Public Enemy ~黒鳥と三つの文字《ラス・トレス・レトラス》の先生 作:山翁
俺の名前はリッチー・スタンスフィールド。
メキシコのハリスコで捜査中にとあるカルテルとの銃撃戦に巻き込まれた挙句に、今時ジョークとしか思えないメキシカンハットを着けた野郎に眉間を打ち抜かれ神の膝下に召されようとした矢先。
身に覚えのない知らない電車の中で、椅子に座る青髪の血をダラダラ流してる女に変な話をされて、見知らぬ都市に放り出された結果。
俺はジャパニーズアニメーションの世界に迷い込んだ。
そして。
目が覚めた俺の目の前には、ジャパニーズアニメーションの中に居る様な頭に輪っかを付けたエルフ耳の女性がココ……俺が迷い込んだ幾多の学園が集合して出来た都市ギヴォトスの先生をしろと言ってきたのだ。
いや待ってくれ。
先生?
俺はDEATA*3の教官に成った覚えはない。
さらに教官資格も無い。
そもそも一般教員の資格さえ持ってない、この40代の中年男性に女子生徒を導けというのか?
いますぐFBI*4が飛んできて未成年者に対するグルーミングで逮捕しそうな案件だ。
「それで。このアニメの様な都市で先生をするのは分かったが、この都市で俺は何をすれば良いんだ?」
「……それは後でゆっくり説明することにして」
件のエルフ女性……七神リンの話を聞いてると乗っていたエレベーターが目的の階に着いた。
エレベーター内の表を見るとレセプションルームと書かれている。
何だ?
日が高いが先ずは歓迎会でもしてくれるのか。
出来ればこんな馬鹿げた現実を忘れられる強い飲み物でも有れば良いんだが……。
そんな風に思ってリンと共に会場に入るとキャイキャイ大騒ぎしているティーンエージャーの女子学生が1ダース以上いた。
ジーザス。
なんてこった。
どの女子学生も頭に輪っか、ソレに翼や尻尾を付けている。
本当にメキシカンハットを着た野郎に殺されたあと、俺はジャパニーズアニメーションの世界に送り込まれたのか?
俺は敬虔なキリスト教徒じゃ無かったが、ガキの頃はちゃんと日曜日の礼拝は行ってたんだぞ?
なんで死んだ後にこんな世界に送り込まれないとイケ無いんだ?
生前、俺は何かしましたか?
神様。
俺が表面上は素知らぬ顔を取り繕ってる間に、隣に居るリンが3人の女子学生を相手に何やら会話している。
その間に会場を見回すが会場の雰囲気は歓迎会っていう空気じゃないな。
どちらかというと、職場で感じた雰囲気が漂ってやがる。
女子学生は未だにキャイキャイ騒いでるが、その雰囲気も楽し気というよりも不安から来るモノだ。
そう例えば、情報と状況が錯綜して意思決定者が居ない時の雰囲気。
嫌な雰囲気だ。
「こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よくわかっています」
リンが青髪、黒髪、ピンク髪、白髪の4人の女子学生を相手に強気に出ている。
俺は隣で傍観者として眺めているが話自体は俺に関係ない。
だって俺、
ただ、捜査官の習性か話の内容には耳を立てた。
あーなになに。
このギヴォトスでいま起こってる事は。
いや風力発電所シャットダウンとかインフラの崩壊だろ。
停学中の生徒が脱走って……なんだよ。
戦車やチョッパー*5や不法武器の流通が2000%以上も増えた?
メキシコやコロンビアやブラジルよりヤバくないか?
カルテルだって自作装甲車は持ってたが戦車は持って無かったぞ。
てか州兵かFBIやATF*6の仕事だろ。
でも武器の不法流通に関してはATFには
4人が現在ギヴォトスで起きたことをリンに説明し終えた後に青髪の女子学生が強硬に連邦生徒会長を出せと迫っていた。
こんな状況じゃ責任者の呼び出しを迫るのも無理ないか。
俺だってニューヨークがこうなったら市長を出せと言うかもしれない。
「連邦生徒会長は行方不明になりました」
リンはサラリと何でも無い様に自分の上長が行方不明であり、それを数週間も各自治体に黙っていた事を認めた。
そして現行政府が全くの無能を曝け出している事も。
おいおい、連邦政府の長が数週間も行方不明で行政麻痺してるのをココで認めるのか?
