知ってる名前の少年に転生したけど、俺には正拳突きしかできない   作:幻覚症状

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男の戦い(後)

「モード反転。裏コード、ザ・ビースト!」

 

 ガキン、と回路の切り替わる音。

 

 エントリープラグの中が暗くなり、十字の接合部から赤い光が漏れだす。

 

 バキン! 肩部パーツが粉砕し弾け飛び、肉体の内部に格納されていた2本の制御棒が飛び出す。

 

「ッ……なによ……全然ッ、大したことないじゃ、ない」

 

 エントリープラグの回路が完全に切り替わり、赤と黒のモノクロで外部の様子が確認できるようになる。アスカは、まっすぐに使徒を見据えた。

 

「グッ……!」

 

 2号機の背中から、14本の制御棒がさらに飛び出す。その痛みを、アスカは噛み殺す。

 

『エヴァにこんな機能が?』

『リミッター、外されていきます。全て規格外です!』

 

 自分たちの知らない機能に、指揮所のオペレーターが困惑しながら報告を続ける。

 

『プラグ内モニター不能! ですが』

『おそらくプラグ深度はマイナス値。汚染区域突入もいとわないということ?』

『ダメです! 危険すぎます!』

『アスカ!』

 

 ミサトの叫びに、アスカは応じない。

 

「ッは……ァ! いくわよ……2号機……ッ!」

 

 2号機の顎部拘束が弾け飛び、咆哮を上げる。

 

「あたしについてきなさいッ!」

 

 身をかがめた2号機が、バネのように飛び出す。アンビリカルケーブルが勢いについていけず千切れ飛び、内蔵電源に切り替わった。

 

「ハァァァァァ!」

 

 獣のように低い体勢で一瞬にして距離を縮めた2号機。

 

「だぁぁぁぁリャアアアア!」

 

 爪のように振るった手は、使徒の多層ATフィールドを一撃で何枚も貫く。

 

「アアア! セアアアアッ!」

 

 繰り返す打撃に、ATフィールドが割れていく。

 

『2号機、使徒に肉薄していきます!』

『すごい……ATフィールドをあんなに簡単に』

『目標形状変化!』

『ッ、アスカ、ダメ!』

 

 使徒が、帯の中でもひときわ長かった2対を巻き取り、脇に、構える。

 

 

 構え。

 

 

「ッは!?」

 

 アスカは幻視する。

 

 

 ――正拳突きの構えを。

 

 

 だが、2号機の体勢からそれは避けようがなく。

 

『アスカ!』

「なッ」

 

 横から2号機に飛びかかった零号機が――

 

『キャアアアアアアアア!』

『レイッ……!』

 

 2号機を使徒の攻撃の進路から突き飛ばし――使徒が一瞬で伸ばした帯に両腕と両脚を貫かれ、切り飛ばされた。零号機の真っ赤な体液が、勢いよく切断部から噴出する。

 

『零号機、四肢損失!』

『シンクログラフ不安定!』

『神経接続を最低限までカットして! プラグは残置! エヴァー内部にいた方がまだ安全よ』

「こ、の……ォ!」

 

 ギリ、とアスカが歯ぎしりし、2号機の魚類のような歯が数本折れて飛んだ。

 

「そいつをやると分かっていりゃアアアァアア!」

 

 ダダッ、と。

 

 2号機は獣のように体全体を傾けて大地を蹴ってターンして、再び第11の使徒のATフィールドを穿ち始める。

 

 使徒は――放ち伸び切った2対の帯を、シュルルッと高速で巻き取り。

 

 構え。

 

「そんな!」

 

 同時に放つ。

 

「イヤんなるほど見た正拳突きより甘い突きッ! 当たるわけがなァァァイ!」

 

 それを、2号機は体をひねってかわした。わずかにかすった帯が装甲を貫くが、かすり傷をアスカは意に介さない。

 

「そんでもって、こいつがアッ!」

 

 そして、ついに。

 

「最後の、一枚ィィィィ!」

 

 ATフィールドごとコアをヤる。そう決めて、アスカは振りかぶり。

 

「ドォォリャァァァァァァア!」

 

 本能の拳を、突き出す。

 

 ATフィールドが砕け、そのまま使徒のコアに2号機の爪が――

 

「!?」

 

 ――通ら、ない。

 

 まるで服の前を閉めるかのように、あっさりと。使徒の肉体がコアを覆って防御した。2号機の爪は、そこで止まった。

 

「ッハ!?」

 

 そして、漂うだけだった使徒から伸びる他の短い帯が、急速に動いて2号機の四肢を絡め取り、身動きを封じる。

 

「なっ!? ぐっ、クッ……このッ!」

 

 使徒の目が光る。

 

『目標に高エネルギー反応!』

『アスカ避けて!』

「ガ、アアアアアア!」

 

 ゴキゴキゴキッ!

