わんだふるぷりきゅあ!!~わんだふる♡わーるど~   作:重要大事

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第16話:まやかしのぬくもり

7月下旬

アニマルタウン 住宅街

 

 夏の陽射しが街路樹の葉を透かし、アスファルトの上に揺れる影を落としている。

 アニマルタウンの住宅街は、適度に整備された歩道と並ぶ家々が穏やかな雰囲気を作り出していた。

 フェンス越しには家庭菜園のトマトが赤く色づき、庭先ではホースの水が撒かれ、微かに土の匂いを漂わせている。

 蝉の声が響く中、夏休みに突入したばかりのいろはたちは、ゆったりとした足取りで歩いていた。

「きょうもあついよー」

 こむぎが人間の姿のまま、だらりと両腕を垂らしながら歩道を進む。

 肩を落とし、全身を使ってバテた様子をアピールしているが、その足取りにはまだ余裕があるようだった。

「そうだね。水分はまめに取らないと」

 いろはが微笑みながら、手に持っていた花束を片腕に抱え、もう一方の手で水筒を取り出す。

 蓋を外し、冷たい水をそっと差し出すと、こむぎはぱっと顔を上げた。

「ありがとう!」

 勢いよく受け取り、一気に飲み干すこむぎ。その様子に、まゆが帽子を押さえながら微笑する。

「暑さ対策は必須だね」

 まゆは、つばの狭い麦わら帽子をかぶっていた。

 あまり大きくないその帽子は、まゆの髪を軽くまとめるように収まり、首筋に落ちる日差しをほどよく遮っている。

「日焼けしないように、お肌のケアもしないと」

 ユキは淡々と言いながら、白い日傘を広げる。

 風に揺れる日傘の縁が、ちらちらと木漏れ日のように影を落とす。

 そんな中、かなえは何も言わず、静かに歩を進めていた。

 ふと、彼女の視線がいろはの手元へと向く。

 いろはの指先に握られた小さな花束――カスミソウが風に揺れ、その淡い色が光の中で儚げに映る。

 アスファルトの照り返しは強いが、時折吹く風が汗を乾かしてくれる。

 空には雲ひとつなく、まるでこの日が特別なものになることを予感させるかのような青空が広がっていた。

「ところで、どこへ向かっているんだ?」

 隣を歩くかなえが、何気なく問いかけた。

 歩調を変えずに前を見据えたままの口調だったが、その声にはわずかな疑問の色が滲んでいた。

 すると、こむぎが足を止め、ぱっと振り返る。

「お鶴さんのおうちだよ!」

「お鶴……?」

 聞き覚えのない名前に、かなえは眉を寄せる。

 考えても心当たりがない。こむぎが知っていて、自分が知らない人物――その違和感に、自然と視線が鋭くなった。

「お鶴さんはね、フクちゃんのお母さんみたいな人なんだよ!」

 こむぎは嬉しそうに言ったが、かなえの表情はますます困惑の色を深める。

 目の前の情報を繋げようとするように、僅かに目を細めた。

 そんな彼女の様子を見て、いろはとまゆが微笑みながら振り返る。

「そういえば、かなえちゃんにはまだ紹介してなかったもんね」

 いろはの穏やかな声に、かなえはふと顔を上げた。

 紹介していなかった――つまり、まだ知らない存在ということなのだろうが、ではなぜこむぎはそんなに親しげなのか。

 考え込むかなえの様子を気にすることなく、まゆがそっと付け加える。

「きっとフクちゃんも喜んでくれるんじゃないかな?」

「そうね」

 ユキが静かに同意すると、そよ風が日傘の縁を揺らした。

「ほんとは悟ちゃんと大福ちゃんも一緒だったら良かったんだけど、用事があるんじゃ仕方ないよね」

 いろはが、ふっと名残惜しそうに言う。

 確かに、あの二人も一緒なら、もっと賑やかだったかもしれない。

 それでも、今日こうして来られたことに意味がある――そんな空気が、いろはたちの間には確かにあった。

 

           *

 

アニマルタウン郊外 某大学

 

 同じ頃、アニマルタウンの郊外にある某大学の構内を、悟と大福が歩いていた。

「で、悟。ほんとにここにあのハイテンションなオヤジがいるのか?」

 人間の姿に変身した大福が、頭に両の手を回しながら尋ねる。

 大学の敷地内は広く、歴史を感じさせるレンガ造りの校舎と、ガラス張りの近代的な研究棟が共存していた。

 行き交う学生たちは、それぞれの講義に向かうためか足早で、誰も二人に特別な関心を寄せることはなかった。

 悟は手元のスマホを確認しながら、迷いなく歩を進める。

「うん。古座野博士が在籍しているのがこの大学なのは間違いないよ。ちょうど今日、考古学の特別講演会をやってるらしいから、どんなものか見ておこうと思って」

 彼の言葉に、大福は気の抜けたような声を漏らした。

「考古学ねぇ……オレにはさっぱりだな」

「まぁ、大福は元々ウサギだからね」

 悟がさらりと言うと、大福は「おうよ」とあっさり受け入れながら肩をすくめる。

 そんな何気ないやり取りを交わしながら、二人は古座野の講義が行われている講堂へと向かった。

 

           *

 

アニマルタウン お鶴の家

 

 しばらく歩き、五人はお鶴の家の前にたどり着いた。

 住宅街の一角に建つ二階建ての家は、灰色に近い青の外壁に、落ち着いた色合いの屋根が載っている。

 玄関先には鉢植えの花が並び、ささやかながらも手入れが行き届いていた。

 軒先に吊るされた風鈴が、そよ風に揺れて涼やかな音を奏でる。

 いろはが先頭に立ち、インターフォンを押す。

 間もなく、軽やかな足音が近づき、扉が開いた。

「いらっしゃい!」

 玄関先に立っていた紫髪の婦人こと、お鶴が、にこやかに出迎える。

 その声は明るく、どこか懐かしさを感じさせる温かさがあった。

「お鶴さん、こんにちは」

 いろはが笑顔で挨拶すると、その後ろからこむぎが一歩前へと出る。

「フクちゃんに会いに来たよ!」

 こむぎが元気よく言うと、お鶴はふっと優しい表情を浮かべた。

 少し目を細めながら、その言葉を噛みしめるように頷く。

「まぁ、ありがとう。さぁ、あがってあがって。あの子もきっと喜ぶわ」

 促され、いろはたちは玄関をくぐった。

 扉が閉まると、外の蝉の声が少し遠のき、室内には涼しげな静けさが広がる。

「フクちゃんはね、お鶴さんの大切なワンちゃんなんだよ」

 いろはの言葉に、かなえは何気なく頷く。

 しかし、彼女の表情にはほんのわずかな違和感が浮かんでいた。

 "大切なワンちゃん"――そう聞けば、当然のように「今も一緒に暮らしているのだろう」と思う。

 だが、いろはの声色にはどこか慎重な響きがあった。

 かなえはそれ以上何も言わず、ただ足を進める。

 廊下を歩き、部屋の奥へと向かうと、そこでふと目に留まったものがあった。

 室内の一角、飾られた写真立て。

 そこには、白い老犬が穏やかに佇む姿が映っていた。

 写真のフレームは綺麗に磨かれ、周囲には小さな花が添えられている。

(ああ、そういうことか――)

