清那「…18時まであと3分…二人とも、覚悟は良い?」
真黒「…大丈夫」
澄香「う、うん…」
ウシロガミに魅入られている澄香を救うべく、真黒、清那、そして澄香の三人は朱井家の敷地内にある庭にて待機する。
清那「…5…4…3…2…1…来るよ!」
ウシロガミ「いただきまーす…っ!」
清那「朱井式浄化術・邪封鎖!」
ウシロガミ「っ!?陰陽師…!」
清那「一つ質問に答えてもらうよ…!」
18時になった瞬間、澄香の背後に不気味な女性のような容姿のモノノケ…ウシロガミが出現し、その髪を伸ばして襲おうとするが、それより先に清那が発生させた妖気の鎖がウシロガミを縛り上げる。
ウシロガミ「何だと…?」
清那「どうして澄香ちゃんを狙ったの?…何が目的…!」
ウシロガミ「…フン、この街で人を襲えばヌエ様に気に入られて…反人間連合に入れてくれるかもしれないからなぁ…!だから…逃がすかァァ…ッ!!」
澄香「っ…」
真黒「させるか!!」
ウシロガミ「くっ…まだ…!」
清那「…これで終わりだよ。…朱井式浄化術・清浄弾ッ!!」
ウシロガミ「うぎゃああっ!!」
澄香を襲うのは「反人間連合」という組織に入るためと答えるウシロガミ。
答えるや否や髪を伸ばして澄香を襲おうとするが、咄嗟に真黒が澄香を抱きかかえて回避させ、その隙に清那が会話の間に溜めておいた妖気を用いることで渾身の妖気弾を発射してウシロガミを貫き、消滅させる。
清那「…一件落着、かな」
真黒「…呆気ない幕切れだったね」
澄香「…私…明日からも生きていける…んだよね」
清那「そうだよ。…まあ、何か事情があるのかもと思って話聞いてみたけど…結局身勝手に人を襲う個体だったね…って、二人はいつまでそうしてるのさ」
真黒「え?あ、ああ、ごめんね」
澄香「い、いえ、助けてくれてありがとうございます…」
何となく呆気なく感じる終わり方ではあったものの、何とか明日からも生きていけるということを実感したのか、澄香は安堵の息を漏らす。
しかし、真黒に庇われたまま…言い換えれば抱き合っているような体勢のままだったため、清那に指摘された二人はパッと離れる。
真黒「…それにしても“反人間連合”…アイツもそんなことを言っていたし…一体何なんだ…?」
清那「…この街に何か悪いことが起ころうとしてるのかもね。…田貫教授なら何か知ってるかもしれないし、今度聞きに行こうか」
真黒「…そうしようか」
イッタンモメンやウシロガミの背後にいるであろう謎の団体“反人間連合”について調べるべく、真黒と清那は夜御哉の元を訪れることを決めるのだった…。
⭐︎⭐︎⭐︎
夜御哉「やあ、高校生活はどうだい?」
真黒「…そこそこ楽しくやらせてもらってますよ」
夜御哉「ふむ。それは何より。…それと、彼女は?」
清那「…黄坂澄香ちゃん。少し前にウシロガミに魅入られてたんです。ウシロガミ自体は倒したんですが、一応悪影響が残ってないか調べてもらいたくて」
澄香「お、黄坂です…よろしくお願いします…」
夜御哉「田貫夜御哉だ。よろしく。ここで教授をさせてもらってる、しがないモノノケさ」
澄香「…あ、どうも…ってモノノケなんですか!?」
真黒「…田貫教授はイヌガミギョウブというモノノケなんだそうだよ。…けど、人に危害を加えたりはしない、友好的なモノノケだからそんなに気にしなくていい」
夜御哉「説明ありがとう。真黒君もすっかり丸くなったね」
真黒「…余計なことは言わなくて良いんですよ」
澄香(丸くなった…?)
