私達の背中に生えた純白の羽で羽ばたき、大空に飛び立つ。
この瞬間ほど楽しいものは他にはない。
でも、今はそれもできなくなってしまった。
「戦争なんてものがなければなあ。」
そう人事のように言えるようになったのは最近のこと。
すでに、戦争が終わってから二十年が経っているからだった。
歩兵や戦車など、地上戦主体の戦場。当然ながら戦車は強力だったが、それ以上に戦いの鍵を握っていたのは私達有翼人種だった。
私達有翼人種の象徴である白い羽を存分に使って上空から銃による掃射。
戦車は砲台を移動している間に回避し、脆い箇所を狙って突く。
別に私達も、やりたくてやっているわけじゃなかった。
生き残るために使えるものを全て使った結果だし、普通の人より力がない私達はこれが最善であり最強の方法だった。
でも、私たちは強すぎてしまった。
戦争が終わった後、各地で多発したのはいわゆるトラウマ。
戦場で私たちが飛んで、撃って。それが、強すぎた。
今では鳥の羽でさえそれを見た時発作が起きてしまう人もいるそうだ。
そのせいで私たち有翼人種は空を飛ぶことを禁じられた。
それだけでなく、羽さえ隠すよう命じられた。
異議はなかった。
他ならぬ私たち自身でやっていたことも、何もかもわかっていたから。
でも、私たちの背中に羽がある以上、空を飛びたいと思うことはおかしくないことだった。
異議を申し立てた人もいた。
【夜の決められた時間だけでいいから空を飛ばせてくれないか】
【私たちが隔離されてもいいから私たちがこの空の下で飛んでいい場所を作ってくれないか】
だが、全て却下された。
私たちが飛べばまた何も通用しない空からの攻撃で攻撃されるのではないか
隔離したらそこでクーデターを企てられるのではないか。
そう思ってのことだろう。
大半は空に飛びたいという本能的な欲求を抑えて生きている。
でも、私はどうしても我慢できなかった。
私が向かったのは家の裏山。
木が生い茂り、飛ぶには不向き。
でも、周りからは一切見えない。
近所の子供達からは幽霊が出るだのなんだの言われているそうだが、そんなことはいい。
私は二十年ぶりに羽を目一杯広げる。
家でも夫のトラウマのせいで広げられずにいたため、羽根一枚一枚の間に入る風が心地よい。
一通り羽根の感触を確かめた私は羽を使い、それに飛び立つ。
木に当たる。構わない。
今はただ、この風が心地いい。
誰かに見られようと、ここで殺されようと。
私は構わなかった。
あぁ。綺麗だな。
物陰からあの有翼人種を隠れて見ていた私は見惚れてしまう。
叶うなら、この羽を使って、もう一度。
叶うなら、あの羽を使って、一度だけでも。
飛んでみたい
続くかもしれない