100?いや、101カノだ!オレがアイツに堕ちるなんて有り得ない(完堕済み) 作:メガネズミ
原作共々数少ないシリアス回でございます…オチはまぁはい。
愛城恋太郎は覚悟を決めていた。自分の彼女である花園羽香里を取り戻すため。現在、羽香里の母親である花園羽々里の手によって、2人は無理やり引き離されそうになっている。
金。権力。大人として強大な力を持つ羽々里に対して、恋太郎の…一介の高校生が…こどもが出来る事など、何もない。
だが、彼は。愛城恋太郎は諦めなかった。彼女である羽香里を幸せにするため。そのために全てを賭けて、精一杯出来ることをする。これが彼の出した結論だった。
なんとかして羽香里を屋敷から連れ出し、2人で逃亡する。あまりにも無謀な計画。近くに居るだけで仲間を危険に晒すと悟った恋太郎は、『いつか必ず帰ってくる、だから待っていてほしい』と伝えた。
仲間の1人は答えた。『また会えるかも本当に分からない相手を待ち続ける事はできない』『だから自分も行く』と。
そう。彼の覚悟に応えた仲間達は、己の危険を顧みる事なく協力を申し出た。仲間達も恋太郎と同じ高校生。相対する羽々里のように、金や権力がある訳ではない。ただ一つ。花園羽香里を助けたい。
その一心に突き動かされた恋太郎一行は、羽香里の待つ屋敷へと向かう事となったのである…!
なお、上だけ見るとすっごくまともな恋愛モノに見えるかもしれないが。この仲間達というのが全員、恋太郎の彼女であり、一行の名が『恋太郎ファミリー』という点において相当イカれている事が分かるだろう。
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「結局清辺津は来なかったのだ…」
「疑問…清辺津河流が返信すらしない薄情な人だとは思えない」
俺もそう思う。あいつは…清辺津河流という人間は、こういうときに真っ先に俺の話に乗るくらいには仲間思いだ。
ブーケの時だってそうだ。あいつは役に立てなかったと自分を卑下していたけれど、誰かのために一生懸命になれる人が役立たずなんてあり得ない。やり方が間違っていたかもしれなくても、その想いが無駄なはずがない。
それに返信が来ないのは変だ。あいつは既読スルーなんて絶対にしないし。秒で返信することの方が多いくらいなのに。…まさか。
「そういえば俺が羽香里の屋敷に向かってた時、後ろから誰か着いてきてたような…」
「それが清辺津かもしれないのだ?」
「だとしたらアイツ…まさか…単身乗り込んだりしてないわよね…」
「[先行隊として乗り込んだでやんすか?]」
可能性は…0じゃない。確かに周りと協力する事を惜しまないやつではあるけど、1人で行くべきと判断した場合は勝手に突き進んでしまう事もある。
今回みたいな時だと…俺が皆を巻き込みたくなかったのと同じように、あいつもそう考えて1人で乗り込んだのかもしれない。
ふと、遠くに人影が見えた。あっちは羽香里の家のある方角。影はフラフラと足元がおぼつかない様子だ。少しずつこちらに近づいてくる影。
見覚えのある姿だ。けど、いつもとは明らかに違う。美しい河川を思わせるようなエメラルドグリーンの綺麗な髪も、あまり日に焼けてない白い肌も、男の時から変わらず着ている普段着も。その全てが血と泥で汚れ、ボロボロで、傷だらけだった。無数にある傷跡から流れる血はまだ新しい。
「……ぅぐ…あ…!」
「せ…清辺津…?」
こちらを見つけた清辺津は安心したのか、その場でガクンと膝を突く。その姿が今にも消えてしまいそうに儚くて…気がつけば抱いて身体を支えていた。
「ボロボロなのだ…!」
「アンタやっぱり…1人で乗り込もうとして…⁉︎」
「[一体誰にやられたでやんすか…?]」
清辺津の周りに次々と皆が集まってくる。囲まれた当の本人は苦痛に耐えて歯を食いしばっている。
「ぐッ…!」
「もう良い喋るな…!こんなに傷ついて…!」
「良い…んだ…!お…オレも…行くから…!今度は…皆一緒なら…!」
「怪我人を連れたまま進むのは非効率的…足枷になりかねない」
「…ッアンタねぇ!確かに清辺津はボロボロだけど…それでも羽香里を助けたい気持ちは私達と同じなのにそんな言い方…!」
そうだ。このまま連れていくべきじゃない。これ以上大切な彼女に、友人…いや、親友に。傷ついて欲しくはない。欲しくはないけれど。
「……頼む…オレだって…まだやれるから…!」
必死に俺の服をギュッと掴むこいつを。突き放すべきだと思えない。今ここで突き放せば、またこいつは自分を責めるだろう。置いていく理由がなんであれ、この状況で置いていくのは役立たずだと言っているようなものだ。
「…凪乃は優しいな。嫌われるかもしれない言い方でも、あえて自分だけ突き放す言い方で守ろうとして。けど…それじゃ嫌なんだろ、清辺津?」
コクンと頷く清辺津。小さくて、弱くて、ボロボロの体だけど。その目に宿る強い意志は俺たちに一歩も引けを取らない。
「オレだって…オレだって…花園さんを助けたいから…!」
「…前言を撤回。人数が多い方が成功率も上がる…協力者は多いに越した事はない」
「…決まりだね。行こう皆で…羽香里を迎えに!」
待っててくれ羽香里!俺達が必ず…助け出して見せる!
