほとんどしゃべっておりませんねぇ……」
メエメエが心配そうに隣に座る。
「ご飯も、あんまり食べてないみたいだし……」
「うぅ、こんなに元気のないこむぎ様、初めて見ました……」
陽子は小さくため息をつき、そっとこむぎの頭を撫でた。
「時間が必要なのかもしれないわね。無理に元気になれっていうのも逆効果になるわ」
「そ、そっかぁ……」
剛とメエメエはしょんぼりと耳を垂らしながら、ちらりとこむぎの横顔を覗き込んだ。
ピンピーン! そこへ、玄関のチャイムが鳴った。
「……?」
こむぎがかすかに顔を上げる。
陽子が立ち上がり、ドアを開けると、そこにはユキ、大福、かなえの三人が立っていた。
家の中に招き入れられたあと、ユキは腕を組みながらこむぎの様子を一瞥し、ふぅと小さく息を吐く。
「やっぱりね……昨日のこと、まだ引きずってるんでしょ?」
その言葉に、こむぎは何も答えなかった。ただ、俯いたまま耳をピクリと動かすだけだった。
「こむぎ」
今度は大福が声をかける。彼の表情はいつも通り淡々としていたが、その瞳にははっきりとした優しさがあった。
「オレら、昨日の古い民家で助けた子猫と子犬の様子を見に行くんだ。お前も一緒に来るか?」
大福の言葉に、こむぎの瞳がわずかに揺れた。
「……!」
こむぎはゆっくりと目を上げる。
昨日、衰弱し、今にも消えてしまいそうだったあの小さな命たち。彼らは今、どうしているのだろう――。
生きている? ちゃんと元気になっている?
そんな思いが、胸の奥で静かに膨らんでいく。
「……行く!」
小さく頷いたこむぎに、ユキと大福、そしてかなえは満足げに目を細めた。
すると、かなえが腕を組みながら、軽く肩をすくめる。
「なら、決まりだな」
続いて、ユキが歩み寄り、こむぎの目をじっと見つめる。
「さ、早く行きましょう。あの子たち、きっとこむぎに会いたがってるわよ」
その言葉に、こむぎの胸がほんの少しだけ温かくなった気がした。
「……うん、ありがとう!」
こむぎはそう言うと、ぱっと明るい笑顔を見せながら、一瞬の光に包まれる。
次の瞬間、彼女の姿は人間の姿へと戻っていた。
「こむぎ様……!」
メエメエがほっとしたように胸を撫でおろし、陽子と剛も穏やかに微笑む。
「ようやく、いつものこむぎに戻ったわね」
「だな」
こむぎは照れくさそうに笑いながら、服の裾を軽く握る。
「うん、もう大丈夫! それに、あの子たちの顔を見に行かなくちゃ!」
こむぎの明るい声に、ユキ、大福、かなえも頷いた。
「いってきまーす!」
こむぎが元気よく手を振りながら玄関へ向かう。
「「「いってらっしゃい(ませ)!」」」
陽子と剛、メエメエは、安堵したように微笑みながら、その背中を見送った。
静かなリビングに、テレビの音が響く。
『――続いてのニュースです』
画面が切り替わり、男性アナウンサーの落ち着いた声が流れる。
『アニマルタウン役場によりますと、先月下旬、〇〇市で養鶏場が野犬に襲われ、鶏208羽が死にました。また、〇〇市役所によりますと、経営者の男性が、野犬を取り押さえた際、腕をかまれてけがをしました』
画面には、荒れた養鶏場の映像が流れる。土埃が舞う地面には、羽根が散乱し、無残な爪痕が残っていた。フェンスには穴が開けられ、犬のものと思われる足跡があちこちに点在している。
『この野犬は、首輪の番号などから、先々月200匹以上の多頭飼育が問題となった、アニマルタウンの農場から逃げ出した犬とわかりました』
