仮面ライダー妖魔 番外編   作:玲音考人

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仮面ライダー妖魔 アフターエピローグ「フェイス・ワンズ・フェイト」

 

「…我々は失敗した。故に…我々は間違えない。この世界を確実に滅ぼす。そのために…まずは奴の力だけをいただくとしよう」

 

 暗闇の中にこだまする不気味な声。

 その声が鳴り止むと同時に、闇の中に不気味に輝く真っ赤な双眸が浮かび上がる…。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

──貴真賀中央大学

 

「いいだろ〜?俺ら友達じゃん!」

 

「だからさ、遊ぶための金、くれね?」

 

「い、いや…その…」

 

「え?何?くれねえの?」

 

「ノリ悪りぃな」

 

 大学構内の人目に付きにくい一角にて行われていたのは強請り行為だった。

 チャラチャラとしたいかにもな風貌の大学生達に絡まれていたのは気弱そうな一人の青年。

 

「あ、そーだ。一発痛い目見れば金くれるよな?」

 

「イイじゃん。やっちまおう…あ?」

 

賢昇「お前等、随分楽しそうだな?」

 

汰月「強請りか…くだらないな」

 

「んだテメェ等」

 

「…生意気だな。叩きのめしてやるよ」

 

賢昇「上等だ!」

 

汰月「…仕方ないか」

 

 気弱そうな青年に暴力を振るおうとしたところにやって来て、その手を止めさせたのは汰月と賢昇の二人だった。

 

汰月「ふん」

 

「ぐえっ!」

 

賢昇「オラアッ!」

 

「うぎゃ!?」

 

「な、なんなんだよ…強え…!」

 

「只者じゃねえ…!」

 

賢昇「次見かけたらこんなんじゃ済まさねえからな」

 

汰月「これに懲りたら二度とこんなことするな」

 

「す、すみませんでした!」

 

「あ、待ってくれ!」

 

 汰月と賢昇相手に殴りかかる二人組だったが、容易く制圧され、尻尾を巻いて逃げ出す。

 

汰月「口ほどにもない連中だったな」

 

賢昇「…全くだな。軟弱極まりないぜ」

 

「あ、あの…ありがとうございます…!」

 

汰月「気にするな」

 

賢昇「仮面ライダーとして当然のことしただけだしな」

 

「仮面…ライダー?」

 

汰月「…君は外部生か。…仮面ライダーは…平たく言えば正義の味方…みたいなものかな」

 

賢昇「ま、自分達でそう名乗るのも気恥ずかしいけどな」

 

 汰月と賢昇に助けられた青年は二人に礼を告げ、そんな青年に二人は仮面ライダーとして当たり前のことをしたまでと返すと、その場を去る。

 

賢昇「ん?」

 

汰月「どうかしたのか?」

 

賢昇「アリスから連絡が来てたんだよ。…どうやら近いうちにこっちに来るらしい」

 

汰月「へえ。…そろそろ距離を縮めるんだな」

 

賢昇「余計なお世話だ!そもそもお前に言われたくねえっての!」

 

汰月「ヘタれて自分から連絡を取れない誰かさんよりはマシだ」

 

賢昇「おまっ…自分が同じ大学に通えてるからって…!」

 

 賢昇の幼馴染であり想い人でもあるアリスが近いうちに布留杜市に来るという話を聞いた汰月は賢昇のことを煽り、それに乗った賢昇といつものように小競り合いをしながら歩いていく。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

仮面ライダー妖魔 アフターエピローグ

 

フェイス・ワンズ・フェイト

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

時雨「ありがとうございました!」

 

 深々と頭を下げると、時雨は上機嫌な様子で建物を出て、貴真賀地区の街を歩く。

 

リュウジン「上機嫌だな」

 

時雨「…はい。人とモノノケの共存について理解してくれる人が増えましたから。…こうやって少しずつ、やれることからやっていかないとですよね」

 

リュウジン「そうだな。…とはいえ、お主が上機嫌なのは他にも理由がありそうだな…例えば、凪桜とのデート、とか」

 

時雨「なんでそれを…!?」

 

リュウジン「フン、時雨は分かりやすいからな。全く、浮かれおって…」

 

 人とモノノケの共存。そんな夢に向かってまた一つ前進した時雨。

 しかし、時雨の機嫌が良い理由はそれだけではなく、凪桜とのデートがこの後あるからだとリュウジンは看破する。

 

時雨「し、仕方ないじゃないですか!最近ちょっと忙しくてあんまり会えてなかったんですから!」

 

リュウジン「そうは言っても一週間前に会いに行ってたし、家で毎日のように通話してるだろう」

 

時雨「それはそうですけど…やっぱり高校の時は毎日のように一緒にいるのが当たり前だったので…」

 

リュウジン「一時期いなくなってた時は平気…ではないにせよそこまで酷くなかったぞ」

 

時雨「それはまあ…世模継に帰ったりイザナミに乗っ取られたりした時はそれどころじゃなかったのもありますし、その頃は僕自身が恋愛感情をちゃんと理解出来てなかったので…」

 

リュウジン「…まあ良い。我も久々に凪桜の顔でも拝んでやるとするか」

 

時雨「あ、良いですね。凪桜ちゃんもきっと喜びますよ!」

 

 平和な日常そのものな会話を繰り広げる時雨とリュウジン。

 そうして歩いていると、黒っぽい探偵のような服装を身に纏い、どこか軽薄な表情を浮かべた少年が時雨の前に現れる。

 

時雨「…?」

 

「…おにーさんが妖魔だよね?」

 

時雨「えっ?…そうだけど…君は…?」

 

 謎の少年は時雨が進もうとするのを邪魔するように動くと、にこやかな笑みを浮かべて時雨が妖魔の変身者であることを確認する。

 そしてその問いを時雨が肯定すると、次の瞬間には少年の右腕はその小柄な体躯に見合わぬ刺々しく筋骨隆々、鋭い爪の生えた赤黒いものへと変わる。

 

「やっぱり。じゃ、死んで」

 

リュウジン「時雨!危ない!」

 

時雨「なっ…うあああっ!…何が…!」

 

リュウジン「時雨!よくも…!」

 

「あっははは!やっぱり弱い!人間なんて大したことないもんなぁ!変身さえさせなければ所詮この程度だよね。…邪魔だよ」

 

リュウジン「ぐあっ!!」

 

 その異形の腕によって時雨を張り飛ばした少年は狂ったように高笑いし、リュウジンをまるで羽虫でも追い払うように軽くあしらう。

 

時雨「っ…!」

 

「その力は使わせないよ」

 

時雨「うぐっ…あああ!」

 

リュウジン「時雨!!」

 

「兄様を殺した憎き力…けど、これさえあれば…!」

 

時雨「っ…無双の力が…うぐっ…あああ!!」

 

 なんとか無双アヤダマを取り出した時雨に対し、少年はその手を強く掴み、捻り上げると、そのまま時雨の力ごと無双アヤダマの力を数珠のようなものへと吸収していく。

 

「この力はお前じゃなきゃ真価を発揮出来ない…ならお前の力ごと取り込めば良い…ってわけ!」

 

時雨「うぐっ…っ…何の…ために…!」

 

「…決まってる、復讐だよ!」

 