数日後、連れ立って貴真賀中央大学理工学部特別研究室を訪れた三人。
夜御哉とは初対面の澄香のために真黒は夜御哉の正体を軽く説明しつつ、味方であるから安心して良いと告げる。
夜御哉「まあ、分かった。黄坂君の検査はやるとして…それだけってわけではなさそうだね?」
清那「…ええ。あ、その前に。澄香ちゃん」
澄香「?」
清那「…今からの話を聞いたら、澄香ちゃんは多分、後戻り出来なくなる。…モノノケという存在がいて、その中には人へ危害を加える者もいる。そんなモノノケ達との“戦い”の渦の中に、澄香ちゃんは巻き込まれることになる。…だけど、あんなことがあったし、可能なら澄香ちゃんの意思を聞いておきたいんだ」
真黒「…黄坂さんは、今なら少し不思議な体験をしたってだけでまた日常に戻れる。どうする?」
澄香「……私は…私も、聞くよ。二人と出会って、その…私も知りたいって、知らなくちゃいけないんじゃないかなって。そう思った。…何かの役に立てるかは分からないけど…二人の力になりたい」
真黒「!…決まりだね」
清那「うん。よろしくね、澄香ちゃん」
本題に入る前に澄香に意思を問う真黒と清那。そんな二人の力になるべく、澄香は共に話を聞くことを選ぶ。
清那「さて、それでは本題に入りますが…田貫教授は“反人間連合”についてご存知ないでしょうか」
夜御哉「!…成る程。そういうことか」
真黒「…何か知ってるんですね」
夜御哉「…ああ。俺も詳しいことを知ってるわけじゃないが…モノノケの世界では少し前から勢力を広めつつある、危険団体だ」
澄香「き、危険団体…?」
夜御哉「…奴等の目的は人間の撲滅。そのために人に被害を出し、反対するモノノケを抹殺するような活動もしてると聞く」
真黒「…反対するモノノケの…抹殺」
イッタンモメン『反人間連合の活動に反対的なモノノケを始末してやれば俺も拾ってもらえるかもなぁ…』
真黒「…っ」ギリッ
澄香「…!」
夜御哉の言葉から、かつてのイッタンモメンの言葉を思い出し、真黒は険しい表情のまま歯噛みする。
清那「あとは…イッタンモメンも、ウシロガミも“ヌエ”と言っていました。…ヌエといえばかなり高名なモノノケですけど…」
夜御哉「…ああ、恐らくそのヌエだろうな。反人間連合に与していると聞いた覚えがあるが…厄介な奴が絡んでいるな…。いずれにせよ、恐らく連中はこの街で何かをしでかすつもりと見て良いだろう。何としてでも阻止しなければ…」
清那は共通して話題に上がっていた“ヌエ”というモノノケについて夜御哉に問い、それに答えつつ夜御哉はこの布留杜の街で何かが起ころうとしているのだろうと判断する。
真黒「…ちょっと外の空気吸ってくる」
清那「……分かった。…それで、対抗策ですが…」
夜御哉「うむ…手を打つ必要があるだろうな…」
澄香「…白石君……」
反人間連合の話を聞いた真黒は険しい表情のまま一度退室し、そんな真黒の様子から何かを察した清那は見送りつつ夜御哉と話を続ける。
一方、事情がよく分かってない澄香は真黒が心配になり後を追う。
真黒「…反人間連合…そいつらのせいで……ッ!…この手で絶対に潰す…!」
澄香「し、白石君…?」
真黒「!黄坂さん…どうして」
澄香「そ、その、ごめんなさい。凄く辛そうな顔していたから…気になって」
真黒「!…心配かけちゃったようでごめんね。…大丈夫だから」
澄香「…なら、良いけど……その、辛いなら、私で良ければ話聞くから…助けてもらったし」
真黒「……別に、大した話じゃないよ。…僕にとって、大切な存在を…三人、僕はモノノケに奪われた。…そしてそいつがそんなことをした理由の一端が反人間連合にある。…それだけの話」
澄香「!…じゃあ、私のことをあんなに親身に助けてくれたのは…」
真黒「…放っておけなかったんだ。僕自身、それで辛かった時に朱井さんに助けてもらったから…だから、今度は僕がって」
澄香「そう、だったんだ。…白石君は凄いね」
真黒「え?」
澄香「…自分が辛い思いをして、それでも誰かに同じ思いをしてもらいたくないって立ち向かうのは…凄いよ」