 それを見た瞬間、かなえは言葉を発することなく、ただ静かに理解した。

「フクちゃん。いろはちゃんたちが来たわよ」

 その穏やかな声が、そっと空気を震わせた。

 お鶴は少し微笑み、静かに仏壇の方を示した。

 いろはたちも順番に腰を下ろし、静かに手を合わせる。

 こむぎが目を閉じ、小さく「フクちゃん……」とつぶやいた。

 それを聞いたかなえも、そっと視線を落とし、遅れて手を合わせる。

「かなえちゃんだったわね」

 お鶴がゆっくりと口を開く。

「フクちゃんはね、去年この家でみんなと看取ったのよ」

「そうか……」

 かなえは短く答えた。

 先ほどまでの困惑はすでに消え、どこか納得したような表情を浮かべている。

「18年も長生きしてくれたのよ。人間で言えば88歳くらいかしら」

 お鶴の言葉には、寂しさではなく、穏やかな誇りが感じられた。

 長い時間を共に過ごし、見送ることができたことへの感謝が、彼女の声の中に宿っているようだった。

「あ、わたしたちが作ったパッチワークのブランケットって……」

 まゆがふと気づいたように、お鶴へ問いかける。

 お鶴は一瞬驚いたように目を瞬かせたが、すぐに微笑み、立ち上がる。

「もちろん、取ってあるわよ。ちょっと待っててね」

 そう言いながら、お鶴は奥の部屋へと足を運ぶ。

 ほどなくして、両手に大切そうに布を抱えながら戻ってきた。

 彼女がそっと広げたそれは、色とりどりの布を丁寧につなぎ合わせた温かなパッチワークブランケットだった。

「これを作ったのか?」

 かなえが、広げられたブランケットに視線を落としながら尋ねる。

 目を引いたのは、その中央に刺繍されたフクの姿だった。

 それも一つではない。ブランケットの各所に、異なるポーズのフクが五つ刺繍されている。

 嬉しそうに笑うフク、駆け回るフク、すやすやと眠るフク――どれも生き生きとした表情で、そこに在るだけで温かい気持ちにさせてくれる。

「うん! 一生懸命つくったんだよ!」

 こむぎが元気よく胸を張る。

 彼女の声には、当時の楽しげな思い出が鮮やかに蘇るような、誇らしさが滲んでいた。

「ほんとはね、フクちゃんのお祝い用に作ったものだったけど……あのあと、体調が急変しちゃって……」

 いろはが静かに言葉を続けると、部屋の空気が少しだけしんとする。

 あの頃の記憶が、ふと胸の奥に蘇るような、そんな一瞬の沈黙。

「そうだったわね」

 ユキがそっと頷く。

 彼女の言葉は短いが、その中には、フクが最期の時を迎えたあの日のことをしっかりと覚えているという想いが込められていた。

「お鶴さん、フクちゃんがいなくなって寂しくないですか?」

 まゆが、お鶴の表情を気遣うように問いかける。

 その声は柔らかく、どこかそっと寄り添うような響きを持っていた。

 いろはもそれに続くように、お鶴の手元に視線を向ける。

 お鶴は一瞬だけ目を伏せ、それから穏やかに笑った。

 どこか遠くを見るような表情だったが、その瞳に寂しさの影はなかった。

「もちろん、最初は寂しかったわよ。あの子がいつもの場所にいないことが、なんだか夢みたいでね」

 そっとブランケットに手を添えながら、お鶴は静かに続ける。

「でもね、私は悲しむことよりも、フクちゃんが残してくれたものを大切にしたいの。こうして皆が覚えていてくれる。あの子が私にくれた日々は、今もちゃんとここにあるのよ」

 お鶴がそっと胸元に手を当てる。

 そこには、フクと過ごした18年間の思い出が、今も温かく息づいていた。

「だから、寂しくはないわ。あの子は、今も私のそばにいるもの」

 静かに語るその声には、ゆるぎない愛情と、深い安らぎが滲んでいた。

 それを聞いたいろはたちは、ふっと肩の力を抜いたように安堵する。

 お鶴の言葉は、決して無理に強がるものではなく、長い年月をともに過ごしたからこそ得た、確かな実感だった。

 寂しさがないわけではない。けれど、それ以上にフクと過ごした日々が、今も彼女の心を満たしているのだと、いろはたちは自然と理解した。

 

         *

 

アニマルタウン郊外 某大学

 

 程なくして、悟と大福は目的の人物が講演を行っているホールの前に到着した。

 会場内にはざわめきが満ち、熱気が漂っている。

 悟が静かに扉を開いた――その瞬間。

「キミたちィィィィ!! 人類史の闇に飛び込む覚悟はあるかァァァァァ!!!」

 凄まじいハイテンションな叫び声が、ホール全体を揺るがした。

 壇上にはマイク片手に白衣を羽織った壮年の男、古座野玄武が仁王立ちしていた。

 彼は身振り手振りを大きく使いながら、ステージのスクリーンに映し出されたスライドを指差す。

「本日のテーマはァァァ!! “未知の遺跡と超文明”!!」

 スライドには『超文明』、『オーパーツ』、『宇宙人』という刺激的な単語が躍る。

 そして、その横にはなぜか無造作に貼られた宇宙人のイラストが。

 真面目な考古学の資料としての価値を一瞬で台無しにしていた。

「いいかァァ!! 教科書の歴史はすべてまやかしだァァ!! 実際に地球には遥か昔、今の文明を超える技術を持った存在がいたッ!! そうだ!! たとえば、紀元前にすでにレーザー加工技術が存在していた証拠があるんだァァ!!」

 彼は力強く指を突き出し、スクリーンに映し出されたピラミッドのCG画像を示す。

 会場には熱心にメモを取る者もいれば、苦笑しながら聞いている者、完全にスマホをいじり始めている者など、反応は様々だった。

 悟と大福は、会場の後方の席に腰を下ろし、すでに唖然としていた。

「……おい悟。これ、マジで学術講演か?」

 大福が小声で囁く。

 悟は表情を引きつらせながら、目の前の光景を受け入れようと必死だった。

「た、たぶん……そうなんだと思う……」

 しかし、そんな彼の混乱をよそに、古座野の勢いは止まらない。

「実際、我々が知っている“神話”の中には、古代の超技術の記録が混ざっている可能性があるのだァァ!!」

 古座野はドンッと講演台を叩き、スクリーンを指差す。

 そこには巨大な石像や不可解な彫刻の写真が映し出されていたが――

「ちなみにこの遺跡、ワシが夢の中で見たヤツとめっちゃ似てるんだよなァァ!!」

 悟と大福は無言で顔を見合わせた。

 観客の中には完全に話についていけず、ポカンとしている者もいれば、興味深そうに身を乗り出す者もいた。

 一部の学者らしき人物が眉をひそめ、何やらメモを取っているのも見える。

「……これ、オカルト研究会の集まりじゃないんだよな」

「うん……のはずなんだけど……」

 二人はすでに講演の内容を追うことを諦めかけていた。

 