次の映像では、住宅地の一角で取材を受ける高齢の男性の姿が映し出される。画面の下には「犬を飼っていた男性(78)」のテロップが表示される。
『申し訳なかったと思ってるのと……捕まえてくれたってことに感謝してるよ』
男性の声は落ち着いていたが、その表情には後悔の色が滲んでいた。
『野犬を引き取った男性は、『養鶏場側に弁償したい』と話しています』
その言葉とともに、ニュース映像は次の報道へと移っていく――。
*
アニマルタウン 動物保護センター
こむぎたちが到着すると、動物保護センターの建物の前には、数台のキャリーケースが並べられていた。中では、保護された犬や猫たちが静かに丸まっている。
扉をくぐると、職員たちが忙しなく動き回っていた。応急処置を受けた動物たちは、それぞれのケージに入れられ、順番に健康チェックを受けている。
「こっちよ」
ユキが先導し、こむぎたちは保護された子猫と子犬のいる部屋へ向かう。
室内に入ると、ふわふわのタオルの上で休んでいる子猫と、落ち着いた様子で座っている子犬の姿が目に入った。
「生きてる……」
こむぎは小さく呟くと、そっとしゃがみ込み、子犬の小さな頭を優しく撫でた。
「お前たち、元気になってきたな」
大福も腕を組みながら、穏やかな表情で見守る。
子犬がこむぎの指先に甘えるように鼻を寄せると、こむぎはふっと笑みを浮かべた。
「……よかったぁ……」
こむぎは小さく息を吐きながら、優しく子犬の背中を撫でた。
ほんの少しだけ、心の奥に溜まっていた重たい感情がほどけていくような気がする。
そんなこむぎの様子を見て、かなえもほっとした表情を浮かべた。
(ようやく、少し元気が出てきたか……)
だが、その安心も束の間。
ズキッ――
右腕に、鋭い疼痛が走った。
「……っ」
かなえは思わず顔をしかめる。
「かなえ?」
大福がその異変に気づき、訝しげに彼女を見つめる。
「どうかしたの?」
ユキも首を傾げ、心配そうに覗き込む。
「いや……なんでもない……」
かなえはそう言いながら、三人から視線をそらし、そっと右腕を庇うように抱えた。
気づかれないように、袖をまくる。
そこには、以前よりも明らかに濃くなった紫色の痣が浮かび上がっていた。
(また……色が濃くなってる……)
胸の奥に、言いようのない不安が広がる。これは単なる身体の異変ではない。
そのとき、視界がふっと暗くなった。
――ほんの一瞬のことだった。
すぐに元の景色に戻ったものの、その奇妙な現象に、かなえの眉がわずかに歪む。
(……今のは、何だ?)
視界がくすんだ感覚。意識が遠のくような、底の見えない感覚。
まるで、自分の存在そのものが、少しずつ薄れていくような――。
拳を握りしめながら、かなえは無言で袖を戻し、そっと腕を隠した。
*
アニマルタウン 火葬場
火葬炉の奥で、炎が静かに揺らいでいた。
動物保護センターの職員たちは、昨日運び込まれた亡骸を順番に火葬炉へと運び入れる。亡くなった犬や猫たちは、合同火葬のため、一つの炉の中で灰となる運命だった。
「……せめて、安らかに眠ってくれ」
職員が小さく呟き、炉の扉を閉めた。スイッチが押され、火葬炉が動き始める。
――その瞬間、空気が変わった。
炎の揺らめきが異様に歪み、炉の内部から黒いもやがゆっくりと立ち上がる。かすかな呻き声のような音が、誰にも聞こえないはずの空間に満ちていく。
「……無念の声が聞こえますねぇ」
どこからともなく、ナギリの不気味な声が響いた。
「闇に潜みし怨念よ、形を成せ」
黒いもやが火葬炉から溢れ出し、みるみるうちに形を成していく。それは、苦しみと飢えに苛まれた者たちの集合体――歪んだ獣の姿。
