「便利屋は依頼に失敗しました…恐らく電話がそちらに行くでしょう」
『ふむ……まぁ一回目はいいだろう、2回目は…
ㅤ兎も角ご苦労だった、次の命令まで自由にしていろ』
「了解しました」
撤退していく便利屋を双眼鏡で見ながら理事長へ電話をする
最初は不穏な空気があったが、一応大丈夫のようだ
とりあえず次の命令までフリーになった……さてどうした物だろうか
一先ず柴関ラーメンに行き、このお腹の減りを無くすとしようかね
今日は黒見セリカは居ない
先程アビドス校舎が攻撃を受けたからか……そもそも今日はバイトの日では無いのか…
そこは知ったことでは無い、どうにでもなっていればいい
「あいよ!柴関ラーメン細固麺だ!」
「ありがとう」
……細固が、一番美味しいかも
太い方を食べていないが私はそう思った
麺とスープの絡みがとても良い気がするのだ、次いでに硬さもこれが丁度いい
太くて柔らかいよりは……断然美味しそうだと、私は思う
……今回も、箸は片方に寄って割れた
麺を啜りながら、私は命令があるまで何をするか考える
砂漠にある駐屯地に戻って装備を整えるのも良いかもしれない
ローラーダッシュで簡単にここまで戻ってくることが出来る
もしくはブラックマーケットで冷やかしをするのも良いかもしれない
適当に品物を見るだけでも時間は過ぎていく、未だに私には見慣れない物もあったりするのだ
時間潰しには……まぁブラックマーケットの方が良いかもしれん
……先に駐屯地に戻ろう
装備を整えてから、ブラックマーケットで時間を潰そう
ターボカスタムに変えて…消費した分の金や弾薬の補充…
「……やることが、多い」
文句が漏れる
あっち行ったりこっち行ったり……面倒な事だ
未来が見えれば、面倒に動くこともないのだが
残念だが、私にはそんな能力は無いため…面倒事をやるしかないのである
ため息をついて残った汁を全て飲み干す
こってりとした油にも最近慣れてきた、とても美味しい
「美味しかった」
「おう!また来いよ!」
笑顔で手を振ってくれる大将に代金を渡して私は店を出る
行く場所は駐屯地……そこ以外に行く場所は無い
さっさと装備を整えてブラックマーケットに行くとしよう
私は僅かに口の端に着いた油を拭い取りながら、その場を去るのであった
〇
「ようやく帰ってきたのか、セツナ」
「またすぐに出るよ、ミライ」
ハンチング帽を被ったカイザー兵士、ミライ
久しぶり帰ってきた私を見て笑顔で歓迎してくれた
そんな彼女にすぐに出ることを伝えて私はターボカスタムに装備を切り替えていく
「外で動けるってのは羨ましいぜ、わたしゃずっと訓練ばっかさ」
「近い内に実戦が来るんじゃないの?」
「あー、多分"もうすぐ"だろうな」
勘だけどな、と彼女は笑う
私はその勘が当たらないとは思わない…最近は状況が変わりつつあるのだ
ちまちまとしか行われなかったヘルメット団の襲撃も、撃退されて…
あの大人が来てから、何もかも変わっている
「【シャーレ】っのはスゲェな、来るだけで状況が変わる」
「……そこまで過大評価する必要は無い、たかが大人1人の組織だ」
「そういう割には目が全く緩んで無いぞー」
「…緩ませる必要も無い」
過大評価?馬鹿言えそんな訳が無い
あの男の指揮能力は常に命令される側の人間である私が見ても凄まじい
今までアビドス側の動きといえば、個々がほぼ独立して動いていた
後方からの無線があったとしてもそこまでの連携はなかった
しかしあの男が来て指揮を撮ってからは違った
ヘルメット団にて指示をしようとした時、そして先程の監視の時に痛い程分かった
奴が居ると相手の動きがとても滑らかに……水のように動きが掴みにくくなる
