真黒「……」
漠夜「……」
「…朱井さん、白石君と灰山君、何かあったの?」
清那「え?…あー、喧嘩したみたい。けどなんで私に?」
「最近白石君と仲良さそうだったし…。あの二人ずっと仲良かったのに、珍しいね。…白石君もあんなことがあったから精神的に参ってたみたいだし、仕方ないのかもだけど」
清那「…そうだね。けど、白石君は私が立ち直らせてみせるから」
「え?…あー、そういうことね。応援してるね」
清那「?…そ、そういうのじゃないからね!?」
「分かってるってー」
漠夜の正体がバクであると知った真黒。
翌朝、二人の間には気まずい雰囲気が流れており、そのことを察したクラスメイトの一人は清那に話を聞く。
真黒「…で、これどこに向かってるの?貴真賀の方だと思うけど」
清那「貴真賀中央大学だよ」
真黒「???…なんで?」
清那「…まあまあ、私達どっちも照羅巣志望でしょ?受かったらその後は大概貴真賀中央大に進学するんだし、先行見学みたいなものだよ」
真黒「…いくらなんでも気が早いような…」
何故か中学3年生には普通縁のない場所であろう大学へ行くと言う清那。
そんな清那を訝りつつも真黒は大人しくその後に続く。
清那「ここだよ」
真黒「“理工学部特別研究室”…?」
コンコンコン
清那「失礼します」
「どうぞ」
貴真賀中央大学へと到着した二人。
清那の案内でやって来たのは「理工学部特別研究室」と書かれた札のある部屋。
扉をノックした清那に対し、中から渋めの男性の声で入室が許可される。
夜御哉「やあ、清那君か。そっちの眼鏡の君が件の子だね」
清那「こちらが白石君に紹介したかった方、田貫教授」
夜御哉「どうも、お初にお目にかかる。俺は田貫夜御哉。この貴真賀中央大学でちょっと特殊な研究をさせてもらってる。…そして、モノノケ、イヌガミギョウブでもある」
真黒「…あんた…モノノケなのか…!」
夜御哉「おいおい、そう怖い顔すんなって。取って食ったりもしないし、危害を加えるつもりもない」
清那が真黒に紹介したのは貴真賀中央大学の教授をしているという
彼の正体がモノノケのイヌガミギョウブと知るや否や敵意を剥き出しにする真黒に対し、夜御哉は余裕そうな態度で宥める。
真黒「…朱井さん、一体なんのつもりなのさ」
清那「…白石君に知ってほしかったんだ。モノノケには人間と共存している者も沢山いるんだってことを。…その意味で、私が知る中で一番の適任は田貫教授かなって」
夜御哉「中々高い評価をいただいているようで何より。…清那君の父親、清彦君とはそこそこ長い付き合いでね。この仕事も彼の推薦で得たものなんだ」
真黒「…そうですか」
夜御哉「ふむ、中々心の壁が取っ払えないね」
真黒「当然でしょう。僕は…モノノケが嫌いなので」
夜御哉「それは残念。清那君の紹介だし、君とも仲良くしたいところなんだけどね」
真黒「…僕がモノノケと仲良くなんて…無理ですね」
夜御哉「…ふむ。君の境遇も聞いたけどね。その上で今君を見て、俺は君と仲良く出来そうだと思ったが」
真黒「っ…あんたに何が分かるんだ!」
夜御哉「分かるさ。俺とて伊達に長生きしてきたわけじゃあない。…酸いも甘いも、色々と経験してきたさ。目を見れば、相手がどんな人かはある程度分かるさ。…特に、今の君のように迷い揺らいでいる時の目は分かりやすい」
真黒「……!」
夜御哉「真黒君と言ったな。君はモノノケに家族を奪われ、モノノケを憎んでいたが…君の親友もまたモノノケだったそうじゃないか。そして親友は心から君に友情を感じている様子だった。…だからこそ迷っている。そうじゃないかな?」
真黒「っ…」
夜御哉「正解みたいだね」
突っかかる真黒に、夜御哉がその迷いを正確に言い当てたことで反論出来ず言葉に詰まる。