「ガオガオーン!!」
突然の咆哮が、火葬場の静寂を切り裂いた。
「な、なんだ!?」
「うわぁぁっ!!!」
職員の一人が慌てて後ずさる。別の職員はその場に尻もちをつき、恐怖に顔を引きつらせる。
「……なんだよ、これ……!?」
目の前で蠢く異形の獣に、誰もが息を呑む。
「さぁ、あなたたちの怨みを形にしてあげましたよ……思うがまま、喰らいなさい。その哀れな命の名のもとに――」
ナギリは愉しげに微笑みながら、静かに囁く。
「ひぃっ……!!」
職員の一人が声を震わせた、その瞬間――。
「ガオガオーン!!」
炎の中から、新たなフューザーガオガオーンが這い出し、闇の中へと姿を消した。
*
アニマルタウン 住宅街
午後の陽射しが傾き始めた住宅街。どこか落ち着いた雰囲気が広がる中、こむぎたちは慎重に足を進めていた。
異変の気配を察知したのは、大福が最初だった。
「……こむぎ、気づいてるか?」
大福が低く呟くと、こむぎも鼻をひくひくと動かしながら頷いた。
「うん……いる、フューザーガオガオーンが」
ユキとかなえも鋭い視線を周囲に巡らせる。風に混じって漂う、異様な獣臭。そして、微かに響く低いうなり声。
その時――。
「こむぎ! ユキちゃん! 大福ちゃん かなえちゃん!」
前方から駆け寄ってくる影があった。学校帰りのいろは、まゆ、悟の三人だった。
「大福! フューザーガオガオーンは!?」
悟が険しい表情で周囲を見渡すとともに、大福に尋ねる。
すると、次の刹那――。
目の前の住宅街の一角、影の中から異形の存在が姿を現した。
「ガオガオーン!!」
それは、犬と猫とウサギの特徴を併せ持つ異形の獣。
犬のようにたくましい四肢に、猫のしなやかな体躯、そしてウサギのように長く伸びた耳。だが、その姿はどれとも異なり、それらが無理矢理混ざり合ったような歪んだ形をしていた。
怨念が絡みつくような黒いもやが体を包み込み、口からは低く響く獣のうなり声。
「えっ……!」
その瞬間、こむぎたちの背筋に冷たい緊張が走った。
「あれは……」
まゆが震える声を漏らす。
「イヌとネコとウサギ……ナギリのやつ、オレらへの当てつけのつもりか?」大福
大福が険しい表情で睨みつける。さながら自分たちを嘲笑うがごとく、イヌネサギガオガオーンは黒いもやを纏いながら唸り声をあげた。
こむぎは拳を握りしめ、一歩前へと踏み出す。
「……みんな、いくよ!」
その声に、仲間たちは静かに頷いた。
戦いの幕が、再び上がる。
「ガオガオーン!!」
イヌネサギガオガオーンが地を蹴ると、獣の咆哮が夜の街に響き渡った。
その瞬間、獣のしなやかな体躯が風を裂く。
「速いっ!」
悟が驚愕の声を上げる間もなく、敵の姿が目まぐるしく変わった。
犬のような猛然としたダッシュで距離を詰め、猫のような柔軟な身のこなしで急旋回、そしてウサギの長い耳をピンと立てながら周囲の気配を探る。
その変幻自在な動きに、ワンダフルたちは翻弄される。
「こっちよ!」
キュアニャミーが横から飛び込むも、イヌネサギガオガオーンは強靭な犬の前脚で素早く地を蹴り、瞬時に方向転換。ニャミーの攻撃を紙一重でかわすと、すかさず猫のしなやかな尻尾を鞭のように使い、横から強かに叩きつけた。
「ニャミー!」
リリアンが駆け寄ろうとするが、その動きを見透かしたかのように、イヌネサギガオガオーンが鋭い犬歯を剥き出しにして突っ込んでくる。
「っ!」
リリアンはとっさに飛び退くが、その時、敵の長い耳が僅かに動いた。
(こっちの動きを読まれた!?)
