わんだふるぷりきゅあ!!~わんだふる♡わーるど~   作:重要大事

19 / 24
第19話:獲っちゃダメェ~!

8月中旬

アニマルタウン 犬飼家

 

 午後の柔らかな陽が、犬飼家の縁側から差し込んでいる。外では蝉が鳴き、遠くの山々には夏の入道雲がのぼっていた。涼しげな風鈴の音が微かに響く中、こむぎたちがテーブルを囲んでいた。

「中学最後の夏休み……その自由研究の題材をどうするか」

 いろはが、用意していたノートを開きつつ呟くように言った。

 その口調は真剣そのものだが、集まった面々は誰もが夏の開放感に身を委ねており、緊張感はない。

「去年はたしか、ウミガメの生態について調べたんだよね?」

 隣に座るまゆが、記憶を手繰るように言う。

 思い出すように微笑み、いろはもうなずく。

「みんなで海で遊んですっごく楽しかったワン!」

 こむぎが尻尾を元気に振りながら叫んだ。

 去年の思い出が甦ったのか、犬耳をぴこぴこと揺らしてはしゃいでいる。

「海は嫌よ。水は苦手なんだから」

 ユキはまゆの膝の上で冷たく言い放った。

「なら今年は山にでもすればいいじゃねーか?」

 悟の膝の上で大福が、だるそうに転がりながら提案する。

 口調は投げやりだが、興味がないわけではない。

「そうだね。山なら、狩人である鷹目さんの方が詳しいだろうし」

 悟が慎重に話を合わせる。

 たしかに山に詳しい知人も多く、自然とその流れになりかけていた――その時。

「いや。海がいい」

 ぽつりと呟いたのは、普段あまり意見を口にしないかなえだった。

「「「「「「え?」」」」」」

 一同がそろってかなえを見つめる。

 突然の強い主張に、場の空気がややざわつく。

「私も是非海がいいです!」

 続くようにメエメエが手を挙げて同意する。

 その瞳はすでに何かを決意しているようだった。

「メエメエまで……」

 悟は困ったように眉を下げた。

 普段は冷静なメエメエまでもが海推しとは思っていなかったようだ。

「ち、ちなみに理由は何?」

 ユキが半眼で問いかける。

 その瞬間、リビングのテレビからグルメ番組の音声が響く。

『もったいぶることなく、食べたいだけアナゴを食べられる権利を、オレは今手に入れた』

 色鮮やかな照り焼きアナゴが映され、俳優の心の声という設定の解説が高らかに響いていた。

「あれを見て海以外の選択肢など考えられん!!」

 かなえが即座に断言した。

 頬を染め、やや前のめりになっている様子に、もはや誰も止められそうにない。

「悟くん、一緒に海の幸を味わい尽くしましょう!!」

 メエメエが恥じらいもなく続く。

 その真剣な目には、明らかに食欲が込められている。

「おまえらな……自由研究を美食ツアーかなにかと勘違いしてんじゃねーだろうな」

 大福が呆れ顔でぼやいた。

「それだよ!!」

 直後、いろはがひらめいたように手を叩いた。

「え? どういうこといろはちゃん?」

 まゆが首をかしげる。

「アニマルタウンの浜辺で獲れる新鮮な海産物を調べるんだよ! 海の生き物について調べられる上に、新鮮な魚や貝をお腹いっぱい食べられる! まさに一石二鳥だよ!」

 いろはは目を輝かせながら力説した。

「うわー! それすっごく楽しそうだワン!」

 こむぎが大きく尻尾を振りながら跳ね上がった。

「お前にしては素晴らしい思案だ」

 かなえが感心したように頷く。

「そんなんでいいかよ」

 大福は呆れつつも、どこか納得しているようだった。

「ぼ、ボクはいろはちゃんの意見を尊重するよ」

 悟が小さく頷き、柔らかく笑った。

 こうして、彼らの夏の自由研究は、思わぬ形で「海と海産物」に決まったのだった。

 

           *

 

アニマルタウン 海岸沿い

 

 陽光に照らされた砂浜は真夏の熱を帯び、波打ち際の水面が煌めきを放っている。吹き抜ける潮風に乗って、遠くから波音と子どもたちの歓声が微かに届いてくる。

「わーい! 海だー!」

 こむぎは裸足になって砂浜を駆け回り、目を輝かせていた。犬の本能なのか、波が近づくと興味津々に後退り、再び波が引くと追いかけていく。

「まずはここで穫れる生き物のリストアップから始めようか」

「うん!」

 悟に促され、いろははノートを開きながら砂浜に腰を下ろし、真剣な表情を浮かべた。隣のまゆも膝をつき、さっそくスマホで調べ始めている。

「いろんな海産物があるんですね。これを全部食べ尽くすなんてできるのでしょうか?」

 メエメエが穏やかな声で楽しげに呟く。その瞳は控えめに輝き、内心では期待と不安が入り混じっているようだった。

「何を言ってるメエメエ。食べると決めたからには全て食べる。それが食材になったものへの最大限の敬意だ」

 かなえが強い意志を込めて断言すると、メエメエは安心したように微笑んで小さく頷いた。

 一方、ユキは日傘を手に、大福とともに海からやや距離を取って立っていた。二人は暑さを嫌うように軽く眉をひそめ、波打ち際から跳ねる飛沫を鬱陶しげに眺めている。

「まったく……なんで二年連続で海なのかしら」

 ユキが静かにぼやいた、その直後だった。

「ん? おい、あれ見ろよ」

 大福が、不意に声を潜めて一同に告げる。その真剣な表情に、こむぎもはしゃぐのを止め、大福の指差す方向へと視線を向けた。

 彼らの視線の先には、数人の観光客らしき男女が楽しげに岩場に集まっているのが見えた。よく見ると彼らは手にビニール袋やバケツを持ち、次々と浜辺の砂を掘り返したり岩をひっくり返したりしている。

「何してるんだろ?」

 まゆが不思議そうに首を傾げる。その視線の先では、観光客らしき男女が浜辺で何かを拾い集めていた。妙に楽しげなその様子に、かえって悟の表情が鋭くなった。

「! あれは……ナマコやハマグリを獲ってるんだ!」

「採集か? その何が問題なんだ?」

 かなえが淡々とした口調で疑問を投げかける。すると、悟は真剣な眼差しで答えた。

「漁業権がない人が勝手に地元の海産物を獲るのは法律で禁止されてるんだよ。あの感じ、地元の漁協や自治体から許可を取っているようには見えない」

「じゃあ、あの人たちがやってるのは……密漁ってこと?」

 いろはが不安そうに呟く。その瞬間、場の空気が一気に張り詰める。

「密漁って?」

 こむぎが目を丸くすると、大福が彼女のために説明する。

「許可なく海の幸を勝手に獲っていくことだよ。海の生き物にはちゃんと所有権があってな、漁師や漁協以外が勝手に獲っちゃいけない決まりがあるんだ」

「ですが、あの人たち、すごく楽しそうですよ……」

 メエメエが戸惑ったように小さく呟いた。彼女の目には、その観光客たちが悪意などなく、本当に無邪気に遊びの延長としてナマコやハマグリを獲っているように映ったのだろう。

「自分たちが違反してるなんて全然分かってなさそうね」

 ユキが冷ややかな口調で付け加えた。確かに観光客たちは何の罪悪感もなく、子供のようにはしゃぎながら次々と貝やナマコを拾い上げている。おそらく、自分たちが法律に触れているとは微塵も思っていないのだろう。