夜御哉「…君に言うのも酷な話かもしれないけれどね、モノノケとて君達人間とそう変わらないんだ。人間と同じように心を持っている。そして個性がある。…故に、人間に仇なす者もいれば、人間に好意的に接する者もいる。勿論、人間に特に興味を持たない者もいるだろう」
真黒「……そんなこと…分かってます」
夜御哉「そうだろうな。見るに君は…年齢の割に聡明だ。…少なくとも、妄信的に憎しみに囚われ続けられるほど愚かではいられない。…話し相手くらいにはなってあげられるだろうし、これからもモノノケのことを色々と教えてあげるから、定期的に遊びに来るといい」
真黒「……分かりました」
夜御哉「ほら、やっぱり君は聡明だ。…抵抗するだけ無駄と悟ったのだろう?」
真黒「…余計なお世話です」
夜御哉「おっと、それは失礼。それじゃあ、またの来訪を楽しみにしてるよ」
夜御哉に若干丸め込まれ、定期的に来訪する約束を取り付けられた真黒。
そんな真黒を気に入った様子で夜御哉は次の来訪を望む。
⭐︎⭐︎⭐︎
真黒「…なんか、どっと疲れたな」
清那「…ごめん。怒ってる?」
真黒「え?…いや別に。どうして?」
清那「…もしかしたら余計なお世話かなって思って」
真黒「…別に…そんなことはないよ。朱井さんなりに僕のことを気遣ってくれたってことだろうし、その…ありがとう」
清那「!…うん。さ、買い物して帰ろっか。夕飯は何が良い?」
真黒「別に何でも」
清那「えー、作り甲斐がないなぁ。好きな料理とかないの?」
真黒「好きな料理…餃子かな」
清那「よし、じゃあ今日の夕飯は餃子にしよう!」
真黒「…ありがとう」
清那「どういたしまして」
帰り道、清那は真黒に食べたいものはあるか聞くが、特にないと返されたため、好きな食べ物だという餃子を作ることに決めると、連れ立って買い物に向かう。
「……」
そして、そんな二人の様子を怪しげな影が見ていることに、気付く者はいなかった。
⭐︎⭐︎⭐︎
夜御哉との邂逅から一週間が経ったある日、真黒は未だあの日から口を利いていなかった漠夜に声をかける。
漠夜「……」
真黒「…漠夜。放課後、話があるから…校舎裏に来てくれないか?」
漠夜「!…分かった」
清那「…頑張れ、白石君」
真黒「…うん」
漠夜に話があると声をかけ、放課後に約束を取り付けた真黒。
そんな真黒の様子を見た清那は戻り際に小声で真黒を応援する。
真黒「……ちゃんと、謝らなくちゃ」
放課後。真黒は一人校舎裏にて漠夜を待ちながら心を落ち着かせていた。
真黒(…正直、まだモノノケを完全に受け入れられたわけじゃない。家族を奪われた恨みもある。…けど、漠夜のことは…信じたい。そう思ってるのは確かだ。…少なくとも、このまま終わりには…したくない)
「ふんっ!」
真黒「っ!?お前は…イッタンモメン…!」
漠夜を待つ真黒の前に現れたのはイッタンモメン。
布を伸ばしてその首を締め付けながら、イッタンモメンは下衆な笑い声を上げる。
イッタンモメン「俺はなぁ…一度狙った獲物は逃さねえんだよ。…しかしまあ良い顔になっちまって。……もう一度絶望に叩き落とされた時の顔が見ものだなぁ!!」
真黒「っ…ぐ…は…なせ…!」
漠夜「真黒!…はああっ!!」
イッタンモメン「ああ?…んだテメェ……モノノケか。何で人間を守るんだよ」
真黒の首を絞めて痛めつけようとするイッタンモメンだったが、そこに漠夜が駆け付けてバクの本来の姿へ変わりながら突進し、その爪でイッタンモメンの布を断ち切ることで真黒を助ける。
真黒「漠…夜…!」
バク「……決まってる。俺にとってこいつは…親友、だからな」
イッタンモメン「親友?人間がか?笑わせるな!…そうだ、反人間連合の活動に反対的なモノノケを始末してやれば俺も拾ってもらえるかもなぁ…ふん!」
バク「くっ…うああっ!!」
真黒「漠夜!」