 やがて、古座野の講演会は異様な熱気とともに幕を閉じた。

 観客たちはそれぞれの反応を見せながら退場していく。

「今回もすげぇ内容だったな……」

「いや、もう何が本当かわかんなくなるよな……」

 そんな中、悟と大福はようやく席を立ち、壇上へと歩み寄った。

「古座野博士、少しお時間よろしいですか?」

 悟が遠慮がちに声をかけると、古座野は勢いよく振り返った。

「おお!! 君はあのときの!! 工藤ヒロユキくん!!」

 ビシッと指を突きつけ、満面の笑みを浮かべる古座野。

 その瞬間、悟と大福の肩から力が抜けた。

 悟はキャンプの際、アイドルタレントの「響カイト」と間違えられた“因縁”を思い出し、げんなりとした表情を浮かべる。

「ちげーよオッサン! こいつの名前は悟だ! 兎山悟!」

 大福が即座に訂正するが、古座野は「あっはっは!」と豪快に笑うと、指を顎に当てながら悟を見つめ直す。

「おう、そうだったか! ムム……そういう君は……」

 何かを考え込むような素振りを見せた後、次に大福へと視線を向ける。

「あ、この子はですね」

 悟が自己紹介しようとした、その瞬間――

「いや待て! 皆まで言うな…………む!! ピンときたぞ!!」

 古座野は劇的に片手を突き出し、どこからともなく確信を得たような顔で言い放つ。

「君の名前は、大空大地くん!! そうだろう!!」

「ぜんぜんちげーよ!!」

 大福が一歩踏み出し、勢いよく否定した。

「オレは兎山大福だ!! つーかさっきからオレらに縁があるようでないような、あぶねー名前ばかり言いやがって!!」

 大福が勢いよくツッコむと、古座野は「ほほぉ?」と顎に手を当てながら考え込む仕草を見せた。

 悟は苦笑しつつ、大福の肩をぽんと叩いた。

 これ以上ツッコんでも仕方がない。

 そう言いたげな表情とともに、悟はひとつ息を整え、今までのやり取りから一転、真面目な口調で切り出した。

「実は、古座野博士にお聞きしたいことがあるんです」

 その声に、古座野の表情がふと引き締まった。

 

           *

 

アニマルタウン お鶴の家

 

 フクの思い出を語り合いながら、穏やかな時間が流れていた。

 お鶴の表情は柔らかく、いろはたちもそれぞれにフクとの思い出を語っていた。

 ――ピンポーン。

 そんな折、家の呼び鈴が鳴った。

「あら、宅配かしら? ちょっと待っててね」

 お鶴が訝しげに席を立つ。

 立ち上がるその仕草には、どこか警戒の色が滲んでいた。

 テレビドアホンの画面を覗き込むと、そこにはスーツを着た男が映っていた。

 見覚えのある顔だった。

『こんにちは、奥さん』

 セールスマンは愛想のいい笑みを浮かべていたが、次の瞬間――。

「またあなたですか! そんな話に興味はないと、前もお話ししたでしょう!」

 お鶴の怒声が響き渡った。

 いろはたちは驚き、思わず顔を見合わせる。

「どうしたのかしら?」

 ユキが小さく呟く。

「お鶴さんが、あんな風に怒るなんて……」

 いろはは不安げにお鶴の背中を見つめた。

 彼女はいつも落ち着いた物腰で、マダムらしい品格を漂わせている。

 そんな彼女が感情的に声を荒らげるなど、今まで見たことがなかった。

 様子が気になり、いろはたちはそっとお鶴のもとへ歩み寄る。

 ドアホンの画面越しに、お鶴とセールスマンが言い合っているのが見えた。

 スーツ姿の男の声には、中国風のなまりがあった。

『愛犬を亡くした悲しみを和らげましょうよ。お安くしますから』

「何度も言わせないでちょうだい! もう何度もお断りしています!」

 お鶴の語気は強く、鋭い。

 しかし、セールスマンはまるで意に介さないかのように、作り笑いを浮かべた。

『新しいチラシを入れておきます。気が変わったら、ぜひご連絡を』

 その言葉を最後に、セールスマンはわざとらしく礼をして立ち去っていった。

 セールスマンが去った後も、玄関先にはまだ張り詰めた空気が残っていた。

 そんな中、かなえだけは違った違和感を覚えていた。

(……あの男の目)

 テレビモニターに映ったセールスマンの瞳の奥――そこにある濁ったものを、かなえの鋭い視線が捉えていた。

 それは単なる営業マンの目ではなかった。何か異様なものが混じっている。

 それが何なのかまでは判断できなかったが、本能的に嫌な感覚がした。

 しかし、彼女が言葉を発するよりも早く、こむぎが不安そうにお鶴へと尋ねた。

「お鶴さん、だいじょうぶ?」

 お鶴はふうっと息をつき、表情を和らげようとする。

「ごめんなさいね、大きな声を出して。最近、あの人がよく来るのよ……」

 彼女の声には、明らかな苛立ちと警戒が滲んでいた。

 いろはたちは話を聞いたあと、セールスマンが玄関ポストに残していったものを取り出してみた。

 それは一枚のチラシだった。

 しかし、目を通した瞬間、いろはの顔が青ざめる。

「な、なにこれ!?」

 そこに書かれていたのは、太く赤い文字の見出し――

 『亡くしたペットをクローンで復活』

 いろはは、信じられないというようにチラシを握りしめた。

「えっと……クローンペットっていうのは?」

 まゆが不安げに問いかけると、お鶴は険しい表情のまま静かに答えた。

「死んだ動物の細胞から作り出された、そっくりなペットのことよ」

 その言葉に、いろはたちは息を呑んだ。

 ――新型コロナウイルスの流行以来、中国ではペットブームが巻き起こった。

 その影響で、クローン技術を用いたペット産業が急速に発展し、一部の富裕層の間で流行しているという。

 現在では顔や仕草、さらには性格までも完全にコピーできる技術が確立されている。

 それは、亡くなったペットとの別れを受け入れられない人々のための“救済”として広がっていた。

「そこの会社が、このアニマルタウンに目をつけたみたい」

 お鶴の言葉は、どこか厳しさを帯びていた。

「水落石出。つまり、この町は奴らにとって絶好の狩場というわけか」

 かなえが腕を組み、冷静に言い放つ。

 いろはたちは、静かに息をのんだ。

「どこで聞いたのかは知らないけど……うちが去年フクちゃんを亡くしたことを知っていたみたいね。それで頻繁にセールスに来るの」

 お鶴の声は静かだったが、その中にはわずかな苛立ちと困惑が滲んでいた。

 そう言いながら、彼女はふと視線を落とし、そっとフクの写真に目を向ける。

 写真の中のフクは、いつものように優しい瞳でこちらを見つめていた。

 お鶴の表情が、ほんの一瞬だけ寂しげに翳る。

「私は……クローン犬なんて選ばない。この子との思い出は、クローンで再生できるものではないから」

 彼女の言葉は穏やかだったが、その芯には揺るぎない確信が込められていた。

 

           *

 

アニマルタウン郊外 某大学 古座野の研究室

 

 廊下の奥、重厚な扉の前に立ち、悟はそっとノックをした。

「失礼します」

 返事を待たずに扉を開けた瞬間――

「うわっ!?」

「なんだこの部屋……」

 思わず、悟が驚愕の声を上げ、大福が一歩後ずさった。

 そこに広がっていたのは、考古学者の研究室とは思えない無秩序な空間だった。

 部屋の四方には書棚が並び、その大半は歴史学・考古学・オカルト関連の専門書で埋め尽くされていた。しかし、その隙間に何の脈絡もなくアニメや漫画のフィギュアやグッズが無造作に飾られている。