時雨「うああっ!…うぐ…復讐…?」

 

凪桜「何、してるの?」

 

「!」

 

時雨「うっ…凪桜ちゃん…!?」

 

 無双アヤダマの力を取り込んでいく少年は時雨を痛め付けて力を搾り出させながらその目的を復讐と語る。

 するとそこに冷たい声音と銃声と共にブラストモードのブンプクブラストフォンを構えた凪桜が現れる。

 

「お前は…イザナミ様の形代か…」

 

凪桜「質問に答えてもらう。そこで、時雨先輩に何をしてるの?」

 

「…はあ、力も大分奪えたし、ここは引くとしようか。じゃあね」

 

凪桜「待て!…逃したか」

 

時雨「うっ…」

 

 凪桜の迫力に押されてか、少年は煙を発生させて身を包んで姿を眩ます。

 

凪桜「時雨先輩!大丈夫…じゃなさそう。…早く病院に連れて行かないと…!」

 

リュウジン「すまん…時雨…」

 

時雨「いえ…ありがとうございます。凪桜ちゃんも、助かった…よ…」

 

凪桜「!時雨先輩!時雨先輩!!」

 

リュウジン「時雨!?おい!しっかりしろ時雨!!」

 

 凪桜とリュウジンに礼を告げた時雨は、それで力を使い果たしてしまったのか、そのまま気を失ってしまう。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

賢昇「よう、久々だな」

 

アリス「本当だよ。3月以来じゃない?…全く、賢昇は全然連絡くれないものだから寂しかったよー」

 

賢昇「うっ…悪かったよ」

 

 翌る日。賢昇は布留杜市にやって来たアリスと待ち合わせていたが、その中で賢昇がアリスに全然連絡をくれず、会うのも賢昇の卒業式の日以来になってしまったことに対して、アリスは文句を言い、賢昇は素直に謝る。

 

アリス「……実はね、賢昇…」

 

賢昇「?どうかしたか」

 

アリス「…ううん、何でもない。ね、今日は映画を観に行こうよ」

 

賢昇「映画?」

 

アリス「そう。…ほら、小さい頃はよく一緒に観に行ったよね」

 

賢昇「あー、んなこともあったな…。お前がよく色んな小説原作の映画見つけてきて一緒に見に行ったっけ」

 

アリス「そうそう。それでいっつも賢昇最後には寝てたよね」

 

賢昇「し、仕方ねえだろ。お前の選ぶ映画はガキには難しすぎんだよ」

 

アリス「じゃ、今はいけるってことだよね」

 

賢昇「…そ、そりゃ、当然だろ。全然いけるぜ!」

 

アリス「じゃ、決まりだね」

 

賢昇「おう」(…なんか上手いこと言いくるめられた気もするが…ま、よしとするか)

 

 アリスからの誘いを受け、映画を見に行くことになった賢昇。

 幼い頃の思い出話に花を咲かせつつ、映画館へと向かう。

 

『例えこの先何があろうとも…俺は君を離さない』

 

『ケンスケさん…っ!』

 

賢昇「……」(あ、甘酸っぱい…!映画の内容は理解出来るが…なんだこの胸キュン青春恋愛映画!何故か見てるこっちが恥ずかしくなってくる…!けどまあ…)

 

 やってきた映画館で観ることになったのは糖度高めの恋愛映画。

 賢昇自身はその内容の甘さに謎の羞恥心を覚えつつも、チラリと横に座るアリスの集中した表情を窺う。

 

賢昇(アリスが楽しんでるなら、まあ良いか)

 

 楽しげなアリスの様子を見た賢昇は小さく笑みを浮かべると、映画に向き直る。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

アリス「面白かったー!」

 

賢昇「そりゃ良かった」

 

アリス「…賢昇はそんなに楽しめなかった?」

 

賢昇「いや?…楽しかった」

 

アリス「…そっか。ありがとね」

 

賢昇「さて、次はどうするんだ?」

 

アリス「んー…ちょっと歩かない?」

 

賢昇「?…おう」

 

 映画の感想を口にしつつ街を歩く賢昇とアリス。

 やがて二人は佐乃緒地区の一角にひっそりと存在する古びた小さな公園へやって来る。

 

賢昇「ここは昔よく遊んだ公園だな。…懐しいな」

 

アリス「ね。…あの頃に比べると、どの遊具も小さくなっちゃったなぁ…」

 

賢昇「…ま、俺等がデカくなってるからな」

 

アリス「そうだね。…あ、ここのベンチ新しいのになってる」

 

賢昇「…そうだな。俺等がガキの頃のはもっとボロかったよな」

 

アリス「そうそう。で、そのベンチでよく一緒に本読んだりしてたよね」

 

賢昇「あったな、そんなことも」

 

アリス「難しい本は苦手な賢昇が興味を示したのが四字熟語だったっけ」

 

賢昇「…そうだな。お陰で今でも四字熟語は好きだけど」

 

アリス「私のお陰だね」

 

賢昇「…まあ、そうなるか」

 

 二人はかつての思い出が詰まった古びた公園で、それぞれの成長に伴う変化や、純粋に時の流れによる変化などを感じ取りつつも、幼い頃のことを思い出す。

 

アリス「…それに…私が賢昇に出会ったのもここだった」

 

賢昇「…そうだな」

 

アリス『〜♪』

 

賢昇『お前、すっげー歌うめぇな!』

 

アリス『えっと、君は?』

 

賢昇『オレはけんしょうだ!よろしくな!なあなあ、オマエは?』

 

アリス『えっと、繰井…アリス』

 

賢昇『アリスか!オマエの歌、もう一回聞かせてくれよ!お前の歌聞いてると、なんていうかこう…安心するんだ。ココがあったかくなる感じがする!』

 

アリス『そ、そう?』

 

賢昇『ああ!』

 

アリス『…ふふっ、変わった子だね、君』

 

アリス「…あの頃、私は自分で言うのもなんだけど…周りの子達より一回り頭が良かった。…だからこそ、周りと上手く噛み合えなくて、一人だった。幼い時から歌が好きだったから、一人で過ごせるこの公園で歌ったり、本を読んだりしてた。…それも悪くはなかったけど、それでもやっぱり誰かと一緒に過ごしたいって思ってた。そんな私の前に…賢昇が現れてくれたんだ」

 

 かつての思い出の場所…出会いの場所でもあるその場所で、アリスは賢昇と出会ったその時のことを鮮明に思い出す。

 

アリス「…賢昇、大切な話があるの」

 

賢昇(何だ?何だこの雰囲気…ま、まさか告白!?アリスの奴俺に告白しようとしてんのか…!?…んなわけないか…?いやしかし…)

 

アリス「あのね」

 

賢昇「お、おう」

 

アリス「私……今度お見合いするんだ」

 

賢昇「……ん?…???ま、待て、何だって?お見合い?お前が?」

 

アリス「そう、お見合い」

 

 少し浮ついていた賢昇の心を撃ち落とすのには十分な威力のその言葉に、賢昇は明らかに動揺した様子を見せる。

 

賢昇「ど、どういうことだよ。てかどんな奴とだよ」

 

アリス「年齢は私より一つ上なんだって。それで、由緒正しい家の優秀な祓魔師らしい」

 

賢昇「!…それって…」

 

