建物から降りる
私とホシノでは格闘性能が違う、間違いなく私は負けてしまう
私が近接戦でできるのは基本的に少なく…ローラーダッシュの加速を活かしてすれ違いざまにアームパンチを叩き込むことくらいしか出来ない
「早いね」
「そうかな」
着地した瞬間的ぎゅるりと回転し、後退する
そのまま下がりながら引き金を引き続ける
黄金色の空薬莢が宙を舞い、そして砂漠に落ちていく
ホシノも私に着いてくる、ショットガンによる誘導や盾での殴打…等、フェイント等も入れるとキリがない攻撃だ
しかしまぁ、3年…2年?程同じ相手と戦闘をしていれば慣れてくるもの
…特に1年生の時のような"激しさ"が無くなったから、堅実な戦闘になる
「昔の無鉄砲さはどこに行ったのかな、あの無謀さ、戦って面白かったのに」
「今は守るものがあるからね」
「一度失った癖に?」
顔面に発砲、一瞬意識が飛びそうになる
気合いでそれを耐えて近距離まで入り込んだ彼女にアームパンチをぶち込む、顎に入った
ほぼ同時に起きたそれによって2人は吹き飛ばされる
しかしどちらもすぐさま体制を整え銃口を向け合う
私は彼女の目を見て笑った
「何だ、"あるじゃん"」
「……うるさい」
「私も君達が憎くて堪らない、分かってくれるよね」
「………さっさと終わらそう、お前を叩きのめして地べたを舐めさせてやる」
「こっちのセリフだね、二度とその減らず口二度と効けなくしてやるよ」
先に出たのは小鳥遊ホシノ
先程の行儀の良い堅実な攻め方はどこへやら、盾を持っているとは思えないスピードと無理やりな攻め方をしてくる
こっちの装備はターボカスタムでもライトカスタムでも無い
M16A1と通常装備しかない…まぁ言ってしまえば不利だ
そもそも、この戦闘に意味は無い
撤退しようとしたところにコイツが喧嘩を売ってきただけだ
ショットガンの攻撃を避け、差し込む隙を見て引き金を引く
確実に隙を見て撃ち込んだ弾丸は素早く構えられた盾によってその大半が防がれる
…全く奴に当たってないわけじゃない、このまま攻撃を続けよう
「しつこいね、追う理由がある?」
「過去を見なよ」
CQCの間合い
ショットガンを差し込んで射撃してきた、ショットガンの銃口をM16A1の銃身でずらす
脇腹に当たりそうだった、面倒な所に当てようとするな…
ローラを逆回転、瞬時に後方に下がり射撃
「そのトリッキーな動き、嫌いだね」
「私はお前のもっと激しい動きが好きかな」
そのまま回転して右から回り込むように射撃する
こちらはローラーによって"止まりながら"移動出来るが、相手は素足…もといローファーだ
逆どうやったローファーであんな動けるんだ?意味が分からない
そうして戦闘開始から数十分が過ぎた頃であった
「…」
「…っ」
同時に向け、同時に引き金を引いた銃器からカチリと金属製の音が響く
それは弾切れであり…そしてここまで景気よくぶっぱなしていた弾丸が既に尽きていたことを示すもの
双方、懐を見てもショットシェルもマガジンも見当たらない
「…まだやる?」
「ナイフを使ってまで?」
ナイフを引き抜いて構えるが、ホシノはダラりとしたマヌケな様子になった
それを見てやる気が失せてしまいナイフを懐に仕舞った
そもそも、弾切れであろうとなかろうとここで打ち止めだった
「ホシノ先輩!」
「どこまで行くの……誰?」
ふと、声が聞こえた
見てみればアビドス組がこちらに来ているのが見えた
ホシノが居ることに安堵して……私を見て警戒し始めた
…それもそうか、今は偽造の為にカイザーPMCのデザート迷彩では無くヘルメット団の物だ
傍から見ればヘルメット団と戦っていたように見えるのだろう
アビドス組が銃のセーフティを外し始めたので、私はローラーダッシュを吹かしてその場を離脱した
背中に感じる視線が、やけに冷たかった
〇
「…今のは……?」
「ホシノ先輩、大丈夫?」
「…うん、大丈夫だよー」
砂埃が立ち上がり、それが無くなる頃には既に彼女の姿は無かった
お得意のローラーダッシュだろう、あのスピードについて行くのは面倒くさい
弾切れだし、尚更面倒だ
「ヘルメット団の生き残り?ホシノ先輩にちょっかいかけてたの?」
「…いやぁ、私からちょっかいかけたの」
私はシロコの質問に対してヘニャヘニャ笑いながら答える
あいつはヘルメットを被ってヘルメット団の服も着たようだが、私にはごまかせない
その足の装備、なによりお前の右腕は…どうやっても私には隠し通せない
お前と私の因縁がいつから続いていると思っている?
私がアビドス高等学校の1年生の時から…お前との因縁は続いているんだ
誤魔化すことなんて出来ない、絶対な
「…取り敢えず、被害状況の確認とシャーレから送られた弾薬の確認をしましょう」
「ん、分かった」
「了解したわ」
アヤネの言葉と共に皆が学校に戻る
私も…彼女の居た場所を睨みつけながら、その場を去ったのであった
〇
「結果は大敗退、と?」
理事室、理事長は椅子に座って。私はそこで"休め"の姿勢で向き合っていた
もちろんヘルメット団を率いてアビドスを消耗させる作戦である
…それが失敗したことを報告しに来たのだ
「申し訳ありません、理事
ㅤ連邦生徒会より【シャーレ】という組織が手を貸したようです
ㅤ奴らは弾薬などの補給を受けたようです」
「シャーレ?シャーレ………何だそれは、しかし…連邦生徒会か…何故今になって…」
カイザー理事長は1人で何かを考え込んだ
そこに私の入る知識は無い、そういうのはこういう人の為にある
私の得意は戦闘だ、少なくとも…頭脳戦は無理だ
そう思っているとカイザー理事はうーむと声を鳴らしながら私に言った
「…まぁいい、兎も角ヘルメット団では意味が無かった、そうだな?」
「その通りです、練度も低い、協調性も無い…オマケに命令にも従わない」
「だろうな…契約は打ち切りとして……ふむ、やはり生徒には生徒をぶつけるべきか
ㅤ……ひとまず下がっていいぞ、後はこちらがどうにかしよう」
「了解です、理事」
ピシリと敬礼をして、その場を去る
少なくとも自分に課せられた役目はやりきった
後はいつ、命令が来るか…それ次第だ
結局、私は──逃げること以外、自分で思考することは出来ないのである