「……アハトアハトを人にぶつけるとは卑怯ですな」
帰り道の途中、不幸にもアハトアハトの攻撃を受けた黒見セリカは吹き飛んで気絶した
その様子を私は建物の屋上からバイザー越しに見ていた
倍率を変えられたり、赤外線モードに出来てたりと便利なバイザーだ
無論暗視等を盛り込んでいるせいで作成はかならコストが高いが…
少なくとも今は大丈夫だ、壊れる心配は無い
…にして、アハトアハトか
自分達が持っている銃では1人であっても気絶出来ないと思ったのだろうか?
念を入れてアハトアハトを使用した所か…どこにそんなもん持ってたんだ?
まぁ過程はどうでもいい、黒見セリカを誘拐することには成功したようだ
後は…奴らが彼女をどうするかというところだろう
「……こいつを………砂漠に……」
「……了解………屯地に……」
会話を盗み聞きした感じ、ここからどこかに運んでそこから砂漠に連れていくようだ
砂漠に連れ行ってどうするのかさておき、ひとまず後はどうにでもなる
懐からウェルロッドを取りだし、リーダー格の赤いヘルメットに発砲した
「いてっ」
リーダーの頭が少し揺れた
彼女は少し首を痛めたのか手で摩る
それに気付いた部下が不思議そうに質問した
「?…どうした?」
「なんか頭に当たったような…」
「気のせいだろ、早く行こう」
「…そうだな」
リーダーは石か何かだと思い、トラックに乗り込んだ
私はウェルロッドをコッキングしホルスターに戻した
やはり消音性は抜群だ、現代版のお陰で更に消音性が高まっている
…元より持っているハンドガンは違うぞ、元から持っているのは50BMG弾を1発だけ放つ中折式のハンドキャノンだ
今つけたのはGPSだ、…理事の手先であることを明かしてついて行っても良いが、ホシノに補足されたくない
あの砂漠でホシノに会いたくないというのが本音だ…駐屯地の場所がバレる
どうせ行動するのは明日だし、そうでなくとも私はついて行ける
…それに、任務を遂行出来たか出来なかったかを後から聞けば良い話だ
〇
「仲間を殺されそうになって、怒り心頭って所かな?」
遠目から見ても分かるくらいの蹂躙劇
空高く舞い上がるようにピンク野郎が飛び上がり、そこから盾を叩き付ける
装甲車両が嫌な音を立ててへしゃげる、中の人潰れてない?大丈夫?
他のアビドスメンバーも援護しているにはしているが…ホシノが先行しすぎてちょっと目に入らない
だってアビドスメンバーが攻撃しようとしている時にはホシノが叩き潰しているんだもの、何アレ
みるみる内に壊滅していくヘルメット団、結果は───
「……任務失敗、か」
横転するトラックに黒煙を吹き上げる装甲車両が見える
立っているヘルメット団ももう数名で…全員やられるのは火を見るより明らかだ
結果から見てわかるように、任務は失敗した
カタカタヘルメット団は最後のチャンスを無駄にしたのだ
バカな奴らだと思いながら無線を起動する
「セツナから理事へ一方通信、"請負人"共は任務に失敗した、繰り返す奴らは任務に失敗した…」
ヘルメット団から理事へ…いや、理事からヘルメット団へ通信が来るのは今日の夜くらいか?
一応契約にある期限まで待つと言っていた…結果は分かりきっていることなのに
さて、やることは終わった…さっさと帰ろう
ヘルメット団の残骸を一瞥し、私はその場から去った
舐めつけるような視線に………気付きながら
〇
「………」
『セリカちゃんの救出完了…皆大丈夫ですか!』
「ん、問題ない」
「セリカちゃんが泣いている以外は大丈夫ですよ〜♣︎」
「な、泣いてなんかないんだからッ!」
後ろで皆の声が聞こえる
でも、私にはそれよりも需要なことがあった
…奴が、この場に居たということ
戦闘中に変に視線を感じると思ったら奴がこちらを見ていた
ずっと見ているだけで何もしてこない…何もしない
恐らくヘルメット団に依頼した黒幕からの差し金か、何かか…
───となると、黒幕はカイザー以外にありえないのだが
しかしこれを皆に言ったところでしょうがない
あくまで彼女をカイザーの人間だと知っているのは私だけ
それに、それを理由にカイザーを責めたって…なんの意味もない
今すぐとっ捕まえてやりたいが……仕方ないものだ
戦闘が終わって少しした後、帰っていく彼女を眺めながら…私はそう思っていた
『皆さん、帰還する前にヘルメット団の銃を集めてくれませんか?
ㅤ2、3丁くらいで構いませんから』
「?、どうして?アヤネちゃん」
『少し、調べたいことがあるので…お願いします』
「うへー、それをさっさとやって帰っちゃおー」
視線を何も無い砂漠から後輩に向け、気だるげにそう言った
どうやらヘルメット団の落とした銃を回収するらしい
見たことない銃…というより、資金があまり無いはずのヘルメット団が良い物を使っている
どうやらそれを調べてヘルメット団の背後に居る奴を調べるようだ
…自分が背後に居る者が何か、大体察しがついているせいか……妙に、罪悪感を感じてしまった
〇
「…便利屋への報酬引渡しですか?」
「そうだ、奴ら間抜けなことに口座を凍結させられているらしいからな」
後日、私はまた理事室に呼ばれた
今度やることは便利屋への報酬支払いのようだ
…雑用かそうかはどうでもいいとして、銀行口座の凍結か
便利屋がどこの学園かは兎も角、そういうのが禁止されている学園だろう
そこらの事情は知らないが…まぁどうでもいいことか
そう思っているとカイザー理事はガシャンとトランクケースを取り出し机に置いた
私はそれ受け取って中身を見てみる
「…木っ端に渡すにしては量が多いですね」
「初回はこんなものだ」
割と中身が詰まっている、なかなかの量だ
初回料金はかなり高い…次の依頼代がどれくらいかは気にしない
私が払う訳でも貰う訳でもないのだ
「明日の晩までに届けろ」
「了解です」
─────明日なら、柴関ラーメンを食べてから行くか