アリス「私、お父様に相談して祓魔師を継がないで、歌手として活動していくことを許してもらった。…けど、繰谷家の当主としては優秀な祓魔師の血筋を途絶えさせるわけにもいかないんだって。家名だけなら親戚筋もあるから良いけど、繰谷家の血筋にはそれだけの価値がある。そして…あれもやだ、これもやだなんて我儘言えないからね。要は交換条件だよ」

 

賢昇「だとしても…俺等まだ大学一年だぞ!?いくらなんでも話が早すぎるだろ!」

 

アリス「だからこそだよ」

 

賢昇「え…?」

 

アリス「…言ったでしょ?一歳上だって。向こうも大学生なんだよ。だからこそ、若くて時間のある今のうちから親交を深めて、確実に結婚に持っていこうってこと。…だからそう…これは…“運命”みたいなものなんだよ」

 

 賢昇の疑問も的確に潰していくアリス。

 その様子に返す言葉を失った賢昇は黙り込んでしまう。

 

賢昇「……そうか」

 

アリス「…賢昇には言っておきたかったんだ。だって……私の一番の()()だから」

 

賢昇「アリス…」

 

アリス「…それじゃあね」

 

賢昇「……」

 

アリス「…っ……」

 

賢昇「……俺は…どうすりゃ良いんだよ…!」

 

 言葉を返せなくなった賢昇を見たアリスはどこか悲しげであり寂しげな表情でその場を去っていく。

 そして、公園に一人残された賢昇は拳を握り締め、ただ憔悴するのだった。

 

アリス「……はあ…」

 

賢昇『もし祓魔師にならなきゃならねえことが枷になってんのなら…俺が代わりにやってやるよ』

 

アリス「…別に私は戦わなくて済む。夢だって諦めなくたっていい。これ以上を望んだら罰が当たっちゃうよ。…それなのに…何を期待してたんだろ。…バカだな、私……」

 

 …その頃、公園を出て暫く歩いたアリスは、かつて交換留学で布留杜市へと帰って来た時の賢昇の言葉を思い出し、道の隅でその頬に涙を伝わせていた。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

汰月「時雨が入院した…!?」

 

星海「えっ!?」

 

汰月「…分かった。今度見舞いに行く」

 

星海「晴河君、何かあったんですか…?」

 

汰月「…どうやら謎のモノノケ?に襲われて大怪我を負ったらしい。命に別状はないらしいけど、今は入院中だって、凪桜から連絡があった」

 

 賢昇とアリスの関係性に大きな動きがあったその頃、いつも通り二人仲良く過ごしていた汰月と星海は時雨が昨夜の事件で大怪我を負った影響で入院中であることを知る。

 

汰月「…時雨を狙った…ということは何かがあるのは間違いない…。俺達も気を付けるようにしよう」

 

星海「そうですね…」

 

「困るなぁ、そんなことされちゃ」

 

汰月「!…お前は…」

 

 警戒心を強めた汰月と星海の前に現れたのは、薄ら笑いを貼り付けた少年…時雨を襲った犯人だった。

 

「良い心構えだと思うけどさぁ、僕にとっちゃ邪魔もいいところなんだよねー」

 

汰月「お前…時雨を襲った犯人か。凪桜から聞いた情報に合う」

 

「耳が早いね。流石に仮面ライダー達の連携は凄いや。…そう、僕が妖魔を襲った犯人の、イバラキドウジ」

 

汰月「…イバラキ…ドウジ…。シュテンドウジと何か関係があるのか…?」

 

イバラキドウジ「鋭さも中々だね。そうだよ、僕はシュテンドウジ様の“右腕”なんだ。さあ…仮面ライダー霊魂。君にも消えてもらうよ」

 

 少年はシュテンドウジの“右腕”であったというイバラキドウジであると明かすと、鈍色と藍色を基調とした鬼のような姿に右腕のみ刺々しく筋骨隆々で、鋭い爪の生えた赤黒いものになっているのが特徴的なモノノケの姿に変わる。

 

汰月「…真正面から来るなら…倒すだけ」

 

《大蛇!》

《装填!》

 

汰月「変身」

 

《憑依装着!変化!

 

蛇行咬合!大蛇ヨロイ!》

 

 イバラキドウジと対峙する汰月は仮面ライダー霊魂 大蛇ヨロイへと変身すると、銃状態の妖之斧火縄を構え、発砲する。

 

霊魂「はあっ!!はっ!」

 

イバラキドウジ「そんなものかい?霊魂も大したことないねえ」

 

霊魂「言ってくれる…!」

 

 霊魂の銃撃を右腕で防ぐと、イバラキドウジはあからさまに挑発する。

 

霊魂「ふっ…」

 

イバラキドウジ「ん?」

 

《斧之刻!》

 

霊魂「はああっ!!」

 

イバラキドウジ「おっと…そう来た…か!」

 

霊魂「くっ…うああ!!」

 

星海「汰月さん!」

 

霊魂「…やるじゃないか」

 

 霊魂は銃撃を仕掛ける動作でフェイントをかけ、素早く斧状態に変えた妖之斧火縄を振り抜くが、イバラキドウジには受け切られてしまい、反撃を受ける。

 

霊魂「…どうやら、こっちも様子見ばかりはしてられなさそうだ」

 

《クサナギガトリンガー!》

 

イバラキドウジ「本気、出してくれそうで良かったよ。…何せ、それを待ってたんだから」

 

霊魂「…!?クサナギガトリンガーが…奪われた…?一体何をした!」

 

 全力を出すべくクサナギガトリンガーを取り出した霊魂。それを待っていたというイバラキドウジは左腕を振るって空間を歪ませ、そのまま霊魂の手元に左手を届かせてクサナギガトリンガーを奪い取る。

 

イバラキドウジ「実は僕、空間を歪ませる力を持ってるんだよね」

 

霊魂「何…!?」

 

イバラキドウジ「さて、コイツと君が揃えば…計画を進められる」

 

霊魂「…まさか。星海!逃げろ!!」

 

星海「えっ…?」

 

イバラキドウジ「もう遅いよ!蛇の一族の末裔よ…今こそ破滅の毒蛇の化身となれ!!」

 

星海「汰月さん…っ……!うっ…うう…うあああああっ!!!」

 

霊魂「星海ーッ!!」

 

 クサナギガトリンガーを手にして勝ち誇るイバラキドウジの姿にその狙いを理解した霊魂は星海に逃げるよう伝えるが、時既に遅く、右腕に禍々しい紋様を浮かび上がらせたイバラキドウジはクサナギガトリンガーに嵌め込まれた大蛇石から青黒色のエネルギーを放って星海に浴びせる。

 すると、苦しむ様子を見せる星海の身体に青黒色の蛇が数多に絡み付いていき、その姿を青黒色を基調として大量の蛇が絡み付いたような胴体に、頭は二対の黄金の角を生やした一際巨大な蛇のような姿に変わった怪物へ変える。

 後頭部に絡み付いた蛇が何匹も垂れ下がるその姿はどこか女性の髪を思わせるその怪物に、霊魂は絶句する。

 

イバラキドウジ「これこそがヌラリヒョン様が生み出そうとしていた怪異の一角… 夜刀神(やとのかみ)…!」

 