 デスクの上はさらにカオスだった。

 片方には発掘された土器や遺物の写真、その横には明らかに場違いな美少女アニメのBlu-rayボックス。

 モニターの前には山積みの研究資料が置かれていたが、それらを押しのけるようにロボットアニメのプラモデルが組み立て途中のまま鎮座している。

「いやいや、どんな空間だよここ……」

 大福が呆れた声を漏らす中、部屋の奥から陽気な声が響いた。

「ようこそ我が牙城へ。歓迎するぞ、兎山くん! そして、大空くん!!」

「だから大空じゃねーよ!!」

 先ほどの誤認をまだ引きずっているのか、古座野は何食わぬ顔で満面の笑みを浮かべていた。

 彼は机の奥から立ち上がると、積み重なった本やフィギュアの山を器用に避けながら、二人の前にやってきた。

「ま、そこらへんのモノは気にせんでくれ! 研究の合間の息抜きも大事だからな!」

「……息抜きの比率が研究より高そうなんですが」

 悟が苦笑しながら辺りを見回す。

 学者らしい資料と、オタク趣味が入り混じったこの空間は、まさに古座野という人物そのものを体現しているようだった。

 そんな中、古座野は「さてさて!」と満足げに頷くと、机の上の雑然とした書類を適当にどかし、何やら準備を始めた。

「まぁまぁ、立ち話もなんだから、まずはお茶でも飲んで落ち着きたまえ」

 そう言うと、彼は引き出しの奥からカップを取り出し、ティーバッグをポットに放り込む。

 ほどなくして湯気の立つカップが二つ、悟と大福の前に差し出された。

「アップルティーをどうぞ!」

 古座野がにこやかに勧める。

 悟と大福はそれぞれカップを手に取り、一口含んだ――その直後。

「……これ、ただの紅茶じゃねーかよ」

 大福がジト目で古座野を見やる。

「なんで嘘つくんだよ」

 呆れ半分にぼやく大福の隣で、悟は苦笑しながらカップを見つめる。

 たしかに、ほんのり甘い香りはするが、どう飲んでも普通の紅茶だった。

 すると、古座野はまるで悪びれる様子もなく、指を立てて得意げに言った。

「いやいや、気分の問題だよ! ほら、そう言われると、なんとなくリンゴの風味がするだろう?」

「しねぇよ!!」

 大福が思い切りツッコミを入れるが、古座野はケロッとした顔で続ける。

「いやー、しかし君はまだ中学生らしいじゃないか! 若い子と話すのは新鮮でいい!」

 唐突な話題転換に、大福は「まただよ」と言わんばかりの表情でため息をついた。

 一方の悟は、苦笑しつつもカップを置き、改めて古座野に向き直った。

 先ほどの茶目っ気には付き合ったが、ここからが本題だ。

「以前、キャンプでお会いした時なんですが……鷹目さんを見た時のあなたの反応が気になりまして」

「鷹目?」

 古座野が首を傾げる。

 大福が呆れたように肩をすくめながら、補足するように言った。

「ほら、バンダナ巻いた目が鋭い女いただろう?」

「……むむっ!! あの娘かァァァ!!!」

 古座野は勢いよく立ち上がり、机に両手をつくと、何かを思い出したかのように目を見開いた。

「あの眼光!! あのオーラ!! さながら、古代の戦士のようなッ!!!」

 突然のハイテンションに、悟と大福は顔を見合わせた。 やっぱりこの人、話をするだけで体力を消耗するタイプだ。

 しかし、ここで押し切られたら本題に入れない。悟は一歩前に出て、古座野の目をしっかりと見つめながら問いかけた。

「古座野博士、真面目に答えてほしいんです。あなたは、鷹目さんのことを知っているんじゃないですか?」

 ――ピタリ。

 それまで快活だった古座野の動きが、まるで機械が急停止したかのように止まる。

 先ほどまでの軽薄な雰囲気は消え、彼の顔に一瞬、躊躇の影がよぎった。

 やがて、古座野は重い口を開く。

「……彼女のことは知らん。じゃが、彼女とよく似た者のことは知っておる」

「どういう意味だよ?」

 大福が怪訝な顔で問い返す。

 古座野はゆっくりと悟へと目を向けると、指を組みながら静かに語り出した。

「兎山くん。ワシが陰陽師の一族の末裔だということは知っているかのう?」

「はい。事前にリサーチしています」

 悟が頷くと、古座野は満足そうに目を細めた。

「ならば、話が早い。……見せたいものがある」

 そう言うと、古座野は席を立ち、研究室の資料の山をかき分けながら必死に何かを探し始めた。

「ちょっと待っとれよ……どこに……むむっ……あ、あったあった!! これじゃ!!」

 ようやく見つけたらしく、古座野は誇らしげに長く巻かれた一本の巻物を両手で抱え、慎重に広げた。

「これは?」

 悟が眉をひそめながら尋ねると、古座野は巻物の端を指でなぞりながら言った。

「ワシが今発掘している遺跡に縁の深いもの、とでも言うかのう。あの遺跡は、千年前……とある陰陽師が巨大な悪霊を封じた後、その力を鎮めるために建立した社殿の跡地でな。一年前、ワシが長い研究の末にようやく見つけた場所なんじゃ」

 そう語る古座野の目は、普段の軽妙な雰囲気とは打って変わり、学者としての誇りに満ちたものだった。

 慎重に巻物を広げていくと、やがて中心部分に一人の人物の肖像が描かれていた。

「……これは!!」

「まじかよ……」

 悟と大福は、思わず息を呑んだ。

 そこに描かれていたのは、キュアシャスールにそっくりな男性の狩人。

 性別や衣装こそ違えど、顔立ちや雰囲気は驚くほど似ていた。

 そんな二人の反応を見て、古座野はゆっくりと口を開く。

「その肖像は、ワシの遠い祖先を描いたものでな。名を――『(かなえ)』という」

「「かなえ!?」」

 悟と大福はさらに驚愕する。

 この場にいないはずの、彼女の名が突然、千年の時を超えて呼ばれたのだから――。

 

           *

 

アニマルタウン お鶴の家

 

 しばらくの滞在の後、いろはたちはお鶴の家を後にした。

「なんだか後味が悪くなってしまってごめんなさいね。また来てちょうだい」

 お鶴が申し訳なさそうに微笑む。

 その表情には、強がりとも取れる穏やかさがあった。

「はい。お邪魔しました」

 いろはが軽く会釈し、他のメンバーもそれに続いた。

 お鶴の家の門をくぐり、五人は並んで歩き出す。

 夕暮れが近づく街並みを抜けながら、誰ともなく、先ほどの話題が再び口をついた。

「それにしても、クローンでペットを蘇らせるなんて……本気でできるのかしら?」

 ユキが日傘を少し傾けながら、疑問を口にする。

「技術は革新的だが、倫理的な問題も多くありそうだな」

 かなえが冷静に言いながら、しばし思考を巡らせる。

 悟から借りた本の中に、クローン技術に関する書物があったことを思い出した。

 そこには、クローン技術は医学の発展には欠かせないものであり、臓器移植や難病治療などの分野において大きな可能性を秘めていると記されていた。

 だからこそ、彼女は一概にそれを全否定することはしなかった。

 科学技術そのものは善でも悪でもなく、問題はそれをどう使うかにある――そういう考えが、彼女の中にはあった。

 しかし、いろはとまゆは違った。

「わたしは……やっぱり嫌かな」

 いろはが、ぽつりと呟くように言う。

「だって、クローンで蘇ったとしても、それは“同じ”フクちゃんじゃないよ……」

 まゆも静かに頷いた。

「うん……。姿がそっくりでも、それはフクちゃんとは別の命。お鶴さんが言ってたみたいに、思い出は再生できないよ」

 二人の言葉には、純粋な違和感と抵抗感が滲んでいた。

 たとえクローン技術がどれほど発展しても、そこにいるのはかつてのフクちゃんではなく、ただ“そっくりな別の存在”。

 思い出を共有していない存在を、果たして「同じ」と言えるのか――。

 古くから哲学には「テセウスの船」という思考実験がある。

 壊れた部品を一つずつ新しいものに交換していき、最後には元の部品が何一つ残っていない船となったとき、それをなお「同じ船」と呼ぶことができるのか。

 もしそうなら、では取り替えた古い部品を集めて元通りに組み立てた船は、一体何と呼べばいいのか。

 クローンペットの問題も、それと似ている。

 見た目や仕草が同じであっても、それは果たして「元の命」と言えるのか。

 「思い出」という形のないものが、新たに生まれた命と繋がっていない以上、それはただの"模倣"に過ぎないのではないか。

 そんな二人の様子を見ながら、かなえは腕を組み、目を細めた。

(結局のところ、技術の発展がどれだけ進もうと、人の価値観はそう簡単には変わらない……か)

 それぞれの想いを抱えながら、五人は夕陽に染まるアニマルタウンの道を歩き続けた。

 

           *

 

アニマルタウン 犬飼家

 

 お鶴の家を後にしたこむぎといろはは、夕暮れの街を歩きながら自宅であるフレンドリィ動物病院へと戻ってきた。

「ただいま……」

 玄関を開けると、病院の待合室には重苦しい空気が漂っていた。

 ふと視線を向けると、母・陽子が無念そうな表情を浮かべながら、一人の女性の肩にそっと手を置いていた。

 女性はうつむき、肩を震わせながら涙をこぼしている。

 こむぎといろはは、思わず足を止めた。

(……なにかあったの?)