 

 2号機があらゆる関節を自ら外して使徒の拘束から逃れ、残った脚一本で飛びのこうとして――

 

 光線が、爆発した。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 閃光、爆発、爆風。

 

 モニターがホワイトアウトし、発令所から状況が確認できなくなる。

 

「あ……あぁ……」

「2号機は!?」

 

 ミサトは、祈りながらモニターを食い入るように見つめた。やがて、爆煙が晴れ――

 

「そんな……」

「アスカ……!」

 

 装甲どころか質量のほとんどを焼失し、黒焦げた何かが使徒の前に立っていた。

 

「ッ……パイロットの状態は!」

「エントリープラグは健在。しかし内部は依然モニター不能」

「内蔵電源焼失。2号機、活動停止しています」

 

 2号機だったものは、動かない。

 

「エヴァの獣化第2形態、ヒトを捨て、闘争に特化させても勝てない……これが私たちの限界なのね」

 

 リツコが呆然と呟く。その時。

 

「……?」

 

 ミサトは、違和感を覚えた。

 

「目標が……何かしようとしてる?」

 

 使徒はカタカタ……と顔を震わせ。

 

「ッ! アスカッ!」

 

 顔からいびつな器官を生やすと――2号機を飲み込んだ。

 

 もぐ、もぐと咀嚼するかのように動いて――頭部の残骸を、吐き捨てる。

 

「ヒッ……」

「まさか! 使徒がエヴァを捕食するなんて……ありえないわ!」

「変です……目標の識別信号が、2号機に切り替わります」

「ッ! やられた……!」

 

 形を変えていく、使徒。まるでヒトの女性のような体に変化していくそれを見て、ミサトは悔恨の叫びをあげる。

 

「これでヤツがドグマに侵入しても自爆しない。リリスに苦もなくたどりつけるわ……!」

「……!」

 

 セントラルドグマの最深部に槍で封印された第2の使徒、リリス。

 

 これと使徒が接触すれば、セカンドインパクトに次ぐサードインパクトを引き起こし人は滅ぶと言われている。

 

 それだけは絶対に阻止しなければいけない。だから使徒の侵入を許した場合は、本部ごと自爆するようになっていた。

 

 だが――2号機を取り込んだ使徒は、そのチェックをすり抜けてしまう。

 

「目標、再び高エネルギー反応!」

 

 使徒が、首を回して目に光を溜め、光線を放つ。

 

「本部地上施設、消滅!」

「第3基部に直撃!」

「最終装甲板融解!」

「まずいッ! メインシャフトが丸見えだわ!」

 

 セントラルドグマを貫き、各施設を接続するメインシャフトに、使徒が近づいていく。

 

 その終点は、リリスの鎮座するターミナルドグマ。

 

「初号機はまだなの!?」

 

 リツコが様子をモニターしているはずのマヤに訊ねる。

 

 ……振り返ったマヤの目に、光はなかった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 第3ケージ。

 

 そこでは碇ゲンドウの指揮のもと、初号機の起動作業が行われていた。

 

『プラグ位置、固定不能。ダミーシステム、接続不可能』

『だめです、リセットが利きません』

 

 唸りをあげ、拘束の中で身じろぎする初号機。

 

「続けろ。もう一度308からやり直せ」

 

 それを見下ろしながら、ゲンドウは指示を飛ばす。

 

『リスト308、チェック開始』

「なぜだ……」

 

 人知れず呟く。

 

「なぜ私を拒絶する……ユイ!」

「え?」

「は?」

 

 やけに響いた間抜けな声に、ゲンドウは思わず似たような調子で返してしまう。

 

 そこには。第3ケージの初号機の顔の前には。

 

 ボロボロになった病衣を着た、碇シンジがいた。

 

「……なぜここにいる」

 

 思わずそんな間抜けなことを聞くと、シンジはハッとして。

 

「押忍! すいません!」

 

 大きな声で言った。

 

「迷ってました! ……初号機、いつでも行けます!」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 いやぁ……ひどい目にあった。

 

 病室で正拳突きの鍛錬をしていたら、急に地震がきて。オッ、大きいなあ? とか思ってたらそれが続くもんだから、さすがに気づいた。

 

 使徒だコレ。

 

