明るい子を演じることで周りを元気づけ自分を騙し続けたあるウマ娘の話。

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 二次創作でよく見るサクラバクシンオーみたいにハルウララの性格も演技だったら面白いよねって妄想の産物です。キャラ崩壊が激しいので本来のハルウララが好きな人は見ない方がいいと思います。


ハルウララの仮面と嘘

 

 昔から足が遅いことなんて自分が一番よくわかっていた。走ることは大好きなくせに芝では思うように力が出せないことも、短距離でなければ体力が持たないことも、たまに勝てそうになっても結局は負けてしまうことも、周りの人に言われる以上に私自身が一番よくわかっていた。それなのに無駄に頑丈な身体が自分を皮肉っている気がして嫌だった。

 

「ウララは将来どんな子になるのかしらね〜中央に行ってくれたらママは嬉しいな〜」

 

 親は優秀なウマ娘だった。だからよくこんなことを口にしていた。しかし私にはその言葉の真意がわからなかった。そして親は私がどんなに不甲斐ない走りをしていても自分の娘に走りの才能が無いことを認めてはくれなかった。 

 

 そして自己理解とは矛盾した目標を掲げて日々を生きるには私の心は弱すぎた。

 

(だから私はハルウララという仮面を被った)

 

 走るのが大好きで底抜けに明るいそしておバカなウマ娘。不安なんか持たず無自覚に周りの人を笑顔にするようなそんなウマ娘の仮面を。

 

 諦観した自分とは真逆の仮面をつけながら生活をする事で、すでに無いに等しかった自尊心を保ちながら日々を過ごしていた。

 

「ウララ、これ受けてみない?」

 

 親が持ってきた紙には中央トレセン面接試験と書かれていた。

 

(面接試験…本当はわかってたんだ私に走りの才能がないって)

 

 面接試験には実技が無い、それが意味することはウマ娘の本能に嫌われた者たちへの最初にして最後のチャンスということ。そんなものを娘へ勧める親への複雑な感情を抱いたまま試験を受けた。

 

 試験は学力試験と面接の二つだったが学力試験をギリギリで突破し面接を受けた。

 

 そこで話した事は正直よく覚えていない。緊張もあったがほぼ嘘で塗り固めた自分の言葉などすぐに忘れてしまいたかった。

 

「合格!!!春から中央トレセンで待っているぞ」

 

 その年唯一の面接での合格者となった私はそのときになって初めて仮面を被って生活したことの罪を意識し後悔した。私よりもここに賭けていた子はきっといたのだろう。その事実とは対照的に泣きながら喜んでいる親を見て残っていた仮面の中の自分が粉々になる音がした。

 

「ええ〜私のトレーナーになってくれるの‼︎」

 

 自分にトレーナーがつくはずがない。そう思っていたがお人よしな人間のお陰でその問題はすぐに解決した。どうやら殺伐としたトレセンの中で一人だけ負けても楽しそうに走っている私に興味をもったらしい。

 

「ありがとうトレーナーこれからよろしくね」

 

 私は心にもないセリフを吐きながらハルウララを演じ続けた。

 

「さあ始まりましたミヤシモステークス各ウマ準備が整ったようですこのレースの勝者は誰になるのか」  

 

 アナウンスを聞きながら大きく深呼吸をする。その瞬間に全身に電流のような緊張が走る、意外に思われるかもしれないが私はレースを走る時間は本当に好きだった。この時この瞬間だけは自分を曝け出せるこの1400mの間だけ私が私であるそんな宝石のような時間だった。

  

「後方にはポツンと一人ハルウララなんとか意地を見せて欲しいですね〜」

 

 意地も何も全力で走ってこれなのだからどうしようもないのに、と私は思った。

 

「ウララ、少し相談があるんだけどいいかな」  

 

 ある日トレーナーから見せられた日程表には信じられない量のレースの予定が組まれていた。今までの物と合わせて113レース普通のウマ娘ではまずありえない量、しかし私にはこのメチャクチャな日程の意味はすぐにわかった。 

 

 (卒業か、考えたこともなかった)

 