真黒「…そう、なのかな」
澄香「そうだよ。…元々協力するつもりだったけど…今の話を聞いたら、白石君の力になりたいって、強く思ったから…だから…私に出来ることがあったら言ってね。…清那ちゃんにみたいには頼りにならないかもだけど…それでも手伝える限り手伝うから」
真黒「…ありがとう。頼りになるよ」
澄香「うん!」
真黒の話を聞いた澄香は心から真黒の力になりたいと願い、改めて協力の意思を示すと、二人は固い握手を交わす。
⭐︎⭐︎⭐︎
…黄坂さんと出会い、反人間連合との戦いが幕を開けてから、時の流れはあっという間だった。
戦いの傍ら、普通の高校生としての日々を過ごしていた僕達は高校三年生となり、初めて全員同じクラスになっていた。
その頃、朱井家に伝わる名を忘れられた神の力を宿す書を機械化することでモノノケと渡り合える力を得られるシステム…“神話ドライバー”…ひいてはそれによって変身することが可能な“神羅”が開発された。
開発者の田貫教授曰く、この街に伝わる伝説の戦士…妖魔、霊魂、幽冥を参考にしているらしいそのシステムは本来朱井さんが使うはずだった。
聖『……その役目は、私がやるよ。生徒に命は懸けさせられない』
清那『藍羽先生が神羅に…!?』
しかし、朱井さんであっても命の安全が保障されないその代物を生徒が使うことをよしとしなかったのは、教育実習生として照羅巣高校に来ていた
その特殊体質によって藍羽先生は神羅へと変身してモノノケと戦い、やがて街の人々から“仮面ライダー”と呼ばれるようになった。
真黒『やめろっ!やめてくれ…!やめてくれッッ!!』
清那『せん…せ…白…石を…おねが…い……』
そして、忘れもしないクリスマスのあの日、朱井さんは僕の前から姿を消した。
ヌエに取り込まれてしまう朱井さんを、僕は守ることが出来なかった。
けれど、父さんや紅葉、漠夜の時と違ったのはまだ希望が残っていることだった。
夜御哉『恐らく清那君はまだ死んではいないし、当分死にはしないだろう』
…だから僕は誓ったんだ。何をしてでも、例え身を滅ぼすことになってでも朱井さんを救い出そう、と。
⭐︎⭐︎⭐︎
それから更に時は進んで二年後の春のこと。貴真賀中央大学へ進学していた真黒は、自身の所属する理工学部特別研究室にて夜御哉の助手のような役割を担っていた。
夜御哉「……うーむ…」
真黒「田貫教授、これって…」
夜御哉「…ああ、“焚書ドライバー”。神話ドライバーのデータを元に開発したデチューン版なんだが…やはりそれでも装着者への負担が大き過ぎる。普通の人が使えば変身する度に命を削ることになるだろう」
真黒「…そう、ですか」
夜御哉「それこそ清那君くらいの人間ならノーリスクで扱えるだろうが…」
真黒「藍羽先生…は全く効かないってわけじゃないし、そもそも神羅の影響がまだ残ってますもんね」
夜御哉「…そう、なんだよな。力ある書を利用して新たな仮面ライダーを創り出す、というアプローチ自体はそう間違っていないとは思うが…アヤダマを二つ用いてシステムの安定化を図っても思うようにいかないものだな…。神の使いの力で呪いを抑える八咫烏アヤダマと不死者の力で死の影響を抑える餓者髑髏アヤダマを組み合わせるというアプローチは悪くなかったと思うんだが…うーむ…」
目の前に置かれた黒を基調とした神話ドライバーにも似たデバイス…“焚書ドライバー”。
それを見て憂いげな溜息を吐く夜御哉に、真黒はそのデバイスが完成品たり得なかったことを察する。
夜御哉「…仕方ない。こいつは封印しておくとして、やはり妖魔達の力が必要…か」
真黒「…妖魔って、千年前の仮面ライダーですよね?」
夜御哉「…ああ。その頃は当然仮面ライダーなどという単語は存在しないが…妖魔、霊魂、幽冥の三人が世界に滅びをもたらさんとした邪神を打ち倒した。…現代にその三人の仮面ライダーが現れれば…或いは」
真黒「…とはいえ、幽冥の妖之書は佐乃緒にあるけど資格者が現れず、妖魔と霊魂の妖之書に至っては行方知れず……」
