休日
ふあぁぁ……よく寝た。……んん?やけに外が暗いですね。って………………まだ朝の三時?いやですねえ、折角の休日なのにこんな早朝に起床してしまうだなんて。
どうしましょうか…………取り敢えず着信がないか確認しますか。セミナーからの連絡は……無し。ユウカさんからも連絡も……特に無し。
──久しぶりに純粋な休日が楽しめそうです♪
10AM
おはようございます先生。こんな所(ホビー店)で会うなんて奇遇ですね。まあ……なんで居るのか想像はついてます。その買い物袋一杯に詰め込まれたプラモとロボット玩具を見れば考えるまでもありません。
というか、あれですね?またユウカさんに叱られてしまいそうですね。
まあ、流石に先生の私生活にとやかく言うつもりはありませんが、財布の紐はしっかりと締めておくべきですよ。流石に朝昼晩10日連続でコッペパン生活は笑えませんから。
え?『なんで知ってるの?』ですか?ユウカさん経由ですよ。ほら、一週間前に当番だったじゃないですか。それで、です。
…………まあでも、気持ちは分かりますよ。せっかく稼いだお金、存分に趣味に、娯楽に、注ぎ込みたいですよね。私もそうです。だから先生と同じく両手に花ならぬプラモデルな状態な訳ですが……
『ぐうぅぅぅ』
……『お腹空いてそうだし、そこのモーニング店で何か食べる?』ですって?いえ、先生にご迷惑をお掛けするわけにはいきません。それに今月もおそらく危ういのでしょう?……え?そうでもない?
『昨日が給料日だったからね』
……成程どうりで、そこまで散財できたわけですね。
それじゃあ、折角の御機会ですし、お互いの近況報告も兼ねてご馳走になってもいいですか?
ふふ。それじゃあ、ご馳走にならせて頂きますね。先生。
11AM
ふぅ。やはり朝食は毎朝欠かさず摂るべきものですね。最近は定期試験も近く、生活習慣がやや乱れてしまっているのかもしれません。先生の方はどうです?徹夜を控えるようにはなりました?エナドリばっかり飲んだりしてませんか?
『善処してるよ』
そうですか。なんとも煮え切らない解答ですが、努力しているのなら良いです。何事も小さな一歩から。下手に目標を高く据えると、かえって長続きしませんからね…………まあ、世の中にはどれだけハードルを下げても、長続きしない事というものがありますが。
『……学校のこととか?』
……まあ、そうですね。詳しくは言えませんが、ちょっと最近
それにこれはあくまで私個人の問題ですし。私自身が踏ん切りをつけなきゃいけない感情なんですが、いやはやどうにも………………
『そういえば、最近君と似たような悩みを持つ子と会ったよ』
私と似たような?なんて子です?
『黒崎コユキって子』
……………………へえ?不思議なこともあるものですね。その女、うちの生徒ですよ。最近碌に姿を現さないと思ったら、先生の所に居たんですね。
それで、その子はどんな悩みを抱えていたんです?まさか、セミナーにバレないハッキングの仕方とか(笑)?
『人への謝り方』
………………はい?今なんて?
『大切な人への謝り方を教えてほしいって言っていたよ。余程酷い目にあったのか、会った時は両目を腫らしていたね』
……先生、悪いことは言いません。とっととその子を元いた場所に捨ててくることをお勧めします。目を離している隙に……いや、今こうしている間にも先生の口座をハッキングしてなけなしの貯金を盗み取ろうとしている筈です。ああ、別に先生は何もしていただかなくても大丈夫ですよ?あの寄生ちゅ……彼女の居場所さえ話してくれれば、後は私が責任をもって処理しますので。
ええ?いやですね先生、別にそんな野蛮なことをするつもりはありませんよ?ただ彼女の肩にポンッと手を置いて気軽な挨拶を交わして、今まで何処で何をしていたのかじっくりと、確実に、聴き出すだけですから。
『……とてもそれだけで済むような雰囲気じゃないね?』
アハハ!雰囲気?雰囲気ってなんですか。常に大切なのはどう行動するかです。私は私なり真剣に考えて常々行動しています。ましてやコユキさんはミレニアムサイエンススクールの一生徒。生徒個人が過度に先生と接触を持たれると他校からの批難が先生、ひいてはこちらの学園にまで飛び火する可能性すらある。そうなってしまっては、最早コユキさんの個人的な相談なんかに乗っている場合じゃなくなるでしょう?今以上に仕事が増えてしまうでしょう?残業は辛いですよね。分かります。規則で定められた時間分の仕事を終えたというのに、残業という行為自体を規制する規則というものは殆ど無いんですから。せっかくできた自分の時間を、私用以外の何かに費やすことの虚しさは私も日頃常々に感じてきました。ましてや徹夜なんて、論外です。あれは自己破壊以外の何物でもはありません。あくまで、お金を得るための一手段である『仕事』の為に寿命と精神を磨耗させなきゃいけないだなんて、馬鹿馬鹿しいと思いません?…………まあ、そんな持論も、デッドラインという名の厄日のせいで全て唾棄して仕事に没頭しなくてはならないというのが結局のところ行き着く現実な訳ですが。
……少し熱くなってしまいましたね。すみません。でも先生だって好きで残業をしている訳では決してないでしょう?コユキさん一人のために自らの時間を削る必要性なんて有りませんよ。此方で充分対処できますし、彼女の身に起きたであろう不幸は、その尽くが自業自得なものなのですから。
『……成程。君がコユキのことをどう思っているのか、少しだけ分かった気がする』
えっ……と、どういう意味です?