バク「問題ない。早く逃げろ」
真黒「そんなこと言ったって…漠夜は…」
バク「俺は平気だ」
イッタンモメン「余所見は命取りになるぜ?」
バク「ぐ…!」
イッタンモメンはバクがそこまで戦闘力を持っていないことを悟ると布を硬化させて刃のようにすることでバクを攻撃する。
イッタンモメン「よえーなお前。そこで見てろ!」
バク「くっ…ぐああっ!!」
真黒「漠夜ーっ!!」
イッタンモメン「お友達の心配してる場合か?安心しろ、俺がヌエ様に認められるためにも…纏めて殺してやるからよ。…そうだ、折角だしな。お前には息出来ない苦しみを味わいながら切り刻まれて死ぬ恐怖を味合わせてやろう」
真黒「っ…ぐ…!」
バク「真黒…!」
イッタンモメンは伸ばした布でバクを絡め取り、そのまま投げ飛ばす。
そして真黒の首に左手から伸ばした布を巻き付け、その呼吸を奪うと、右手から伸ばした布を刃に変え、躙り寄る。
イッタンモメン「まずは…串刺しにするのが良いか。良い悲鳴を聞かせてくれよ。…ああ、声は出せないか!ハハハ!」
真黒「…っ!」
バク「あがああああっ!!」
イッタンモメン「何…!?」
真黒「っゲホッ…ゲホッ…漠夜!!」
バク「っ…これでお前を殴れる…!だああっ!!」
イッタンモメン「くっ…だが…お前ももう虫の息…散れぇ!!」
イッタンモメンが鋭く尖った右手の布を真黒に突き立てようとしたその瞬間、バクとしての本来の姿に戻りながら駆け付けた漠夜が真黒を庇い、その腹部にイッタンモメンの布の刃が突き刺さる。
しかし、それによってイッタンモメンの位置を固定したバクは渾身の力でイッタンモメンを殴り付ける。
清那「清浄弾!」
イッタンモメン「うぐああっ!!…お前は…この前の陰陽師…!仕方ねえ、ここは撤退させてもらおう!」
清那「っ…逃げた。…白石君、灰山君」
真黒「漠夜…おい、しっかりしてくれ。漠夜!」
漠夜「っ…真黒…ずっと、謝りたかったことがある。…騙してて…悪かった」
真黒「なんで漠夜が謝るんだよ。…僕は…僕なんて…親友のことも信じ切れずに突き離したような奴なのに。…こんな奴、庇われる価値もないのに…!」
漠夜「んなことない。…俺は、確かにお前に救われたんだ」
真黒「…え?」
漠夜「俺さ、ずっと人間の暮らしに憧れてた。それで催眠術を使ってこの学校に潜り込んだんだ。…けど、友達の作り方なんて知らなくて。ひとりぼっちになりそうだった俺に、お前が声をかけてくれた」
真黒「それは…」
漠夜「あの時、すっごく嬉しかった。…それで、ずっとこのままじゃ駄目だって、そう分かってたのにこの場所に居続けちまった。…けど、それももう終わりだな」
真黒「そんな…また一緒に学校に通おう。もう残り三ヶ月もない…卒業まで後少しだし…」
漠夜「…そう、だな。…けど、もう…俺は無理そうだ。…きっと、バチが当たったんだな。皆を騙したりしたから」
真黒「…漠夜……」
漠夜「あー…でもやっぱ…死にたくねえなぁ…。ハッ、笑えるよな…お前達を騙してた癖に、一丁前に皆と…真黒と一緒に卒業したかったな…って、そう…思っちまうんだ…」
真黒「漠夜?漠夜、しっかりしてくれ。漠夜!」
漠夜「…真黒、モノノケを嫌ってるお前には酷な頼みかもしれねえが…せめてお前だけでも…俺のことを…バクというモノノケがいて…灰山漠夜としてお前の親友になっていたことを…覚えててくれないか?」
真黒「そんなの…当たり前だろ…」
漠夜「…今まで、ありがとな」
真黒「漠夜、待ってよ…漠夜!!まだ…僕にも沢山、言いたいことが…あったのに…」
清那「……せめて…」
息絶え絶えになった漠夜は何とか力を振り絞って真黒と会話を交わすと、そのまま意識を手放して光の粒子と化して消滅する。
残された真黒は地面に手を付きながら嗚咽し、それを悲しげな表情で見ていた清那はバクの残滓を灰色の“獏アヤダマ”に変える。