霊魂「夜刀神…だと…!」

 

イバラキドウジ「そうさ。大蛇石の力で蛇の一族の末裔を形代に、ヤマタノオロチの血を引く者が術式を行使することで産まれる存在!術式の難度が高い分、その力はかの両面宿儺をも凌ぐのさ…!そして僕はこの右腕に兄様から賜った血を宿しているからね。その力で生み出させてもらったよ」

 

霊魂「ふざけるな!星海を離せ!!」

 

イバラキドウジ「そう言われて素直に従うわけないじゃん。ほら、やっちゃってよ」

 

夜刀神「仰せのままに…我が主」

 

 霊魂は怒りを見せながらイバラキドウジを銃撃するが、その攻撃を星海の変貌した怪異…夜刀神が防ぎ、そのまま襲いかかる。

 

夜刀神「消え失せろ!」

 

霊魂「星海!しっかりするんだ!星海!ぐあっ!」

 

夜刀神「ふん、この身体はもう私の物…諦めなさい!」

 

イバラキドウジ「そーそー。これこそが蛇の一族の彼女に課せられた…“運命”なんだから」

 

 霊魂は夜刀神に掴み掛かり、何とか星海の意識を覚まさせようと呼びかけるが、夜刀神の猛攻に押されて後退させられる。

 

霊魂「ぐっ…“運命”だと…?諦めて堪るか!ぐっ!?」

 

イバラキドウジ「夜刀神だけ見てたらやられちゃうよー?」

 

霊魂「空間を歪ませてあそこから攻撃したのか…!」

 

イバラキドウジ「せいかーい!」

 

 なんとか諦めまいと踏ん張る霊魂だったが、イバラキドウジの能力を使った遠距離打撃により追い詰められていく。

 

霊魂「流石に分が悪いな…なら、こいつで!」

 

《火車!》

《装填!》

 

イバラキドウジ「今更そんな一般モノノケ程度のアヤダマで何を?」

 

《憑依装着!変化!

 

熱狂爆走!火車ヨロイ!》

 

霊魂「はあっ!」

 

夜刀神「ふん。そんな小細工、私には…!?」

 

《装填!一・撃・必・殺!》

 

霊魂「狙いはお前じゃない!」

 

《熱狂断撃!》

 

 火車ヨロイに姿を変えた霊魂は火車アヤダマを装填した妖之斧火縄を投擲して炎の車輪に変え夜刀神を攻撃するが、夜刀神には容易く弾かれてしまう。

 しかし、そうして生まれた隙に持ち前のスピードで進み出すと、弾き飛ばされた妖之斧火縄を手にしてイバラキドウジ目掛け距離を詰める。

 

イバラキドウジ「!」

 

霊魂「はああっ…はあーっ!!」

 

イバラキドウジ「すばしっこいね。けど…今だ!」

 

霊魂「うあああっ!!」

 

イバラキドウジ「残念、無駄だった」

 

霊魂「それはどうかな?」

 

イバラキドウジ「!クサナギガトリンガー…いつの間に!」

 

 霊魂はイバラキドウジに何度も高速でヒットアンドアウェイを繰り返しつつ轍の跡を残す斬撃を叩き込むが、その動きを見切られてカウンターを喰らって吹き飛ばされてしまう。

 そして勝ち誇るイバラキドウジだったが、そんなイバラキドウジに対し霊魂は高速攻撃の隙に取り返していたクサナギガトリンガーを見せつける。

 

《編纂之刻!》

 

霊魂「全力で倒す」

 

《激怒!》

《大蛇装填!》

 

イバラキドウジ「ふん!」

 

霊魂「その手は食わない」

 

《編纂装着!変化!》

 

 霊魂の妖書ドライバーに向かって空間を歪ませることで手を伸ばし、クサナギガトリンガーを奪おうとするイバラキドウジに対し、それを見切っていた霊魂は体を捻って回避しながら妖書ドライバーを操作する。

 

《八重展開!八岐大蛇ヨロイ!》

 

霊魂「はあっ!」

 

夜刀神「くっ…!」

 

霊魂「はああっ!!」

 

イバラキドウジ「くっ…うああっ!!」

 

 八岐大蛇ヨロイへとパワーアップした霊魂は夜刀神を押し除けて距離を取ると、イバラキドウジに地面から生やした鋭い岩石を突き立てて追い詰める。

 

霊魂「星海は返してもらうぞ。ふんっ!」

 

イバラキドウジ「くっ…!」

 

夜刀神「…む…!」

 

イバラキドウジ「何…!?」

 

霊魂「はあっ!!」

 

夜刀神「ぐっ…!」

 

イバラキドウジ「ぐああっ!!」

 

 霊魂は水の砲撃を喰らわせると同時に、飛び散った水の砲弾を使って二人の分身体を出現させると、イバラキドウジと夜刀神を同時に攻撃する。

 

《機関砲之刻!》

 

霊魂「はああああっ!!」

 

イバラキドウジ「くっ…まさかここまでとはね…!」

 

 霊魂はクサナギガトリンガーの連射でイバラキドウジを牽制し、大ダメージを与える。

 

《一撃!必殺!》

《超!弾丸装填!》

 

霊魂「……覚悟しろ」

 

イバラキドウジ「!」

 

夜刀神「…!させるか!」

 

《八重憤怒爆撃!》

 

霊魂「はあっ!!」

 

「「うあああああっ!!」」

 

 霊魂はクサナギガトリンガーを操作してイバラキドウジに向けると、妨害しようとする夜刀神諸共強力な青色と黒色のビーム砲を叩き込む。

 着弾と同時に八頭の大蛇のオーラが拡散していき、イバラキドウジは大きく吹き飛ばされ、霊魂が背後に出現させた壁に叩き付けられる。

 

イバラキドウジ「くっ…何という力…!」

 

夜刀神「ぐ…!」

 

霊魂「はああっ!」

 

イバラキドウジ「良いの?夜刀神を倒せば…あの女は死ぬよ?」

 

霊魂「!」

 

イバラキドウジ「ふっ…分かりやすくて助かるよ」

 

霊魂「ぐあっ!…くっ…!」

 

イバラキドウジ「今の君に彼女を分離する術はない。無双の力でなら出来たかもしれないけど…その使い手である妖魔は戦えない。残念だったねえ!」

 

霊魂「お前…そのために時雨を…!?」

 

イバラキドウジ「それもあるよ。ふん!」

 

霊魂「くっ…」

 

 下手に夜刀神を倒せば星海も死ぬ。そんな事実を突き付けられた霊魂は動揺で攻撃の手を止めてしまい、その隙を突いたイバラキドウジに攻撃を叩き込まれてしまう。

 

霊魂「負ける…わけにもいかないんでね!」

 

イバラキドウジ「っと…本気を出せなくても流石に手強いね。なら、二の矢だよ。夜刀神」

 

夜刀神「かしこまりました。ふん!」

 

霊魂「一体何を…。!?八岐大蛇ヨロイが…保てない…!?」

 

イバラキドウジ「蛇の一族の力を使ってヤマタノオロチの力に干渉させたけど思ったより簡単に行ったね。君が動揺して戦う覚悟に迷いが生まれたからかな?」

 

霊魂「!」

 

イバラキドウジ「図星みたい…だね!」

 

霊魂「ぐあっ!!」

 

 夜刀神の発した禍々しいオーラを浴びた霊魂は変身を保てなくなってしまう。

 その理由を蛇の一族の力による干渉と霊魂自身の迷いにあると語るイバラキドウジの言葉に図星を突かれた霊魂はイバラキドウジの一撃を受けてしまう。

 

霊魂「だったら…!」

 

《ミズチ!》

《インストール!》

 

霊魂「こいつで相手してやる」

 

《デンシソウチャク!ヘンゲ!