 なのに誰も呼びに来ないし、手元に端末はない。で、さらに揺れる病室。これは緊急事態で僕に構っている暇がないのだと理解して、自力で本部に向かおうとしたら。

 

 なんと、振動のせいでドアが故障して開かなかった。

 

 ので、それは正拳突きでぶち抜いて外に出たんだけど……そこからが大変だった。

 

 いつもの病院じゃなかった。

 

 なんか厳重に隔離されているなぁ……と思ったのだが、予想以上だった。案内も何も無い施設の中をウロウロとさまよう。上がったり下がったり……。

 

 そしたら、急に頭上の施設が消し飛んだ。爆風にふっ飛ばされて、気づいたらジオフロントの中。煙が晴れれば……シスターのようなカブリモノをして、女性のような体をした使徒の姿が見える。

 

 ――こいつは、ヤバい。

 

 見ただけでこれまでの使徒とは桁違いの存在だということが分かる。

 

 ……幸いにもジオフロントに出たことでようやく現在地が分かり、第3ケージに向かうことができた。

 

 で、向かったら父さんがなんか母さんの名前を出して祈っていた。

 

 なかなか……意外な場面だったな。まあ、あんなに母さんに激重感情を持っているなら、内心いつも話しかけたりしてるのかな……とか思いながら。

 

「モガモガゲホッゴボッゲッゲッ……!」

 

 病衣のままエントリープラグに乗り込み、肺にLCLを満たす。痛ぁい……!

 

『コンタクト開始』

『シンクロ正常』

『初号機起動完了!』

『シンジ』

 

 父さんがモニター越しに状況を伝えてくる。

 

『目標はターミナルドグマ第7層を降下中だ』

「押忍!」

『………』

「………」

 

 ………。

 

 ……え? 何? そこってどこ? 分かんないけど!? 覚えてないよ見取り図なんて!?

 

「あの、それってどこですか?」

『発令所のある場所だ』

 

 オオイ! それってミサトさんたちが危ないんじゃないの!?

 

「方向! どっちですか!」

『ああ、向こう……』

 

 ヨシ! あっちだな!

 

「フゥ……! ――破ァッ!」

 

 ゴシャ! 隔壁を破壊する。

 

「破ッ! ……破ッ! 破ッ!」

 

 ゴシャ! ゴガッ! ドガッ!

 

 隔壁を正拳突きで貫き、瓦礫をかき分け、またぎ、最短距離を進む。

 

 果たして。

 

「――いたッ!」

 

 使徒は、いた。

 

 発令所で、今まさにミサトさんたちに向かって目を光らせ――

 

『初号機、シンジくん!?』

「ッ」

 

 構え

 

 られ、ない。

 

 瓦礫をまたいだ姿勢では、腰を落とせない。そんな空間はない。だから。

 

「うっ……ウオオオッ!」

 

 ATフィールドを全開にして、使徒に肩からぶつかる。とにかく、射線をずらすために……!

 

 ――閃光。

 

「ぎゃアッ……アアアアァァア!」

 

 使徒ともつれこんで、その目から放たれた光線は――初号機の左腕を吹き飛ばした。噴出し、指令所内に撒き散らされる体液。プラグ内部に響く警報音。

 

 痛い。痛い痛い痛い。――でも、今は!

 

「ッ、だああああァ……!」

 

 押す、押しのける。密着した状態で、とにかく、使徒を……外に!

 

 空間がない。隙間がない。僕が正拳突きできない代わりに、使徒も自由に動けないようだった。2体で隔壁を突き破りながら、進む……その先は、リフト!

 

「このォォ……!」

 

 全力で、リフトに使徒を体ごと押し付け、る!

 

「ミサトさん!」

『! 固定ロック、全部外して!』

 

 射出を待つ時間が惜しい。緊急用のボタン! 蹴って強制的に発進!

 

「ううう……!」

 

 急加速、急発進。だけど、今回初号機は固定されていない。だから――

 

「うわッ!」

 

 ジオフロントに到着した瞬間、そのまま宙に投げ出された。

 

 あまりの勢いに、使徒を手放してしまい、バラバラになって飛ばされ――

 

「はッ!?」

 

 使徒が、空中で2対の帯を丸めて構える。

 

 僕は――深く腰を落とそうと

 

 

 ――足場が、ない!?