真黒「っ…ぅぐ…っあぁ……」
清那「…白石君」
真黒「朱井さん…僕は…馬鹿だ。…どうしようもない大馬鹿だ……何で…意地なんか張ってたんだろう。分かってたはずなのに。…アイツは悪い奴なんかじゃないって。僕を心から親友と思って、助けてようとしてくれてたのに…」
清那「…白石君は馬鹿なんかじゃないよ。…だって、仲直りするために今日灰山君と話そうとしてたんでしょ?家族をモノノケに奪われたのに、その決断が出来るのは白石君が優しい凄い人ってことだし…それはきっと、灰山君も分かってる。…これ」
真黒「これは…?」
清那「これは獏アヤダマ。…アヤダマっていうのはモノノケの魂を結晶化した物なんだ」
真黒「…じゃあ、これは……」
清那「灰山君の、アヤダマだね」
真黒「……っ…漠夜…っ」
清那「…その、ここには私以外いないし、人も来ないだろうから…思い切り泣いて良いんだよ」
真黒「っぐ…うああああ!」
清那「…辛かったよね。…ごめんね、間に合わなくって」
自身が漠夜から生み出した獏アヤダマをその形見として渡す清那。
受け取った真黒は獏アヤダマを握り締めて本気で涙を流し、そんな真黒を清那は優しく抱き締めるのだった…。
⭐︎⭐︎⭐︎
世界はやはり残酷で、漠夜の消失が世界に与えた影響は大したことがなかった。
…というのも漠夜の催眠術によって彼をクラスメイトと認識していたため、彼がいなくなった今、その術が解けたことでその正体を知るごく一部の者以外にとっては“灰山漠夜”という存在自体が最初からいなかったことになったためだ。
真黒「……」
麗那「真黒兄さん、本当に一人暮らしされるんですか?」
真黒「…うん。いつまでもこの家に居続けるのも迷惑だろうし…」
清彦「そんなことないよ。もうここは君の家でもある。だから…帰って来たかったらいつでも帰っておいで。けど、君にとっては元の家こそが本当の家だろうからね。健康には気を付けてね」
真黒「はい!…家の維持費とか、高校の学費とか、色々と助けていただいてありがとうございます。この恩は必ず、お返ししますから」
清彦「良いんだよ。気にしなくて。それじゃあ、元気で」
真黒「はい」
麗那「うう…真黒兄さんがいなくなるのは寂しいです…。また勉強教えに来てくださいね」
真黒「うん。麗那ちゃんが必要ならいつでも呼んで」
麗那「!はい!」
清那「じゃ、また学校でね。白石」
真黒「うん。また」
麗那「姉さんはずるいです。…高校も一緒ですし…」
清那「そんなこと言われても…」
真黒「あはは…」
漠夜がいなくなって二ヶ月ほどが経った、3月のある日。
中学の卒業式を終え、高校進学を目前としたこのタイミングで、真黒は元々家族と暮らしていた家へと戻ることに。
麗那や清彦からは惜しまれつつも、三ヶ月ほどを過ごした朱井家を後にするのだった。
⭐︎⭐︎⭐︎
真黒(今日から僕も高校生…か)
4月になり、無事に照羅巣高校へと進学していた僕は、気持ちを新たに桜並木の下を歩んでいた。
父さんや紅葉、そして漠夜を失った悲しみが完全になくなったわけじゃないけれど、それでも朱井さん達が僕を支えてくれたこともあって何とか前を向いて歩み出すことが出来ていた。
…そうすることがきっと、三人のためにもなると思うから。
そして、そうしてずっと僕を支えてくれた朱井さんに、僕は段々と心惹かれていた。…この頃にはきっと、もう彼女のことが好きだったと思う。
そんな彼女とまた同じ学校に通えるということに、少なからず心躍る部分もあった。
清那「白石!おはよう!」
真黒「おはよう。朱井さん」
照羅巣高校の校門の手前で真黒と合流した清那は横に並んで照羅巣高校へと入っていく。
清那「今日から高校生…また三年間よろしくね」