夜御哉「…それが問題なんだ。後はそもそも反人間連合の手掛かりをもっと掴めれば良いが…連中も中々尻尾を掴ませてはくれないしな…」
真黒「ヌエの件があったから、というのはやはりあるんでしょうね」
妖魔、霊魂、幽冥の三人の戦士を頼ることを考えながらも、未だにその資格者たる者が現れていないため、真黒と夜御哉は頭を悩ませる。
真黒「…もうこんな時間か。田貫教授、今日はそろそろ帰りますね」
夜御哉「ああ。そういえば麗那嬢の家庭教師があるんだっけ」
真黒「家庭教師って程の立場じゃないですけど…。それじゃあ、また」
夜御哉「うむ。またな」
ふとブンプクブラストフォンを見て時間を確かめた真黒はこの後の予定のために理工学部特別研究室を出る。
⭐︎⭐︎⭐︎
麗那「真黒兄さん、お帰りなさい」
真黒「…うん。お邪魔するね」
麗那「もう、そんなに畏まらなくてもいいですのに…」
真黒「あはは…どうしてもね。それで、今日は何の科目だったっけ?」
麗那「今日は国語を教えてほしくて…」
真黒「国語ね。任せて」
五年前から変わらず麗那に勉強を教えている真黒。
中学1年生となっていた麗那の頼みで真黒は勉強を教えに来ていた。
麗那「…真黒兄さん、ご飯はちゃんと食べてますか?」
真黒「うん。ちゃんと食べてるよ」
麗那「なら、良いのですが…」
真黒「心配かけちゃってごめんね」
麗那「い、いえ…私がただ、勝手に真黒兄さんを心配してるだけなので…」
真黒「…心配してくれる人がいてくれるんだから、僕は幸せ者だよね。ありがとう、麗那ちゃん」
麗那「!…お礼を言われるほどのことでは…」
真黒のことを心配していた麗那に対し、自分を気遣ってくれるその姿勢を嬉しく思った真黒が感謝の思いを告げると、麗那は照れながらその言葉を受け取る。
麗那「…そういえばなのですが……」
真黒「?」
麗那「…実はこっちの業界でも調査しているのですが、モノノケの仕業と思われる連続絞殺事件が布留杜市で発生していて…」
真黒「…!…連続絞殺事件…」
麗那「あっ!その…一応秘密でお願いしますね?…ですが、真黒兄さんには共有しておいた方が良いかな…と思いまして。…その、手口が、五年前のあの事件と似てますから」
真黒「…そう、だね。ありがとう。こっちでも調べてみるよ」
麗那「…無理はしないでくださいね?」
真黒「……うん。分かってるよ」
麗那から「モノノケによるものと思われる連続絞殺事件」について聞いた真黒は五年前の出来事を思い出しつつ、自らも調査することを決める。
⭐︎⭐︎⭐︎
真黒「…イッタンモメン。…奴は反人間連合に取り入ろうとしていた。もしかしたら、この五年間の間で拾われているかもしれない…となれば、反人間連合に近付くチャンスか…?でも、どうやって…」
真黒は自宅の自室にて一人、考え事をしていた。
内容はイッタンモメンが反人間連合に加入しているとして、どのようにしてその手掛かりを得るか。
真黒「…待てよ?何も真っ向から戦う必要はない。……内部に潜り込むことが出来れば、或いは妖魔達の情報も得られるかも。…でもどうやって?何の力も権力ない人間を態々入れてくれたりはしない。…せめて僕も藍羽先生みたいに変身出来れば…」
夜御哉『…ああ、“焚書ドライバー”。神話ドライバーのデータを元に開発したデチューン版なんだが…やはりそれでも装着者への負担が大き過ぎる。普通の人が使えば変身する度に命を削ることになるだろう』
真黒「田貫教授はああ言ってた。…つまり、命を削る危険性はあっても…普通の人間が使うことは可能なはず。…神話ドライバーのように即死するわけじゃないだろうからある程度猶予はある…なら」
仮面ライダーになることが出来た聖のように、自分にも戦う力があればと歯噛みする真黒。
しかし、その中で昼間の夜御哉との会話が頭を過ぎり、焚書ドライバーの力を使うことを思い付く。
真黒「……やるのなら、徹底的にやるしかない。…例えそれが、皆を裏切ることになったとしても…それでも……これしかない、か」
反人間連合に潜入する、ということは表向きには自分を信じてくれる人達を裏切ることになる。