 

激流Splash!ミズチヨロイ!》

 

霊魂「はああっ!」

 

イバラキドウジ「切り替えたか。けど…その程度の力じゃ…僕達の相手じゃない!」

 

夜刀神「消え失せなさい」

 

霊魂「くっ…うぐあああっ!!」

 

 何とかミズチヨロイになることで場を持たせた霊魂だったが、銃撃も軽く弾かれてしまい、夜刀神の放った禍々しい妖気の波動を受けて全身から火花を散らして後退させられてしまう。

 

霊魂「こうなったら…」

 

夜刀神「トドメです」

 

霊魂「…そうもいかないんだよ!」

 

《激流シュートフィニッシュ!》

 

霊魂「はあっ!!」

 

夜刀神「くっ…水流…!?」

 

イバラキドウジ「目障りな…こんなので僕達は倒せない──って、逃げたか。まあいいや。目的は果たせたし」

 

 不利を悟った霊魂は夜刀神とイバラキドウジ目掛けてアヤカシレーザーアタッカーから水流を放つことで牽制しつつ目眩しすると、そのままその場を立ち去る。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

アリス「……」

 

千瀬「あれ?アリスちゃんじゃん。おひさー」

 

アリス「あなた達は…」

 

圭佑「お久しぶりっす。あ、俺は転馬圭佑っす。覚えてます?」

 

アリス「勿論。賢昇の仲間のバスターズの子達だよね。そっちの君は回道千瀬ちゃんでしょ?」

 

 失意の中街を歩くアリス。そこに出会したのはバスターズの千瀬と圭佑だった。

 

千瀬「せーかい!そーいえば賢ちゃん先輩と一緒じゃないんだね」

 

圭佑「確かに。今日は久々にアリスさんに会えるって喜んでたっすよ、リーダー」

 

アリス「っ…その、さっきまで会ってたんだけど…」

 

 賢昇と一緒にいるはずが、何故か別行動をしているらしいアリスの様子がおかしいことに千瀬と圭佑も気付く。

 

千瀬「?…んー、どうも訳ありっぽい?何だか落ち込んだ感じもするし…話、聞いてもいいかな?」

 

アリス「…うん。実は…私お見合いすることになったんだ」

 

圭佑「へえ…お見合いっすか」

 

千瀬「お見合いね…」

 

「「お見合い!?」」

 

アリス「まあ、そういうリアクションになるよね…」

 

 アリスからお見合いの話を聞いた千瀬と圭佑は驚き、同時に状況を把握する。

 

圭佑「ま、まさかリーダーにその話したんすか…?」

 

アリス「…うん」

 

千瀬「それで、アリスちゃんはどうするの?」

 

アリス「…受けるよ。元々、私の夢を進むために祓魔師の仕事を継がないという選択を受け入れてもらったから。それ以上を望むだなんて…ワガママが過ぎるよ」

 

圭佑「それは…」

 

 自らの夢のためにもお見合いを受けると語るアリスに、二人はどう声を掛けるべきか判断に迷う。

 

アリス「…それじゃ、そろそろ行くね」

 

千瀬「う、うん…またね…」

 

圭佑「っす…」

 

 無理をしているのは明らかな様子ながら、それでもその心のうちを全ては明かさずにアリスは去っていき、千瀬と圭佑も引き止める言葉も思い付かず、そのままアリスを見送る。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

汰月「…っ…はぁ…はぁ…」

 

愛菜「!汰月君!?星海ちゃんと出かけていましたよね?何があったんですか…!?」

 

汰月「星海が…怪異にされた…。時雨を襲ったのも同じ奴だ…!」

 

愛菜「…!?」

 

 何とか教室まで辿り着く汰月。ダメージもあり疲労困憊な様子の汰月に驚いた愛菜は、そんな汰月から帰ってきた質問の答えに更に驚く。

 

汰月「…どうにか…しないと…!」

 

愛菜「その怪我じゃ無茶です!まずは手当しましょう。こっちで調べますから」

 

汰月「……すまない…」

 

愛菜「汰月君!…意識を失っただけみたいですが…。無理もありませんね」

 

 何としても星海を助けようと焦る汰月を愛菜が宥めると、張り詰めていた緊張の糸が切れたのか、汰月はそのまま意識を手放してしまう。

 

愛菜「…取り敢えず由香里ちゃんと克真君に連絡しないと…」

 

由香里『もしもし、愛菜先輩。どうかされましたか?』

 

愛菜「あ、もしもし由香里ちゃん。克真君もいる?」

 

由香里『克真も一緒ですが…』

 

克真『ん?俺も話聞いた方が良い感じ?』

 

愛菜「うん。二人に共有しないといけないことが出来て…」

 

克真『オッケー。ちょっと待っててね。皆ー、ちょっと俺達席外してくるねー』

 

『はーい』

 

『分かりましたー』

 

 由香里と克真に連絡を入れた愛菜。重要な案件らしいと理解した克真は今いる他の委員に声を掛けると、由香里と共に場所を変える。

 

由香里『あ、大丈夫です』

 

愛菜「わざわざごめんね。…それで、実は緊急事態が起きてるの」

 

克真『緊急事態…?』

 

愛菜「…どうやら、星海ちゃんが怪異にされたらしくて…」

 

克真『!星海先輩が…!?』

 

由香里『そんな…』

 

愛菜「汰月君が交戦したみたいなんだけど、ダメージが大きかったみたいで今は気を失ってる」

 

克真『…取り敢えず状況は分かった。俺達の方でも調べてみるけど…人の手は借りたいな』

 

由香里『そうですね…それならバスターズの皆さんを頼ってみるのはいかがでしょうか?』

 

愛菜「彼等なら力になってくれそうだもんね。それなら私から歴史研究部や世模継正屠会にも連絡を入れておくよ」

 

克真『よろしく!』

 

愛菜「まあ…歴史研究部の皆は晴河君が何者かに襲われて入院中だからそれどころじゃないかもだけど…。それに世模継生徒会も色々ごたついてるみたいだし…。まあ、とにかく頼んだよ〜」

 

克真『任せて!』

 

由香里『はい!』

 

 克真と由香里に状況を共有すると、協力を仰ぐべくバスターズを頼ることに決める。

 また、歴史研究部と世模継生徒会にも連絡を入れようと決めるが、時雨の入院の件もあり歴史研究部はそれどころじゃない可能性があると考え、世模継生徒会も何らかの理由によって手が離せない状況らしく、こちらもあまり動けない可能性を考慮する。

 

愛菜「…必ず星海ちゃんを助けないと…!」

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

賢昇「……」

 

結佳「やっと戻って来た──って賢昇?千瀬と圭佑かと思った」

 

賢昇「……」

 

