知ってる名前の少年に転生したけど、俺には正拳突きしかできない   作:幻覚症状

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終わる世界(5)

「ちょっ……加持!? 何!? ネルフ壊滅作戦って!?」

『今は説明しているヒマがない』

 

 モニターに映し出される、2機の新たなエヴァンゲリオン。

 

 ピンクを基調としスラッとした八つ目のエヴァ。そして……ミリタリーなカーキ色のがっしりしたボディになった、四つ目の赤い頭のエヴァ。……どことなく、見覚えがあるようなないような。

 

「アスカ……!?」

『行くわよ、コネメガネ!』

『がってん承知の助!』

 

 修復された2号機は、空中で長い砲身のガトリングガンを構える。

 

『新2の火力、見せてやる!』

『たまや〜!』

 

 ガガガガガッ! 撃ち出された銃弾が、Mark.07の1体をズタボロにする。さらに大腿部からはミサイルが撃ち出され、何体ものMark.07を爆炎に巻き込んだ。

 

「いや、説明はしなさいよ! そのエヴァーも何!? 新2号機と……」

『7、はもう取られちったっけ。登録順だから仕方ないか。エヴァンゲリオン正規実用型の8号機、よろしくねん』

『無駄口叩かないで集中! 着地まであと5秒! 作戦を遂行!』

『コレ、私より姫のが上手なんだけど、ねっと!』

 

 ピンクのエヴァ――8号機が手を地面に向けて飛び込みの姿勢をとる。

 

『ATフィールド全開……ッ!』

 

 8号機の手の平に生まれた障壁が――形を変える。ATフィールドが立方体に折りたたまれ、回転し、渦を巻く。

 

『おっじゃましま〜す!』

「なっ……!」

 

 ギャリギャリギャリギャリ!

 

「新2号機着地、8号機は地下へ潜行!」

「特殊装甲を貫きながら落下中! まもなく24層を突破! ジオフロントに飛び出します!」

「馬鹿な、特殊装甲が自由落下の速度で削られてる!?」

『ATフィールドを攻撃に転用したの?』

「な、何してくれてんの!? 使徒が穴から入ってくるでしょ!?」

『だから私が後詰に残ったんだっちゅーの』

 

 バーニアを吹かして着地したアスカのエヴァ……新2号機が、8号機の空けた穴を守る。群がってくるMark.07を、蹴り飛ばし、ガトリングの砲身でぶん殴り、侵入を防ぐ。

 

『行って、加持総司令!』

『頼んだぞ、アスカ』

「ちょ、何!? 加持総司令って!? ヴィレって何!?」

 

 穴にヘリコプターが編隊を組んで数機突っ込んでいく。

 

『葛城。ネルフはもう何もしないでくれ。あとは俺達に任せろ』

「いやっ……説明を! しなさいよ!?」

「シグナルロスト、ヴィレの戦闘ヘリ群、通信圏外!」

「説明しろぉ〜ッッッ!」

 

 ドンドン、とミサトさんが机を叩くが、特殊装甲の中を通過中の加持さんには聞こえない。

 

「クッ……何もするなと言われてハイそうですかとなるもんですか! 新2号機のバックアップ! 使徒とMark.07のデータを送って!」

「いいんですか。ウチに宣戦布告してきたようなものですが」

「ネルフの目的はあくまで使徒殲滅。敵だろうと目標が同じなら勝算を上げるために協力は惜しまないわ」

『さすがミサト、話が分かる。でも手出し無用! ATフィールドもないこんな雑魚!』

 

 アスカはドカン、と派手にMark.07をぶっ飛ばす。地面を転がったMark.07は手足がグチャグチャになって動かなくなった。

 

『バッテリーは残り3分半! 雑魚はあと9匹! 1匹につき20秒もありゃ、殲滅してお釣りが――』

「南方から新たな飛行物体!」

「まだ来んのぉ!?」

 モニターが映したのは――光輪を頭上に発生して浮遊する、4体の巨人。

 