例え本心は違っていようとも、そう思われる行動を取らなければいけないことに苦悩する真黒だったが、それ以外の方法がないこともあり、その瞳に決意の炎を灯す。
⭐︎⭐︎⭐︎
真黒「……待っててくれ朱井さん。いつか必ず…君を救ってみせるから。この命を…懸けても…!」
数日後の夜。貴真賀中央大学の理工学部特別研究室にやって来た真黒は一人呟くと、しまわれている焚書ドライバーへ手を伸ばし、その横に置いてあった二つのアヤダマを手に取る。
真黒「…漠夜、見ててくれ。僕が必ず…成し遂げてみせるから」
懐から獏アヤダマを取り出した真黒は自分に言い聞かせるように語りかけると、そのまま理工学部特別研究室を後にする。
⭐︎⭐︎⭐︎
イッタンモメン「ふんっ!」
「うっ…誰…か……助け…て……!」
イッタンモメン「はっ!誰も助けになんて来ねえよ!さあ!もっともっと絶望した顔を見せてくれ…!」
ある日の夜。どこかの路地裏、人目に付かず、尚且つ薄暗いその場所で、イッタンモメンは高校生くらいの女の子の首を絞め、助けを求めるその姿勢を嘲笑う。
イッタンモメン「ハハハ…!ぐあっ!何だ…!?」
「!?はぁっ…はぁっ…助かった…?」
真黒「立てる?」
「えっ!?あ…はい…」
真黒「…この子に着いていって、逃げると良い」
「え?でも、あなたは…」
真黒「僕は…僕はこいつに用があるからね。お気になさらず」
「…?…あ、ありがとうございます!」
首を絞める力を強めようとしたイッタンモメン。しかし、そこにラクーンモードのブンプクブラストフォンが飛び込んできて体当たりで退ける。
そして、後からやってきた真黒が被害者を助け起こすと、ブンプクブラストフォンの案内で逃がす。
イッタンモメン「邪魔しやがって…。ん?お前は…いつぞやのガキか」
真黒「覚えてたんだな」
イッタンモメン「あれだけ邪魔をされたのは初めてなもんでなぁ…!だが…丁度良い。今は一人のようだし…今度こそお前の絶望顔を見せてもらおうか!」
真黒「悪いけど…そう簡単にやられてやるつもりはない」
イッタンモメン「避けた…何だ?復讐に来たのか?」
真黒「…そうだな。それもある」
イッタンモメン「…何…?」
真黒「答えろ。お前…反人間連合を知ってるな?」
イッタンモメン「フッ、まあな。俺も反人間連合に拾われたもんでね」
真黒「…そうか。尚更好都合」
因縁の敵であるイッタンモメンと向き合う真黒。
イッタンモメンの放った布の一撃を回避しつつ、今のイッタンモメンが反人間連合に所属していることを確認すると、焚書ドライバーを身に付ける。
イッタンモメン「ハッ。俺を倒す気か?無理だな。普通の人間には不可能だ」
真黒「…だったら、普通の人間を超えれば良い」
《着火!》
イッタンモメン「アヤダマ…?」
《八咫烏!》
《餓者髑髏!》
《イグニッション!》
《イグニッション!》
真黒「…変身」
《焼却装着!ヘンゲ…
黒翼!白骨!仮面ライダー禍炎!》
イッタンモメン「何…!?」
たかが人間に倒されることはない。そう高を括っていたイッタンモメンに対し、真黒は仮面ライダー禍炎 八咫烏餓者髑髏ヨロイへと変身することで対峙する。
禍炎「仮面ライダー…禍炎。この力でお前を…お前だけはこの手で倒す!」
イッタンモメン「ごああっ!…仮面ライダーだと…!?あり得ねえ…!どうして、いなくなったんじゃねえのかよ!?」
禍炎「確かにいなくなったさ。…僕は新しい仮面ライダーだからね。喜べよ、お前がデビュー戦、だ!」
イッタンモメン「うぐっ、熱…!」
禍炎に変身した真黒は容赦なく炎を纏った徒手空拳でイッタンモメンを殴り付ける。
イッタンモメン「この…!」
禍炎「芸がない奴め」
イッタンモメン「焼き切られた…!?」
禍炎「…お前はこの手で…消し炭にしてやる」
イッタンモメン「ぐあっ!」
禍炎「はあっ!!」
イッタンモメン「うぐっ…」
禍炎「だあっ!」
イッタンモメン「ぐほああっ!!熱い…痛え…」
イッタンモメンは腕から伸ばした布を禍炎の首に巻き付けるも、その布を掴んで炎を発した禍炎によって布は焼き切られ、そのまま炎を帯びた突きや蹴りを浴びせられてイッタンモメンは叩きのめされる。
