知ってる名前の少年に転生したけど、俺には正拳突きしかできない   作:幻覚症状

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終わる世界(6)

「セントラルドグマにパターン青検出!」

 

 緊迫した叫びが指揮所に響き渡る。

 

 セントラルドグマ。第2の使徒リリスを封じている場所。そこに使徒が侵入すれば、ネルフ本部は自爆する……!

 

 ………。

 

 ……しないな?

 

 ざわざわと疑問の声があちこちであがるけど、青いバンダナをつけた職員達にとっては想定内のことらしい。そして、ミサトさんも。

 

「報告は正確に。ドグマにはカメラがない、センサーで分かる範囲でいいわ」

「は……はい。位置と反応からしてリリスの封印が解除された模様。また第12の使徒の反応も強まりつつあります」

「零号機、Mark.06の反応もドグマにあります。零号機は活動限界で停止中!」

 

 よく分からないけど……使徒の所にエヴァが向かったということは……。

 

「零号機とMark.06は、使徒を止めに?」

「違うわね」

 

 ミサトさんは歯ぎしりする。

 

「使徒とリリスを接触させる……そのためよ」

「えっ……」

「サードインパクトを起こそうとしている」

 

 腕を組んで服の裾を、強く握る。

 

「……碇司令が」

「父さんが?」

 

 ……え、えぇ……? 本当に? 話が急で理解できない。あんなに使徒殲滅に手段を選ばない感じなのに? ちょっと冷酷で、秘密といえば母さんへの激重感情を抱いてるってことだけの人じゃなかったの……?

 

「そ、それなら止めなきゃ」

『その通り! はいちょいと失礼』

 

 ボコッ。指揮所の前方の壁が突き破られる。僕が第11の使徒と戦って壊し、応急処置されていたところだ。顔を見せたのは、八つ目のピンクの巨人。

 

 いつの間にかメインシャフトをこじ開けて降りてきた、エヴァンゲリオン8号機。

 

『迎えに来たよ、ネルフのワンコくん♪』

「だ、誰? ……いや、その言い方……」

 

 ……思い出した。学校の屋上に降ってきた眼鏡の女の子!

 

 ――いやどんだけ引っ張ったんだよ! 存在忘れてたよ!

 

 一応だけど、僕はここまで原作通りにやってきた自信がある。かなりある。

 

 いやまあ、正拳突きは原作にないだろうから使徒の倒し方とかはちょっと違うと思うけど、概ね……エヴァの天才のシンジさんと同じ展開を迎えているはずだ。

 

 なのでこれもアニメ通りの展開なんだろうけど……まだ名前も聞いてないよ!?

 

「迎えって……」

『時間がない。サードインパクトを止めたいなら早く乗って』

 

 8号機は手を差し出し、エントリープラグを脊椎から半分出して入り口を開けた。

 

『たぶん、この先で君の力が必要になる。だから乗って!』

「行きなさい、シンジくん」

「ミサトさん」

 

 思わぬところから背中を押された。ミサトさんは小さく頷く。

 

「ネルフは……サードインパクトを起こそうとしている。少なくともそういう勢力がいる。なら、それを止めようとしている方に私も乗るわ」

 

 サードインパクトを起こそうとしている勢力。

 

 人類を滅亡させようとしている……碇司令。僕の父。

 

 ……いや……本当? 本当に? さすがにそれはかわいそうが過ぎないか? 人類のために無理やり戦わせられてると思ったら、父親は実は人類を滅亡させようとしていました〜って……かわいそうすぎるだろ……何考えて作ったんだよこのアニメを!

 

 いや、そんなツッコミをしている場合じゃない。原作があるとしても、この世界はまぎれもなく現実なんだ。なら……守るために動かないと。

 

「……分かりました」

 

 僕は頷く。ミサトさんたち、指揮所のほとんどの人も青いバンダナを受け取って腕に巻いた。

 

『まだ〜? 乙女を待たせるのはマナー違反じゃない?』

「あ、はい、今行きます!」

 

 エヴァの手から肩をよじ登り、背中に回って、エントリープラグの上を落ちないように、歩いて、靴脱いで、LCLの中に飛び込みだだだ! あ゙! いだい゙! 肺がッ! クソッ、これ絶対慣れないッてぇ!

 

「ようこそ、碇シンジくん」

「はぁはぁ……あ、どうも、えっと……」

 

 操縦席に座る、メガネをかけたピンクのプラグスーツの女子。あの日空から落ちてきた子で間違いない。

 

「あ、自己紹介まだだったね。私はマリ。真希波・マリ・イラストリアス」

「押忍! よろしくお願いします、真希波さん!」

「オッス。ん〜、なるほどぉ……人と一緒に乗るとこんな感じなんだ……」

 

 真希波さんはクンクンと鼻を鳴らす。

 

「混じり合ってるこの感じも、面白くていいね」

「……?」

 

 ……? ……!? はっ!? LCL!? アッ……!?