 目の前の光景に息をのむ。

 女性は嗚咽を漏らしながら、絞り出すように言葉を紡いだ。

「先生……私……私がもっとちゃんと気をつけていれば……」

「……そんなこと、ありませんよ。飼い主さんは、精一杯あの子のことを大切にされていました」

 陽子は静かに、優しく女性を慰める。

 しかし、女性の悲しみは深く、その場を立ち去る際も涙を拭いながら、何度も「ごめんね」と呟いていた。

 扉が閉まると、ようやく場の空気が落ち着きを取り戻した。

「……お母さん?」

 いろはが小さな声で尋ねる。

 陽子は深いため息をつき、申し訳なさそうに娘たちを見た。

「今の人ね……原因不明の食中毒で、飼っていた犬を亡くされたの」

 陽子の言葉に、こむぎといろはは思わず顔を見合わせた。

「飼い主さんがペットフードを与えたら、急に苦しみだしてって……」

 陽子は悲痛な表情を浮かべながら、ふっとため息をつく。

 こむぎは心配そうに母を見つめ、いろはも眉をひそめた。

「そうだったんだ……」

 いろはの声はどこか沈んでいた。

(なんだろう……変な違和感がある……)

 偶然の事故かもしれない。

 そう思おうとする一方で、胸の奥に引っかかる何かがあった。

 小さな棘のように、ざわりと心を乱す不安。

 いろはは、その感覚を振り払うように、小さく息を吐いた。

 

           *

 

 

二日後――

アニマルタウン 遊歩道

 

 澄み渡る青空の下、蝉の声が賑やかに響く。

 いろははこむぎのリードを握りながら、同じく大福を連れた悟とのんびりと散歩デートを満喫していた。

「それでね、お父さんったら……」

 いろはが微笑みながらリードを引いていたその時、こむぎが突然ぴたりと立ち止まる。

「! いろは、見て……アレ!?」

「どうし……ん!?」

 こむぎに促されるまま、いろはは視線を向ける。

 次の瞬間――。

 見覚えのある男が、道の向こうに立っていた。

 スーツを着たセールスマン。

 薄ら笑いを浮かべながら、住宅街の奥へと歩いていくその姿は、どこか異様な雰囲気を纏っていた。

「知ってる人?」

 悟が不思議そうに尋ねる。

「うん……この前、お鶴さんとすごく言い合いになってたの」

 簡単に事情を説明するいろはの声に、大福もピクリと耳を動かす。

 その時、セールスマンはふと周囲を見渡し、小さく舌打ちをした。

 それから足早に、住宅街の一角へと姿を消していく。

「なんか……怪しくねぇか?」

 目を細めながら、大福が呟く。

「……行ってみよう」

 気になった四人は、慎重に距離を取りながら後をつける。

 セールスマンは住宅の塀の影に入り、何かの容器を手にしていた。

 そして、彼は動物用の餌が入った器に、注射器で何かを混入し始めたのだった。

 いろはたちは息をのむ。

「……お前も、生まれ変わるんだ」

 男は器を見下ろしながら、低く囁いた。

「! あの野郎!」

 次の刹那、籠を飛び出すように、大福が人間の姿へと変身し、風を切るように驀進を開始した。

「大福!?」

 こむぎが驚愕の声を上げる。

「「はやぁああ!」」

 いろはと悟も同時に息を呑んだ。

 その踏み込みに迷いはない。

 ウサギ由来の強靭な脚力で、一気に間合いを詰める。

 ――男が気づいた時には、もう遅かった。

「お前、そこで何してやがる?」

「え……?」

 男の背後には、音もなく大福が立っていた。

 ――ぞわっ。

 少年の姿からは想像もつかないほど強烈で冷たい殺気が、男の背筋を凍らせる。

「ヤベッ! 逃げろ!」

 男は本能的に踵を返した。

 ――だが、もはや手遅れ。

「まだ話は終わってねーだろう」

 次の瞬間、大福の脚が鋭く閃いた。

「グォオオオオ!」

 一撃で男の右足を蹴り抜く。

 バランスを崩し、地面に転がるセールスマン。

 大福は素早く男の手から注射器を弾き飛ばし、馬乗りになると鋭い目で睨みつけた。

「お前が今入れたのはなんだ?」

 怒気を孕んだ問いに、男はしどろもどろに答える。

「え、栄養剤です! け、健康にな、なります!」

 しかし、見え透いた嘘など、大福には通用しない。

「なら、人が食べても平気だな?」

「へ……?」

 大福は、ペット用の餌を鷲掴みにすると、ゆっくりと男の口元へと近づけた。

「う……」

 嫌な予感がしたのか、男の顔が青ざめていく。

「ど、毒ですぅうう!」

 直後、男は目から鼻から涙や汗を垂らしながら、全てを吐き出した。

 

 大福による強制的な「尋問」の後、男を移動させた一行は、人気のない場所で改めて話を聞き出していた。

「さて……洗いざらい吐いてもらうぜ」

 大福が腕を組み、鋭い眼差しで男を睨みつける。

 その視線の先には、地面に座り込んだセールスマン。

 先ほどまでの薄ら笑いは消え失せ、顔面蒼白になっていた。

 ユキ、まゆ、かなえもすでに合流し、男を取り囲む形になっている。

 四方八方から注がれる鋭い視線に、男はついに観念したように、震える声で口を開いた。

「う、上の人たちの命令で……餌に毒を盛ってました」

 その言葉に、いろはたちは息をのんだ。

 彼らの手口は、まず外で飼われている犬を密かに殺し、その飼い主が悲しみに暮れた頃を見計らって営業をかけるというものだった。

 それは、巧妙に仕組まれた悪意のサイクル。

 ペットを失ったばかりの飼い主が「また会えるかもしれない」とすがりたくなる心理を利用し、クローンビジネスへと誘導する――。

「もしかして、この前の飼い主さんも……!?」

 二日前、急性の食中毒で運び込まれた犬が突然死したことを思い出し、いろはは戦慄するように呟いた。

「ああ、そうだよ!」

 男は開き直るように笑いながら言い放った。

「悲しみに打ちひしがれてるところに、クローンという蜘蛛の糸を垂らせば、簡単に縋ってくるもんさ!」

「そんな……」

 まゆはショックを受け、ユキは信じられないというように顔をしかめた。

「……そんなことのために……?」

 悟が眉をひそめ、静かに呟いた。

 もはや人の所業とは思えない悪鬼の如き行為に、いろはたちは絶句するしかなかった。

「俺たちは感謝されてるんだぜ? みんな『また会えた!』って、嬉し涙を犬みたいにキャンキャン流すんだからよ! それのどこがいけない?」

 男は歪んだ笑みを浮かべながら、なおも言い訳を続ける。

 ――それが「感謝されてる」とでも?