イッタンモメン「ここは…逃げるしかない…!」
禍炎「逃がすか…!」
イッタンモメン「何っ!?」
禍炎「飛べるのはお前だけじゃないんだよ…!」
《ブースト!》
禍炎「次のはもっと痛いぞ…!」
イッタンモメン「止めっ──」
《禍炎デストロイ!》
禍炎「ふんっ!!」
イッタンモメン「ぐっ…うぐああああっ!!」
空に逃げようとしたイッタンモメンだったが、同じく飛べる禍炎に容易く追い付かれ、同様の隙に灼熱の炎を纏った拳を直撃させられ、地面に叩き付けられる。
禍炎「これで終わりだ…!」
《オーバーブースト!》
イッタンモメン「や、やだ…待ってくれ、頼む!悪かった!死にたくないんだ…っ!」
禍炎「じゃあな」
《禍炎インフェルノ!》
禍炎「燃え尽きろ…はあーっ!!」
イッタンモメン「嫌だ…嫌だ嫌だ…うぐあああああっ!!!」
トドメを刺すべく地面から巨大な骨の手を召喚してイッタンモメンを捕らえた禍炎はその命乞いを無視すると六枚の黒翼を広げて漆黒の太陽の如く舞い上がり、次の瞬間左脚に橙色の炎を纏わせて急降下しての跳び蹴りを叩き込んでイッタンモメンを爆散させる。
真黒「……」
雹介「戦いぶりを見ていたけれど、実に素晴らしい実力だね。…君は一体何者だい?」
真黒「…ヌラリヒョンだな?」
雹介「この姿の時は布田雹介、という名を名乗らせてもらってるよ。…はて、君と過去に会ったことがあったかな?」
真黒「…二年前、照羅巣高校の屋上で会ったさ。…僕は白石真黒…貴真賀中央大学の二年だ」
イッタンモメンを倒し、変身を解いた真黒の前に現れたのはヌラリヒョン…
雹介は何故自分がヌラリヒョンであると知っているのか不思議に思うが、真黒は自らが二年前の事件の時にヌラリヒョンを知ったことを明かすと、雹介も思い出した様子でポンと手を叩く。
雹介「白石…ああ、君があの時の…成る程、確かにいたね。…しかし、まさかあの時何も出来ずに這いつくばっていただけの少年がここまでになるとは…一体何が目的だい?」
真黒「…僕を、反人間連合に入れてくれ」
雹介「!おや、驚きの申し出だね」
真黒「…ヌエの奴を追い落として…僕が五行になる。それが僕の…復讐だ」
雹介「成る程復讐…良いだろう。君は中々に有用そうだし、是非とも我々反人間連合に歓迎しようじゃないか!いやぁ、近頃反人間連合のことを嗅ぎ回る者がいるようだったから様子を見に来てみれば…とんだ掘り出し物だな。クックックッ…」
反人間連合に入りたいという真黒の願いを聞いた雹介は楽しげに笑うと、真黒を反人間連合へと迎え入れる。
かくして、真黒の反人間連合での生活が始まったのだった…。
⭐︎⭐︎⭐︎
真黒「…うん。この調子なら変身回数さえ調整すれば後二年近くは持つ。…最後にはこの身を犠牲にすることになったとしても、やり遂げないと…。さて、そろそろヌラリヒョンの方でも焚書ドライバーの改良が終わってる頃…正直、信用は出来ないが…アヤダマの入手がしやすくなるなら戦力強化にも繋がるし、やるしかない…。僕に利用価値を感じているうちに…成し遂げないと」
モニターに映るデータから自分の命がまだ暫く持つであろうと結論づけると、真黒は改めて気合を入れ直す。
⭐︎⭐︎⭐︎
そうして反人間連合に入った僕は田貫教授の持つ技術力に目を付けたヌラリヒョンの策もあり、田貫教授の開発した装置のデータを横流しすることで信用を得ていた。…正直、かなり危険な賭けではあったけど、妖魔、霊魂、幽冥を新たに都合の良い人材に担わせるという連中の計画に協力しつつ選ばれた子達を鍛え上げればこちらの計画にとっても都合が良かったこともあり、綱渡りではありつつもこうせざるを得なかった。
そんな日々で、僕は新しい希望に出会うこととなる。
…それが、
世模継学院高校で過ごすことも多かった僕に、ある時凪桜ちゃんが話しかけてきた。
凪桜「…真黒さん」
真黒「…君は…暁凪桜ちゃん、だったね?」
凪桜「…うん。…あなたに聞きたいことがある」
真黒「?…何かな?」(正体に勘付かれたか?)