 こうした行為は、何もこのアニマルタウンだけに限った問題ではない。近年、日本各地の海岸で漁業権を無視した密漁が増加し、特に夏のレジャーシーズンにはこうした無自覚な密漁者が後を絶たない。獲った海産物は売買目的ではなく、自宅での消費やバーベキュー目的というのが大半で、そのために罪の意識も希薄である場合が多い。それが余計に問題を深刻化させていた。

 悟は鋭く目を細め、その様子をじっと睨むように見つめていた。

「……とにかく、このまま黙って見てるわけにもいかないよね」

「そうだね」

 いろはが毅然とした態度で立ち上がった。戸惑うみんなを見渡し、一歩前に踏み出す。

 その時だった。

「待ちたまえ」

 どこからか低く響くような男の声がした。振り返ると、見慣れない若い男性が砂浜を悠然と歩いてきていた。

 派手なサングラスにラフな格好だが、そのただならぬ存在感に全員の視線が彼に釘付けになった。

「えっと、何だろうあの人……?」

 まゆが戸惑ったように小さく呟いた。彼女の視線の先には、いつの間にか観光客たちに向かって歩み寄っている、一人の見知らぬ青年の姿があった。  かなえはその人物を視認した瞬間、驚きと興奮で目を大きく見開いた。

「あ、あれは……まさか、鳳条レオか……!?」

「かなえちゃん、知ってるの?」

 いろはがきょとんとした様子で問いかけると、かなえは興奮を隠しきれない様子で続けた。

「『HOJO FOODS』の若きCEOだ! そして、かの有名な動画配信チャンネル『レオの奇食道』の配信者だ!! まさかこんなところで本物を見られるとは、何たる僥倖!!」

「な、なんでそんなに詳しいのよ?」

 ユキがやや引き気味に問いかける。すると、傍らにいた大福がやれやれと言いたげに口を挟んだ。

「悟が前に使ってたスマホを与えてから、妙なチャンネルを観始めるようになったんだが……」

 一同がざわめく中、鳳条レオと呼ばれたその男は観光客たちの前に静かに立ち、鋭い眼差しを向ける。そして低く落ち着いた声で力強く言い放った。 「お前たち、漁業権というのを知ってるか? ここはお前たちが好き勝手に海産物を獲っていい場所ではない」

 レオのはっきりとした物言いに、観光客たちははっと息を呑み、戸惑った表情で互いに顔を見合わせた。

「げ! 有名動画配信者に目つけられたぞ!」

「仕方ねー。行こうぜ……」

 社会的な影響力と明確な口調でたしなめられたことで、自分たちの過ちに気付いたのだろう。彼らは渋々ながらも獲ったナマコやハマグリを海へと戻し、気まずげに砂浜を後にした。

 その背中を黙って見送るレオへ向かって、かなえが思わず興奮を抑えきれない様子で駆け寄った。

「あ、あの!」

 かなえの声は少し上ずり、目の前の人物に向けられた視線は尊敬と興奮に満ちていた。頬はわずかに朱に染まり、いつになく感情を抑えきれていない。

「ほ、鳳条レオさんですよね……いつも奇食動画見てます! ゴリラ肉やカバ肉を食べる動画がすごくカッコよかったです!」

 感極まった様子で勢いよくまくし立てたその言葉に、一同は一瞬、凍りついた。

「いま……ゴリラにカバの肉って言った?」

 こむぎが目を丸くしながら尋ねた。

「食べ物なのかよそれ……」

「信じられません」

 大福とメエメエが呆れ顔で呟く。

「む! これはこれは、こんな可憐なファンが我がライフワークを見てくれていたとは……光栄だ!」

 レオは目を細め、片手を顎に添えつつ、堂々たる態度で答えた。その様子はまさしく「奇食道」を極めし男といった風格だった。

「あ、あの!! よかったら握手してください!!」

 かなえは身を乗り出すように両手を差し出す。いつも冷静で大人相手にも敬語を使わない彼女には珍しい積極さと謙虚さだった。

「なんでちょっと顔を赤らめてるのよ」

 ユキが冷静に指摘する。

「さ、さぁ……」

 悟は困惑しつつも、どこか遠い目をしている。

「鷹目さんの好みのタイプがなんとなくわかった気がする」

 まゆがぽつりと呟くと、いろはが「そうだね……」と呆れたように肩を落とした。

 波の音が静かに響く中、かなえとレオの間には、不思議な熱気が漂っていた。

 少し時間が経ち、落ち着きを取り戻したところで、悟が口を開く。

「それにしても、さっき鳳条さんが注意してくれて助かりました」

 礼儀正しく頭を下げる悟に、レオは腕を組み、ふっと小さく笑った。

「気にすることはない。食品会社のトップたる者として、あの手の輩を嗜めるのも社会的責務だと思っている」

 堂々たる口調と落ち着いた態度に、周囲の空気が自然と引き締まった。

 だがその直後、レオのポケットから微かなバイブ音が響く。

 彼はすぐにスマホを取り出し、ディスプレイを確認すると、眉をひそめながら通話に出た。

「どうした……なに!? それは本当か!!」

 レオの鋭い声に、こむぎたちが思わず顔を見合わせる。普段のレオからは想像できないほど、緊張感のある声色だった。

 やがて、電話を切るや否や、レオは切羽詰まったような面持ちでこむぎたちに向き直った。

「君たち、アニマル漁港とやらはどっちだ!?」

 その鋭い口調に一同がたじろぐ。

「えっと……ここから東側ですけど、何かあったんですか?」

 いろはが戸惑いながらも地図を思い浮かべつつ答える。

「リュウグウノツカイが打ち上がったという連絡があったんだ!!」

 レオの声が波音をかき消すほどに響いた。

「リュウグウノツカイ?」

 まゆが首をかしげる。

「体がとても長い深海魚だよ。平均体長は3~5メートル。硬骨魚類の中では世界最長だね。大地震の予兆だとか、不老不死になるとか、色んな迷信がある魚なんだ」

 悟が冷静に解説するが、レオはさらに身を乗り出すように食いついた。

「まさにその通り!! どうだろう!! 君たちも一緒にどうだ!!」

 興奮を隠せない様子で、レオは両手を広げた。

「いいんですか!! ご一緒しても!!」

 かなえが食い気味に返す。目を輝かせ、今にも飛び出していきそうな勢いだ。

「もちろんだ! さぁ、行くぞ! まだ見ぬ奇食を求めて!!」

 レオは高らかに叫ぶと、砂浜を力強く踏みしめた。

「妙なことになっちまったぞ……」

 大福が呆れたようにぼやく。

 その言葉通り、かなえを除く全員が、なんとも言えない空気に包まれ、同じ反応を返すべきか迷っていた。

 

           *

 

アニマルタウン アニマル漁港

 