「…ん?結局清辺津は誰にやられたのだ?」
「えっとその……い…行けば分かるから…」
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どうも清辺津です。いやぁ…我ながらボロッボロだね全く。まさかあんな伏兵が居たとは思わなかった。上手い事現地に着くまでは誤魔化せそうだけど…バレたら微妙な空気になりそうだ。まぁしゃーない。あんなドシリアスな空気出しといて実際は…だからな。
恋太郎におんぶしてもらって屋敷に到着。鉄柵を越え、敷地内に入った事で緊張感がより一層増す。オレはさっき敷地にすら入れなかったからな…。
恋太郎がゴムボールを取り出して窓に向かって投げつける。惜しい。少し下に向かってしまい、跳ね返ったボールがどこかへ消えてしまう。夜の闇の中では仕方あるまい。手分けして探していると、少し離れた場所にボールを銜えたヤツが現れた。
白い毛並み。傲岸不遜な目つき。幾度となくオレの身体を傷つけた爪。見た目以上に素早い動き。そう…こいつが…!
「この…ッ!」
「ミニャッ!」
全身を使って飛び掛かるが、軽く躱された挙句手の甲を切り裂かれる。まただ。再び身体に刻まれた線から、たらりと血が流れる。再び飛び掛かろうとしたものの、床で足を滑らせて仰向けに倒れ込むオレ。
転んだオレを嘲笑うように腹に軽々と飛び乗り、悠々と歩を進めたヤツはオレの首元に柔らかい肉球のついた爪を添え、グッと押し込んでみせた。首からはつぅっと血が流れる。フニフニと肉球を押し付けて戯れているように見えるが、凶悪な爪が首筋に食い込んで傷を刻んでいく。
また負けたのか、オレは。悔しさのあまり涙が出てくる。近くの茂みからガサガサと音が聞こえた。まずい。このままだと誰かに見られてしまう。嫌だ。こんな姿見られたくない。頼む。出来ればおとなしい面子であってくれ。頼む…頼む…!
「ここにもないのだ…あッ!」
…あっ。
「せ…清辺津が…金持ちの猫相手にボロ負けしてるのだーッ⁉︎」
あーあ。バレちゃった。
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「猫に負けてあんなボロボロになってるとかどんだけ弱いのよアンタ⁉︎」
「ただの猫相手にあんな負傷だったのだ…⁉︎」
「あまりにも戦闘に向かない生命体」
「[へへぇ…こいつ猫より弱いでやんすかアニキ!]」
「大怪我じゃなくて良かったよ…!」
いや言い訳させてほしい。そもそもオレは持久力がない事が弱みだ。だからって別に短期戦が強い訳でもないのだ。すばしっこい相手は特に苦手だし、人間の肌では防御しきれない斬撃(引っ掻き)相手では太刀打ちできない。
…つまりそういう事です。はい。だって…太ってたから捕まえてさっと敷地に入れるだけだと思うじゃん?全然捕まんないんだわあいつ。しかも躱した後に斬撃(引っ掻き)を繰り出してくるし。
今のオレの格好?泥だらけ(滑って転んだ)で血だらけ(引っ掻き傷と転んだ傷)。全身ボロボロ(服は転んで擦り切れたり爪で裂かれて破かれたり)とはよく言ったもんだ全く。
「けど見た感じ…清辺津に懐いてるのだ?」
「傷口を舐めてるみたいだし…傷つけるつもりはそんなにない?」
「いやいや…絶対こいつはオレのこと攻撃する気だって!じゃなきゃこんなに傷が出来るわけ…」
「猫の爪が普通より伸びている。こう言った家の猫の場合、切り揃えられているのが自然。恐らく偶然爪が切られる前の状態だっただけ。この猫は爪が切り揃えられている時と同じ感覚で戯れて遊んでいた…そういう事になる。」
「…は?」
いやいやおかしいって。だったらオレの服をボロボロにした連続引っ掻きや噛みつきは…!
「引っ掻きは爪研ぎのつもり、噛みつきは…ぬいぐるみ等に対する激しい愛情表現の一つ。」
…バカな。つまりオレは。こいつと戦っていると思っていただけで。ただ戯れ合うだけでしかなくて。戦いの土俵にすら…立っていなかったってのか…⁉︎
「オレは!弱いっ!」
「周知の事実なのだ」
「[弱いもの同士で同盟を組むべきだと思わんかね]」
「戦闘要員としては非合理的」
「戯れる猫に負けてたってもはやどういう弱さよ⁉︎」
当たり前だけど皆から総ツッコミを食らった。だってさぁ…あの猫と相性最悪だったから仕方ないじゃん?ね?