結佳「…?というか今日はアリスさんと会う日じゃなかった?なんかあったの?」

 

賢昇「…まあ…色々とな」

 

結佳「……???」

 

 バスターズのアジトに帰って来た賢昇の茫然自失といった様子に疑念を抱く結佳。

 そんなところに騒がしい足音と共に千瀬と圭佑が入ってくる。

 

圭佑「あ!リーダーいたっす!」

 

千瀬「やっぱりここにいた!」

 

賢昇「!?な、なんだよ…!」

 

圭佑「アリスさんから聞いたんすよ!」

 

賢昇「!まさか…」

 

千瀬「アリスさん、お見合いするんでしょ?止めなくて良かったの?」

 

結佳「!お見合い…?」

 

圭佑「あ、結佳先輩」

 

賢昇「…止められるかよ。アイツが夢に進むのに必要だってのに…俺の我儘で邪魔出来るわけねえだろ!」

 

圭佑「リーダーはそれで良かったんすか…?」

 

賢昇「…それは…俺のことなんてどうだって良いだろ」

 

結佳「……成る程、そういうことだったのね。…まあ、圭佑、それに千瀬。私達がどうこう言っても仕方ないことではあるでしょ。無闇に首を突っ込むのはどうかと思うよ」

 

千瀬「それは…」

 

結佳「…それと、その話も重要ではあるけど、こっちも緊急の連絡が二件入ってるんだよね。まずはそっちから話して良いかな?」

 

賢昇「緊急の連絡?なんだよ」

 

 賢昇を思う気持ちのあまりヒートアップしかける圭佑と千瀬を諌めると、結佳は緊急の連絡を始める。

 

結佳「まず一つ目だけど、どうやら晴河君がモノノケに襲撃されて入院してるらしい」

 

賢昇「時雨が!?まさか負けたのか…!?」

 

結佳「いや…暁さんの話によると不意打ちだったみたい」

 

賢昇「…そうか。後で見舞いにでも行っておく。で、二件目は?」

 

結佳「…星海が襲われて、怪異にされた」

 

千瀬「星海ちゃんが…!?」

 

結佳「うん。どうやら晴河君を襲ったのも同一犯みたい」

 

賢昇「…汰月が一緒じゃなかったのか?」

 

結佳「…かなり厄介な敵だったみたいで、詳細は分からないけどかなりダメージを負ったみたい」

 

賢昇「……そうか」

 

結佳「で、ここからが本題だけど、この件で治安維持委員会から手助けの依頼が来てるんだよね」

 

賢昇「受けよう。取り敢えずこの件の対応を最優先にする」

 

千瀬「…了解」

 

圭佑「…了解っす」

 

賢昇「取り敢えずお前等は情報収集と治安維持委員会との連携を頼む」

 

結佳「…賢昇はどうするの?」

 

賢昇「俺はエンマのじーさんのとこ行ってくる。なんか知ってるかもだしな」

 

結佳「了解」

 

 治安維持委員会からの依頼を受けることに決めた賢昇は三人に情報収集と治安維持委員会との連携を任せると、自身はエンマ大王のいる地獄府へ向かう。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

賢昇「エンマのじーさん、いるか?」

 

ゴズ「…そろそろ来る頃だと思っていた」

 

メズ「エンマ様がお待ちだ」

 

賢昇「…了解」

 

 地獄府にやって来た賢昇は訪問を待っていたらしい門番であるゴズとメズに案内される。

 

ゴズ「エンマ様、賢昇が来ました」

 

メズ「用件は例の件かと」

 

エンマ「…よく来たな、賢昇」

 

賢昇「聞きたいことがあってな。…どうやらそっちももう嗅ぎ付けてたみてえだな」

 

エンマ「…ああ。妖魔…時雨が襲われ、星海が怪異にされた件だな」

 

 エンマ大王の元にやって来た賢昇はお互いに同じ件についての話をしようとしていることを確信し、話を始める。

 

賢昇「その件で間違いない。地獄府なら何か掴んでるかと思ったが、案の定だったな」

 

エンマ「リュウジンが襲われた件でこっちも検知してな。色々調べていたんだが…この件で動いているのは反人間連合の残党で間違いない」

 

賢昇「残党?」

 

エンマ「うむ。…五行の火を司るシュテンドウジ。その右腕的な存在であるイバラキドウジが一連の件の主犯で間違いない」

 

賢昇「イバラキドウジ…。じゃあ動機は…」

 

エンマ「怨恨…だろうな。反人間連合…シュテンドウジを倒したお前達仮面ライダーへの復讐だろう」

 

賢昇「…そういうわけか」

 

 賢昇は地獄府が調べていた情報から主犯がシュテンドウジの右腕のイバラキドウジであり、動機は怨恨によるものであることを知る。

 

エンマ「これ以上の情報は今のところないな」

 

賢昇「成る程ね。取り敢えず状況が分かった。ここからは俺等で何とかする」

 

エンマ「…すまんな」

 

賢昇「気にすんな。俺達の街の問題だしな」

 

エンマ「…そうだ、これを持っていくと良い」

 

賢昇「…これは?」

 

 賢昇が踵を返して帰ろうとすると、エンマ大王は石で出来たアヤダマのような物を手渡す。

 

エンマ「お主の使う鬼アヤダマ…そのアヤダマの元になった鬼の力の一部だ」

 

賢昇「じゃあ…」

 

エンマ「と言っても、そのアヤダマ…元は“鬼神アヤダマ”というが、ソイツに込められた力は今はもう発揮出来ない」

 

賢昇「?どういうことだ?」

 

エンマ「…元々、その力はオニが強い決意を持って地獄の炎を取り込むことで一時的に力を発揮した時に生まれた副産物のような物でな。特殊な形で生み出されたアヤダマ故に今はもうその力は使えない。…まあ、お守りとでも思ってくれ」

 

賢昇「成る程な。ありがたくもらってくぜ」

 

エンマ「…この件、どうにもきな臭い。まだ見えていない“裏”が存在するように思える。…気を付けろよ」

 

賢昇「!…おう」

 

 石となった鬼神アヤダマを「お守り」として渡された賢昇はそれを受け取り、エンマ大王の忠告に耳を傾けると今度こそ地獄府を去る。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

 星海が夜刀神となってから一夜が明けた翌朝、賢昇は仲間達が集めた情報を聞いていた。

 

賢昇「皆が集めた情報を元に考えると…恐らく奴等の拠点はこの辺…か」

 

都黎『…そうなるな。…取り敢えず俺の方で調査に行く』

 

賢昇「…良いのか?お前の方もなんか今、ごたついてるって聞いてるが」

 

都黎『…まあ、な。とはいえ卒業生が必要以上に出しゃばるのも良くないからな。一旦皆に任せてある。…賢昇は時雨や汰月の方に顔を出した方がいいだろう』

 

雪音『そうですね。それに…私達も同行しますので取り敢えず大丈夫です』

 

夢華『そゆこと!どんと任せてよ』

 

咲穂『時雨君、今回の件の話を聞いて、結構気にしてたみたいでしたので』

 

調『それと、今回の件で降谷先輩に頼みたいことがあるって言ってました』

 

賢昇「…おう、分かった。ありがとな」

 

 一旦潜伏していると思われる場所の候補を洗い出したため、細かい調査に都黎、雪音、夢華の三人が向かうことに。

 