 潮風に吹かれながら、こむぎたちはレオとともにアニマル漁港へとやって来た。真夏の日差しが照りつける港は、どこかざわついた空気に包まれていた。

「恐らくあそこだな」

 レオが指差した先には、人だかりができているのが見える。

「なんか賑わってる」

 こむぎが目を丸くして呟く。

 集まった人々の先にあったのは、浜に打ち上げられた、見たこともない巨大な魚だった。

 波打ち際から少し離れた砂浜に、白銀の体を煌めかせながら横たわっている。

「すっご!」

 いろはが思わず声を上げる。

「むぅううう! 想定よりはるかにデカい!」

 レオが目を輝かせながら、身を乗り出す。

「一体何メートルあるんだぁ?」

 悟が驚きのあまり後ずさる。

 目の前にいるのは、通常の個体よりもはるかに大きい、全長八メートルを超える巨大なリュウグウノツカイだった。

 集まった人々も興奮と驚きの入り混じったざわめきをあげている。

 レオは人混みをかき分け、迷わず漁師の元へと足を運ぶと、腕を組んで口を開いた。

「このリュウグウノツカイ、譲ってくれないか。無論、言い値で構わない」

「本当に言い値でいいのかぁ? じゃあ……3000万だ!」

 漁師は冗談半分に吹き出しつつ告げた。

「了解だ。小切手を渡そう」

 しかし、レオはまったく動じることなく懐を探りはじめた。

「い……いや、さすがに冗談だって! タダでいいよ、偶然網にかかっただけだし!」

 漁師が慌てて手を振る。

 とはいえ、レオは無言で小切手を取り出すと、最終的に300万円での取引をあっさりと成立させた。

「あれに300万も出すなんて……」

 ユキが呆れたように日傘の下でため息をつく。

「さ、さすがは食品会社の社長さんだね」

 まゆも驚きと感心が入り混じった声を漏らす。

 港に集まった人々も、思わぬ大金が動く光景にざわめきを隠せなかった。地元の漁師たちや見物客がひそひそと声を交わし、誰もが、あの巨大な深海魚にこれほどの金が動くとは予想していなかったのだ。

 しかし、肝心の調理を担うシェフが不在であることが判明する。

「茹でるだけしかできんぞ」

 漁師の一人が申し訳なさそうに言った。港の近くには料理人も少なく、簡易な設備しかない。

 そうして、急遽用意された寸胴鍋に水を張り、巨大なリュウグウノツカイを放り込む。

「男の究極形! 塩茹でだな!」

 レオは一転して満面の笑みを浮かべ、拳を握りしめた。

「さすがに原始的すぎやしないかぁ?」

 大福が呆れたように目を細める。

「わたくしもそう思います……」

 メエメエも小さく頷き、困ったように視線を泳がせた。

 だが、そんな二人に向かってかなえがきっぱりと言い放つ。

「何を言うか! 素材本来の味を堪能できるのに、これほど適した調理方法があるものか!」

 両手を広げ、迷いなく断言するかなえ。その目は本気だった。

「むぅ! その歳でその境地に至るとは! なかなか見どころがある!」

 レオは目を見開き、すぐに快活に笑った。

「ぜひ君の名を教えてほしい!」

「鷹目かなえです! よければ、私にも食べさせてください!」

 かなえは迷いなく名乗り、しっかりとレオを見つめ返す。

「よかろう! かなえ氏、俺とともに奇食の道を追求しようじゃないか!」

 港の海風の中、レオとかなえは固く握手を交わした。その様子は、まるで長年の盟友であるかのように熱がこもっていた。だが、周囲で見守っていたこむぎたちには、その光景があまりに異質に映ったのか、誰もがどこか置いてけぼりを食ったような表情を浮かべていた。

 それから待つこと約二十分。

 大きな鍋の中で煮られていたリュウグウノツカイが、ついに茹で上がった。

「煮崩れしなくてよかったな」

 レオが満足そうに鍋の中を覗き込みながら頷く。

 だが次の瞬間、鍋から引き上げられたその姿を見て、まゆが思わず顔をしかめた。

「見た目がモロすぎるぅうう……」

 レオが火傷しないようゴム手袋を装着し、アツアツのリュウグウノツカイを丁寧に引き上げる。

 その体表は茹でられたとはいえ、ほとんど原型を保ったままで、光沢のある銀白色と長大な体は深海魚特有の不気味さを残していた。

「うぉおお、なんか口が伸びるぅうう」

 こむぎが恐る恐るその長い口元に触れそうになりながら驚きの声を上げる。

「この長い口でオキアミやプランクトンを吸い込んで食べるらしいよ。ちなみに歯は持っていないんだ」

 悟が冷静に解説する。

「ほう、なかなか博識だな。どうだね、君も一緒に?」

 レオがニヤリと笑いかけるが、悟は慌てて手を振った。

「え、遠慮しておきます……」

 湯気を上げる幻の魚を前に、かなえが身を乗り出す。

「こ……これがリュウグウノツカイ……いったいどんな味なんだ?」

 その未知の味覚に対する期待と緊張に、かなえとレオは無言で顔を見合わせ、同時にごくりと喉を鳴らした。

 レオが小さく息を吸い、胸を張って宣言する。

「いたリュウグウマァース!」

 続いてかなえも気合十分に叫んだ。

「幻ぃいい!」

 かなえとレオの声が港に響く。こうして、二人は幻の魚――リュウグウノツカイに豪快にかぶりついた。

 ――これは幻の深海魚と呼ばれる究極の奇食!とくと味わわせてもらおう。

 意気込んで口に運んだ瞬間、二人は同時に口元を固まらせた。

「ぬぅうう……なんとリアクションの取りにくい味だ……」

 レオが顔をしかめる。

「不味くはないが、全然進まない……」

 かなえも眉を寄せ、噛み締めるように呟いた。

「魚とは思えないブニョっとした食感……そして味は超絶淡白だ」

 レオは遠くを見つめるように語る。

 身構えていただけに、あまりの味の薄さと食感に、二人とも拍子抜けしてしまった。もはや、ここから先は味との戦いではなく、量との戦いに変わっていた。

「まだ1メートルしか食べてないけど、もう十分だ……」

 かなえが疲れたように呟いた。

「味が淡白すぎて、すでにうんざりだ」

 レオも額に汗を浮かべ、身を持つ手が重たくなっていた。

 しかし、どんなに味気なくとも、食材への敬意として「お残し」は許されない。

「かなえ氏! あと7メートル、気合いでいくぞぉおおお!」

 レオが拳を握り、立ち上がる。

「もう奇食よりも大食いよ!」

 かなえも必死に声を上げた。

 ここまで来て立ち止まったら、もう二度とリスタートは切れない。気力で乗り切るしかなかった。

 その光景を、こむぎたちはただ呆然と眺めていた。

 完全に蚊帳の外でありながらも、二人の意地ともいえる気迫に、こむぎたちは終始圧倒され続けていた。港の片隅で繰り広げられる異様な光景――それは、もはや「食事」というにはあまりに激しい戦いだった。

 そして、気づけば三十分が経過していた。

 ついに、二人はリュウグウノツカイを、八メートル丸ごと完食してみせた。

「ぐぉおおお……満腹だぁああ……」

 かなえが腹を押さえ、ぐったりと座り込む。

「奇食で腹が膨れる……この上ない幸せだ!」

 レオは満足げに天を仰ぎ、両手を広げた。

 二人の腹は見事に膨れ上がり、シャツがぱんぱんに張っている。

「うわああ! 二人ともすごぉぉい!」

 こむぎが目を輝かせて駆け寄った。

「よくやるわなぁ……」

 大福が呆れたようにため息を吐く。

 その隣で、いろは、まゆ、ユキ、悟もまた、無言で遠巻きに二人の満腹の達成感を見守るしかなかった。波の音だけが妙に涼しげに響いていた。

 

           *

 

アニマルタウン とある高級焼き肉店

 