案の定、4人の女子学生は絶句していた。
そりゃそうだ。
俺だって行政麻痺の理由を問い詰める為に市長を出せって言い続けて帰ってきた答えが「数週間前から行方不明です」言われたら絶句するよなぁ。
にしても会長が行方不明でこんなテロ&行政麻痺だらけになるのか?
あー?
特定個人しかアクセスしか出来ない行政制御権ってなんだよ。
行政を舐めとんのか。
特定個人しか扱えなく組織がその人物に依存して行政が回ら無くなる事など言語道断だよ。
大丈夫なの?この都市。
それでその行政府の本丸をサンクトゥムタワーって言うんだ?
大仰な名前の建物だ。
DEAの最初の本部の下なんてストリップクラブだって言うのに。
贅沢だよなぁ。
リンと青髪、黒髪、ピンク髪、白髪の4人の女子学生たちとの会話は更にヒートアップし始めた。
リンはこの状況を解決するのか興味深く見守っていた俺に対して、リンはさり気なく俺に目線を向けてきた。
「この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」
「は?俺が?」
思わず声が漏れた。
「この方が?」
「まてまて。この俺が?」
同じく黒髪ロングの女の子からツッコミが入る。
それに対してリンは落ち着きを払った様子で話を続けた。
「この先生は連邦生徒会長が指名した特別な先生です」
「まてまて。俺の専門は麻薬捜査で有ってだな」
リンの言葉を遮り話に加わる。
このまま喋らせるとトンデモない話に成りそうだ。
「取り敢えずだ。俺は何の為に呼ばれたか説明してくれ」
「分かりました」
そうリンは言うと俺が行方不明中の連邦生徒会長は新しく創設した超法規的機関『連邦捜査部シャーレ』の顧問として就任して欲しいと言ってきた。
しかもソイツは戦時の合衆国大統領以上の強権を持たされてると来た。
学生及び備品の徴用権、各自治体の独立を無視した致命的武力の行使権に……ハッ。
捜査権もきたか。
思わず右手で目頭を揉む。
なんでこんな大権をただ一人の彼女ら曰く『外から来た大人』に与えたのやら。
しかしなぁ……。
チラリとリンや四人の女子学生そしてレセプションホールに居る大勢の女子学生の顔を見る。
人生で一回しかない青春を謳歌し、友達とバカ騒ぎし、勉学に苦しみ、小遣いの額で苦悶する。
そういう合衆国でもメキシコでも見かけた普通の学生たち同じだった。
「分かった、顧問に成ろう」
リンに顔を向けて宣言した。
「ありがとうございます。先生」
感謝なのかリンはぎこちない微笑みを浮かべた後に携帯端末を操作した。
数秒後に漢字が書かれたチップスを食べているピンク髪の女子学生の立体映像が現れた。
驚いた。
米軍より技術が進んでるんじゃないのか?