次の瞬間、イヌネサギガオガオーンは低く構え、犬の強靭な四肢で地面を蹴り猛突進する。
「!! リリアンネ…」
超反応にリリアンは防御が遅れ、敵の肩口に真正面から体当たりを受けた。
「うわあっ!」
リリアンが強烈な一撃を受け、地面に叩きつけられる。
「「リリアン!」」
大福とシャスールが同時に叫び、すぐさま彼女の元へ駆け寄ろうとする。しかし、イヌネサギガオガオーンは次の標的を狙うように低く構え、牙を剥いた。
「フレンディリボン!」
フレンディが素早くリボンを放つ。しなやかな光のリボンが伸び、敵の四肢を絡め取るように締め上げた。
「悟くん!」
フレンディが強く叫ぶ。
「うん!」
悟はすかさず、コンコードフレーテを口元に構える。
「――響け、聖なる調べ」
悟が奏でる澄んだ音色が、空気を震わせる。澄んだ旋律が広がり、イヌネサギガオガオーンを包み込むように浸透していく。
敵の動きが一瞬止まり、その瞳が微かに揺らいだかに思えた。しかし――。
「ガオ……ガオガオーン!!」
突如として、イヌネサギガオガオーンが咆哮を放った。
その咆哮はまるで音そのものを打ち砕くかのように、悟の旋律を弾き飛ばした。
「なっ……音圧で……!?」
悟の手が震え、コンコードフレーテの音色がかき消される。
驚愕する間もなく、イヌネサギガオガオーンは次の標的を定めた。
「ガオガオーン!!」
犬の前脚が地面を蹴り、獣の巨体が突進する。
「——っ!」
悟が反応するよりも早く、イヌネサギガオガオーンの鋭い爪が横薙ぎに振り抜かれた。
「ぐあっ!」
悟は咄嗟に腕を上げて防ごうとしたが、強烈な衝撃が腹部を直撃し、そのまま数メートル吹き飛ばされる。
「悟くん!」
フレンディが叫び、すぐに駆け寄ろうとする——だが、次の瞬間。
今度はイヌネサギガオガオーンが、強靭な犬の四肢で跳躍し、狙いをフレンディに切り替えた。
「――えっ!?」
気づいた時には遅かった。
敵の前脚が振り下ろされ、フレンディの胸元を強く弾き飛ばす。
「きゃっ!」
フレンディもまた、強烈な衝撃を受け、地面を転がる。
「フレンディ!」
ワンダフルの悲鳴が響く中、イヌネサギガオガオーンはなおも不敵に咆哮をあげる。
だが、その咆哮の中に、別の声が混じっていた。
――モット生キタカッタ
「え……?」
――オナカイッパイ食ベタカッタ
――モット自由ニ、動キタカッタ
――タベタカッタ、タベタカッタ、タベタカッタ……
ワンダフルの脳内に、かすかに響く声。
「なに…これ…?」
一瞬、意識が揺らぐ。
視界がわずかに歪み、目の前のイヌネサギガオガオーンが、かつて餓えに苦しみながら倒れた犬や猫たちの姿と重なって見えた。
その隙を逃さず、イヌネサギガオガオーンが低く構え、鋭い犬の前脚を振り上げる。
ワンダフルの目の前に、鋭い爪が迫る。
「ワンダフル! しっかりしろ!」
大福の叫びが飛ぶ。
「何してるの!?」
傷ついたフレンディたちを介抱しながら、ニャミーも声を張り上げた。
だが、その声はワンダフルの耳には届かない。
目の前に迫る、鋭い爪。
敵は、その迷いを見逃さない。
次の刹那。
イヌネサギガオガオーンが跳躍し、鋭い牙を剥いたまま、ワンダフルへと襲いかかる。
「ストーム・アロー!」
鋭い掛け声とともに、風を切る矢が放たれた。
シャスールの放った矢は空を裂きながらまっすぐに敵を貫こうとする。さらに、その直後――。
巻き起こる突風が、イヌネサギガオガオーンを包み込んだ。
強烈な風が渦を巻き、敵の動きを制限する。イヌネサギガオガオーンは狙いを外し、着地と同時にバランスを崩した。
「しっかりしろ! キュアワンダフル!」
強い声が響く。
風の勢いに乗せるように、シャスールは矢を番えたままワンダフルを見据える。