数で圧倒していてもいつの間にかこちらが崩されていたりと…
まるでゲームの主人公のように軽々と立ち回って来るのである
こちらがヒイコラ言ってやっていることも涼しい顔で終えそうだ…腹が立つ
「ターボカスタムで行くのか?」
「…戦闘に有利な手札で行きたい」
ミライは会話を切るようにそう言ってきた
私が今換装している装備、【ターボカスタム】についてだ
足に補助バーニアを追加し、スピードの上昇を図ったカスタムだ
これによって通常よりもより早く動けると言う訳である
それにプラスして腰にガトリング砲と三連ミサイル、そして肩には7連装ミサイルポッドを装備している
武装の豊富さは他の追随を許さない程だ、後に別のカスタムが出なければの話だが
「私も着いてきたいがねぇ、お前みたいに許可はねぇんだよな」
「ま、その時になったら来るでしょ」
私はそう言って、予備の弾薬などを持ってその場を出た
行くところはブラックマーケット…そこで命令があるまで待機だ
〇
ブラックマーケットは言ってしまえば肥溜めだ
クズとクズがせめぎ合い、貶めあい……そしてそのお零れを弱者が掠めていく
手柄の横取りなんて当たり前、ハイエナが群がるクソのような場所
ただこんな場所でも秩序はあると言うから恐ろしい
マーケットガードとかいう奴らが秩序を作っている
「来たとは言え…」
で、そんな場所に暇つぶしに来た馬鹿ではあるが実際になるをするかと言われれば何も無い
ブラックマーケットに咎められとしても、カイザー所属だから言い訳すりゃ何とかなる
……本当に適当に、何か見て回ろうか
適当にぶらつけば、まぁ聞こえてくるは暴言の数々
そして2分刻み程度に聞こえてくる銃声…いやインターバルもっと短いか?
キヴォトスは銃社会の為、そしてヘイローの加護によって私達は銃弾を受けても痛い程度で済む
それゆえ引き金の軽さは異常なのだが…まぁブラックマーケットともなると空気よりも軽い
小さな事でも銃を撃ちまくる馬鹿どもなのだ、仕方ない
1人ウザったらしいからと黙らせても、どうせそれが別の火花となるだけ
もしくはそいつが何も知らずに復讐しに来るかだ
極論は何もしない、だ
関わらずひっそりしていればいい…出来ればだが
適当にぶらついていると、少し小腹が減った
いつもなら気にしない程度の空腹、今回もその筈であった
ちょうどその時、たい焼きの匂いがしてきたのである
「…少し、お腹減ったな」
最近のマイブームは美味しい物を食べること
…たい焼きも美味しいのだとミライは言っていた
であれば対象だ、ブラックマーケットだからか少し高いけれども問題視する程でもない
私はふらりと匂いのする方向へ行き……たい焼きを買うことにした
「いらっしゃい、何にするかい」
「……あんことクリームじゃ、どっちが美味しい?」
「そりゃ人次第さね、お前さんがどちらか好きか知らんが…どっちも買ったらどうだ?」
「のった」
あんことクリームのたい焼きがあるらしいが、今まで食べたことの無い私には美味しさなど分からない
だから尋ねることしか出来ない、帰ってきた答えはどっちとも買えだったが
出来るまで、少し待つとしよう────
「…こんな所に来るなんて、何か用かな」
M16A1を片手で構えた
銃口の先には銃口……ショットガンの銃口
見覚えのある、白とピンクのショットガン
「"暁のホルス"、…いや小鳥遊ホシノ、お仲間を連れて何にしに来たのかな」
「ちょーっとした野暮用だよ…君がいるとは思わなかったけどねぇー」
そう面倒臭く喋る彼女の目には、確かに…獣のようなギラついた瞳があった
昔のような輝きはないが……しかし劣らない輝きを持っていた
……物騒な奴だな、後ろのアビドスメンバーが引いているぞ