真黒『エンマ様が言っていた“裏”に関しては僕と藍羽先生、田貫教授の方で調べてるから、任せておいて』

 

聖『それはそれとして、皆充分な警戒を怠らないようにね』

 

夜御哉『そういうことだな。頼んだぞ』

 

都黎『了解』

 

賢昇「…行くか」

 

 かくして、各々が動き出し、賢昇もまた時雨の入院している病院へと向かう。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

賢昇「お前等もいたんだな」

 

咲穂「ええ。病室まで案内しようかと」

 

調「こっちです!」

 

賢昇「助かる」

 

 病院に到着した賢昇を出迎えるのは咲穂と調の二人。賢昇はその案内で病室へ向かう。

 

時雨「あ、賢昇君。来てくれたんだ」

 

賢昇「よう。思ったより調子は良さそうだな」

 

時雨「うん。リュウジンさんと無双アヤダマが護ってくれたお陰かな」

 

 時雨の入院する病室へ来た賢昇は思っていたよりは元気そうな時雨の様子に安堵する。

 

時雨「その…ごめん。こんな時に動けなくて」

 

賢昇「気にすんな。…お前にばっかり良いカッコさせられねえしな!…てか、なんか俺に頼みがあるんだっけ?」

 

時雨「うん。…先に謝っておくけど、ごめんなさい。きっと僕のお願いは賢昇君を困らせる」

 

賢昇「…なんだ?」

 

 先に謝る必要があると言いながらも、真剣な顔付きで頼みについて話し始める時雨に、賢昇も身構えつつ話を聞くことに。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

賢昇「…時雨の奴、まさかあんな頼み事してくるなんてな…。ま、やるっきゃねえか。…汰月の奴もまだ意識が戻ってねえし、俺がしっかりしねえとな」

 

 病院を後にして、一人決意を固める賢昇。

 そこに結佳から電話がかかってくる。

 

賢昇「もしもし。見付かったのか?」

 

結佳『もしもし。…今接敵するところみたい』

 

賢昇「分かった。俺もすぐ行く」

 

 都黎達がイバラキドウジと接敵しているということを知った賢昇はそちらへ急ぎ、電話を切ろうとするが、結佳は続ける。

 

結佳『…ねえ、賢昇』

 

賢昇「んだよ」

 

結佳『もう一つ、あなたに伝えないといけない情報がある』

 

賢昇「?」

 

結佳『アリスさんのお見合い、今日の午後からなんだって。電話して本人に確認を取ったから間違いないよ』

 

賢昇「!……今関係のない話だろ。大体どうしたんだ。お前昨日は無闇に首突っ込むなってあいつ等に言ってたろ」

 

結佳『別に意見を変えたわけじゃない。けど、あなたの幸せを願ってる仲間が周りにいることを忘れないで。この後すぐ向かえば…多分間に合う』

 

賢昇「馬鹿言うな。あいつ等に任せておいて俺だけ色恋に現を抜かしてる場合かよ。…言いたいことがそれだけなら切るぞ」

 

結佳『分かってる。相手も危険だし、賢昇の力はきっと必要だよ。けど、賢昇。あなたには責任があるんじゃない?』

 

 結佳から伝えられたのはアリスのお見合いが今日の午後にあるという情報。

 しかし、賢昇はどこか自分に言い聞かせるように今はそれどころではないと語って電話を切ろうとするが、結佳の言葉に思わず手を止める。

 

賢昇「…責任?」

 

結佳『交換留学から帰るあの日、賢昇はアリスさんに約束してたでしょ。きっとアリスさんは…』

 

賢昇「…それでも、今目の前でやらなきゃなんねえことがあるなら…放っておくわけにいくかよ」

 

結佳『…私が言いたいのは、今回の件をアリスさんのことをなあなあにする言い訳にしちゃダメだってこと。…それだけ』

 

賢昇「あっ、おい!……ったく。…気持ちを切り替えよう」

 

 半ば強引に電話を切られた賢昇は強張った表情のまま駆け出す。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

イバラキドウジ「…っ…。やっぱり、過ぎた力だったかな。でも…あいつ等に復讐しなくちゃ…兄様を…奪ったあいつ等に…!」

 

夜刀神「…!どうやら仮面ライダーの一部が来たようです」

 

イバラキドウジ「…もう嗅ぎつけられたかー。優秀だね」

 

夜刀神「ふん!」

 

都黎「くっ…!」

 

イバラキドウジ「君は…暗夜か。僕達の裏切り者だ」

 

雪音「私達もおりますがね…!」

 

夢華「大丈夫?都黎」

 

都黎「…問題ない」

 

 廃工場に潜伏していたイバラキドウジ。どこか苦しげな様子を見せながらも復讐の炎を燃やすが、そんな中夜刀神によって密やかに接近していた都黎達の存在に気付き、対峙する。

 

都黎「…それに、やるべきことに変わりはない。いくぞ」

 

雪音「ええ。…いきましょう」

 

夢華「あの子を止めて…星海ちゃんを取り戻すよ!」

 

《ヤギョウ!》

 

《ユキオンナ!》

 

《キュウビ!》

 

《インストール!》

 

「「「変身!」」」

 

《デンシソウチャク!ヘンゲ!》

 

《常闇Darkness…!ヤギョウヨロイ!》

 

《凍結Blizzard!ユキオンナヨロイ!》

 

《幻影Illusion!キュウビヨロイ!》

 

暗夜「はああっ!」

 

夢幻「はあっ!」

 

氷雪「ふっ!」

 

イバラキドウジ「ふっ…仕方ないなぁ…!」

 

夜刀神「仮面ライダーを滅ぼす…!」

 

 都黎、雪音、夢華の三人はそれぞれ仮面ライダー暗夜 ヤギョウヨロイ、仮面ライダー氷雪 ユキオンナヨロイ、仮面ライダー夢幻 キュウビヨロイへと変身し、対するイバラキドウジは怪人態へと変貌して夜刀神と共に交戦を開始する。

 

イバラキドウジ「喰らえっ!」

 

氷雪「はあ…っ!一撃が重い…!」

 

暗夜「ふん!」

 

夜刀神「はっ!」

 

暗夜「!何だこの反応速度…!」

 

夢幻「なら私が…たあっ!」

 

夜刀神「効かないな。はっ!」

 

夢幻「うあっ!…強いなぁ…!」

 

 激突を始める両者。

 イバラキドウジは氷雪に右拳による打撃を打ち込み、対する氷雪は氷の盾で何とかその攻撃を受け止める。

 暗夜は闇夜月で夜刀神に斬りかかるが、高い反応速度によって捌かれ、続けて夢幻が夜刀神にアヤカシレーザーアタッカーによる斬撃を叩き込もうとするも、容易く受け切られ、返しの一撃でダメージを負う。

 

氷雪「こんなこと…もう止めましょう。歪み合って憎しみ合って…その先に何があるんですか?その世界で、人は、モノノケは…あなたは、笑えるんですか?」

 

イバラキドウジ「!…そんなの…どうだって良いんだよ…!夜刀神…やれ」

 

夜刀神「はっ。…仮面ライダーめ…滅びよ。ふんっ!!」

 