『2日前に、ある生徒から相談を受けたんだ。君がコユキにした事について、ね』
……その感じだと、何か物証を手に入れているようですね。有るのなら、見せてもらえます?
『あまり見せたくは無いけど……見ないと君は納得しないだろうしね。はい』
先生から手渡された端末には、青く表示されたURLが記されていた。それをトンッとタップすると、私とコユキさんの4日前のやりとりが再生された。
動画はコユキさんが泣き始めた頃から録画されており、最終的に私が彼女に銃口を突きつけ、場を後にする場面までを収めていた。
…………これ、撮ったのはノアさんですよね。別に誤魔化さなくてもいいですよ。画面端に僅かにですが白い髪先が映ってましたし。……前々から感じていた事ですから。近頃の、彼女の私に対する態度に何か違和感があるなあ。妙な距離感があるなあって、感じてましたから。
でもこれは流石に……ははは……盗撮されるだなんてショックですね…………ましてやノアさんに。
それで……先生は私にどうして欲しいんですか?まさかコユキさんに謝れだなんて言うつもりはありませんよね?確かに、今思えば彼女への物言いはほんの少しだけ……具体的には1μmだけきつかったものもあるかもしれません。が、別に事実からは逸脱した事を取り上げて責めたわけじゃありません。
学園の皆が、彼女の身勝手他ならぬ行いの為に、する必要もない苦労を払わされた事は事実ですし私だってその時の当事者です。だから──
『彼女を寄生虫扱いしたのかい?』
……ええ。そうです。正直言って、スカッとしましたよ!ええ、本当に!なんなら、彼女に銃口を向けた時、実際に引き金を引いてやれば良かったとすら思っています。これまで好き勝手やられてきたんですから、此方にもやり返す権利はある筈でしょう?
復讐はダメ。仕返しはダメ。だなんて言う人たちも居ますが、それはただの正論。そして正論とは、実際の当事者達と似た経験を持たない人間が述べる、感情論を度外視した理想論です。
だから、私は自分が間違ったことをしただなんて思ってはいませんよ?全部彼女の自業自得ですから。
え?『ユウカ達も君と同じ思いかい?』ですって?
…………さあ?分かりません。ですが、
『つまり
…………ええ。そうですね。その通りですよ。腹立たしい事に。全く理解不能です。ユウカさんもノアさんも、どうしてあんな子のことを心配したりするんですか?いえ、前々からお二人とも心優しい人達だと思ってはいましたが、ここまでとは思いしませんでした。
『それが彼女達の魅力なんだろうね』
ええ確かに。私もそんな魅力に助けられてきました。若輩な身として見習うべきものだと。でもそれとこれとは違います。
先生や私がそう認識したとしても、あの寄生虫…………
コユキさんにとってはただの免罪符のようなものなのですから。ユウカさん達が優くて、見捨てないから、『金が足りない。盗んでしまおう。バレても許して貰えるし』と考えて、自制しなくなる……そのせいで、二年生になってからというもの何度徹夜する羽目になったか…………思い出したくもありません。
ましてや、タチの悪い事にコユキさん本人は元セミナーでした。その為、学園の機密上の理由でどんな重犯罪を犯し回ったとしても、矯正局送りにはできないし、というか本人自身の倫理観がカスですし!すぐ開き直るからどれだけ厳重注意しても悪態で返してくるし!反省室送りにされても『可哀想だから』とユウカさんに頼まれた差し入れを持って行った時はさらに物資を要求してくるぐらいに厚かましいし!もううんざりなんですよ。あれはもう、まるで倫理観がカスみたいな女。略してマリオなんです。私は最初、彼女のことを寄生虫などと称しましたが彼女と比べれば、寧ろ寄生虫の方が可愛らしいとすら思えてきます。何故なら、寄生虫なんてものは手術さえすれば摘出できますし、人の金を簒奪する事もない!人の言葉を話す事も無ければ、言葉で態度で、此方を煽り立てる事もしない!わあなんだ、間違ってた!寄生虫とは本当は素晴らしい生き物だったんですねそうですね先生?!
ハァッ……ハァッ……ハァッ…………もうコユキさんの話題はいいですか?折角の休日を彼女の話題で埋め尽くしたく有りませんっ……ハァッ
『えっえーっと、最後に一つだけいいかな?』
ハァッ、はぁ何です?
『君は結局、コユキにどうして欲しいんだい?』
ハァッ……ハアァァ……単純ですよ。
遠ざかって欲しいです。なるべく遠くに。それこそ見えなくなるぐらいに。
因みにコユキは主人公ちゃんの脳内ブラックリスト第二位に登録されています。第一位や三位について、後々回想なり本編のストーリー沿いになりで登場させていく予定です。
主人公…もといカナエの愛銃ってどれがしっくりきますかね?自分としてはどれも似合うような感じなんですけども
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