 山吹色、赤色、青色、白色のボディをした――

 

「……またエヴァー!?」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「アドバンスドシリーズ。ゼーレの手で再生されていたか」

 

 暗い部屋。2人しかいない空間で、冬月は天上を仰いで言う。

 

「やはり最後の使徒を殲滅次第、儀式に移る算段か」

「ああ」

 

 碇ゲンドウは短く応える。

 

「では、こちらも始めるかね?」

「そうしよう」

 

 ゲンドウは顎の下で手を組み、口元を歪めた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「識別コードが送られてきました! ……エヴァンゲリオンMark.09、Mark.10、Mark.11、Mark.12!」

 

 新しいエヴァンゲリオン――敵なのか味方なのか分からない。けれど、アスカはすぐさま敵と見なしたらしい。

 

『たった4体増えたところで!』

 

 新2号機は、ヴィレの飛行機から投下されたバッテリーを用いて充電し、同じく投下された双頭の丸鋸を構える。

 

 その足元には、活動停止したMark.07、30機の骸。

 

『雑魚には変わりないでしょ! たたっ斬って――』

「目標に高エネルギー反応!」

「アスカ避けて!」

『ッ!』

 

 空中から接近した4機のエヴァが――その巨大な単眼から光線を放つ。

 

 ギィン!

 

『くんッ……の! っ!?』

 

 ATフィールドで防御したアスカだけど――すぐさま1機が降下し、長い鎌を振るった。アスカはATフィールドを傾けるようにして光線をそらし、鎌からも転がって避ける。そこへさらに降り注ぐ光線、鎌を持って迫りくるMark.09たち。

 

「Mark.07とは動きが違う……有人機か?」

「Mark.06と同等のスペックだとすれば――」

「アスカ、そいつらには自己修復能力があると考えられるわ。慎重に対処して」

『言われなくたってぇ!』

 

 4機のエヴァと新2号機の激しい戦いが、更地となった第3新東京市で始まる。一方――

 

『もっしも~し。こっちにもバックアップくれない?』

 

 ジオフロントに降下した8号機から通信が入る。勝手にその辺の施設ビルを解体して、アンビリカルケーブルを接続していた。

 

『メインシャフトを開けてくれると助かるんだけどにゃ~』

「馬鹿言わないで、使徒をセントラルドグマに直行させる気?」

『ダメか~。じゃあ押し入らせてもらいますよっと』

 

 8号機は閉鎖されたメインシャフトにしゃがみ込むと、肩からプログレッシブナイフを取り出して突き立て始めた。

 

「こらこらこらこら!」

『え~、でも急がないと間に合わなくなるし』

「ヴィレの戦闘ヘリ群、降下します!」

 

 ミサトさんと8号機のパイロットがやり合っている間に、ヴィレのヘリが降りてきた。着陸すると同時に、銃を持った兵士が降りて本部へ向かう。

 

『突入部隊、目標を確保するんだ』

「やろうっての!?」

 

 キィ、とミサトさんが加持さんにつっかかる。……ツッコミを一人でやり続けて大変そうだ。

 

「こうなったら硬化ベークライトを通路に注入してやるわ! 砂形状の使徒相手には効果が薄いしこちらの退路が断たれるからやらなかったけど、人間相手なら」

『それは困る。何もするなって言っただろ?』

「うっさい馬鹿! 硬化ベークライト注入――」

『青き海の同志よ、今がその時だ!』

 

 ガタガタガタガタ! 指揮所で椅子を蹴る音が複数する。振り返ると……およそ1/3の職員が、武器を手に立ち上がって他の職員たちに突きつけていた。

 

 彼らの腕に巻かれているのは、青いバンダナ。

 

「青い海を取り戻すために、ネルフは今日で壊滅させます。……抵抗しないでください」

「くっ……」

 

 指揮所の動きが止まる。

 

