トランスマイグレードダンガンロンパ みんなのコロシアイ文化祭   作:海原五月雨

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Prologue:コロシアイは絶望のあとでー②

[第一フロア/コウバイブ]

 

「あー、あー!マイクテスッ、マイクテスッ!校内放送、校内放送!」

それは、突然に鳴り響いた。

希望ヶ峰学園から入学通知が届き、急いで準備して、いざ門をくぐったら別の場所にトリップだなんてそれだけでも笑えないのに、更には不快な謎の声まで。頭が痛くなる話だ。『超高校級の安楽椅子探偵』は現場に出る仕事ではないのだけれどね。

「...今の声は。」

僕は周囲を見回す。柊さんは不快そうに顔を顰めているし、早川さんや元鐘さんは不安そうに自分の手を握っていた。優さんは...何も分かっていなさそうだ。僕は記憶喪失としか聞いていないのだけれど、ぼんやりとしているのは元からなのだろうか。

「新入生の諸君、これから開会式を執り行う!『食堂』に集まるんだ!」

「食堂...か。」

眉をひそめたままの柊さんがボソリと呟く。

「...行くの?」

早川さんはこちらを見て不安そうに言った。

「今は情報が欲しい。みんなで行こうか。」

僕が言うと柊さんは納得してくれたのかこくりと頷いてくれた。

 

[第一フロア/ショクドウ]

 

食堂には既に僕ら以外の全員が集まっていて、各々周りと会話しながら先程の放送の声の主を待っているようだった。

「これで全員か。」

「何が始まるんだろうねっ?」

「希望ヶ峰のレクリエーションは随分独特やなぁ。」

「さっさとここから出して欲しいんだけど!?」

「くく...天より振りし神の声...その正体は何者なのか...。」

「神の声なら正体は神なのでは??」

「...開会式って...なん...でしょう...?」

「確かに、気になる言い方でしたね。」

太田さんとアステリアさんの最もな疑問に、みんなが同意しようとした時だった。

「おはよーございます、新入生諸君!!」

食堂のテーブルの上。白と黒の2色に半分で別れたテディベアがそこにはいた。首に何故か蛇を巻いていて、髭を生やしていること以外は普通のテディベアだ。

「わーーーーぬいぐるみだーーーー。」

「面白いネ!」

「愉快だネ!」

「そこ!誰がぬいぐるみだ!!」

テディベアが喋った。

「ギャァァァァァ!ぬいぐるみが喋ったァァァァ!」

驚いたのだろう玉稀さんは隣にいた中田さんに抱きついた。...やんわりと引き剥がされている。

「だーかーらー!誰がぬいぐるみだって言ってんだよ!!オレサマはこの船の船長だぞ!!」

テディベアは怒って腕をぐるぐる回す。

「...船?」

優さんがボソリと呟いた。テディベアはそうそう、と怒りを沈めてこちらにふざけた笑みを向けてきた。

「ここは豪華客船『イリス・タルタロス』号の船内!希望ヶ峰学園120期生の諸君にはここで共同生活を送ってもらう!!オレサマは船長の『モノゼウス』!つまり全知全能の神!」

尊大な態度でテディベアは僕らに説明をする。

「若干一人称がボク様たちと被ってる気がするヨ!」

「パクリだネ!」

「なんなら喋り方は俺と被ってないか...?」

くすくすと揺木さんと虎尾さんは笑い、中田さんがボヤく。それに怒ったのかモノゼウスとやらはさらに速度を上げて腕を回した。

「...モノゼウス。その、共同生活の期限は?」

元鐘さんが恐る恐る口にする。モノゼウスはふざけた笑みをさらに深めて言った。

 

「ない。」

「諸君は永久にこのイリス・タルタロス号から出られない。」

 