凪桜「世模継のやろうとしてること、どう思う?」
真黒「…どう、というと?」
凪桜「…外…布留杜市を破壊して自分達の力を示すって計画。……私は、正直それが正しいと思えない」
真黒「!…君は、反人間連合の考えに反対なのかな?」
凪桜「…うん」
凪桜は真黒に自身が反人間連合のやり方には反対だということを明かし、それを聞いた真黒は敵地であることを考慮して安易に信じずその真意を探る。
真黒「…どうして、僕にそのことを?」
凪桜「真黒さんは…私と同じ目をしてた。何かを諦めてない目」
真黒「……成る程、僕もまだまだというわけだ」
凪桜「?」
真黒「ごめん、僕のことを試すために送られてきたのかと思ってたけど…どうやら君自身の意思みたいだね」
凪桜「…そう思われても仕方ないけど…紛れもなく私自身の意思で聞いてる。…真黒さんは信じてくれるの?」
真黒「…信じるよ。信じてみたいと思った」
凪桜の言葉、そしてその瞳に宿る強い意思。その二つを見た真黒は凪桜が本心から自身に語りかけてきたことを悟り、信じることを決める。
凪桜「…私、このままで良いのかな」
真黒「…君はどうしたい?変えたいんじゃない?こんな現状を」
凪桜「…うん。変えたい。都黎はずっと苦しそうだから…もうあんな顔しなくて済むようにしたい」
真黒「なら、そうしよう」
凪桜「え?」
真黒「君にはまだ未来の可能性が広がってる。君がどうしたいか決まってるのなら…そこに向かって突き進むだけだよ」
凪桜「突き進む…」
真黒「…そして、僕達大人はそうやって突き進む子供を支えて、その背中を押す。それが役目だからね」
凪桜「真黒さん…」
真黒「…凪桜ちゃん。今度、ヌラリヒョンは照羅巣高校にこの世模継から誰かを潜り込ませるつもりだ。…妖魔を見付けるためにね」
凪桜「妖魔…」
真黒「かつて、この街の危機を祓った伝説の戦士…その力を受け継ぐ人間を、自分達の都合の良いように仕向けようとしている」
凪桜「…!」
凪桜自身がどうしたいのかを問い、その答えを聞いた真黒は近々行われるヌラリヒョンの計画について語り、その目的が「妖魔」であることを明かす。
真黒「…君は来年から高校生だ。潜り込むには丁度良いタイミングと言える。…だから、君が妖魔を選ぶんだ」
凪桜「!…私に、選べるのかな」
真黒「…君だからこそ、だよ。他の世模継生であれば反人間連合の狙い通りの人材しか選べない。けれど…反人間連合の考えを間違ったものと考えられる凪桜ちゃんだからこそ、真に力を手にするべき者を選ぶことが出来る」
凪桜「…真に力を手にするべき者…どんな人?」
真黒「…君がこの人だ。と思った人と言いたいところだけど…まあ少しは条件を付けた方がやりやすいよね。…そうだなぁ、力が強くなかったとしても、強く優しい心を持った人を見つけること、かな」
凪桜「…強くなくて良いの?」
真黒「ああ。…反人間連合にとって都合の良い妖魔…それは戦闘力の高くない存在。…そこから逸脱したチョイスは出来ないだろう。…だからこそ、僕達はその中で足掻くしかない」
凪桜「…それが、強く優しい心…?」
真黒「そうさ。…強く優しい心を持つ人っていうのは周りが助けてくれる。そんな人ならきっと…ヌラリヒョンの計画を打ち破ることが出来るはず。だから、強く優しい人を選ぶんだ」
凪桜「…分かった。私…真黒さんみたいな人を選ぶよ」
真黒「え、僕?…僕なんて全然大したことないけど…きっと、凪桜ちゃんがこの人!って思った人がいたなら…それが正解だよ。…何だか最初の結論に戻っちゃったね」
真黒は凪桜にどのような者を選ぶべきか説くと、凪桜はその言葉を凪桜なりに受け取る。
真黒(…凪桜ちゃん。イザナミの形代であるという彼女を…“理想の妖魔”に引き合わせることが出来たなら…。光が見えて来たかもね)