 リュウグウノツカイを完食した功績を讃えてか、あるいは単純に打ち解けた結果か――。

 気付けば、こむぎたちはレオの案内で、アニマルタウンでも名の知れた高級焼き肉店へと招かれていた。

「ま、まさか……ここって……」

 いろはが店先を見上げて絶句する。煌びやかな看板と、重厚な木の扉、そして店先に掲げられたメニューには、堂々と『客単価2万円』の文字が刻まれていた。

「ここ……高級焼き肉店『炎舞(えんぶ)』だよ!」

 悟が店先の看板を見上げて声を上げた。

「それって、アニマルタウンで一番高いって有名なお店の!?」

 まゆが戦慄したように声を震わせる。煌びやかな外観と、落ち着いた高級感のある佇まいが、普段の生活からはかけ離れた雰囲気を醸し出していた。

「お、おごりなのよね……?」

 ユキが少し動揺しながら、ちらりとレオに視線を送る。

「当然だとも! 食の冒険を共にした仲間たちへのささやかな礼だ。遠慮は無用だ!」

 レオは胸を張り、爽やかに笑った。

「あぁ~、まさか憧れの人と奇食だけでなく焼き肉まで食べられるなんて……! 今日はなんていい日なんだ!」

 かなえは胸の前で両手をぎゅっと握りしめ、頬を紅潮させながら感極まった声を上げた。

「よかったね、かなえ」

 隣でこむぎが、にこにこと微笑みかける。

「メエメエ、知ってるか。ここは新鮮なラム肉を出すらしいぜ」

 大福が隣のメエメエに耳打ちすると、彼女はぴたりと動きを止めた。

「ラム肉……たしか、ヒツジのお肉ですよ……って!! わたくしは食材じゃありませんよ!!」

 メエメエが顔を青ざめさせて声を上げる。

「冗談だよ」

 大福は面白がるように肩をすくめた。

 こうして、図らずもこむぎたちは、普段なら足を踏み入れることさえ憚られる高級焼き肉店にて、新たな“食の冒険”を迎えることとなった。

 店内は上質な木材と和風の意匠が施された落ち着いた空間で、テーブルに運ばれてくる肉の一皿一皿が、見るだけでその高級さを物語っていた。

「希少部位のシャトーブリアン、遠慮なく食すがよい!」

 レオが豪快に手を広げ、皆を歓迎するように笑った。

「さすがです! 私も心置きなく肉を堪能できるであります!」

 かなえは軍人のように直立し、きらきらと目を輝かせている。

「おまえ、キャラ変わりすぎだぞ……」

 大福がサンチュを口に入れながら、呆れたように指摘した。

「というか、あれだけ食べてまだ食べられるなんて……ある意味、かなえ様のほうがすごいかも」

 メエメエは驚きを隠せない様子で、かなえの食欲に目を丸くする。

「ん~! 脂っこくないのに口の中で溶ける……」

 まゆは目を閉じ、口の中で広がる肉の旨みに恍惚の表情を浮かべた。

「焼き肉の概念が覆る究極のクオリティね」

 ユキは冷静な口調ながら、どこか感心したように呟く。

「いろはー、こんな美味しいお肉、わたし食べたことない!!」

 こむぎが嬉しそうに身を乗り出す。

「わたしもだよ。お母さんたちにも食べさせてあげたかったなー」

 いろはは少し寂しそうに笑みを浮かべた。

 そんな中、悟がふと思い出したように口を開く。

「そういえば鳳条さん、ずっと気になってるんです。食品会社の大手社長さんであるあなたが、どうして奇食を求めるんですか?」

 悟が真剣な面持ちで問いかけると、食卓を囲む全員が興味深そうにレオへと視線を集めた。

「うむ……」

 レオは少しだけ目を伏せ、語り出した。

「俺の家は幼少期、とても貧乏だった。毎日三食、梅干しだけという日も珍しくなかったんだ」

「えー、かわいそう……」

 こむぎがしんみりと呟く。

「だから俺は一念発起して猛勉強の末、世界中の食を輸入する貿易系の会社を立ち上げた。その会社が大成功。莫大な資産を得た俺は、昔からの夢だった“食の探求”を実現するため、世界中を飛び回っているのさ」

 淡々と語るレオの横顔に、誰もが自然と引き込まれていく。

「でも、それがどうしてゲテモノ料理なの?」

 ユキが少し首を傾げて尋ねる。

 するとレオは、思わず拳を握りしめて身を乗り出した。

「ゲテモノ料理ではない! よいか、奇食とは人類が歩んできた食の集大成なのだ! その国の歴史を知るために必要不可欠なものだ! 確かに他国の人間からすれば受け入れがたい料理もあるだろう。だが、日本にも世界から“ゲテモノ”と呼ばれる料理はいくつもある。万人に愛される美食が光なら、その土地で生きた人々が紡いだ奇食は陰……だが、俺はその“陰”にこそ、極限の食文化が詰まっていると信じている」

 レオの語気は次第に熱を帯びていく。

「なぜなら奇食は、食糧難や厳しい環境を生き抜くため、先人たちが編み出した生きる知恵そのものだからだ。それゆえに普通なら食べないようなものまで食材とし、工夫を凝らしてきた。その歴史が今もなお残されている。それこそが“人類の宝”なのだ!」

「な、なるほど……」

 まゆが圧倒されたように頷く。

「すごい使命感です……」

 メエメエも思わず感心したように呟く。

「うぅぅ……!」

 かなえが涙を堪えきれずに鼻をすすった。

「かなえ、なんで泣いてるの?」

 こむぎが慌てて声をかける。

「これが泣かずにいられるか……私は感動しているんだ!」

 かなえは目頭を押さえながら言葉を続けた。

「レオ様こそ、真の食の探求者にして、フードロスが叫ばれるこの現代において、まさに救世主となるお方なのだ!!」

「おお、かなえ氏! わかってくれるか!!」

 レオも瞳を輝かせて応える。

「もちろんです!! これからも、ぜひ応援させてください!!」

 二人はまるで同志を得たかのように強く頷き合っていた。

 食卓を囲む他の面々は、呆れながらも、どこかその熱意に圧倒されていた。

「失礼します。こちら、ご注文の生こんにゃくです」

 静かに頭を下げた店員が、銀盆に乗せた皿を丁寧にテーブルの中央へ置いた。銀盆の上には、艶やかな赤身が美しく盛り付けられている。

「これ……レバ刺しですか?」

 悟が皿を覗き込みながら素直な疑問を口にした。

「そう見えるだろう。だが、レバ刺しの提供は現在、法律で固く禁じられている。食中毒の危険性が高く、これを提供すれば営業停止はおろか、食品衛生法違反で懲役刑や罰金刑も科されかねない重い違反行為だ。この店では、食の安全を考え、レバ刺し風の生こんにゃくを提供しているんだ」

 レオが事もなげに答え、腕を組む。

 皿の上に並んだ刺身は、瑞々しい光沢を放ち、見る者に生のレバーとしか思えないほどの出来栄えだった。

 だが、メニューに記された文字には確かに『生こんにゃく刺し』とある。

「へー、おもしろい。わたし、これ食べてみようかな!」

 いろはが目を輝かせて箸を伸ばす。

「こむぎも!」

 こむぎもいろはに倣って勢いよく箸を手に取り、隣で嬉しそうに真似をする。

 二人はごま油に浸して恐る恐る口に運ぶと、目を丸くした。

「んー、おいしい!!」

「こんにゃくとは思えない感触!! 本物のレバ刺しってこういう感じなのかな?」

 こむぎに続いて、いろはは感激したように頬を緩めた。

 他の面々も興味深そうに見守っていたが――誰も、これがのちに悲劇を生むなどとは、知る由もなかった。

 

