トランスマイグレードダンガンロンパ みんなのコロシアイ文化祭   作:海原五月雨

4 / 4
Chapter1 咲かないアナタにクチナシを
Chapter1 咲かないアナタにクチナシを (非)日常編—①


[第一フロア_ショクドウ]

 

モノゼウスが去ってから10分。食堂は重い沈黙に包まれていた。誰も何も言葉を発しようとしない。それはそうだ。ここに、一生監禁されて、出るためには人を殺さなくちゃいけないだなんて…到底すぐに飲み込めるはずない。そんな、重く息苦しさを感じる食堂の中に、

ぐぅぅぅぅぅ。

誰かの大きなお腹の音が響いた。

「…………すまん。自分やわ。」

手を挙げて謝罪をしたのは凪くんだった。お腹を抑えながら言いづらそうに続ける。

「いや、朝飯食べてきたはずなんやけど…。お腹空いてもうた。なんか取りに行ってくるから、それじゃあ。」

「待って。」

食堂から出ようとする凪くんを柊くんが止める。

「ちょっと時間がかかるけど、俺が作るよ。」

「え、ええんか?」

「うん。こう見えて料理には結構自信があるんだ。」

「じゃ、じゃあお言葉に甘えようかな!ありがとな、柊。」

凪くんはニコニコと笑う。もしかしたら、結構ちゃんとしたものが食べたかったのかもしれない。

「みんなも、そろそろお昼時だしお腹減ってるよね?折角だし、みんなでご飯にしない?」

柊くんのありがたい提案にすぐさまみんなの顔が変わる。凪くんだけじゃなく、みんなもお腹が空いていたようだ。

「はい!賛成ですわ!」

「楽しミ!」

「楽しミ!」

「そうだな、こうやって交流を深めるのも良いことだろう。」

「くくく…貴様の腕前、この魔界大王様が見極めてやろうじゃないか!」

「賛ーーーーーーー成ーーーーーー」

「ちょっと!この人数柊が作っていたら大変でしょ。あたしも手伝うわ。」

「そうですね。私も少しは料理の心得があるので…。お手伝いします。」

「それなら、僕にも手伝わせてよ。」

一部の子が手伝いに名乗りをあげたので、昼食を作るのは柊くん、古弓ちゃん、メグちゃん、冴くんの四人になった。

しばらく経った後、食卓に並んだのは色鮮やかな料理たち。メインはカルボナーラパスタのようで、ベーコンが厚く切られているのがとても美味しそうだ。隣に並ぶサラダもカラフルでオシャレだし、コーンポタージュスープまである。「アレルギーのある人はこちらを食べて」と和食のプレートもあって、至れり尽くせりである。

「おっ!美味しそ〜!ありがとう、柊くん。」

思わず溢すと、柊くんが笑って

「カルボナーラは春桜亭くんとアステリアさんが頑張ってくれたんだよ。和食プレートは古弓さんの提案だったし。皆すごいよね。」

と言った。しかし、その笑顔はどこか褒められて嬉しそうに見える。

「いや、私と冴は貴方の指示通りにしただけなんで…。」

メグちゃんがもとから猫背な背をさらに丸めて呟く。

「それじゃあみんなで手を合わせて!」

詩乃ちゃんが大声で音頭を取る。

「いただきます!」

まずはパスタから口をつける。濃厚なソースが口の中に広がり、破顔する。流石超高校級の秀才というべきか、料理も一級品らしい。

「あ、あれ?朽木さん、食べないの?」

冴くんが戸惑いながら聞く。

「…警戒して損はないので。」

「え?警戒?」

巧深くんの返答にねむちゃんは首を傾げる。

「さっき、ここから出るなら人を殺せって言われたばかりなんですよ。初対面の相手なんて信用できるはずない。」

賑やかだった食卓が一瞬で静まり返った。

 

—殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺惨殺呪殺...殺し方は問わない。誰かを殺した生徒だけがこの豪華客船から出られる。それだけの簡単なルールだ。

 

モノゼウスとやらが言っていた『卒業』……。本当に、この人たちの中に殺人をしようとしている人がいるのだろうか。まるで墨を吸った紙のようにお互いを疑う空気が流れる。料理を作ると提案した柊くんにみんなの視線が集まる。彼は居心地悪そうに俯いた。