衝撃的な一言だった。

「っは?」

「いやーこぉんな素晴らしい豪華客船で一生暮らせるだなんて最高だな。みんな1度は夢見るだろう?な!」

モノゼウスはあくまでもふざけた態度を変えない。

「ほ...ほんとに...出れないの...?」

「っっっありえない!嫌な冗談はやめてよ、早くあたしをここから出して!!」

「笑えないネ!」

「恐ろしいネ!」

ここから出られないという事実に混乱して、怒ったり泣いたり、周囲は阿鼻叫喚だった。僕も、人知れず拳を強くにぎりしめる。

「そこまで言うなら...出られる方法が無いわけでもないんだが。」

「本当でして!?」

「勿論。『卒業』っていうルールを使えばな。」

モノゼウスは得意げにその卒業とやらのルール説明をしだす。

「その条件は?」

中田さんが表情ひとつ変えずに追求する。モノゼウスは、うぷぷぷと気味の悪い笑い声を上げながら言った。

 

「人が人を殺すことだ。」

 

「え?」

「殺すって...。」

モノゼウスの言葉に皆狼狽える。それを無視して、モノゼウスは話を続けた。

「いやぁ、オレサマは諸君をこの素晴らしい豪華客船から出したくはないんだがな?最低限の秩序は守ってもらわなきゃならない。」

「最低限の秩序の崩壊...それが、殺人...。」

「そういうことだな!飲み込みが早いぞ、早川!!」

モノゼウスに褒められた早川さんは隠しもせずに嫌そうな顔をした。

「殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺惨殺呪殺...殺し方は問わない。誰かを殺した生徒だけがこの豪華客船から出られる。それだけの簡単なルールだ。」

誰かを殺した生徒だけが、この監禁空間から出られる...。随分バカげたルールだ。人の命を弄んでいる。

「はぁ!?そんな簡単に人を殺していいわけないでしょうが!あたしたちの命をなんだと思ってるの!?」

古弓さんが叫ぶ。モノゼウスはその言葉さえも予想通りという顔で口を開いた。

「まあ、その声もごもっともだ。だからこの全知全能の神モノゼウス様は、あるルールを作った。」

『殺人をした生徒は、それを他の生徒に知られてはいけません』

「諸君の間で殺人が起きた時は一定の捜査時間を取った後、諸君らには"学級裁判"をしてもらう。そこでは、誰が人を殺した"クロ"かを議論してもらう。」

「それで、クロを当てたらどうするんですか?」

アステリアさんは少しだけ顔を顰めて聞いた。苛立っているようだ。

「見事クロを当てられたらバレたクロが"おしおき"を受ける。もしクロを外してしまったら、クロ以外の全員がおしおき、クロは卒業だ。」

「ひっ...おしおき...?」

「おしおきってなぁにサ、キャラ被り。」

「なぁにサ、オリジナリティ0。」

「揺木、虎尾。全知全能の神に対する敬意が足りてないぞ!おしおきってのはなぁ...簡単に言えば処刑だよ。」

「しょ、けい?」

「そうだ。目には目を歯には歯を、この世は等価交換なんだよ。つまり人の命を奪ったやつには、自分の命で償ってもらうんだ。」

簡単だろう?とモノゼウスは言った。

「...っ、黙って聞いていれば殺せば出られるだの処刑だのうるせーんだよっ!このガラクタめ、ブッ壊してやる!」

炎のようだった。緋色さんが勢いよくモノゼウスに掴みかかり、床に振り下ろそうとする。

「緋色さん、危ない!」

太田さんの珍しい大声が食堂に木霊した。その瞬間、モノゼウスが奇っ怪な音を立て始める。例えるなら、危機的状況を伝えるためのアラームのような...。

「なんだよっ!」

緋色さんがモノゼウスを思いっきり投げると、大きな音を立ててモノゼウスが爆発した。

「うそ...。」

「やったカ?」

「やったカ?」

思いもよらぬ展開にどよめく。そんな中、どこからともなくまたモノゼウスが現れた。

「それから言っておくが、ここでは船長のオレサマに対する暴力は禁止だからな。次は許さないぜ。」

「クソ...。」

モノゼウスはやれやれというポーズを作り、笑った。モノゼウスが爆発してもここにいることはさっきの緋色さんの決死の行動が無駄だったことを表していた。彼は拳を強く握りしめて、唇を噛んで俯く。