           ◇

 

アニマルタウン 犬飼家

 

 それから二日後――。

 何の前触れもなく、その悲劇は訪れた。

「うああああああああっ!?」

 いろはが突然、苦しげに叫び声を上げた。

 まるで内臓を直接掴まれ、えぐり取られるような、信じがたい痛みが腹部を襲ったのだ。同時に、身体の芯から燃え上がるような高熱が吹き上がる。

 経験したことのない激しい痛みに、いろはは床に崩れ落ち、その場で悶え苦しんだ。

「いだぁぁい!!」

 涙と汗に濡れた顔で、必死に痛みを訴える。

「いろは、しっかりしなさい!」

 陽子が驚きに目を見開き、すぐに駆け寄る。

「一体どうしたんだ!?」

 剛も慌てて声を上げた。

「いろは! いろはしっかり!」

 こむぎも犬の姿のまま、必死にいろはの手を舐め、呼びかける。

 だが、いろはの体はすでに限界ぎりぎりだった。

 腹の中をかき回されるような腹痛、そして頭の中を押し潰されるような激痛。

 まるで、腹と頭の両方に溶けた鉄が流し込まれたかのような、恐ろしい苦痛が襲ってくる。

「もうだめぇぇ!! お母さん……救急車、呼んで!!」

 弱々しくも、助けを求める声が絞り出された。

「わかったわ!」

 陽子は躊躇なく受話器を取り、すぐさま救急車を呼んだ。

 

           *

 

アニマルタウン 総合病院

 

 病院のロビーには、冷房の効いた空間にもかかわらず、誰もが緊張で汗ばんだ額を拭っていた。

 陽子から連絡を受け、悟、大福、まゆ、ユキ、かなえ、そしてレオも駆けつけた。

「陽子先生!」

 悟が息を切らしながら駆け寄った。

「いろはちゃんは!?」

 まゆも不安そうに問いかける。

 陽子は全員が揃った後、剛と顔を見合わせてから重く口を開いた。

「検査の結果、腸管出血性大腸菌――O-157に感染していることがわかったわ」

「O-157だと!?」

 レオが目を見開き、思わず叫んだ。

 O-157。正式には腸管出血性大腸菌O-157というこの菌は、激しい腹痛、下痢、発熱などを引き起こす細菌性食中毒の一種。

 中でも子どもや高齢者は重症化のリスクが高く、最悪の場合、命にかかわる事態にもなりかねない危険な病原体だった。

 その名を聞いた瞬間、誰もが息を呑み、顔を青ざめさせた。

「発見が早かったから、今すぐに入院と適切な処置を行えば回復は見込めるわ。ただ……」

 陽子は一瞬言葉を詰まらせ、険しい表情で続ける。

「感染源が気になるわ。O-157は、十分に加熱されていない肉類や生食での感染例が多いのよ」

 その言葉に、レオとかなえの背筋がゾクリと震えた。

 二人の脳裏に浮かんだのは、あの焼肉店で食べたいろはの一言――

『これ食べてみようかな!』

 そして、食卓に運ばれた、あの“生こんにゃく刺し”が脳裏に浮かぶ。

(まさか……あれが生こんにゃくではなく、本物のレバ刺しだったのか?)

 レオの胸に、不吉な予感が重くのしかかる。

 奇食の探求者である彼の経験が、あの皿に違和感を覚えていた理由を、今になってはっきりと悟らせた。

「いろは、死なないよね……?」

 こむぎが涙目になりながら、不安げに声を震わせた。

 その表情は今にも泣き出しそうで、唇をきゅっと噛みしめている。

「大丈夫よ……きっと助かるわ……!」

 ユキが彼女の不安を感じ取って咄嗟に声をかけたが、その瞳にもかすかな動揺が滲む。

「しっかりしろ、こむぎ。いろははそんなにヤワじゃねえ」

 大福が腕を組みつつも、優しく視線を向ける。

「そうとも。いろはは必ず乗り越えてみせる……!」

 かなえも強く言葉をかけたが、その拳は小さく震えていた。

 誰もが、病室の奥で痛みに耐えているいろはを思い浮かべ、胸を痛めていた。

 不安は消えない。それでも今は、信じて待つしかなかった。

 しばし重苦しい沈黙が流れた後、レオが静かに頭を下げた。

「お母さん、お父さん、この度はわたくしのせいで娘さんに大変なご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ない!!」

 声は大きく、そして真剣そのものだった。

 陽子と剛は、突然の謝罪に驚き、目を見合わせた。

「鳳条さん……」

「あなたのせいでは……」

 陽子と剛が困惑気味に言葉を返す。

「いえ、元はといえば私があの焼肉店を選び、みんなを誘った張本人です。その責任は、私にもあります」

 レオは深々と頭を下げたまま続けた。

「ですが、私の信条において食の安全は何より重んじるべきものであるはずでした。それを見抜けなかったのは私の落ち度……このままでは、食を愛する者の名折れです」

 レオは顔を上げ、まっすぐに陽子と剛を見据えた。

「必ずや、この原因を突き止めます。そして、二度と同じような悲劇が起こらないようにしてみせます。それが食を生業にする者の、せめてもの償いだと思っています」

 レオの瞳は、まっすぐに信念の光を宿していた。

 誰よりも“食”に誇りを持つ男の、揺るぎない決意がそこにあった。

 すると、かなえが静かに一歩踏み出す。

「レオ様、私にも協力させてください。友人をこんな目に遭わせたあの店に、文句の一つも言わなければ気がすみません」

 かなえは拳を握り締め、強い意志を込めた眼差しをレオに向けた。

「よくぞ言った、かなえ氏! ならばついてくるがいい!」

 レオは頼もしげに笑みを浮かべ、頷いた。

 その様子を見ていた悟も、ゆっくりと立ち上がる。

「ボクたちも行こう」

 隣でまゆも力強く頷く。

「うん!」

 こうして、こむぎたち一行は、原因究明のため、再び焼肉店『炎舞』へ向かう決意を固めた。

 

           *

 

アニマルタウン 高級焼き肉店『炎舞』

 

 再び訪れた『炎舞』の店内は、前回とは打って変わり、重く張り詰めた空気に満ちていた。

 奥から姿を現した店主は、レオたちの顔を見るなり、見る見るうちに顔色を失った。

「も、申し訳ありません!!」

 店主は慌てて深々と頭を下げ、繰り返し謝罪の言葉を吐く。

 だが、レオは一歩も引かない。瞳には怒りの炎が宿っていた。

「店主よ……肉料理を商売としている以上、食品偽装だけに飽き足らず、レバ刺しが法律で禁止されていることを知らぬとは言わせんぞ!」

 低く、しかし確実に店の空気を震わせるような声が響く。

 その一言で、店内の空気は氷のように冷えきった。

「我々が食べた“生こんにゃく”と称されたそれ……あれを食べた中学生の少女が、今、腸管出血性大腸菌O-157に感染し、病院で苦しんでいるのだ!」

 レオの言葉は重く、突き刺さるように響いた。

 店主はがくがくと肩を震わせ、視線を泳がせながら必死に弁解する。

「そ、それは……その……」

 言葉にならない言い訳に終始し、下を向くしかなかった。

「いいか、忘れるな……食は決して命を脅かしてはならん! 食は、命を繋ぐためにあるのだ!」

 レオの静かな怒りが、店内にずしりと重く響く。

 その隣で、かなえも堪えきれない怒りに唇を噛みしめながら、拳を強く握っていた。

 店主は、震える声でなおも抗弁する。

「た、たしかに、ご指摘はごもっともです……ですが、私どもも、あれが本物のレバ刺しだとは知らなかったのです!」

「そんな見え透いた嘘が、この鳳条レオに通じると思っているのか! うぬぼれるなよ!!」

 レオは烈火のごとく叱責した。

「最近、食通と称する浅薄な連中が、捕獲を禁じられている食材を密漁し、喜んで食しているという話は嫌というほど耳にしている。そういう連中に、違法な食材を供する不届きな店もあるともな……しかし!!」