「たくみくんは考えすぎだなぁ…。こんなに美味しいのに食べないの勿体無いよ?」

カルボナーラを口に運びながら笑顔で言ったのは亜希くんだった。亜希くんは、こんな時なのにずっと明るい。それが彼の強さなのかもしれない。

「これは俺が身内だからわかるんだが…多分、柊は殺すなら地味な毒殺とかよりも、もっと凄惨で派手なのを選ぶ。」

「優?それはフォローじゃないけど?」

「それに、柊は自分の料理に誇りを持っているから、出るためだけにそれを穢すようなことはしない、と思う。」

「それに、もう食べてもうたしなぁ。今更毒を心配しても…死んだらその時はその時や!みんなで一緒に死のな!!」

優くんのちょっとツッコミどころのあるフォローや、凪くんの明るい振る舞いに、みんなも食事を再開する。

「巧深くん食べないならねむが貰うよぉ?」

「……いえ、食べます。」

カルボナーラを口に運んだ巧深くんの頬が少し緩んだのが見えて、ホッとする。食事は楽しいモノでなくちゃね。

「そうだ。提案があるのだが、皆聞いてくれるか?」

「ていあん?」

「ああ、出口がないのはもう皆分かっていると思う。船、である以上外に出たら溺死の恐れがある。だから共同生活をするという前提で動いたほうがいいと判断した。」

将也くんの意見はごもっともだ。自己紹介をしながら行けるところを全て回ったが、特に外に出れそうな場所はなかった。

「基本的には皆自由に行動してほしい。だが、朝8時半に全員で食事を摂らないか。」

「…それは、生存確認も兼ねて?」

将也くんの提案に侑弦くんが小さく呟いた。人形のように変わらない将也くんの表情が少し曇って、侑弦くんの質問に頷きで返した。

「異論はあるだろうか。」

「無いよ。」

「ま、いいんじゃない?」

「悪く無いと思いますよ。」

肯定的な意見が返ってきて将也くんは安心したのか、肩を撫で下ろしていた。

「言いたいことは言い終えましたか?解散でいいですよね。」

食器を流し台に置いていった巧深くんはさっさと食堂を出ていってしまった。

「ええ!行かないでよ、巧深くん!」

巧深くんに興味が湧いたのかねむちゃんが彼を追いかける。元気いっぱいでいいことだ。私は昼食の後片付けを手伝った後、誰かと会うために食堂の外へと繰り出した。

 

[第一フロア_ソウコ]

 

そういえば、自己紹介の時に少し探索結果は聞いたものの、結局それぞれの施設を細かく把握は出来ずじまいだったことを思い出したので、手始めに倉庫に来てみた。

「あ!かすみちゃんだ!かすみちゃんも探索?」

倉庫には亜希くんがいた。どうやら彼も倉庫に用があったようだ。

「亜希くん。色々バタバタしていて、探索に来れていなかったなぁ〜って思ってきてみたんだ。」

「オレもそんな感じ。かすみちゃん起こすのに忙しかったし、探索できてなかったんだよね。」

「その節はごめん…」

「いいって!どうせ誰かしらが起こさなきゃいけなかったし。」

亜希くんはニカっと笑って私の肩を叩いた。

「…ところで、倉庫って本当に広いね。」

「そうだね。見て回るだけでも疲れそうだ。」

ぐるりと見回しながら、倉庫を調べる。ふと、気になる棚があった。

「ロープとかも置いているんだね。」

「この状況でロープって言われると、なんか嫌な想像しちゃうね。」

「絞殺とか?」

「そうそう。」

ロープの横の棚には薬があるようだった。

「薬…毒とか、混ざってたりして。」

「いや、パッケージ見てみて。強めの睡眠薬とかはあるけど…毒薬の類は一つもないっぽい。」

亜希くんの言う通り、薬のパッケージには用法容量がきちんと書かれている。得体の知れない毒薬ではなさそうだ。

「…そういえば亜希くんって超高校級の幸運なんだっけ。」

「そうだよ。どうかしたの?」

「いや、超高校級の幸運って想像つかないなぁって思って。」

私の言葉に、亜希くんは少し困ったように笑いながら答えた。

「まあそもそも、超高校級の幸運っていう肩書きは、『全国の高校生からランダムに選ばれた一人』に与えられる称号だからね。」

「あ、えっと…なんかゴメン。」

「別に気にしなくてもいいよ。オレは運が良かったただの凡人ってだけの話だし。ね。」

にこっと笑う亜希くんが傷ついたように見えて、私は踏み込んではいけないところに迂闊に入り込んだ後悔でいっぱいになる。それでもせめて自分が傷つけてしまったのなら自分で責任を取らなければと、口を開く。

「さっきも言ったけど、亜希くんは凄いよ。分かりやすい才能じゃないかも知れないけど、亜希くんの明るさで私は救われたし、みんなも救われたと思う。だから、亜希くんは凡人じゃない。超高校級の救世主だよ。」

「そこまで言われると照れちゃうな…けど、ありがとう。」

亜希くんが本心からの笑みを浮かべてくれて、私はホッとする。

「それじゃあ私他のところも見てくるね!またね、亜希くん!」

手を振る亜希くんを一度振り返ってから、私は倉庫を後にした。……なんだか亜希くんと仲良くなれた気がする。

 

[第一フロア_ショクドウ]

 