「そうそう、これを渡し忘れるところだった。いやぁオレサマったらうっかりだな。」

「なんや?」

「テッテレテッテテッテッテー!電子パンフレットー!」

完全にド○え○んのリズムでモノゼウスが取り出したものは、2つのスマホを重ねたような電子機器だった。例えるなら、G○l○xyZシリーズのような。

「これはな、諸君の楽しい船舶生活をサポートしてくれるグレートでジーニアスでスーパーでパーフェクトなパンフレットだ。」

「う、すごい勢いで横文字を投げつけられていますわ...。」

モノゼウスの適当すぎる説明に荒川さんが頭を抱える。

「一人一つ配布するからな、無くすなよ。無くしたら1000万円請求するからな。」

「なくしません絶対。」

モノゼウスが丁寧に一人一人に電子パンフレットとやらを配布する。2つ折り状態のスマホを開いて、横に付いているボタンを押して起動すると、

『ようこそ、コロシアイ文化祭へ!

超高校級の安楽椅子探偵

春桜亭 冴 クン!』

と大きな画面に表示された。コロシアイ文化祭って悪趣味な。周囲を見回してみると、都さんと荒川さんが電子パンフレットの起動に戸惑っているようだ。ああ、優さんも起動できていなかったのか。彼は表情が変わらないから、困っていることが分からなかった。柊さんが様子を見てあげているようで、弟とは仲が悪そうに見えるけど意外と面倒見がいいんだな、と感心する。

「電子パンフレットは便利でな。チャットは勿論、ちょっとしたミニゲームも遊べる、音楽も聞ける、本も読める、クラスメイトのプロフィール確認し放題、と色々機能を付けておいた。」

モノゼウスはドヤ顔で言った。

「イ○スタはないの?」

古弓さんが聞く。

「SNSは残念ながらLI○Eのパチモンしかない。タイムラインは使えない。」

「マジか。見損なったわモノゼウス。」

古弓さんの辛辣な言葉にモノゼウスは項垂れた。ちょっと可哀想だ。

「諸君、電子パンフレットの船舶生活というアプリを起動してくれ。...都と荒川は、船の絵を触ってくれ。」

言われた通りアプリを起動すると、ルールという画面が出てきた。

「そこにこの生活のルールが書かれている。こっちを破った場合でも処刑だからな。きちんと目を通してくれよ。」

ルールを破って処刑などされたくないので、画面に書かれているルールを読み込む。

『コロシアイ文化祭のルール

1. 生徒達はこの豪華客船"イリス・タルタロス"号の中だけで共同生活を送りましょう。共同生活の期限はありません。

2. 夜10時から朝7時までを"夜時間"とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。

3. 就寝は第一フロアに設けられた個室でのみ可能です。他の場所での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。

4. イリス・タルタロス号について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

5. 船長ことモノゼウスへの暴力及び監視カメラの破壊を禁じます。

6. 仲間の誰かを殺したクロは"卒業"となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

7. 生徒内で殺人が起きた場合には、その一定時間後に、生徒全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます。

8. 学級裁判で正しいクロを指摘した場合は、クロだけが処刑されます。

9. 学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、クロだけが卒業となり、残りの生徒は全員処刑です。

10. モノゼウスはクロとシロどちらにも公平に振る舞います。

11. 電子パンフレットの他人への貸与を禁止します。

12. ルールは順次増える可能性があります。』

この中で注目すべきなのは、やはり『イリス・タルタロス号について調べるのは自由です』という部分か。普通、監禁して殺し合わせたいのならば、いる場所について調べされるのは愚行であろう。しかし、調べてもいい...。恐らく目に見えるところに脱出のヒントはないのだろうな。