 レオは拳を握りしめ、声を張り上げた。

「まさか我々が、そんな馬鹿どもと一緒にされるとはな! この罪は極めて重いぞ!」

 その鋭い叱責に、店主は膝を震わせた。

 そして、かなえが静かに一歩前に出る。

「おい、あのレバ刺しはどこから仕入れたんだ? 答えろ」

 彼女の低い声には、これまで見せたことのない冷たさが滲んでいた。

 店主は、かなえの鋭い問いかけに、たじろぎながらも絞り出すように口を開いた。

「……実は、最近出入りしている仲買人がいまして……」

 声はかすれ、今にも消え入りそうだった。

「仲買人?」

 悟が眉をひそめる。

「はい……その者が、“特別ルート”で手に入れたということで……試しに一部の常連客向けに、内緒で仕入れたのです……まさか、ここまで大事になるとは……」

 店主は項垂れ、顔から血の気が引いていた。

「やはりそうか……」

 レオは冷静に頷きながら、腕を組む。

「どこのどいつだ? その仲買人ってやつは?」

 大福が身を乗り出す。

「……名乗ってはいません……ただ、アニマル港の裏手で、定期的に“珍味”を集めている連中がいると……」

 震える声で、店主はようやく口を割った。

「これは放っておけないわね」

 ユキが鋭い眼差しを向け、静かに言った。彼女の声は冷静だが、内に秘めた怒りが滲んでいる。

 レオはそんな仲間たちの様子を確かめるように見渡し、ゆっくりと頷く。

「……ならば、話は簡単だ」

 レオは立ち上がり、胸元でグローブをきつく握った。

「我が『HOJO FOODS』の総力を結集して、密漁者どもを一網打尽にしてくれるわ!」

 その言葉は静かだが、確かな決意に満ちていた。

 普段は奇食を愛し、どこか飄々とした印象さえあったレオが見せた、本物の経営者、そして食を守る者の顔。

 その真剣な表情に、誰もが思わず背筋を伸ばした。

 

           *

 

アニマルタウン アニマル港・裏手の倉庫群

 

 夜のアニマル港は、昼間の賑わいとは打って変わって静まり返っていた。

 波の音と、時折軋む古びた倉庫の扉が、不気味に辺りに響く。

 その奥、人気のない倉庫の一角に、数人の男たちが集まっていた。

 簡易なテーブルの上には、捕獲されたばかりのハマグリやナマコ、さらには見慣れぬ野鳥の羽がついた何かが無造作に積まれている。

「はは、こんなに獲れりゃ上等だ」

「しかも今回はツグミも混じってやがる……こりゃ一羽でも高く売れる」

 男たちは満足そうに笑い、網にかかった獲物を次々に袋詰めしていた。

 ツグミ――冬鳥として知られ、日本各地に渡来する野鳥だが、乱獲による生息数の減少から、現在は狩猟鳥獣から除外され、捕獲・販売が法律で禁じられているである。

 しかし密猟者の間では、その希少性ゆえに高値で取引される対象となっていた。

 だが――その倉庫の天井裏から、鋭い視線が彼らを見下ろしていた。

「やはり……密漁団はここだったか」

 夜目に強いかなえが、暗闇の中から小声で呟く。

 そのすぐ後ろには、レオをはじめ、悟、ユキ、まゆ、こむぎたちの姿があった。

「……レオさん、どうするんですか?」

 悟が耳打ちする。

「うむ。証拠は十分揃った。あとは……」

 レオはグローブをはめ直し、にやりと笑う。

「すべて摘発するのみだ!」

 その瞬間、レオは勢いよく天井裏から飛び降りた。

「そこまでだ、密漁者ども!」

 雷鳴のような声が倉庫内に響き渡った。

「な、なんだあ!?」

「だ、誰だてめぇら!?」

 密漁団が一斉に慌てて振り返る。

 しかし、すでに倉庫の出入口は、ユキと大福によって封鎖されていた。

「逃がさないわよ」

 ユキが鋭い声で言い放った。

「観念しやがれ!」

 大福が倉庫の隅から飛び出し、男たちを威圧する。

「くそっ!」

「ずらかるぞ!」

 密漁者たちは慌てて出口へ走ろうとするが、

「逃がすわけがない」

 レオが静かに歩み出た瞬間、倉庫の外から黒服の警備スタッフたちが次々と姿を現した。

 『HOJO FOODS』が誇る、国際的な警備チームだ。彼らは慣れた手つきで各所の逃げ道を封鎖する。

「自業自得。お前たちに勝ち目はない」

 かなえが冷静に言い放った。

 密漁者たちは完全に包囲され、もはや逃げ道はどこにもなかった――はずだった。

 だが、その瞬間だった。

「!?」

 こむぎが突然、背筋を走るような強烈な寒気を覚えた。

「……やれやれ、穏やかではありませんね」

 どこからともなく、低く冷ややかな声が空気を震わせるように響いた。

 次の瞬間、倉庫の奥の薄闇から、人ともつかぬ異様な姿をした男――ナギリが、ゆっくりと姿を現した。

「な、ナギリ……!?」

 悟が即座に身構える。

「お困りのようですね。でしたら、我々が力を貸してあげましょう……」

 ナギリは不敵に笑い、無言の圧を放ちながら、密漁者の一人に手を翳した。

 その声は囁くようでありながら、獲物を追い詰める蛇のように冷たかった。

「闇に潜みし怨念よ、形を成せ」

 その言葉を合図に、密漁者の身体が黒い瘴気に包まれた。

「う、うわああああああ!?」

 男は苦悶の叫びを上げながら、全身を闇に侵食されていく。

 次の瞬間、男の体がぐにゃりと歪む。背中からは無数の節足が這い出し、甲殻で覆われた胴が膨張していく。

 手足はムカデのような鱗状の外骨格に覆われ、尾には鋭く湾曲したアブの毒針が突き出し、先端からは微かに毒液が滴っていた。

 口元はアリを思わせる鋭い大顎へと変わり、背面にはアブ特有の膜翅が生え、不規則に羽音を鳴らしている。

 ムカデの多脚による這いずり、アブの毒針、アリの咬合力――三種の毒虫が混ざり合った異形の怪物が誕生した。

 唸りをあげて咆哮するその姿――

「ガオガオーン!!」

 禍々しい怨念を纏った“ムカブリガオガオーン”が、目の前に出現したのだった。

 その体からは毒霧が微かに立ち上り、背中の翅は異様な羽音を響かせている。

「な、なんだこの化け物は……!?」

 レオが恐怖に息を呑む。

「ナギリ……貴様……!」

 かなえの目が鋭く細められた。

 だが、その瞬間、かなえの視界が揺らぐ。

「っ!?」

 声が遠のき、周囲の音が濁って聞こえた。

 ――ナギリとフューザーガオガオーン。

 その放つ不気味な波動に、かなえの中に巣食う影が呼応するかのように蠢いた。

「おや? どうかしましたか? 苦しそうですよ」

 ナギリはあざ笑うように見下ろす。

「鷹目さん!」

 まゆがすぐさま駆け寄る。

「しっかりしなさい!」

 ユキが険しい声で叫ぶ。

「く……大丈夫だ。私はこんなことで屈したりはしない……!」

 かなえは苦しみをこらえ、ウイングホークパクトをぎゅっと握りしめた。

 胸の内にうごめく影を必死に押さえ込み、かろうじて踏みとどまる。

 その瞬間、仲間たちも一斉に構えを取った。

「行くぞ!」

 かなえの力強い一声に、こむぎ、まゆ、ユキ、悟、大福が頷く。

 光がはじけ、戦うべき意志が再びその身に宿った。

 