 

 

「!? がっ……」

 

 使徒が突き出した帯に。

 

 初号機の右腕も、肩から切断され吹き飛ばされた。

 

「ギャアアアアアアア……!」

『シンジくん!』

 

 痛い。死ぬほど痛い。でも駄目だ、立たないと。僕の腕が千切れたわけじゃない。立て、早く……! そして、構えを。

 

「はぁっ……はっ……ぐ、うう……」

 

 もがいて、立ち上がり、そして――使徒と対峙して、僕は気づいた。

 

「あ……」

 

 腕が、ない。

 

 初号機に、腕が、ひとつもない。

 

 

 ――拳がなければ、正拳突きはできない。

 

 

「あ……ぐ……」

 

 動揺、だった。

 

 これまでの人生で、正拳突きができなくなることなんて一度もなかった。けれど、今……初号機は、正拳突きが、できない。

 

 どうしたらいいのか、分からない。

 

「はっ……!?」

 

 さまよわせた視線が、何かをとらえる。大地に無造作に転がっているモノ……人型の胴体……零号機、綾波さん!?

 

「そんな……。ッ!? 2号機は!?」

 

 零号機が出撃していたなら、2号機だって出撃していたはず。

 

「ミサトさん! アスカは!?」

『アスカは……2号機は』

 

 嫌な、予感がする。

 

 ――モニターが。

 

 使徒を、2号機として表示している。

 

 

『使徒に……捕食されたわ』

 

 

 アスカ……が。

 

『目標に高エネルギー反応!』

『シンジくんッ!』

「ッ」

 

 僕は。

 

 使徒の光線に、直撃した。

 

 爆発、轟音。

 

『初号機、直撃!』

『装甲焼失!』

『グラフ安定しません!』

「っ……かぁ……っ……」

 

 ATフィールドを全開にし。

 

 僕の腕はある、と自分に言い聞かせて。

 

 深く腰を落とし、構えた。そのおかげか。

 

 初号機は使徒の光線に耐え……吹き飛ばされ……地面に倒れていた。

 

 正拳突きの構えは不動にして不壊。しかし……不完全な構えは、脆かった。

 

 

 ――いや?

 

 

『目標、初号機に接近!』

『トドメを刺すつもり!?』

 

 心を、感じる。

 

 僕に似た形……いや。

 

 僕に、似ようとした初号機の心を。

 

 正拳突きの、心の構えを。

 

「そうか」

 

 初号機。お前も……心の中でずっと、正拳突きをしていたんだな。

 

「ふうっ……く……」

 

 両腕のない初号機で身を起こし。僕は、構える。

 

『っ! シンクロ率急上昇!』

『これまでにない数値です』

『あの状態で何をするつもり?』

 

 人の肉体は。

 

 そもそも、常に一定ではない。切り傷、擦り傷、筋疲労……爪の長さ、毛の長さ、骨の長さ。

 

 それらを含めて、正拳突きは構える。ひとつとして同じ構えはない。

 

「フゥ……!」

 

 爪が欠けたぐらい。指が折れたぐらい。

 

 正拳突きの所作の、なんの障害でもない。

 

「発ァッ!」

 

 ドンッ! ギィン!

 

「発ッッ!」

 

 ドンッッ! ギギィン!

 

『……!? し、使徒、攻撃を受けています!』

『いったいどこから!?』

『衝突力が直接使徒の至近に発生! これは……』

 

 

 ならば、拳がなくても!

 

 

『……正拳突きの現象です!』

 

 打ち込めるはずだ! 正拳突きを!

 

『せ、正拳突きってすげえー!』

「発ァァッッ!」

 

 ドン! ギィィン!

 

『使徒のATフィールド、徐々に押し込んでいます!』

『いけるわ!』

『いっけぇー! 正拳突きぃー!』

 

 いける。やれる。とどく!

 

 この使徒の顔面を貫いて! 手脚を打ち砕いて! 動きを完全に止めれば! そうすればッ――

 

「発ッ! 発ッ! 発ッ! 発ッ! は」

 

 フィィン…… ピーーー

 

「……は……?」

 

 エントリープラグの中が、暗闇になる。

 

『初号機、活動限界です! 予備も動きません!』

『しまった……!』

 

 ケージから緊急発進した初号機は、アンビリカルケーブルを接続していなかった。

 

 だから、内蔵電源がなくなり、動きを止めた。

 

『まずい、使徒の前で無防備を』

『シンジくんッ!』

 

 

 それが、どうした?

 

 

「ふ……ぅ……!」

 

 拳がなくなったのに比べたら、電源がなんだ?

 

 そんなものがなくなった程度で、正拳突きが打てないわけがない。

 

 だから、いい加減に!

 

「アスカを……返せッッッ! ――発ァッ!」

 

 ドォンッッッ!