俺の心情を知ってか知らずかリンはその立体映像に話しかける。
「モモカ。直ぐにヘリを用意してシャーレ本部へ」
「そこ?外郭地区はいま戦闘状態だけど?」
「えっ?」
「なんでも地域の不良が反連邦生徒会を掲げて暴れ回ってるんみたいなの。戦車まで持ち出してさー」
「なんか知らないけど、そのシャーレの建物目指してるみたいだよ、じゃお昼ご飯が来たから。じゃねー」
そのまま袋からチップスを一枚手に取りムシャムシャ食べながら答えたモモカの立体映像が消えた。
「……」
これにはリンが絶句していた。
俺も絶句していた。
やっぱ行政麻痺か腐敗じゃねぇの?これ。
仕方ない……。
「リン首席行政官、連邦生徒会が保有している実働部隊はあるか?」
「ヴァルキューレ警察学校という組織は有りますが、現在は頻発する暴動に手を取られて……」
「じゃ、ココは連邦生徒会には治安維持機関の元締めは居ないのか?」
「居ますが、どうしましたか?」
「呼んでくれ」
リンは数秒ほど逡巡したが再び携帯端末を手に取り何処かに連絡した。
数分後に白い制服を着た、これまたピンク髪の女子学生がこのレセプションルームにやって来た。
「はい。防衛室長の不知火カヤ。ただいま参りました」
顔に柔らかい笑みを浮かべた物腰の柔らかそうな少女がリンに挨拶をする。
そうして、彼女はこのルームの中で一人の異物である俺へ目線を合わせてきた。
それに対して彼女へ向かい話しかける。
「初めまして、俺はリッチー・スタンスフィールド」
「初めまして……?」
カヤは顔を傾け初対面の俺に疑問の表情を顔に浮かべている。
「ああ、俺は外から来た大人でココ、ギヴォトスで先生をすることに成ったんだ、宜しく」
そう言いながら彼女に手を差し出す。
彼女は得心した顔で握り返した来た。
「挨拶もそこそこだが、一つ頼みが有る」
「何でしょうか。スタンスフィールド先生」
「うん、いま連邦捜査部シャーレの建物付近で反連邦を掲げた暴動が起きている。連邦行政機能を回復させる為にはシャーレに行かねばならないのだが、防衛室長の方で鎮圧の為の実働部隊を手当てできないか?」
「それは……」
今まで柔らかい笑顔を浮かべていたカヤの顔が少し曇る。
「現在、防衛室が管理するヴァルキューレ警察学校の人員は暴動等の鎮圧に出払っており、今すぐに部隊を出動させることは困難です」
「そちらの件は先程にリン首席行政官から聞いた。大部隊じゃなくてそのヴァルキューレ警察学校のSWATを1個分隊でも貸してくれれば」
「SWATですか……」
カヤが独り言のように呟いた。
そのまま右手で口を覆い、考えにふける。
「手は有りますが……」
「なんだ?何が問題が?」
「ええ、先生はSRT特殊学園という名前は知っていますか?」
「SRT?DEAのSRTには知り合いも居るがココじゃ違うんだろう?」
「ええ、ギヴォトスのSRT特殊学園は治安維持機関の中でも特殊部隊を育成する為に創設された学園です」
「カヤ……SRT特殊学園は……」
「まあまあ、リン首席行政官。そのSRT特殊学園なのですが幾つか問題が有るんですが……」
そう言ってカヤは右手を頬にあてる。
「勿体ぶらないでくれないか、カヤ防衛室長」
「最大の問題はSRT特殊学園の管轄は私ではなく連邦生徒会長直属なんです」
「それは……君には権限が無いという事だね?」
「端的に言えばそうですね」
なるほど、大統領権限で動かせる
「リン首席行政官」
「はい?先生?」
「俺のシャーレ就任は法的には既に済んでいるか?」
「ええ……。本来なら連邦生徒会長の承認が要りますが、ご存知の通り会長は行方不明です。いま連邦生徒会は私が権限の一部を代行執行しています。よって私が先ほど先生のシャーレ就任を認めましたので、法的には既に連邦捜査部シャーレの顧問ですが……なにか?」
「宜しい!」
俺は大声を上げた。
レセプションルームに居た全ての女子学生が何事かと思い話を止めて俺を見る。