真黒「うん。…まあ、クラスは違うかもだけどね」
清那「だとしても、私達の関係はそんなことで消えるようなものじゃないでしょ」
真黒「!…そうだね」
そんな会話を交わしつつ、照羅巣高校の校舎に入っていく。
澄香「上手く出来るかな…」
真黒「ん?あの」
澄香「ひゃい!?なななな、何でしょうか…!?」
真黒「えっ!?お、驚かせてごめんなさい。これ、落としてたので…」
澄香「あっ、そ、そうだったんですね…大きな声出しちゃってごめんなさい…。その、あっ、ありがとうございます…!」
清那「そんなに畏まらなくても大丈夫だよ。新入生でしょ?」
澄香「あっ、は、はい!」
清那「なら私達はこれから三年間一緒に過ごす同級生なんだし。よろしくね。あ、自己紹介まだだったね。私は朱井清那」
真黒「僕は白石真黒。よろしく」
澄香「あっえと…その…黄坂澄香っていいます。…よろしくお願いしましゅ…!あぅ…」
真黒「まあ…少しずつ慣れていけば良いんじゃない?」
澄香「…あ、ありがとうございます」
真黒の目の前でハンカチを落としていた女子生徒、
⭐︎⭐︎⭐︎
澄香「……」
真黒「ん?あれは…」
入学から一月程が経ったある日の放課後のこと、どこか暗い表情の澄香を見かけた真黒は少し考え込むような素振りを見せた後、意を決して澄香に近付く。
澄香「……」キョロキョロ
真黒「あの…」
澄香「ひえっ!?…って、白石君…?」
真黒「黄坂さん、驚かせてごめんね」
澄香「い、いえ…」
真黒「その…何かあった?」
澄香「えっ!?」
真黒「…いや、ここのところ何だか表情が暗いように見えたから。同じクラスだし、心配だなって」
澄香「……それは…わ、私なんていつでも暗い顔ですし…」
真黒「そんなことないよ。…少なくとも、ここ最近の黄坂さんは何かに怯えてるように見えた」
澄香「っ!そ…れは…」
真黒「…無理に話させるつもりはないけどさ。それでも、本当に困ってることがあるならいつでも言ってね。その時は力になるから」
澄香「……白石君…」
真黒「…それじゃあ、また明日。引き留めてごめ──ん?」
澄香「っ…ど、どうして私なんかのためにそこまで…言ってくれるんですか?」
真黒「…うーん。自分がそうしてもらったから、かな。……僕が辛かった時、周りの人達が僕を助けてくれたんだ。自棄になって周りに当たったりしちゃってたのに、それでも見捨てず僕と向き合ってくれた。…それだけだよ」
澄香「……そう、なんですね。…その、良かったらお話、聞いてくれませんか?」
真黒「!…うん。僕で良ければ」
沈んだ表情の澄香を放っておけず、真黒は澄香に寄り添おうとし、そんな真黒に心を開いた澄香は自身の悩み事を打ち明けることに決める。
澄香「その…何言ってるのかって話かもしれないですが…最近、怪物?に狙われてるんです…」
真黒「!…怪物…どんな?」
澄香「…えっ!?し、信じてくれるんですか…!?お父さんやお母さんは信じてくれなくて…」
真黒「…信じるよ。…人ならざる存在は、確かにこの世界にいるからね」
澄香「…?…え、えっと、その…五日前、帰ってる時に突然後ろから声をかけられたんです。…それでびっくりして振り向いたら、女の人みたいな姿の怪物がいて…」
真黒「…やはりモノノケか…?…それで、そのモノノケはなんて?」
澄香「…最初に後ろから言われたのは『振り向くな』、それで私が振り向いてしまった時に『あと五日』と」
真黒「…成る程」
澄香「…それで、その日から決まって午後6時になると私の後ろに突然現れて、『あと四日』、『あと三日』って…」
真黒「…何かのカウントダウン…のようだけど」
澄香「それで、今日でそのカウントダウンが終わるんです…もしかしたら私、今日死んじゃうのかもって…怖くて…っ」