 

 ATフィールドを貫いた力が、使徒を吹き飛ばす。

 

『しょ、初号機、再起動』

『動いてる……そんな、活動限界のはずなのに……』

『まさか暴走?』

『分からない。いったい何が初号機に起きているのか……』

 

 力が、湧き上がってくる。

 

 初号機が僕の形になり、僕が初号機の形となる。

 

 初号機に――僕の腕が現出する。

 

『あれは一体!?』

『初号機の体が、ATフィールドで補完されていきます!』

『目標に高エネルギー反応!』

 

 使徒が、光線を放つ。

 

「撥ァッ!」

 

 それを僕は正拳突きで弾いた。突き出した拳の先で、光線が散り散りになって霧散していく。

 

『すごい……一発の正拳突きの威力が、持続して光線を弾いている』

『初号機の頭上に……これは光輪?』

『うぁ……ああ……』

 

 光線が止む。僕は、歩き出した。

 

 使徒に近づき。腰を深く落とす。

 

「ハァッ!」

 

 ドン! ドゴォ!

 

 使徒が、大地に仰向けに倒れる。

 

『エヴァにこんな力が……』

『初号機がヒトの域を超えている』

『プラグ深度180をオーバー! もう危険です!』

『ッ! やめなさい、シンジくん! ヒトに戻れなくなる!』

 

 赤木さんが何か言っている。だけど……僕はやらないといけない。

 

「感じる……お前の中に、お前じゃないものがある」

 

 正拳突きは心と体が一致しなければ打てない。

 

 今の使徒は、心と体が一致していない。

 

「……心の正拳突きで、打てたのなら」

 

 心と体の正拳突きでも、できるはずだ。

 

 そうだろ――勇者!

 

「アスカ以外の全てを貫く!」

 

 僕は、腰を深く落とした。そして。

 

「――祓ァッッッッッ!」

 

 拳を突き出して。

 

 

 アスカ以外の全てを、消し飛ばした。

 

 

『……!? も、目標……消滅しました!』

『反応、完全にありません!』

『なっ……2号機パイロット、出現!』

 

 使徒が消し飛び、使徒のコアのあった部分に……アスカが倒れていた。

 

『生命反応……あります! 無事です!』

『せ、正拳突きってすげえー!』

「ふぅ……ぅ……」

 

 なんとか……なった、な。

 

 アッ。

 

『!? シンクロ率急激に低下、プラグ深度正常値に戻ります!』

『っ? なぜ急に?』

『初号機の腕部、固着していきます』

『初号機周辺の状況、正常化していきます!』

 

 やっばぁ……どうしよ。

 

 いや……確かにアスカ以外の全てを消そうとしたよ?

 

 ……プラグスーツまで消えるとは思わないじゃん? どうしよう。絶対怒られる。ちょっと見ちゃったし言い訳できない。そもそも電話の件も謝ってない……!

 

「はぁ〜……やらかした」

 

 僕が顔を覆うと、初号機も新しい腕で顔を覆う。

 

 そこへ。

 

『上空から何か来ます!』

「っ!?」

 

 警告。

 

 まさか、次の使徒がもう!?

 

 振り仰いだ、その視線の先で。

 

 第11の使徒が開けた穴から……。

 

『何だあれは』

『新しいエヴァ……?』

『そんな。5号機以降の計画は聞いていないわ』

『何を持っているんだ……槍?』

 

 ゆっくりと落下する槍をまるでロープのように掴んで、頭上に光輪を備えるダークブルーのエヴァンゲリオンが、ジオフロントに……初号機の近くに降下する。

 

「………」

『………』

 

 謎のエヴァンゲリオンは、大地に降り立つと、槍を地面に突いて、それと初号機を何度も何度もチラチラと見て。

 

『えっ?』

 

 困惑した声で通信してきた。

 

『……ガフの扉が開いていない? え……? ……そうか。こういうこともある……のか?』

 

 若い……少年の声。

 

「だ、誰だ?」

『僕はカヲル。渚カヲル』

 

 笑顔を思わせる声で、彼は言った。

 

『君と同じ、運命を仕組まれた子供さ』

 

 何のこと??????




レイとシンジを取り込だまま凍結されるエヴァー初号機
廃棄される要塞都市
幽閉されるネルフ関係者
ドグマへと投下されるエヴァー6号機
胎動するエヴァー8号機とそのパイロット
ついに集う、運命を仕組まれた子供達
果たして生きることを望む人々の物語はどこへ続くのか

次回、エヴァンゲリオン新劇場版:Q

さぁてこの次も、サービスサービスゥ!
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