 いろはの手が震えた。

「あの婆さんだってそうだ! 身寄りもないくせに、金をたんまり溜め込んでいやがるんなら、少しは吐き出してもいいだろうに!」

「……!?」

 その言葉に、全員の表情が険しくなる。

 「あの婆さん」――お鶴のことを言っているのは明らかだった。

 悪びれるどころか、悪しざまに罵る男。

「なのに、フクちゃんの代わりはいねぇとか馬鹿の一つ覚えみたいに言いやがって……クローンがあれば、てめぇの物寂しい老後も温まるだろうよ!」

 いろはの指先がぎゅっと拳を握る。

「……ふざけないでください!」

 低く、静かな声が響いた。

 悟だった。

 その眼差しは、怒りに燃えていた。

「悟くん……」

 いろはが思わず彼の名を呼ぶ。

 男がびくりと肩を揺らした。

「そもそもクローンが成立するのは、死んだ直後の動物の細胞を抽出できることを前提とした話だ!」

 鋭い言葉が、男を射抜く。

「すでに火葬された状態からフクちゃんのクローンを作るなんて、事実上不可能だ!」

 悟の指摘は冷徹で、容赦なかった。

 男はその言葉の意味をすぐには理解できなかったのか、ぽかんとした表情を浮かべた。

 まるで、自分が何を言われているのかすら分かっていないかのように。

 ――それもそのはずだった。

 この男にとって「クローンビジネス」とは、ただ金になる手段でしかなかった。

 科学的な根拠も、倫理的な問題も、自分の行動がどれだけ残酷かも、考えたことすらなかったのだ。

 そもそも、クローン技術には「生きた細胞」が必要不可欠である。

 しかし、火葬によって遺体は高温で完全に焼かれ、細胞核はもちろん、DNAそのものが破壊される。

 炭化した灰の中には、もはや遺伝情報を持つ細胞は残っていない。

 それは、化石から恐竜を復活させるのが不可能なのと同じ理屈だ。

 つまり、たとえ莫大な資金と最先端の技術を持った研究機関があったとしても、遺灰からクローンを作ることはあり得ない。

 ――にもかかわらず、この男はそれすらも理解せず、「クローンでペットを蘇らせる」と売り文句にしていた。

 そもそも、仮にこの男がクローン技術に関する深い知識を持っていたとしても、やることは変わらなかっただろう。

 「死んだペットのクローン」など作れないと知りながら、よく似た犬種を選び、それを「蘇ったペット」だと偽って売りつけることは容易に想像がつく。

 もし飼い主が「生前と性格が違う」と指摘しても、彼らは決まってこう言うだろう。

 「科学技術の限界です」、「個体差がありますが、遺伝子はまったく同じですから」――そんな都合のいい言い訳を並べて。

 だが、実際にはクローンであっても環境や育ち方によって性格は大きく異なる。

 それを知っていて誤魔化すのか、知らずに売りつけるのか。

 どちらにせよ、この男にとっては、ペットを亡くした飼い主の悲しみなど、ただの金儲けの材料に過ぎなかった。

 その瞬間――。

「つまり、お前のしていることは善意でもなんでもない。死を冒涜する行為だ」

 低く、しかし鋭く響く声。

 かなえだった。

 彼女の言葉には、静かに煮えたぎる怒りが込められていた。

「命には平等の権利がある。そこにクローン技術という建前があったとしても、人が動物に理不尽な行いをしていい理由にはならない」

 彼女の藍色の瞳が、怒りの光を帯びて燃え上がるように揺らめいた。

 ――その気迫に、男は呼吸すら忘れた。

「椎心泣血。お前のような人間に、命の価値など一生わからん!!」

 かなえの怒号が空気を裂く。

 彼女の声は雷鳴のごとく響き渡り、周囲の空気が一瞬で張り詰めた。

「生命に感謝をしない奴など——外道中の外道だ!!」

 肌を刺すような殺気が走った瞬間、男は恐怖に耐えきれず、反射的に逃げ出した。

「ひぃぃぃぃ!!」

 転びそうになりながらも、命からがら駆け出す。

 ――だが、その先に立っていたのは。

 濃密な闇をまとい、不気味な微笑を浮かべた「何か」だった。

「おやおや……この期に及んで逃げるおつもりですか?」

 低く囁くような声が、闇の中から響いた。

 漆黒の影がゆらりと揺らめく。

 ――ナギリ。

「お前は!」

 大福が警戒心を露わにする。

「ナギリ!?」

 ユキも驚きの声を上げ、いろはたちも息をのんだ。

 いつの間にか、ナギリは音もなくその場に立っていた。

「な、なんだよ……お前!?」

 男は恐怖に震えながら、後ずさる。

 しかし、ナギリはただ薄ら笑いを浮かべたまま、余裕たっぷりに男を見下ろした。

「その濁った眼、淀んだ性根……自らの欲のためには平気で人を貶める。なんと清々しいのでしょうか」

 ゆっくりと、ナギリの口元が歪む。

「あなたのような悪意に染まった社会の塵芥がいるからこそ、我々はゆめゆめ食いっぱぐれない」

 ぞくりとするような冷笑が響く。

「今こそ、その鬱屈した心の闇を解放して差し上げましょう」

 ナギリの細められた蛇の瞳が、男を値踏みするように見つめる。

 ――ふと、思いついた。

 この男は使える。

「闇に潜みし怨念よ、形を成せ」

 ナギリが淡々と口上を唱える。

 刹那、男の体が黒い靄に包まれた。

「な……!?」

 悲鳴を上げる間もなく、男の輪郭が歪み始める。

 黒いもやがうねり、絡みつき、引き裂くようにその身を作り変えていく。

 苦悶の表情が消え、代わりに異形の怪物がそこに現れた。

「ガオガオーン!!」

 瞬間、空気が変わった。

「まさか、人間を!」

 まゆが信じられないというように息を呑む。

「ガオガオーンにしちゃった!」

 こむぎが驚愕の声を上げた。

 姿を現したのは、セミ、カブトムシ、ロブスターが融合したかのような二足歩行をする異形のフューザーガオガオーン、名をセブトムタスタガオガオーン。

 背中から生えた巨大なセミの羽が、じわりと広がる。

 それがわずかに震えただけで、低いうなりのような超音波が辺りに響き渡った。

「ナギリ……お前も命を弄ぶというのか!!」

 かなえの怒りが爆発する。

 しかし、ナギリは何も言わなかった。

 ただ、薄ら笑いを浮かべるだけ。

 まるで、この世界が壊れていく様を嘲笑うかのように。

「みんな! いくよ!」

 いろはの号令で、居合わせた全員が一斉に変身する。 

 そして、変身直後にセブトムタスタガオガオーンが動いた。

 