「何が目的なのかな?君は。」

ルールを読み終わったのであろう柊くんが問う。モノゼウスはうぷぷぷぷぷと楽しそうに笑い声を上げて、続けた。

「オレサマは諸君を絶望させたいのだよ。」

コロシアイという、手段を使って。

「は?」

吐き気がしそうだった。絶望させる為だけに未来ある生徒に人を殺させ、その後悔を忘れられないまま殺す。最低だ。モノゼウスは気持ち悪い笑みを変えないまま、そこに立っていた。

「あ、あの、素朴な疑問なんですけど...。」

荒川さんが手を上げる。モノゼウスはまるで学校の先生のように、「はい、荒川さん、どうぞ。」と荒川さんを指さした。

「な、何故コロシアイ文化祭なんでしょう?その...今って文化祭って季節じゃないでしょう?」

「ああ〜それ?そのうち季節が追いつく...じゃなくて!文化祭のように盛り上がるイベントにしたいって思いが込められているんだぜ。」

モノゼウスはさらっと答えた。そして、大きく胸を張る。

「ここに、コロシアイ文化祭@イリス・タルタロス号の開催を宣言する!殺し殺され殺り殺られ、最高の絶望を、見せてくれよ?」

そう宣言したモノゼウスはうぷぷぷぷぷという悪趣味な笑い声を上げてどこかへと煙のように消えていった。

残された僕らに、コロシアイという言葉が重くのしかかっていた。

 

Prologue:コロシアイは絶望のあとで 終




生存者数

『超高校級のマラソンランナー』 早川霞(はやかわかすみ)
『超高校級の安楽椅子探偵』 春桜亭冴(しゅんおうていさえ)
『超高校級の幸運』 元鐘亜希(もとがねあき)
『超高校級の検察官』 緋色健二(ひいろけんじ)
『超高校級のコントラバス奏者』 太田侑弦(おおたゆづる)
『超高校級の陶磁器職人』 荒川詩乃(あらかわしの)
『超高校級の卓球選手』 玉稀隼(たまきしゅん)
『超高校級の将校』 中田将也(なかたしょうや)
『超高校級の薙刀兵』 都凪(みやこなぎ)
『超高校級の空中ブランコ乗り』 揺木クウ(ゆらぎくう)
『超高校級の猛獣使い』 虎尾ジュウ(とらおじゅう)
『超高校級の演劇部』 天代ねむ(あましろねむ)
『超高校級の戦術家』 朽木巧深(くちきたくみ)
『超高校級の弓道部』 古弓俊子(こゆみとしこ)
『超高校級の宗教学者』 マーガレット・D・アステリア
『超高校級の調香師』 香田水月(こうだくらげ)
『超高校級の秀才』 作才柊(さくさいしゅう)
『超高校級の???』 作才優(さくさいすぐる)

ノコリ18ニン。

どの生徒が1番お好きですか?

  • 【超高校級のマラソンランナー】早川霞
  • 【超高校級の安楽椅子探偵】春桜亭冴
  • 【超高校級の幸運】元鐘亜希
  • 【超高校級の検察官】緋色健二
  • 【超高校級のコントラバス奏者】太田侑弦
  • 【超高校級の陶磁器職人】荒川詩乃
  • 【超高校級の卓球選手】玉稀隼
  • 【超高校級の将校】中田将也
  • 【超高校級の薙刀兵】都凪
  • 【超高校級の空中ブランコ乗り】揺木クウ
  • 【超高校級の猛獣使い】虎尾ジュウ
  • 【超高校級の演劇部】天代ねむ
  • 【超高校級の戦術家】朽木巧深
  • 【超高校級の弓道部】古弓俊子
  • 【超高校級の宗教学者】メグ
  • 【超高校級の調香師】香田水月
  • 【超高校級の秀才】作才柊
  • 【超高校級の???】作才優
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