俺は気にせずにそのままカヤに向けてニッコリほほ笑んだ。
カヤもそのまま柔らかな微笑みを返してくる。
「カヤ防衛室長、SRT特殊学園の人員をシャーレ権限で借り受ける。最適な人員・武装の選定を頼む」
「分かりました。先生」
此処に居る女子学生に聞こえるような声で実質的な徴兵を行う事を宣言した。
それに対してカヤは携帯端末で連絡を取り始めた。
「先生」
「どうしたリン首席行政官」
「彼女らも同行させて頂けませんか、おそらく手が足らないでしょう?」
そう言ってリンは青髪、黒髪、ピンク髪、白髪の4人の女子学生を指さす。
「いきなり何を言うんですか!」
青髪の女子学生が大声を張り上げる。
「確かに人手は欲しいが」
「先生。彼女らはこのギヴォトスでも三大校と称される巨大学園に所属しかつ、治安維持を任せれている人たちです。シャーレ奪還には役に立ちますよ。このユウカさんを除いてですが」
「ちょっと!私も戦えるわよ!」
「本当に役に立つのか?銃撃戦だぞ?」
「先生?何言ってるんですか。ギヴォトスじゃ銃撃戦なんて日常茶飯事ですよ」
「はぁ?」
「だってギヴォトスの学生は撃たれても少し怪我する程度ですし、みんな銃を持ち歩いてるんですよ?」
ジーザス。
神様。
なんて世界に俺を送り込んだのですか。
「分かった、分かった。念押しで聞くが大丈夫なんだな?」
「はい、その点については大丈夫かと」
今度は黒髪の女子学生が答える。
「それなら、今更だが命を預けるんだ装備を整えながら自己紹介といこうか。俺の名前はリッチー・スタンスフィールド。連邦捜査部シャーレの顧問だ、宜しくな」
「私は早瀬ハルカ、ミレニアムサイエンススクール2年生です先生」
「トリニティ総合学園の3年生、正義実現委員会所属の羽川ハスミです」
「トリニティ総合学園2年生の守月スズミ」
「ゲヘナ学園1年生、風紀委員会の火宮チナツです」
「オーケーありがとう。ハルカ、ハスミ、スズミ、チナツだな。即席のチームだが上手くやろう」
脳内で1人ずつの名前を覚えるため反芻しながらカヤに話を振る。
「そうだ、カヤ防衛室長」
「なんでしょうか?部隊ならあと数分でETAしますが」
「そりゃ素晴らしい。すまないが、この建物にAR15と防弾チョッキにヘルメットは有るかな?」
「有りますが……何にお使いで?」
「なに未成年の後ろで踏ん反り返るのはペイの中には入って無んでね、貸してくれ」
「「先生!?」」
一斉に皆が声を荒げた。
なんだ、なんだ?
おかしいか?
「先生はその外の大人でしょ!?撃たれた死ぬわよ!」
ユウカが目の間まで歩いて来て捲し立てる。
「だから?エアコンが聞いてる部屋でコーヒー片手に無線機で指示を飛ばせと?ごめん被る、外でやってたみたいに現場で指示を出す方が性に合ってる」
そう言いながらカヤから武器庫の場所を聞き出しレセプションルームから出て歩いていく。
リン、カヤ達6人が後ろを付いてくる。
武器庫に着くとカヤに無言で促す。
諦め顔でカヤは武器庫の扉を開けた。
流石は色々と整ってるな。
武器ラックからAR15とサイドアーム用のM1911を取る。
ベージュのジャケットを脱ぎ防弾ベストを着ける。
プレートをベストに入れ位置を調整し、続けてショルダーホルスターに腕を通し、右脇のホルスターにM1911を突っ込む。
弾薬ラックから5.56 mmと.45ACP弾のマガジンを取り出し武器庫に備え付けてある机に並べ、その場に有った弾帯ベルトに入れた後、ベルトを腰に装着した。
最後にでかでかと
最後に脱いだジャケットを羽織り、AR15を構え彼女らに向かい直す。
「さて、淑女の皆さま。
先生の名前の元ネタは創成時のDEA捜査官リッチー・ロバーツ氏から苗字は架空のDEA捜査官ノーマン・スタンスフィールド氏から取った。
リッチー・ロバーツ氏の活躍は映画「アメリカン・ギャングスター」ノーマン・スタンスフィールド氏は映画「レオン」を観よう!
主人公の顔は映画「レオン」のゲイリー・オールドマンを想像しよう!