 中央トレセンはウマ娘の聖地であり同時に学校である。レースに重きを置いている学生が卒業する為には基準を突破するだけのポイントが必要であり、レース出場で最低1ポイント重賞はそれぞれランクが定められておりGⅠで勝利すれば1000ポイントもらえる。

 

 他には個人トレーナーがつくことで20ポイントや怪我は治療1ヶ月で5ポイントなど細かく定められており、その使い道も多いが卒業の為には120ポイントが最低でも必要になっている。レースの才が無い私は自分がここで卒業できるとは微塵も思っておらず途中で地方へと転入するつもりだったのでこの計画は目から鱗だった。

 

 (レースをたくさん走れるのはありがたいけど…自分で考えられなかった諦め癖のついた思考が嫌になる) 

 

 一人では泥臭く足掻くことすらできず周りの人の善意をわかった上で踏み躙って歩く自分が酷く惨めに感じた。

 

 そこから先はひたすらに走り続けた。正直に言って最高の日々だったと言える。レースの結果を苦に思わない自分にとって走ることは最高だった。歪んだ形でここに立っている自分が胸を張って自分を肯定できる唯一の時間だったと思う。周りからどんな目で見られようともう気にならない、この時だけはハルウララという演技を忘れて私は心の底から笑えていた。

 

 だんだんとその姿が注目を浴びファンも増えてきたことで2年経った頃には卒業資格を満たしてしまった。だが私はこの生活をやめるつもりはなかった。本当にこの生活が楽しかったのだ。

 

 (ありがとうトレーナー)

 

 かなり長い間ハルウララを演じながら学校生活を送る中でありがたいことに良き友人にも恵まれた。特にキングヘイローやライスシャワーそしてスペシャルウィークみんな私には勿体無いくらいのウマ娘だった。

 

「ウララさんの走りは周りを笑顔にしますね」

 

 スペシャルウィークにそう言われた時私は柄にもなく心の中で喜んだ。それと同時に仮面の自分が褒められた事に嫉妬した自分が情けなくて辛くてどこかに隠れてしまいたかった。

 

「見てなさい‼︎私はどんなに打ちひしがれようとも自分の一流を証明して見せるんだから」

 

「ウララはいつでもキングちゃんを応援してるよファイトーキング‼︎イケイケキング‼︎」

 

 私はキングヘイローがとても好きだ。走りの才能がある自分を見ているような気がして烏滸がましくも理想を投影していたのだと思う。作った笑顔で周りを元気づける自分とは違い勝負の世界でより尊い信念を持ち、決して諦めない姿を見せる事で周りを勇気づける彼女の姿はまさに私の理想だった。

 

「キングヘイローがまとめて撫できった!!!!高松宮記念1着はキングヘイロー悲願のGⅠ制覇です」

 

 そんな彼女が王冠を手にした時私は中央にきてから初めて本気で涙を流した。周りにも驚かれたがこんな感情がまだこの心に残っていたのかと私が一番驚いた。

 

「ライスねウララちゃんと出会えて本当によかった」

 

 ライスシャワーは変わったウマ娘だ。私から見れば才に恵まれているのに不幸呼ぶ子だと自罰的な態度を取る姿勢に思うことがなかったわけではない。だが、仮面をつけて負けることで愛されてる私と本気で勝ちを目指して嫌われている彼女のどちらが美しいかなんて赤子でもわかる。だから私は彼女の支えになろうと思った。ある意味で私たちは似たもの同士なのだから。

 

「ライスちゃんナイスラン!!かっこよかったよ〜!!」

 

 彼女が勝った時はいつも声を張り上げて褒めた。どこか通夜のような空気が流れている人間の愚かさが詰まったこの空間を壊したかった。そして私よりも何倍も美しい彼女にそして他のウマ娘よりも大きな耳に少しでも多くの応援を届けたかった。

 

「ウララ!!君の人気が高まったことで有馬への出走許可が降りたぞ」

 

 卒業の季節が近づいてきた時にそれは急に告げられた。ウマ娘の夢の聖地である有馬出走。毎年一枠だけ色物が出走する枠が設けられているがどうやらそこに選ばれてしまったようだ。

 

 やはりウマ娘の端くれとしてあの舞台で走れるのは嬉しかった。元々を考えれば卒業すらできそうになかったのに大出世もいいとこだ。

 