「ガオガオーン!!」

 咆哮とともに、ムカブリガオガオーンが凄まじい速度で距離を詰める。

 その無数の節足が地面を這うたびに、毒霧がじわりと周囲に広がった。

「プニプニバリア!」

 ワンダフルが展開した柔らかなバリアが、襲いかかる毒針をぎりぎりで弾き返す。

「ニャミーシールド!」

「リリアンネット!」

 ニャミーとリリアンも素早く反応し、巨大な肉球の盾と編み込まれた光のネットを展開する。

 しかし――

「重っ……!?」

「なんで、こんなに圧が……!」

 三人の表情が同時に歪む。

 ムカブリガオガオーンは、ムカデの脚で這うように素早く間合いを詰め、アブの毒針とアリの大顎による連続攻撃を放つ。

「まずいぞ……! 押されてやがる!」

 大福が焦りを隠せず叫ぶ。

「あの霧のせいで、バリアが少しずつ腐食してるんだ!」

 悟がコンコードフレーテを強く握りしめた。

「うそでしょ!?」

 ワンダフルが絶望に似た声を上げる。

 バリアの表面が黒ずみ、細かく崩れていく様子がはっきりと見て取れた。

「ガオガオーン!!」

 ムカブリガオガオーンは背中の翅を激しく振動させ、細かな毒霧を四方に撒き散らした。

「このままじゃ……っ!」

 防戦一方の状況に、ワンダフルたちは次第に追い詰められていく。

「ワンダフル! ニャミー! リリアン!」

 大福と悟は迷わず駆け出す。

「待ってて! すぐにサポートを!」

 コンコードフレーテを構え、二人が助太刀に向かおうとした、その時――

「あなた方のお相手は我々です」

 どこからともなくナギリの姿が二人の前に立ちはだかる。

「てめぇ……!」

 大福が身構える。

「そこをどくんだっ!」

 悟が刀剣状態のコンコードフレーテを構え、怒気を込めて叫ぶ。

 だが、ナギリは微動だにせず、不気味な微笑みを浮かべたまま二人の行く手を塞ぐ。

 その間にも、ムカブリガオガオーンは翅を鳴らし、毒霧を撒き散らしつつ暴れ回っていた。

「このままじゃ、持たない……!」

 ニャミーとリリアンの防御が崩れかけ、ワンダフルも苦しい表情を浮かべている。

 その瞬間――

「タロン・ストライク!」

 空中からシャスールが弓を引き絞り、矢を放った。

 鋭い矢が放たれ、ムカブリガオガオーンの毒針を一度は打ち落とす。

「大丈夫か、皆!」

 シャスールが空中から声を掛ける。

「が…ガオガオーン!!」

 しかし、ムカブリガオガオーンは怯むどころか、さらに激しく身をよじらせ、毒霧とともに突進してくる。

「くっ……効かないのか!」

 シャスールの表情が険しくなる。

 だが、ムカブリガオガオーンの猛攻は止まらない。毒霧と共に巨大な躰が迫り、もはやバリアは風前の灯火となっていた。

 絶体絶命のその瞬間――

「いかん!! かなえ氏やその仲間がピンチだ!」

 それまで静かに様子を伺っていたレオが、鋭く叫ぶ。

「こうなれば……奥の手を使うしかあるまい!」

 レオは懐から素早く、巻かれた鎖分銅を取り出した。

 それは、奇食探求の旅の途中、身を守るために独自に習得した護身術の武器だった。

「ガオガオーン!!」

 ムカブリガオガーンがさらに間合いを詰め、毒針を振り上げた。

「どりゃあああああああっ!」

 レオが飛び出した。

 旋回させた分銅が風を切り、的確にムカブリガオガオーンの脚に絡みつく。

「隙ありだ!」

 レオは鎖を強く引き絞った。

 分銅の重みと鎖の捻れが怪物の体勢を一気に崩し、その巨体が地響きを立てて壁際に倒れ込む。

「食を極めんとする者は、護身にも抜かりない……!」

 余裕すら感じさせるレオの瞳が、ギラリと光った。

「さすがです、レオ様!」

 シャスールはすぐさま間合いを詰めようとするが、その瞬間、再び内なる影が暴れ出した。

「くっ……!!」

 頭を押さえるかなえ。

 だが、今の彼女は、もう一人で苦しむ少女ではなかった。

「……私は、負けない……!」

 胸の奥で荒ぶる影を睨みつけるように、シャスールは強く言い聞かせる。

 すると、手にしたタロンボウガンが微かに軋んだ。

 次の瞬間、ボウガンの弓部分がまるで影に包まれたかのように黒く変化し、そのまま刃のついたトマホーク型の戦斧へと変形していく。

「えっ……シャスールの弓が……」

 リリアンが予想だにしなかった事態に目を丸くする。

「これは……私の新しい力なのか……!」

 シャスールはその手に確かに感じる新たな武器の感触を受け止める。

 黒と銀の混ざったタロンボウガン改め、【タロンハチェット】が、彼女の意思に応えるように重みを帯びて輝いていた。

「行くぞ……!」

 目に迷いはない。影を力へと昇華し、シャスールはフューザーガオガオーンに向かって突き進む。

「タロンスイング!」

 シャスールが新たに手にしたタロンハチェットを力強く振り抜いた。

 単純な素振りとはいえ、その一撃は影の力を纏ったことで驚異的な破壊力を持っていた。

 鋭く重い斬撃がムカブリガオガオーンの装甲のような鱗を裂き、大きく吹き飛ばす。

「ガオガオーン…!!」

 ムカブリガオガオーンが悲鳴にも似た叫びを上げ、毒霧を撒き散らしながら後退する。

「これは……ふふ、おもしろいですね」

 戦況を静かに見つめていたナギリが、口元を吊り上げ不敵に笑った。

「何を笑ってやがる!」

 大福が怒りをあらわにして吠える。

「はああああ!」

 悟も声を上げ、コンコードフレーテを一閃させながら、大福とともにナギリへと飛びかかる。

 二人の動きに迷いはなかった。斬撃が風を裂き、確かにナギリのいる座標を捉えていた。

 だが――

 その瞬間、ナギリの輪郭がわずかに揺らいだ。

 水面に映った像が崩れるように、確かにそこにいたはずの存在が、何かの法則を無視するかのようにゆらりと形を歪ませて、攻撃の軌道をすり抜ける。

「「っ……!?」」

 悟の目が驚愕に見開かれ、大福も動揺を隠せない。

 ナギリは無駄な動きを一切せず、ただ滑るようにその場から姿を消していた。

 空間が溶けたようにも、影が吸い込まれたようにも見えたが、どちらとも言い切れなかった。

「くそっ、逃げやがったか……!」

 大福が歯噛みし、唾を吐き捨てる。

「……違う、逃げたというより……すり抜けた、という方が近い……」

 悟の眉間に深い皺が寄る。

 理屈では割り切れない、得体の知れない“空虚”との接触未遂に、彼の警戒は強まっていた。

「よし、今のうちだ! 一気に畳みかけろ!」

 レオが鋭く叫ぶ。

 その声に反応するように、ワンダフルたちは即座に陣形を整えた。