 

「それじゃ、ちょっと急ぐよん。まずは第9ケージかな?」

「あ、え、ハイ……え? 格納庫? ドグマに行くんじゃ?」

「必要なモノがあるの」

 

 真希波さんは、ミサトさんに問いかける。

 

「ゼーレの少年の槍――第9ケージで間違いないよね?」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「こ、のォォ!」

 

 二つに分割した丸鋸を左右の手に持ち、Mark.11を叩き伏せる。そのまま破壊をもくろんだアスカだが、すぐさま横やりが入った。

 

「チィッ……!」

 

 Mark.09が発射した光線を、ATフィールドで防ぎ、その場から飛び退く。カバーに入ったMark.10からの追撃をさらにかわす――が、その間にMark.11は再生を終えて立ち上がった。

 

「切っても潰してもすぐに直って、きりがない!」

『ヘイフリックの限界にはとっくに到達しているはず……やはりMark.06同様、全身がコアのようね』

『アスカ、生半可な攻撃は通用しないわ。1体を集中攻撃して活動停止に追い込んで』

「わかってる!」

 

 ミサトの言葉に、アスカは攻撃をかわしながら応じる。

 

「接続部の反応が悪い。変なコンセプトのボディなんかを使うから……!」

 

 JA-02。フランス、パリで建造されていた、ジェットアローンの2号機。

 

 完成間近だったが、日本での暴走事故を受けてキャンセルされる。大赤字に悲鳴を上げた日本重化学工業共同体から買い取ったのが、ヴィレだった。腕部・脚部パーツのみ零号機に流用されたJAと異なり、JA-02は頭部と操作系以外のすべてを2号機に使用している。

 

 その代わり、シンクロしても全身をマリオネットのように糸で操るかのような操作感。

 

 しかしアスカは順応してみせた。――だが、求めるレベルの反応には至らない。

 

「くっ」

 

 光線の十字砲火をかわしきれず、左の丸鋸を失う。

 

『新2号機、活動限界まであと1分48秒!』

『アンビリカルケーブルは!?』

『目標が市内に浸透、破壊したため地上のケーブルはすべて損失しています』

『セーブモードでは戦闘は不可能だ。バッテリーの投下まだか!』

『戦闘中だぞ、無茶を言うな!』

 

 JA-02に搭載されていたリアクターは外されている。放射線の危険のないN2リアクターの開発と搭載は間に合わなかった。バッテリーが切れてもしばらく低電力モードで動けるように改良されてはいるが、無防備になる。

 

「火力が足りない……ッ」

 

 接近してきたMark.12を蹴り飛ばし、Mark.10に叩きつけ――アスカは苦虫を噛みつぶしたような顔をする。

 

「……これだけはやりたくなかったけどッ」

 

 追撃に来たMark.09をかわし、Mark.11からの光線も避けて距離をとる。

 

 そして。

 

「ふッ……!」

 

 腰を、深く落とし。

 

「ATフィールドは心の形……やるわよ、新2!」

 

 拳を。

 

「――せぇぃヤァァァッ!」

 

 まっすぐに突き放った。その先で、ATフィールドが、飛ぶ。

 

 ゴシャアァッ!

 

 拳の形をしたATフィールドは4機のエヴァシリーズを巻き込み、ぐちゃぐちゃにして転がした。

 

「フンッ。この動きの運動効率だけやたらいいとか、ホントバカみたいなコンセプト……んっ?」

 

 

 地面が、鳴動する。

 

 

「まさかッ」

 

 振り返る、アスカの目の前で。

 

 第3新東京市の地面が円形に消失し――黒い深淵が姿を現した。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「うおッ……!」

「何、この揺れは!?」

 

 ネルフ本部。ヴィレのメンバーに先導され、リツコと合流し、オペレーターたちと移動していたミサトは突然の揺れに身動きが取れなくなる。

 

「ドグマ直上から地上まで、消失! 円形に穴が……」

「モニターに出して」

 

 この情勢になっても、ネルフ側につく職員はいる。何も状況が分かっていないのか、混乱しているのか、あるいは――すでに選択をしていたのか。

 

 ともかく、ネルフ側の職員たちの抵抗にあい交戦して足止めを食らっている中、ミサトはマヤのノートパソコンのモニターを覗き込んだ。

 

「これは」

 

 それは、何度となく記録映像で見たもの。南極に未だ消えずに残っている、セカンドインパクトの残滓。

 

「15年前と同じ……!」

「セカンドインパクトの続き。サードインパクトが始まる」

 

 シンジたちは間に合わなかったらしい。

 

「世界は終わるのよ」

『いいや、まだだ!』

「ッ、加持!?」

 

 リツコの言葉を、加持が通信で否定する。

 

『セカンドインパクトで海は浄化されてしまった。だがサードインパクトによる大地の浄化……それはここで食い止めてみせる。そのためのヴィレだ』

 

 加持は、一拍置いて発令する。

 

『第3新東京市封印、開始!』

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 第3新東京市に深淵が現れ、その淵から大地が赤く染まっていく。

 

 生命の存在しない清浄なる大地への浄化。

 

 だが――人類はそれを良しとしない。

 

 第3新東京市を包囲するように近づいてきたヘリ群は、巨大な黒い柱をぶら下げていた。

 

『浄化無効阻止装置、投下!』

 

 加持の号令を受けて、黒い柱が第3新東京市に出現した深淵を取り囲むように投下され、突き立つ。

 

 ぼんやりと、赤い文様が浮き上がり、柱が起動する。そこへ赤い大地が迫り――

 

 ギィィィン!

 

 ――阻止された。

 

『浄化無効阻止装置、機能確認!』

『浄化を押しとどめてます』

『これを食い止めるために全部持ってきたんだ。これぐらいは働いてもらわなきゃな』

『浄化進行速度……低下。ダメです、完全には止まりません!』

『上出来だ。時間が稼げた』

 

 じわじわと、浄化無効阻止装置はサードインパクトの勢いに押されて、その範囲を広げられていく。

 

『あとはサードインパクトを止めればいい』

『エヴァンゲリオン、Mark.09、10、11、12、作戦宙域から離脱していきます!』

 

 サードインパクトの発動を見届けたエヴァ4機は、背中にロケットブースターのような機構を生やして飛行していく。

 

『ゼーレは計画の修正を諦めたか……』

『加持! 私もドグマに向かうわ』

『アスカは充電しつつ待機してくれ。ゼーレのエヴァが戻ってこないとも限らない。……心配するな』

 

 加持は、静かな声で言う。

 

『サードインパクトは、必ず止めてみせる』

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