枯れたココロと【アオハル】を   作:回忌

1 / 10
こういう系の作品が少ないので書きました、後悔はしていない


刹那

『三分後に到着だ、装備を整えておけ』

「了解」

 

ヘリのローター音がうるさい

バラバラとヘッドホンをしているのに響いてくる

心の中で文句を言いながらベルトを外しコックピットを近寄る

 

「今どのくらい?」

『目標まで500mを切った』

「分かった、さっさと終わらせよう」

 

やることは変わらない、少しシチュエーションが変わるだけで……

テーピング等を巻いたりしてカスタムしたM16A1のチャージングハンドルを引く

 

ヘリのドアを開き銃を構える

隣に居た仲間もドアガンを取り警戒し始めた

 

 

 

 

 

 

想定は【アビドス高等学校】の奪取、占領

借金を積んで高い利子を押し付けられた奴らがついに借金を返しきれなくなり"差し押さえ"を受ける……という場面

少数精鋭であるアビドス組を模倣した機械人形を相手に訓練をする……だけだ

 

週に2、3回あり……今日がそうだっただけ

 

『最高戦力である小鳥遊ホシノは抑えている、残りも纏めて始末してしまえ』

「了解、理事長」

 

相手戦力の中で特筆した強さを持つ生徒、小鳥遊ホシノ

何回か見た事があり……都合で銃を向けあった事もあるがこの奪取訓練に至っては小鳥遊ホシノの機械人形は居ない

 

どうも理事側で何やら策を講じているようで、小鳥遊ホシノを拘束出来ているそうなのだ

 

 

 

 

そう考えていると、カンカンと子気味良い音が響く

 

『小火器による攻撃を受けている』

「アビドスの挨拶だ、私達も挨拶してやろう」

「ロープを垂らす、援護するぞ」

 

同僚がロープを蹴落としドアガンをぶっぱなす

どうせ下からこっちを撃っているのは2年生の狼か、それともネフェティスの令嬢か

どちらにせよまだヘリは落ちない、前提は崩れない

そもそも私達一機が落ちたとて他にヘリが居るし……

 

その時、丁度いい位置にヘリが辿り着く

 

「降下する」

『幸運を』

 

 

 

いつも通りの、変わらない訓練

いつしか来るその時への……対策

 

 

 

 

 

何も変わらない

 

 

 

いつまでも、私はここに居ることだろう

 

 

 

 

○

 

「セツナ!今日はいつも通りいい動きだったな」

「そうでも無い、ミライこそいい動きだった」

 

訓練が終わり、装備類を整備する時に同僚が話しかけてくる

いつも私に絡んでくるウザイ人だ、しかし仲間である以上邪険には扱えない

ここぞと言う時に裏切られたら何も出来ないからな

彼女は私の装備品を見ながら言う

 

「ゴリアテとかから取ってきた部品を改造して作ってんだろ?それ」

「手先は器用だから…それに、力もあまり強くないし」

 

彼女が指差すのは私が作り上げた発明品

底部のローラーにより高速移動を可能にする靴、他にも武器が多数

弾の規格はカイザーの支給品に合わせてる、そうじゃないと弾代がかさんでしまう

 

「力が強くないって言うか…義手だからだろ?

ㅤ耐えるように設計してはあるようだが、それでも戦闘にはついていけなさそうだよなぁ」

「…そうでも無い」

 

 

 

私の右腕は義手だ

何製か知らないけれども…しかし決して壊れない訳では無い義手

戦闘には耐える、砂が入っても、水が入っても動く…それくらいの義手

見た目は無骨で飾り気の無いものである

 

しかし肩に当たる場所は真紅で塗りつぶしてある

見た目のインパクトが派手だし…相手に威圧ができる

 

後から見た動画に、糸を引く赤色が見えた時など言い知れぬ興奮を覚える

 

…相手からすれば恐怖なのだろうが……

 

 

因みに耐久性の他にカートリッジを使用したアームパンチもある

瞬間的な爆発エネルギーによって勢いよく拳が突き出され、目標を破壊する…という仕組みである

威力は【神秘】とかいうのがあってかなりの物である

 

ただ、カートリッジが無くなればただの頑丈な腕だ

 

それに、ただ頑丈なだけであって決して壊れない訳では無い

小鳥遊ホシノとの戦闘で数回壊れ、または壊れかけて動作不良を多発した

あの野郎は何度もあの盾を私の義手に振り下ろしやがった……今度は確実に黙らせてやる

 

 

 

…これが私

 

 

これが…"今生セツナ"と呼ばれている女の子

 

 

 

カイザーに忠実な、ただの犬だ

 

 

 

〇

 

 

元々は誰かの飼い犬だった

しかし私にとってその飼い主はクズ中のクズで、従う意味も無かった

 

いつしか私は飼い主から逃げて、砂漠に渡った

砂漠という環境は私の体を散々に痛めつけて右腕を失わせてくれた

 

白い蛇に追いかけたり…ヘルメット団に追われている時に…カイザー理事に出会った

 

 

いや、見つけて貰えた

 

 

『死にたくないのか?』

 

 

死にたくは無い、初めて得た自由だ

みすみす逃すものか、こんな所で死んでたまるか

 

 

『私が"生きさせて"やろう、お前を使ってやろう』

 

 

前にも聞いた、大人の言葉

逃げようと逃げまいと…既に人に飼われた犬の末路なんて決まっていた

 

逃げた犬は他の人間の飼い犬になる

 

 

あまっとろい、蜜のような餌で釣られて───

 

 

 

『お前、名前は』

 

 

私は、セツナと呼ばれていた

元々、名前は無かった……あの子に付けてもらった名前

 

 

『ならばお前は今日より今生セツナだ』

 

 

私は名付けられた、そう定義された

 

 

その日から、私は"今生セツナ"だった

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。