「ガオガオーン!!」

 轟音とともに地面が激しく震え、アスファルトが細かく砕け散る。

 続いて、カブトムシのような巨大な大顎が、振動を伴って猛然と迫る。

「くっ、速い!」

 フレンディたちは後方へ跳躍し、回避する。

 ——だが、次の瞬間にはもう奴が迫っていた。

 ロブスターのような太い脚が地面を蹴り、爆発的な推進力で突進。

 頭上に広がるセミの巨大な羽が音を震わせながら、不気味な影を作る。

「ガオガオーン!!」

 そのまま、恐るべき勢いでニャミーに向かって武器化した右手が振り下ろされた。

「ニャミー!!」

 リリアンが叫ぶが、間一髪。

「ニャミーシールド!」

 ニャミーはシールドを展開し、それを盾にして受け流した。

「ガオガオーン!!」

 直後、背中の巨大なセミの羽が広がると、その一部が鋭利な刃のように弾け飛んだ。

 それは空を切り裂きながら一直線に飛翔し、プリキュアたちの目前へと迫る。

「飛び道具まで……っ!」

「ちっ!」

 悟と大福が素早く判断し、ウサギ型バリアを広げて身を守る。羽片は布地を掠め、地面に突き刺さった。コンクリートが抉れ、その破片が飛び散る。

「まるで弾丸みたい……!」

 リリアンの目が見開かれる。

 セブトムタスタガオガオーンは攻撃の手を緩めることなく、左腕のカブトムシの角を大きく振りかぶった。その先端が光を反射し、槍の穂先のごとく鋭く輝く。

「避けろ!」

 シャスールの声とほぼ同時に、突き出された角が空間を裂いた。すんでのところで後方へ跳び、直撃を回避するも、角が掠めた地面には深くえぐれた跡が残る。

 さらに、敵の右腕が不気味に蠢いた。内部の機構が軋み、次なる羽片が装填される。

「また飛ばす気だ……!」

 悟が歯を食いしばる。

 その瞬間、セブトムタスタガオガオーンの背後に立つナギリが、満足げに微笑んだ。

「嗚呼、なんと美しいのでしょう……。人の欲望と悪意が、ここまで完成された姿を成すとは」

 ナギリが恍惚とした表情で呟く。

 その言葉に応えるかのように、セブトムタスタガオガオーンが再び羽片を放とうとする。

 刹那、シャスールが弓を構え直し、静かに息を整える。

「笑止千万。お前の思い通りには、させん……!」

 鋭く放たれた宣言とともに、シャスールはタロンボウガンの弦を引き絞り、狙いを定めた。

 ――だが、次の瞬間。

 胸の奥で、心臓が跳ね上がるような異様な感覚が生まれた。

「……っ!」

 全身に走る違和感。

 思わず弦を引く手が震え、その場に膝をつく。

 弓を握る指先から力が抜ける。まるで、急激に体温を奪われるような感覚だった。

 視界がくすむ。音が濁る。

 いつものように風を読むことができない。

 敵の動きが遅く見えるのに、まるで自分の思考が追いつかない。

 何かが……おかしい。

 これは、疲労ではない。傷の痛みとも違う。

 経験したことのない、得体の知れない倦怠感が全身を蝕む。

 ナギリがその様子を見て、ゆるりと口元を歪める。

「おや、どうしましたか? まるで、蝉が羽を落としたかのような動きですね」

 ナギリの声音は、どこまでも嘲弄に満ちていた。

 シャスールは歯を食いしばる。だが、指先から力が抜け、膝が震える。

 いったい、これは……?

「シャスール!?」

 ワンダフルが焦りの色を滲ませる。

「一体何が起こったの?」

 ニャミーの声にも、困惑が混じる。

 だが、敵は待ってはくれない。

「ガオガオーン!!」

 セブトムタスタガオガオーンが咆哮とともに、再び羽片を飛ばそうとする。

「シャスールのことは気になるけど、まずは目の前の相手をなんとかしなきゃ!」

 フレンディが緊張した面持ちで声を上げる。

「でも、どうやって動きを封じれば……」

 リリアンの呟きに、悟が素早く視線を巡らせ、状況を把握する。

 セブトムタスタガオガオーンの右腕が内部機構を軋ませ、羽片の装填を完了しようとしていた。

 装填の瞬間――つまり、敵が攻撃に移る直前に一瞬の隙が生まれる。それを狙えば――

「――っ! あれだ!」

 直後、悟の目が鋭く輝いた。

「みんな! ボクの言う通りに動いて!」

「うん、悟くん!」

 悟に対し、全幅の信頼を寄せるフレンディが即座に応じる。

「大福! 手伝って!」

「おう! 任せろ!」

 悟の号令とともに、大福が刀剣モードに変化させた《コンコードフレーテ》を手に地を蹴り、戦場に飛び込む。

「まずは動きを止める!」

 悟が素早くコンコードフレーテの音色を奏でる。

 透明な波紋のような音が空間を震わせ、セブトムタスタガオガオーンの動きを一瞬鈍らせた。

 その刹那、大福が高速移動を駆使し、敵の懐へと潜り込む。

「うおおおおおお!!」

 鋭い軌跡を描く斬撃が、セブトムタスタガオガオーンの装甲を次々と裂いた。

「リリアン! 今だよ!」

 悟の指示に応じ、リリアンが《キラリンペンギン》の力を発動した。

 冷気が波のように地を這い、瞬く間に敵の足元を氷結させていく。

 リリアン自身も氷の上を滑走しながら、さらに凍結の範囲を広げていった。

 セブトムタスタガオガオーンの脚部が凍りつき、巨体の動きが鈍る。

 しかし、それでも完全には止まらない。

「次! ワンダフル、フレンディ、敵の腕を!」

「オッケイ!」

「いくよー!」

 ワンダフルとフレンディが、《キラリンコジカ》の力を発動する。

 両者の身体が瞬時に軽やかになり、空間を跳ねるように駆け抜ける。

 二人は同時に跳躍し、セブトムタスタガオガオーンの右腕へ向けて鋭い蹴りを叩き込んだ。

 衝撃が奔り、敵の腕がわずかに揺らぐ。

 その影響で、装填された羽片の射線が大きくズレる。

 ――決定的な隙が生まれた。

「最後にニャミー!」

 ニャミーが頷き、空高く跳躍。

 飛行能力を備えた《キラリンスワン》の力が解放され、優雅な滑空とともに鋭い突風を巻き起こした。

「ガオガ……!?」

 ニャミーの巻き起こした突風が、セブトムタスタガオガオーンの巨大な羽を揺らし、その均衡を崩した。

 重心を失った敵は、バランスを取る間もなくそのまま前方へと倒れ込む。

「やった!」

 悟は確かな手応えを感じた。

 しかし、ここで気を緩めるわけにはいかない。

 倒れ込んだままのセブトムタスタガオガオーンが身じろぎし、再び立ち上がろうとする。

 その瞬間――

「みんな、いくよ!」

 ワンダフルの声に呼応するように、六人の心が共鳴した。

「「「「「「ミラーストーンスタイル!!」」」」」」

 彼女たちの身体が淡い光に包まれ、鏡石の輝きが宿る神聖な姿へと変化する。

「「「「「「プリキュア・サークルオブライフ!!」」」」」」

 六人の力が融合し、純白の輝きが奔る。

 眩い光の輪が、セブトムタスタガオガオーンを包み込んだ。

 光は優しく、しかし力強く。

「ガオガオーン……」

 その光は全てを包み込み、セブトムタスタガオガオーンの凶悪な姿を掻き消していく。

 やがて、その場に倒れるようにして、素体となったセールスマンの姿が現れた。

 彼は完全に意識を失い、青ざめた顔でその場に横たわる。

 しかし、その場の静寂を破るかのように、ナギリの低く囁く声が響いた。

「やはりあなたは、こちら側のようですね」

 その言葉は、あたかもシャスールの存在そのものを断定するような響きを持っていた。

 シャスールは息を荒げながら膝をつき、体調の異変に抗う。

「なにを……言って……」

 ナギリは薄ら笑いを浮かべながら、彼女を見下ろす。

「あなたがどれだけ否定しようとも、その本質からは逃れられません」

 黒いもやのような気配が、ナギリの周囲を蠢く。

「いずれ、あなたは我々に回帰するのです」

 その言葉に、シャスールの全身が凍りついた。

「ふ……ふざけるな!!」

 彼女の瞳に怒りが灯る。

 次の瞬間、渾身の矢がナギリを貫かんと飛翔する。

 シャスールの意思を込めた一射は、闇を引き裂くかのように一直線に伸びた。

 しかし――

 ナギリの輪郭が黒いもやへと溶け、矢はその中を虚しく貫通するだけだった。

「……ふふ、あなたが抗えば抗うほど、楽しみは増しますよ」

 もやが拡散し、ナギリの姿は完全に消え去る。

 シャスールは歯を食いしばりながら、消えゆく闇を睨み続けた。

 