「そう……ずいぶん準備のよろしいことで」

 

 ミサトさんはうめきながら、そっと下がって僕に近づいた。そして小声で言う

 

「……シンジくん。消し飛ばさない程度に正拳突きを飛ばせるかしら? やっぱ無理? 死んじゃう? できれば怪我はさせたくないんだけど……無理なら腕の1本や2本なら……」

 

 アニメの馬鹿力キャラじゃあるまいし、そんなことにはならない。けど、無傷というのは難しいな。気絶させたら無防備に転倒するから、頭を打ったら大変だし。

 

 ……だけど、実戦で試すいい機会だ。なんとか……全員を同時に……武器だけ――

 

 ビーッ!

 

「!? 警報!?」

「零号機、Mark.06、起動!」

「は!?」

 

 突然の報告にミサトさんは混乱した声を上げる。

 

「ちょ、レイ!? 何してるの!? 今はねえ、ちょっち緊迫した場面だから――」

『違う。私じゃない』

「これは――ダミーシステムで起動しています! Mark.06は無人! ……セントラルドグマに向かって移動を始めました!」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「まさか自律型に改造されていたとはね」

 

 目の前で動き出したMark.06を見送りながら、白髪赤目の少年――渚カヲルは面白そうに言う。

 

「さすがリリンの王、シンジくんの父上だ」

 

 そして天井を見上げ呟く。

 

「今回は驚くことばかりだね……やっぱり君の影響なのかな? 碇シンジくん」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「どうして?」

 

 ダミーシステムで動き出した零号機は、Mark.06の後を追ってメインシャフトをワイヤーを使って降下していた。

 

 レイの目の前で、隔壁がまた1枚開いて、2機を通す。

 

「くっ……」

 

 零号機の四肢は再生していない。ジェットアローン、日本重化学工業共同体の作ったロボットの手足を接続した応急処置が施されている。そのせいもあるのだろうか、ダミーシステムに支配された零号機は、レイの操作を全く受け付けなかった。

 

 辛うじて外の様子だけは見れるが、それだけだ。

 

 やがて最後の隔壁が開き、2機は薄ら赤く発光する赤い水をたたえる空間にやってきた。

 

 最奥には、槍で磔にされている、白い仮面をつけた白い巨人。

 

「……あれが、リリス」

 

 そして、その前方で……様々な隙間からこぼれ落ち、集まってくる砂の山……第12の使徒。

 

 無人のMark.06とレイの乗る零号機は、リリスに近づいていく。零号機の足が赤い水をかき分け、波となって揺れる。

 

「何をするの、零号機」

 

 Mark.06が空中で静止する。零号機はさらにリリスに近づいた。

 

「……何をするの、碇司令」

 

 そして――零号機は両手で、リリスに刺さった槍を掴む。ぐい、ぐいっ、と力をかけると、あっさりと槍は抜けた。

 

 数秒の空白のあと……白き巨人、第2の使徒リリスの下半身が再生されていく。いや。

 

「……! 大きく……」

 

 リリスは、その体を肥大化させていった。膨れ上がった手の平が、釘を中から押し出して拘束から逃れる。零号機が脇によける中、ゆっくりとリリスは赤い水に手をついた。

 

「………っ」

 

 四つん這いの姿勢で、さらに膨れ上がり大きくなるリリス。そして。

 

「あ……」

 

 白い仮面が、剥がれ落ちる。そこに現れた顔は。

 

「私……?」

 

 レイに、似ていた。鏡で見るいつもの顔に。

 

「どうして……それじゃ、私は……?」

 

 呆然とするレイ――だが、すぐに視界は失われた。エントリープラグ内に響く警報音。活動限界を迎えた零号機が、停止する。

 

 力が抜け、ぐらりと尻もちをつく零号機から――Mark.06が槍を受け取る。そして。

 

 

 槍を一閃し――リリスの首を切り落とすのだった。

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