「!」
ワンダフルの瞳がわずかに揺れる。
風が吹き抜ける中、意識を覚醒させるようなその一言が、彼女の心を引き戻す。
「……シャスール……わたし……」
ワンダフルは、今にも掴めそうなほどの悲しみの残響を振り払い、ぎゅっと拳を握った。
シャスールは静かに頷く。
「迷ってる暇などない。お前が止まったら、あのフューザーガオガオーンはどうなる?」
「……っ!」
その言葉に、ワンダフルの胸の奥で何かがはじけた。
息を整え、ワンダフルはしっかりと足を踏みしめる。
もう、怯んではいられない。
イヌネサギガオガオーンは、再び咆哮を上げようとしていた。
「ガオガオーン!!」
敵の喉が震え、再び強烈な音圧が周囲を襲う。
――その瞬間。
シャスールの瞳が鋭く光る。
「ヴァンティ・バリア!」
風が渦を巻き、彼女の前に半透明の防壁が展開される。
咆哮の衝撃波が襲いかかるが、シャスールは片膝をつき、矢を構えたままその力を正面から受け止めた。
だが――。
その咆哮の奥に、別の声が混じる。
――滅ビロ…滅ビロ…フハハハハ
あたかも悪意そのものを宿したような呪詛が、音の奥底から響く。
シャスールは、強く歯を食いしばりながらも、まっすぐ前を見据えた。
「ナギリ、お前は言ったな…『勝った者は負けた者の怨念を背負って生きるんだ』…と!」
風が彼女の周囲で激しく巻き上がる。
「それでも私は…プリキュアとして戦い続ける! この地に人間と動物、真の共生が訪れる、その日まで……!」
シャスールの声が、曇天を切り裂いた。
彼女の決意に呼応するように、ヴァンティ・バリアが一層輝きを増し、敵の咆哮を押し返していく。
イヌネサギガオガオーンが一瞬怯んだ――その刹那。
「今だ! お前たち!」
シャスールの力強い声が響く。
その呼びかけに応じ、ワンダフルたちは一斉に動いた。
「「「「「「はあああああ!」」」」」」
それぞれの防御技が同時に展開され、イヌネサギガオガオーンの逃げ場を封じ込める。
「……よし、これで!」
シャスールが拳を握る。
仲間たちが築いた防壁が、敵を完全に閉じ込めた。
「「「「「「ミラーストーンスタイル!」」」」」」
ワンダフルたちの身体が淡い光に包まれ、鏡石の輝きが宿る新たな姿へと変化する。
「「「「「「プリキュア・サークルオブライフ!!」」」」」」
放たれる眩い光が、イヌネサギガオガオーンを包み込む。
「ガオガオーン…」
敵の咆哮が次第にかき消され、黒いもやが霧散していく。
その中で、再び小さな声が響いた。
――モット生キタカッタ……
――オナカイッパイ食ベタカッタ……
それを聞いた瞬間、ワンダフルはぎゅっと拳を握りしめ、静かに目を閉じる。
胸の奥が締めつけられるような痛みが広がる。こみ上げるものを必死に堪えながら、ワンダフルはそっと顔を上げた。
「もう……苦しまなくていいよ」
彼女の瞳には、哀しみと、そして優しさが宿っていた。
ミラーストーンの輝きが最後の光を放ち、イヌネサギガオガオーンの姿がゆっくりと霧散していく。
――光の粒が、茜色の空へと溶けていく。
ワンダフルは涙を零しそうになるのをこらえ、ふっと小さく微笑んだ。
「……さよなら」
その言葉とともに、光の残滓が風に乗り、静かに消えていった。
◇
アニマルタウン 公園広場
数日後。心地よい風が吹き抜ける午後、公園の一角には小さなテントが並び、動物譲渡会が開催されていた。
「この子たちの新しい家族を探していまーす!」
「見てってくださーい!」
こむぎたちは、ボランティアスタッフとして参加し、保護された犬や猫のそばで来場者と交流していた。
「この子、人懐っこいですね」
「そうなんです! 最初は怖がってたけど、今は甘えん坊なんですよ!」