 その後、悟の通報を受け、アニマルタウンの警察が到着した。

 警官たちは、意識を失ったままのセールスマンの男を引きずり起こし、パトカーの後部座席へ押し込む。

 青と赤の警告灯が静かに回転し、舗装された道路にちらつく光を映した。

「詳しい話は署で聞かせてもらうぞ」

 巡査の一人が短く言い残し、ドアを力強く閉める。

 間もなくエンジン音が響き、パトカーはゆっくりとその場を離れていった。

 戦いの余韻がまだ残る空気の中、いろははしばらくパトカーの灯を見送っていたが、ふと悟の方を向いた。

「悟くんはさ……もしも、わたしのクローンが作られたら、どう思う?」

 静かに発せられた言葉に、悟は思わず目を瞬かせる。

「え?」

 唐突な問いだった。

 いろはの横顔は穏やかだった。けれど、その瞳の奥には、言葉にできない感情が揺れている。

 ——悲しみ? 迷い? それとも……不安?

 居合わせた他のメンバーも、いろはの真意と悟の答えに注目していた。

 悟はしばし考え、ゆっくりと口を開く。

「そうだね……たとえ同じ姿・同じ性格で生まれてきたとしても、それはボクが好きになった犬飼いろはという人間じゃないから。いろはちゃんといっしょに過ごした思い出がボクの頭にしか残っていないのは寂しいから」

 その言葉とともに、優しくいろはを見つめる。

「いろはちゃんは、世界中でただひとりだよ。そこに同じ記憶や思い出は引き継がれない」

 その言葉を聞いた瞬間、いろはの目が大きく揺らいだ。

 戸惑い、そして安堵――

 頬がじんわりと熱を帯び、気づけば、双眸には涙が滲んでいた。

「……うん」

 掠れるような声で、いろはは小さく頷く。

 二人の間に、穏やかで甘い雰囲気が広がった。

「きゃ~~~!!!」

 突如、まゆが興奮のあまり声にならない声を上げる。

「はぁぁ~っ!! 兎山くんってば、なんて甘いセリフを!! こ、これは……恋愛小説級の展開!!!」

 恋愛脳全開のまゆは、興奮で鼻息を荒くしている。

 そんなまゆの様子に、ユキと大福は「またか」と言わんばかりの表情を浮かべる。

「いろは、よかったね」

 こむぎが満足げに頷きながら、ほっとしたように二人を見守る。

 ――だが、その輪の中でただ一人、かなえだけは視線を落とし、何かを考え込んでいた。

(あのとき……私の身に何が起きた?)

 戦闘中の記憶を遡る。

 セブトムタスタガオガオーンと対峙したあの瞬間。

 身体の奥底から、制御できない何かが沸き上がった感覚。

 鼓動が高鳴り、視界が一瞬くすんだかと思えば、音さえも濁るように歪んだ。

 そして――

 刹那、何かが自分の内側で弾けた。

 それは単なる錯覚ではなく、確かに"何か"が彼女の内に宿った瞬間だった。

 さながら、何者かの意思が、彼女の中に目覚めようとしているかのような――。

(あれは……なんだ?)

 しかし、その正体も意味も、今の彼女にはわからない。

 ただ、胸の奥で警鐘を鳴らすかのような違和感だけが、なおも残り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




登場ガオガオーン
セブトムタスタガオガオーン
声:高橋伸也
身長:550cm
体重:不明(推定数トン)
・特色/力
蝉、カブトムシ、ロブスターという三種の生物の特徴を融合させた異形のフューザーガオガオーン。
蝉の羽を利用した超高速の移動能力と、甲殻類特有の強靭な装甲を兼ね備え、さらにカブトムシの角を活かした突進攻撃を得意とする。
自らを「完全なる捕食者」として振る舞い、敵を弄ぶように戦う狡猾さも持つ。
特に、蝉の羽を用いた音波攻撃と、ロブスターのハサミによる強烈な捕縛能力を駆使して、獲物の自由を奪う戦法を好む。
・特徴
全身は硬質な甲殻に覆われ、赤褐色のロブスターの外骨格と、昆虫の生物的な特徴が混ざり合った異形のフォルムを持つ。
背中には巨大な蝉の翅が六枚生えており、発声器官を震わせることで超音波を発生させる能力を備えている。
右腕は巨大なロブスターのハサミへと変異しており、強力な挟撃で獲物を拘束する。
左腕はカブトムシの角が変化した槍状の刃となっており、相手を貫く刺突攻撃を得意とする。
怨念が凝縮した紅い瞳は、常に薄ら笑いを浮かべるかのように光を宿し、見る者の精神を削ぐ。
・能力
殻鳴(カクメイ)
背中の翅を振動させることで、蝉の鳴き声を増幅した超音波攻撃を放つ。
対象の聴覚を破壊し、方向感覚を狂わせる効果を持つ。
羽片弾(ウスバダン)
右腕の内部機構から、硬質化した蝉の翅を弾丸のように連続発射する遠距離攻撃。
翅は極めて鋭利で、着弾と同時に爆発的な破片を撒き散らす。
断甲撃(ダンコウゲキ)
ロブスターのハサミによる強烈な捕縛技。
一度挟まれたら容易に逃れることはできず、そのまま粉砕される危険性がある。
兜衝槍(トウショウソウ)
左腕のカブトムシの角を槍のように用いた高速突進攻撃。
一直線に突き進みながら、敵を貫く強烈な一撃を繰り出す。
破蝕の胎動(ハショクノタイドウ)
ナギリの怨念を宿した特殊能力。
相手の生命力を吸収し、自らの力へと変換する。
ダメージを受けるたびに、周囲のエネルギーを吸い取ることで徐々に回復する特性を持つ。
・行動
セブトムタスタガオガオーンは、捕食本能を優先し、獲物を弄ぶことを好む。
相手の苦しむ様子を楽しみながら、徐々に追い詰め、最後には確実に仕留める狡猾さを持つ。
特に、音波攻撃と高速移動を組み合わせた攪乱戦術を得意とし、敵の体力と精神を削りながら確実に追い詰める。
怨念によって生み出された存在であるため、意識の奥底には「捕食される恐怖」という概念が刻まれており、逆に自らが追い詰められることを極端に嫌う。
・戦闘記録
アニマルタウンの住宅街にて、ナギリの手によって生み出されたフューザーガオガオーン。
人間の悪意と執念が凝縮された個体であり、最初からわんぷりメンバーを苦しめる目的で現れた。
圧倒的な機動力と射撃能力を駆使し、遠距離からの羽片弾で攻め続ける一方、近距離では断甲撃と兜衝槍による突撃戦法で撹乱する。
特に、シャスールが不調を訴えたことで、わんぷりメンバーは序盤から苦戦を強いられる。
しかし、悟の指示のもと、チームプレイによる連携戦術で行動を封じられ、最終的にはミラーストーンスタイル発動後の「プリキュア・サークルオブライフ」によって浄化された。
元の姿に戻ったセールスマンは、そのまま警察に引き渡されることとなる。
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