電子パンフレットの指し示す時刻は18:30。そろそろお腹が空いてきた頃だ。

「あら?早川様。お食事にいらしたのかしら。」

食堂には詩乃ちゃんがいた。

「詩乃ちゃんもご飯?一緒に食べてもいい?」

「勿論ですわ。今から用意をさせていただく…といっても、柊様が用意したご飯をレンチンするだけですけれど。」

柊くんは全員分の夕飯を準備していたらしい。なんというか…超高校級の秀才というより超高校級の母親と言われたほうがしっくりくるかも知れない。

「至れり尽くせりだね。」

「それな、ですわ。わたくしも皆様のお役に立ちたいのですが、和菓子はともかくおしゃれなお料理はあまり分からなくて…。」

「え?詩乃ちゃん、和菓子作れるの?」

衝撃的な一言につい聞き返す。詩乃ちゃんは瞬きをした後、なんでもないように肯定した。

「ええ。陶磁器を作っている時以外は和菓子を作っていましたの。」

「そっかぁ。ねぇ、甘くない和菓子ってあるかな。」

詩乃ちゃんの私生活が気になるが、さっきの話を聞いて思いついたので、聞いてみる。

「お煎餅とかかしら?」

「それって、作れたりする?みんなで和菓子パーティーとかしたら楽しくない?」

「…和菓子ぱぁてぃ……。魅力的な響きですわ。是非やらせていただきたいですの!」

パァっと顔を明るくして詩乃ちゃんが笑う。どうやらこの提案はお気に召したみたいだ。

「ありがとう、詩乃ちゃん!私も出来ることなら協力するからね!」

「ええ、必ず皆様をアッと驚かせて見せますわ!早川様も、甘くないお煎餅用意するので、是非参加してくださいな。」

可愛らしいウインクをして詩乃ちゃんは夕ご飯を準備しに厨房へと向かっていった。詩乃ちゃんとも少し仲良くなれた気がする。

 

[第一フロア_霞ノコシツ]

なんだか今日は、大変なことばかりあった。

朝起きたら知らない場所にいて、知らない男の子がいて、新しいクラスメイトと会って、モノゼウスが現れて、殺し合えって言われて……。

きっとこれから先の人生今日以上に疲れた日はないだろう。

ベッドに勢いよく体を倒して目を瞑る。碌なことも考えられないまま、私は深い眠りについた。

 

—だから、…………することで………………が……するって………なん……

—そうすれば…………の……、……が…………の……が手に入るって寸法…

—………早くて………

—そういえば……はどうする…?…………を……んで……?

—ああ、……は……考えて………、………を…………に………んで………に………と思って………

—………はどうするつもり……?

—……で……して……………に…………つもり

—なるほど、流石…………………って感じ

—…………預かり…………

 

……なんだか不思議な夢を見た。




生存者数

『超高校級のマラソンランナー』 早川霞(はやかわかすみ)
『超高校級の安楽椅子探偵』 春桜亭冴(しゅんおうていさえ)
『超高校級の幸運』 元鐘亜希(もとがねあき)
『超高校級の検察官』 緋色健二(ひいろけんじ)
『超高校級のコントラバス奏者』 太田侑弦(おおたゆづる)
『超高校級の陶磁器職人』 荒川詩乃(あらかわしの)
『超高校級の卓球選手』 玉稀隼(たまきしゅん)
『超高校級の将校』 中田将也(なかたしょうや)
『超高校級の薙刀兵』 都凪(みやこなぎ)
『超高校級の空中ブランコ乗り』 揺木クウ(ゆらぎくう)
『超高校級の猛獣使い』 虎尾ジュウ(とらおじゅう)
『超高校級の演劇部』 天代ねむ(あましろねむ)
『超高校級の戦術家』 朽木巧深(くちきたくみ)
『超高校級の弓道部』 古弓俊子(こゆみとしこ)
『超高校級の宗教学者』 マーガレット・D・アステリア
『超高校級の調香師』 香田水月(こうだくらげ)
『超高校級の秀才』 作才柊(さくさいしゅう)
『超高校級の???』 作才優(さくさいすぐる)

ノコリ18ニン。

どの生徒が1番お好きですか?

  • 【超高校級のマラソンランナー】早川霞
  • 【超高校級の安楽椅子探偵】春桜亭冴
  • 【超高校級の幸運】元鐘亜希
  • 【超高校級の検察官】緋色健二
  • 【超高校級のコントラバス奏者】太田侑弦
  • 【超高校級の陶磁器職人】荒川詩乃
  • 【超高校級の卓球選手】玉稀隼
  • 【超高校級の将校】中田将也
  • 【超高校級の薙刀兵】都凪
  • 【超高校級の空中ブランコ乗り】揺木クウ
  • 【超高校級の猛獣使い】虎尾ジュウ
  • 【超高校級の演劇部】天代ねむ
  • 【超高校級の戦術家】朽木巧深
  • 【超高校級の弓道部】古弓俊子
  • 【超高校級の宗教学者】メグ
  • 【超高校級の調香師】香田水月
  • 【超高校級の秀才】作才柊
  • 【超高校級の???】作才優
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。