いろはが嬉しそうに説明する横で、こむぎは優しく子犬の背を撫でる。
ふと、近くで小さな男の子が、おずおずと猫に手を伸ばしていた。
「……なでてもいい?」
「もちろん!」
「優しくね」
まゆとユキが笑顔で答えると、猫は男の子の手にそっと頭を擦りつけた。
「わぁ……!」
その様子を見ていた家族が顔を見合わせ、そっと頷く。
「この子、うちで引き取ってもいいですか?」
その言葉に、いろはたちの顔がぱっと明るくなった。
「ありがとうございます! きっと幸せになります!」
譲渡が決まり、スタッフが手続きを進める中、こむぎたちは見送るように犬や猫を抱きしめた。
「これから、たくさんの愛情をもらってね……」
夏の日差しが差し込む会場で、新しい家族を迎えた犬や猫たちの姿が、静かに輝いていた。
登場ガオガオーン
イヌネサギガオガオーン
声:高橋伸也
身長:510cm
体重:不明(推定数トン)
・特色/力
犬の俊敏な突進力、猫の柔軟な身のこなし、ウサギの鋭敏な聴覚を兼ね備えた戦闘型のフューザーガオガオーン。圧倒的な機動力と反射神経を活かし、相手の隙を突く攪乱戦術を得意とする。長い耳で広範囲の音を捉え、敵の動きを先読みしながら戦う。
・特徴
全身は黒い毛に覆われ、犬の四肢を持つが、しなやかな猫の体躯と鋭い爪を備える。長く伸びたウサギの耳は常に動き、敵のわずかな動きをも察知する。猫のしなやかな尻尾を持ち、バランスを取りながら変幻自在な動きを見せる。牙は異様に鋭く発達し、一度噛みつけば獲物を離さない。怨念が凝縮した赤い瞳は暗闇でも光り、見る者に強い恐怖を与える。
・能力
影走り
犬の四肢を活かした俊敏な突進技。狭い路地や複雑な地形でも自在に動き回り、敵を撹乱しながら攻撃する。
音狩り
ウサギの鋭敏な聴覚を駆使し、相手の呼吸や動きの微細な音を捉えることで、見えない場所にいる敵の位置を正確に把握する。
獣爪乱舞
猫のしなやかな動きと犬の剛力を組み合わせ、鋭い爪で一瞬にして複数回の攻撃を繰り出す連撃技。素早く跳び回りながら相手を翻弄する。
怨嗟の咆哮
強力な音圧を伴う咆哮を放ち、敵の聴覚を狂わせる技。ナギリの怨念を宿した声が混じっており、聞いた者の心に迷いや恐怖を植え付ける。
執念の追跡
一度ターゲットを定めると、どこまでも追い詰める執拗な追跡能力。相手がどこへ逃げても、その気配を追って追撃を仕掛ける。
・行動
イヌネサギガオガオーンは、人間を警戒しながらも、ひたすら執拗に追跡する性質を持つ。特にかつて飢えに苦しんで死んだ犬や猫たちの怨念を受け継いでおり、空腹への恐怖を抱いた者や、捨てられた動物を見過ごした者に強い敵意を向ける。相手が動揺した隙を見逃さず、一気に間合いを詰めて攻撃を仕掛ける。
・戦闘記録
アニマルタウンの市街地にて、ナギリの手によって生み出されたフューザーガオガオーン。飢えと孤独に苛まれた犬や猫の怨念が宿り、暴走。素早い動きと執念深い追跡能力でわんぷりメンバーを翻弄する。
ワンダフルは戦闘中、敵の咆哮の中に混じる「モット生キタカッタ」「オナカイッパイ食ベタカッタ」という無念の声を聞き、一瞬の隙を作る。そこを狙われ、危機に陥るが、シャスールの「ストーム・アロー」によって救われる。シャスールは「ヴァンティ・バリア」を発動し、敵の咆哮を封じつつ、ナギリの怨嗟の言葉を聞きながらも、自らの信念を貫く決意を示す。
その後、シャスールの呼びかけに応じ、ワンダフルたちは一斉に防御技を展開し、敵の動きを封じ込めることに成功。ミラーストーンスタイルを発動したわんぷりメンバーの総攻撃によって、「サークルオブライフ」の浄化光線が直撃。怨嗟の闇は霧散し、フューザーガオガオーンの姿は消え去った。