⭐︎⭐︎⭐︎
こうして、僕の企みは成功し、凪桜ちゃんを照羅巣高校へと送り込むことに成功した。
照羅巣高校へと入学した凪桜ちゃんは無事に信じられる存在として
そしてそんな彼等を鍛えるために禍炎として立ち塞がった僕だったけれど…あのクリスマスの日──
雹介『最初っからお見通しだったよ、君の魂胆なんてね』
真黒『ここで終わるわけにはいかない』
真黒『はぁっ…はぁっ……ここまでか…!』
汰月『…っ』
賢昇『……』
時雨『そんな…』
真黒『…朱井さん…先生…少しは僕も……二人…みたいに…なれたかなぁ……──』
──そうだ。ヌラリヒョンの策略によって、僕は命を落とした。
そうして、三人の仮面ライダーに全てを託し、僕は…白石真黒はその生涯に幕を閉じた。
⭐︎⭐︎⭐︎
振り返りを終えてみると、案外悪くない最期だったとは思うけど…それでも、心残りがないわけじゃない。
彼等の物語がどうなったのか、ヌラリヒョンの計画は挫けたのか。
そんなことを考えている間に、やがて僕は青い光の元へと辿り着いていた。
僕の頭上に輝く青に、一体これは何なのか。そんな不思議な気持ちを抱いていると、次の瞬間僕の身体…死んでいる身なので身体かは分からないけど、取り敢えず僕は光の方に引き寄せられる。
真黒「なっ…!?」
抵抗も出来ず光に吸い込まれ、意識を失って僕は、聞き覚えのある声で目を覚ます。
雹介「お目覚めかな?」
真黒「!…ここは…ヌラリヒョン…!?」
雹介「流石はイザナミ様。…久しいね、白石真黒君」
イザナミ「この者が本当に…利用価値があるんじゃな?」
真黒「……!」
聞き覚えのある嫌味な声と、聞き覚えはあるが聞き慣れない冷徹な声。その二つと目の前の光景に、僕は混乱しながらも少しずつ事態を飲み込む。
──かくして、僕…白石真黒は再びこの物語の舞台に上がることとなった。
⭐︎⭐︎⭐︎
真黒「…僕の家…まだちゃんと残ってるんだ。掃除もされてるし…きっと、清彦さんが残しておいてくれたんだろうな……いつか、ちゃんとお礼を言いに行きますから」
蒼炎に包まれてかつての自宅へと姿を現した真黒は、暫く空けていたはずの自宅が綺麗に保たれ残っているのは清彦のお陰だと察すると、届かないながらも感謝の思いを呟く。
そして、そのまま真黒は自室へと向かう。
真黒「僕の部屋も綺麗なまま…。これは……」
自室で真黒は机の上に置かれた一冊のノートを手に取る。
その表紙には「麗那ちゃん家庭教師ノート」と書かれていた。
そのノートに真黒は見覚えがあった。
何せ、そのノートを使っていたのは真黒自身なのだから。
懐かしさに駆られてそのノートを開くと、そこには涙の跡と思われる滲みが。
真黒「……そうか、麗那ちゃんが…。もしかして、掃除も麗那ちゃんが…?…全部終わったら、ちゃんとお礼と謝罪、しないとな……」
家庭教師ノートを見て泣くような、ここに出入り出来る人など限られている。
そのことから真黒は涙の滲みは麗那のものと見抜くと、麗那への感謝の念と共に罪悪感を覚える。
真黒「さて…折角もう一度チャンスを手に入れたんだ。…今度こそ」
拝啓、在りし日の君へ。
今の僕がこんな風になっているなんて、きっと信じられないだろうな。
今度こそ、僕が君をあの日から救い出すから。
だから…それまであと少しだけ…待っていてほしい。
〜拝啓、在りし日の君へ 完〜
真黒のスピンオフ、「拝啓、在りし日の君へ」をご覧いただきありがとうございます!
真黒の清那や澄香との出会い、禍炎になった経緯や反人間連合へと潜り込む際の裏側、凪桜との交流、そして復活した直後の話など、物語の裏側となって来た部分を描けたのではないかなと思います。
さて、この後、21時半より2月公開予定のVシネマ後編の予告も投稿いたしますので、是非ともお見逃しなく!