その後は皆が凄かったと言わざるを得ない。オレの奮闘で手にしたボールを使って猫を敷地の端へと誘き寄せ、それを見た警備員が猫の方に構っているうちに潜入スタート。猫が居るという事はペット用の出入り口があるという事。ペットドアの存在を口にしただけでなく探し当てた上、正確に小石を投擲し続けた栄逢さんが爪を負傷するも、玄関のロックを開ける事に成功。この人やっぱり凄い。
続いて立ち塞がる強敵は金持ちの家の犬。あの猫より数倍…数十倍は強いであろう巨大な犬に成す術が無いかと思われたものの。1人犠牲として残る覚悟を決めた好本さんの類稀なる弱者としての才能と薬膳さんの速攻睡眠薬のおかげで2階からぼたもちコンボが成立、強敵である犬の突破に成功する。
更なる関門として無数の見えない赤外線センサーによる防壁が登場するも、薬膳さんの『赤外線しか見えなくなる薬』を目に差した事で、本来見えないセンサーの線を見ることが可能になった恋太郎と院田さんの膂力を用いて壁を突っ張る事で、センサーが反応しない天井付近を突破。
後は恋太郎と院田さんで部屋まで行き、花園さんを連れて脱出するだけ。残ったメンバーは脱出の準備を整える…はずだったのだが。
『ジリリリリ‼︎』
突如として警報が鳴った。誰もセンサーには触れていないし、恋太郎達が進む先にもセンサーがあったようには思えない。一体なぜだ。
「なんで警報が鳴ってるのだ⁉︎誰も触れてな…あッ!」
猫ォ!お前…お前なぁ…‼︎なんでそういうタイミングで居るんだ…!さっき警備員に連れてかれたばっかだろオイ!
「やっぱりお前か…いや。さっき人の影らしきものが見えた…誰か居るな⁉︎」
まずい。咄嗟に隠れたのは良いが、光で伸びた影までは隠しきれなかった…!
「やばいのだ…このままだと全員見つかっちゃうのだ!」
「人が居るのがバレた以上、誰か1人が囮になるのが合理的…けど」
「[ひぃー!あっし捕まるのは嫌でやんす!]」
どうする…この中で警備員から逃げきれそうなのは栄逢さんだけだ。けど、それだって1対1ならの話。屋敷内で複数人から逃げ回るのは不可能だ。
…なるほど。この場合考えるべきは逆だ。最も逃げきれないのは誰か。薬膳さんは大人に戻れば速く走れる、栄逢さんは言わずもがな。残るはオレと好本さんだけど…まぁ負傷したオレの方が遅いのは言うまでもないだろう。持久力も無いし。
まぁこんなもしもを考えるのもほぼ無意味だけどな。そもそもオレが行く前提だし。ただこれは後で理屈づける時に必要だろう。この時はこうするしかなかったって言い訳のためだ。
「囮役は勿論オレが行く…皆は恋太郎にとっての大切な人達だからな」
「何言ってるのだ清辺津⁉︎清辺津だって恋太郎にとって大切な…!」
「[無茶な特攻はよすんだ!]」
反対意見が聞こえる前に身を乗り出して、警備員に見えるように逃げ始める。
「居たぞ!侵入者だ!」
「こっちだ!小柄だぞ!」
別にただで逃げようっていうわけじゃない。お金持ちの家という事は高額な家具があるはず。下手に壊さないように慎重にオレを追いかける警備の人相手なら、隠れながら行けば時間を稼げるはず。
それに、こっちで警備員を少しでも引きつければ薬膳さん達だけじゃなく恋太郎達の脱出だってやりやすいはずだ。今のオレでやれるだけのことを精一杯やる。きっと恋太郎なら、そう言うだろうから。
「行っちゃったのだ…」
「…出遅れた以上は囮を最大限活用しないのは非効率的。急ぎましょう」
「[御意]」
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数分後。
やっぱりダメでした。警備員には勝てなかったよ…。今は全力で動いた反動でかけらも動けなくなってるので、警備員に連れていかれてるところだ。
話を聞く限りでは、恋太郎達も捕まってしまったとのこと。もっとオレが早く囮になっていれば。もっと運動が出来たなら。もっと。もっと。そんな後悔が脳裏をよぎる。
頼む恋太郎達。無事でいてくれ。そんな淡い期待を抱いたまま、巨大な扉の前に着く。ゆっくりと開いていく扉。空いた部屋から聞こえてきた第一声は、多分誰が聞いても理解の出来ない言葉だったと思う。状況的にも、発言者的にも。
「恋太郎ちゃん私と付き合ってちょうだいッッ!❤︎❤︎❤︎」
………………???????????????
えっと…何がどうなってこうなったんです…?
「え えっと…あの…その…」
「頭どうかしてんのか⁉︎」
「や…屋敷への侵入者を捕縛しました、奥様。」
「…ぐぇ!」
…どうしてくれるんだこの空気。
マジ?このまま次回行くの?この流れで?
…マジで?
…マジです。
話の優先度はどっちがいいか教えてくれよな!
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本編を進めてほしいのだ!
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掲示板回を一区切りつける方が効率的