真黒「……そうだよね。死ぬのは…怖いもんね。…けど、僕が黄坂さんを死なせない。…こういう案件の時に頼りになる人を知ってるんだ。相談に行こうか」
澄香「白石君…ありがとうございます…っ!」
今日死ぬかもしれないという深い恐怖に苛まれていた澄香を見た真黒はそんな澄香を救うべく、彼女と共にある場所へ向かう。
⭐︎⭐︎⭐︎
真黒「お邪魔します」
麗那「真黒兄さん!遊びにいらし──そちらの方は彼女さんでしょうか…?」
澄香「ええっ!?」
真黒「え?ああ、違うよ。僕のクラスメイトの黄坂澄香さん」
麗那「何だ、そうでしたか。なら良いです。…私は朱井麗那と申します。真黒兄さんがいつもお世話になっております」
真黒「……麗那ちゃんは何目線での自己紹介なのそれ…」
澄香「それで、この子が頼りになる人…なんですか?…ってあれ?朱井?」
真黒「いや、今日相談に来たのは麗那ちゃんじゃなくて…この子の姉、朱井清那さんだよ」
清那「何やってるのさ麗那。まだ宿題あるでしょう」
麗那「うう…だって姉さんが真黒兄さんが来るというから…」
清那「今日は遊びに来たわけじゃないんだよ」
麗那「そんなぁ…」
真黒「あはは…ごめんね。また今度遊びに来るから」
麗那「うう…分かりました。それではごゆっくり」
朱井家にやって来た真黒と澄香を出迎えた麗那は澄香を真黒の彼女と勘違いしてやや怖いオーラを発しそうになるが、真黒が否定したことでオーラを収める。
しかし、今日は遊びに来たわけではなく用事があって来たことを清那から告げられ、宿題を済ませるべく大人しく自室に戻る。
澄香「しっかりしてますね…って、やっぱりここ朱井さんのお宅だったんですか!?」
真黒「うん。…朱井家は名門の陰陽師の家なんだよ」
清那「…まあ、そういうこと。事情は白石から聞いてるよ、澄香ちゃん」
澄香「えっ、澄香ちゃん…」
清那「あ、嫌だった?折角お友達になったんだし、こういう呼び方も良いかなって」
真黒(…僕はずっと苗字呼びな気が…まあ良いか)
澄香「いっ、いえ!…その、私も清那ちゃんって呼んでも良いですか…?」
清那「勿論!敬語じゃなくても良いし」
真黒「名前呼びはともかく、敬語は僕もなしで良いよ。…喋りにくかったら敬語でも良いけど」
澄香「二人とも、その…ありがとう」
改めて清那が今回の一件への対処が可能な人物であると真黒から紹介を受けた澄香。
そのまま三人の親睦を深めたところで本題に移る。
清那「…さて、本題だけど…今澄香ちゃん見て分かったけど、間違いなくモノノケに憑かれてるね」
真黒「…やっぱりモノノケの仕業だったか」
澄香「モノノケ…?」
清那「…モノノケというのは、所謂妖怪かな。人ならざる、人智を超えた力を持つ不思議な存在で…多くは人間にも友好的だったり、興味がなかったりで危害を加えて来たりはしないけれど…偶に人に危害を加えるモノノケもいる」
真黒「…今回はその人を傷付けるモノノケに狙われてるってことになるね」
澄香「……そうだったんだ…」
清那と真黒から説明を受け、澄香はモノノケという存在を知る。
真黒「それで、今回黄坂さんを狙ってるのはどんなモノノケか分かる?」
清那「…多分、“ウシロガミ”というモノノケだと思う」
澄香「ウシロガミ…」
清那「ウシロガミに魅入られた人間は五日間背後に付き纏われ、そして五日目で…その命を奪われる」
澄香「っ!」
真黒「防ぐには…やっぱりウシロガミを倒すしかないか」
清那「そうなるね。…まあ、ウシロガミ自体はそこまで強力なモノノケじゃないから、私なら多分倒せるけど…もう18時まで時間もないし今のうちに出来る限りの準備をして備えようか」
澄香「う、うん…」
今回の事件はウシロガミというモノノケによるものだと判断した清那。
対処に移るべく準備を開始する。
真黒「……今度こそ、守り抜いてみせる…!」
次回へ続く…