「「「ヘルプ! キラリンアニマル! ベアー!」」」

 ワンダフルとニャミー、リリアンが叫ぶと同時に、キラリンベアーの力が三人の腕部に宿る。

 やがて、強化された両腕でムカブリガオガオーンの巨体を豪快に掴み上げた。

「「「せーの!!」」」

 三人が同時に気合を込め、さらにキラリンベアーの力を増幅させる。

「ガオ……!?」

 ムカブリガオガオーンは抵抗も虚しく、宙高く放り投げられる。

 その空中――

「プリキュア・シャスールディスコネクト!」

 シャスールが跳躍し、タロンハチェットを大きく振りかぶる。

 影の力とともに解放された渾身の一撃が、回転するタロンハチェットとなって敵の胴体を斜めに裂く。

「ガオガオーン…」

 ムカブリガオガオーンは断末魔の叫びを上げ、眩い光となって四散した。

 そして、素体となった密漁者の男は仲間とともにレオたちによって拘束された。

 

           ◇

 

アニマルタウン 犬飼家

 

 十日後――。

 夏の陽光が少しだけ和らぎ始めたある日、犬飼家のリビングには久々の賑わいが戻っていた。

「おかえり、いろは!」

 こむぎが人間の姿で飛びつかんばかりに迎える。

「ただいま、こむぎ!」

 いろはは笑顔で両手を広げ、しっかりとこむぎを受け止めた。

「ほんとに……無事でよかった……」

 まゆがホッとしたように胸を撫で下ろす。

「心配かけさせやがって……」

 大福はぶっきらぼうに言いながらも、少しだけ目元を赤くしていた。

「ふふ……これだけのメンバーが無事を願ってたんだもの、当然の結果よ」

 ユキもいつもの調子を取り戻している。

「うう……ご無事で何よりです……」

 メエメエやキラリンアニマルたちは感極まったように涙を浮かべ、仲間たちを見渡した。

 テーブルには、手作りの料理が所狭しと並べられていた。魚介や野菜を中心にした料理が中心で、奇をてらったものはなく、どれも温かみのあるものばかりだ。

「さぁ、今日はいろはの退院祝いと慰労会だ!」

 剛が手を叩く。

「いろはちゃん、いっぱい食べて元気つけてね」

 手伝いをしていた悟も満面の笑みを見せる。

「うん! それじゃ、いただきます!」

 いろはの元気な声に合わせて、みんなが一斉に手を合わせた。

 食卓には、色とりどりの海の幸や夏野菜を使った料理がずらりと並び、犬飼家のリビングは温かく賑やかな雰囲気に包まれていた。

「鳳条さんがね、いろはの快気祝いにって、わざわざ送ってくれたのよ」

 陽子が料理を盛りつけながらふと話す。

「へー、そうなんだ! あとでお礼の電話しなきゃ!」

 いろはは嬉しそうに目を輝かせ、鳳条レオへの感謝の気持ちを素直に口にした。

「この貝、すっごくおいしいよ!」

「わたしも、こんなお刺身は初めて!」

 こむぎとまゆが口いっぱいに幸せを頬張る。

「塩加減が絶妙ね」

 ユキはさりげなく微笑みつつ、静かに箸を進めていた。

「大福、このニンジンもおいしいよ」

 悟が嬉しそうに差し出したニンジンを見て、大福は少し照れたように鼻を鳴らす。

「そうだな……」

 短く返すものの、その表情はどこか満足げだった。

「何はともあれ、こうして美味しいご飯が食べられることが何よりも幸せですね」

 メエメエは両前足を揃えて微笑み、しみじみと呟く。

 そんな賑やかな中、かなえはいつものように皿に盛ったカレーを前にしていた。

 スプーンで一口、口に運ぶ。だが――

「……!?」

 舌に広がるはずのスパイスの香りや、肉や野菜の甘みが、まるで霧に覆われたように何も感じられない。

「どうかしたの?」

 すぐ隣で気づいたこむぎが、心配そうに身を寄せる。

「い、いや……なんでもない……」

 かなえは小さく首を振り、ごまかすように笑った。

 もう一度、そっとカレーを口に運ぶ。

(……あれ?)

 今度はしっかりと、いつも通りの馴染んだ味が舌に広がる。香りも、コクも、辛さも、何一つ欠けていない。

(なんだ……? さっき一瞬だけ……味がしなかった……?)

 胸の内に小さな違和感を抱えつつ、しかし、その理由を問うにはまだ場の空気があまりに穏やかだった。

 かなえは誰にも悟られぬよう、そっと笑顔を作り直した。

 

 

 

 

 

 




登場ガオガオーン
ムカブリガオガオーン
声:高橋伸也
身長:650cm
体重:不明(推定4〜5トン)
・特色/力
ムカデ・アブ・アリの三種の毒虫の特徴を融合させたフューザーガオガオーン。
アニマル港裏手でナギリによって密漁者の怨念から生み出された。
ムカデの多脚による高機動力、アブの毒針と毒霧、アリの強力な咬合力による連撃が特徴。
強靭な肉体としぶとい生命力を持ち、防御バリアすら腐食させる毒を自在に操る。
・特徴
全身は毒素に侵された甲殻で覆われ、濃緑と黒紫が入り混じる不気味な外殻を持つ。
背中にはアブの巨大な膜翅が生え、不規則な羽音とともに細かい毒霧を散布する。
ムカデの無数の脚によって地を這いずりながら俊敏に動く。
腹部にはアリに似た鋭利な大顎、尾部にはアブの毒針を備え、近接攻撃と飛び道具を兼ねる。
頭部は三種の特徴が混じった異形で、赤黒い複眼が不気味に光る。
・能力
毒霧展翅(ポイズンミストスウォーム)
背中の翅を震わせて広範囲に毒霧を散布する。霧は触れたバリアや防具を腐食させ、次第に侵食する。
穿毒連牙(ポイズンチェインファング)
アリの大顎での連続噛みつき攻撃。一定時間、敵の動きを鈍化させる毒を注入する。
尾針毒撃(テイルスティング)
アブ由来の強毒針による突き攻撃。刺された部分から毒が急速に全身へ広がる。
・行動
バリアや物理防御を無力化する毒攻撃を得意とし、防御力頼りの敵を追い詰める。
視界が狭い空間や密林、倉庫のような場所での戦闘に適応する。
毒霧を撒き散らして敵を追い詰める一方、ムカデの多脚によってヒット・アンド・アウェイを繰り返す。
ナギリの命令を忠実に遂行し、プリキュアたちを毒によって追い詰めた。
・戦闘記録
ナギリによって密漁者の怨念を素体に誕生。アニマル港の倉庫群にてプリキュアたちと交戦。
毒霧と多段攻撃でワンダフルたちのバリアを腐食・突破し、苦戦させる。
シャスールが新たに覚醒させた「タロンハチェット」の一撃と、レオの鎖分銅による援護を受け、最後はキラリンベアーの力を借りたプリキュアたちの連携攻撃と、シャスールの新必殺技「プリキュア・シャスールディスコネクト」によって撃破・浄化された。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。