 しかし、真剣な勝負者でない私がその舞台に立つことの罪にはどうしても耐えられる気がしなかった。何でもいいからケジメをつけないと走ってはいけない気がした。

 

 今更何をと思われるかもしれないがこの頃になると仮面を被りすぎて何が自分なのかがもうわからなくなっていた。欲が出たのかもしれない、ただ単にウソをつき続ける限界が来たのかもしれないその理由は今になってもわからない。

 

 だから出走を翌日に控えた日の夜に自分の全てをトレーナーに曝け出した。大人の男性の胸で言葉が出なくなるくらい泣きながら全てを打ち明けた。その間トレーナーはただ黙ってそれを聞き3年間に及ぶ私の裏切りを受け止めそして静かに語り始めた。

 

「君が演技をしているのを実は知っていたんだ。僕もそうだったから•••親の期待に応えて応えて応え続けて難関資格であるトレーナーになった。けど僕に残ったのは虚しさだけだった。濁った目でターフを見ても何も感じなかったんだ」

 

 トレーナーは才能のある私だった。そのことが何を意味するかを想像し自然と胸が苦しくなる。

 

「どんなに素晴らしい走りを見てもスカウトする気なんて起きずにただ見てるだけそんな灰色の世界にいれば同族の気配はすぐわかる。だから君をスカウトした、同じ目をした君が少しでもこの学園を楽しめるように傷つかないようにと努力を続けてたんだ」

 

 そこまで言うとトレーナーは少し泣いていたが一度深呼吸したあとニコリと笑った。

 

「僕たちは共犯者だ。だけど君は人々を笑顔にしている、友達を支えている、そして色んなウマ娘の希望になっている。仮面だとしても誇っていいんだよハルウララ頑張ったのは君自身じゃないか。だから君は君として明日のレースを楽しんできなよ。もちろん僕も僕として全力で君を応援するから」

 

 この言葉を聞いた時の私の感情は誰にも理解できないだろう。ただこの時の興奮をこの時の幸運をこの時の幸せを私は生涯忘れない。私は他の誰でもなくこの人の為に全力を出し切るそう誓った。

 

「トレーナー、明日が楽しみだね。私がウマ娘になる準備がようやくできた気がするんだ」

 

 お互い涙でめちゃくちゃになった顔で私は宣言した。

 

「後方にポツンと1人ハルウララやはり彼女にこのレースは厳しいですね〜」

 

 やはり最下位も最下位、前のウマ娘との差は歴然だったが私は普段とは違い勝負者だった。今までにない真剣な顔で大地を踏み締めた。この舞台を汚さぬようにそして私が私である事に胸を張る為に全てを出し尽くした。ハルウララがゴールする頃には観客は勝者の祝福に忙しく誰も私を見ていなかったかもしれない、それでもよかった。私は笑顔で勝者を称えた、ハルウララである私が。

 

 雲ひとつない青空に緑のターフがよく映える、その光景はどこか私を祝福しているようだった。

 

「ありがとうハルウララ〜!!」

 

 目に涙を浮かべ観客席で叫ぶトレーナーと友人の姿を見て私は思わず泣いてしまった。ようやく真の意味で私は戦えたのだ私は誇れたのだ私は自分に勝ち勝負に負けたのだ。線香花火のように短い私の青春がパチリと煌めいて終わった。

 

 卒業式の日に私はトレーナーとの契約を解除した。今では最高のパートナーであると同時に歪な間柄の時間の方が長かった2人の関係に少しむず痒くなる。なにはともあれ私がここまで来れたのは間違いなく彼のおかげだ、感謝してもしきれない。

 

「今までありがとうねトレーナー!!」

 

「ああ、こちらこそありがとうハルウララ」

 

 私たちは校門で握手をして別れた。2人の目には涙が浮かんでいたが顔は笑っていてお互いに呪縛から解き放たれたみたいだった。私は一度もトレセン学園を振り返らずに家へと向かった。その時の私の胸には未来への希望が満ち溢れていた。

 

 




書きたい物を書くというのがこんなに難しいとは思いませんでした。自分の実力不足で読みにくい話になってしまいましたがこんな文章を読んでくださった読者に最大限の感謝を。

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