暗夜「!マズい…下がれ!!」

 

「「「うああああっ!!」」」

 

 イバラキドウジは氷雪から突き付けられた言葉にどこか動揺した様子を見せると、夜刀神に冷たく指示を出す。

 次の瞬間、夜刀神は無数の蛇の頭を伸ばすと、その口にエネルギーを溜め込み、そして一斉に解き放つ。

 危機感を覚えた暗夜が咄嗟の判断で仲間を下がらせようとするが間に合わず、禍々しい波動が三人を襲い、工場に爆発を起こす。

 

都黎「くっ…まさか…ここまでの力を持っているとは…!」

 

雪音「…想定以上に強いですね…!」

 

夢華「結構ピンチだなぁ…!」

 

イバラキドウジ「まずは三人…」

 

賢昇「させるかよ!!」

 

イバラキドウジ「…っと。君は…幽冥か」

 

賢昇「いかにも!俺が仮面ライダー幽冥…降谷賢昇だ!…悪りぃ、遅くなった」

 

都黎「いや…助かった」

 

賢昇「ここじゃ危ねえ。三人は一旦下がって治療受けてろ」

 

雪音「ですが…」

 

賢昇「…ついでに皆に状況連絡も頼む」

 

夢華「…分かった。手負いの私達がここにいても足手纏いになるしね…行くよ」

 

雪音「…っ…分かりました」

 

都黎「すまん、任せるぞ。…それと、夜刀神の強さは本物だ。気を付けろ」

 

賢昇「おう…任せとけ」

 

 イバラキドウジが三人にトドメを刺そうとしたところで、賢昇が駆け付け、跳び蹴りを浴びせてそれを阻止する。

 そして手負いの三人を逃すと、自らがイバラキドウジの相手を引き受ける。

 

イバラキドウジ「ふーん…まあ良いや。今回は二対一…一人ずつ潰すとしようか。君を潰した後にあの三人を潰せば良いし」

 

賢昇「やれるもんならやってみろ。…言っておくが、斜馬は返してもらうぞ」

 

《地獄!》

 

《装填!》

 

賢昇「…変身」

 

《憑依装着!変化!

 

閻魔裁決!地獄ヨロイ!》

 

幽冥「オラアアッ!」

 

 三人が逃げたことを確認した賢昇は幽冥 地獄ヨロイへと変身すると、夜刀神相手に殴りかかる。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

星海『汰月さん…今までありがとうございました。…それじゃあ、さようなら』

 

汰月『待ってくれ…星海…俺はまだ君に…待ってくれ!!』

 

汰月「っ……はぁ…はぁ…。今のは…夢…?…ここは…?」

 

 星海が去っていく中、手を伸ばすが届かない。そんな悪夢を見て跳ね起きる汰月。

 見覚えのない天井に困惑していると、そこに時雨が入ってくる。

 

時雨「あ、目が覚めたんだね」

 

汰月「時雨…?入院中じゃないのか?」

 

時雨「入院してるの、この病院なんだ。…まあ、絶対安静ってほどの怪我じゃないから、汰月君の様子を見に来たんだけど…タイミング良かったみたいだね」

 

汰月「…そうか…俺は愛菜に状況を伝えた後倒れたから…そうだ、星海が怪異に変えられたんだが…今どういう状況か分かるか?」

 

時雨「…うん。今、賢昇君が戦ってるみたいなんだけど…そのことで汰月君に話があるんだ」

 

汰月「話…?」

 

時雨「さっき僕のところに巡坂さんから連絡があったんだけど…どうやら繰谷さん、お見合いを受けることになったみたいで…」

 

汰月「!?その話…賢昇は?」

 

時雨「知ってるんだって。それで、今日の午後からお見合いがあるんだけど、僕達にはそのことを隠して、戦うことを選んだみたい」

 

汰月「…賢昇…!…けど、どうやって星海を助ければ…」

 

 病室にやって来た時雨から情報を聞いた汰月は慌てて出て行こうと立ち上がるが、星海のことを助ける術が見付かっていないことを思い出し、すぐにその足を止めてしまう。

 

時雨「それなんだけど…これ、持って行ってよ」

 

汰月「これは…無双アヤダマの破片…?」

 

時雨「うん。…ヌラリヒョンとの戦いの中で一度砕けた無双アヤダマの破片の一つ」

 

汰月「どうしてそれを…俺に?」

 

時雨「…ヌラリヒョンとの最後の戦いの時、皆や…僕の想いに反応して無双アヤダマが復元されたんだ。…元々、無双アヤダマは雨辺さんが託してくれた力が僕達の想いを受けて生み出されたものだからね」

 

汰月「……まさか」

 

時雨「…うん。汰月君自身の想いの力があれば…汰月君の新しい力になるんじゃないかって思うんだ。…無双の力と同質の力であれば……」

 

イバラキドウジ『今の君に彼女を分離する術はない。無双の力でなら出来たかもしれないけど』

 

汰月「…星海を救える…!」

 

時雨「…と思うけど…正直確証はないんだよね。取り敢えず残ってる中で一番大きい破片を選んだけど…」

 

汰月「いや…十分だ。ありがとう」

 

 時雨が汰月に手渡したのはかつてのヌラリヒョンとの戦いの中で一度は砕け散ってしまった無双アヤダマの破片。

 汰月はイバラキドウジの発言も思い出し、かつてその破片から時雨が力を復元させたように、破片を用いれば無双の力を覚醒させ、新たな力とすることで星海を救えるのではないかと結論付けると、時雨に礼を言う。

 

汰月「…場所は分かるか?」

 

時雨「うん。リュウジンさんが教えてくれるはず」

 

リュウジン「強い妖力の反応があるからな。そこまで案内してやろう」

 

汰月「助かる」

 

時雨「ごめんね…これくらいしか役に立てなくて」

 

汰月「…気にするな。時雨はこれまで十分過ぎるほど頑張ってきた」

 

時雨「…ありがとう。…そうだ、これも持って行ってよ。病院の駐輪場まで持って来てもらってるから」

 

汰月「…ありがとう」

 

時雨「あ、そうだ。賢昇君にも貸しといて良いよ〜。じゃあ、悪いけど…よろしくね」

 

汰月「…任せろ」

 

リュウジン「よし…行くぞ!」

 

 時雨はツクモブースターの鍵を投げ渡すと、汰月はそれを受け取り、因縁に決着を付けるべく動き出す。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

幽冥「はああっ!!」

 

夜刀神「この力…些か面倒だな…!」

 

幽冥「面倒で済めば良いな!ふんっ!」

 

イバラキドウジ「くっ…成る程、流石は地獄のエンマの力…!」

 

幽冥「まだまだ行くぞオラァ!」

 

 幽冥の拳を受けた夜刀神はその強さに驚き、更に回し蹴りを受けたイバラキドウジもその強さを思い知る。

 一方の幽冥は勢いを増すと、腕にブレードを伸ばして二人に斬りかかる。

 

夜刀神「くっ…!」

 

イバラキドウジ「うああっ!!」

 

幽冥「一気に畳み掛けてやる…!」

 

《鉄針地獄!》

《判決之刻!一撃・必殺!》

 

《鉄針刑撃!》

 

幽冥「うおらああっ!!」

 

イバラキドウジ「くっ…うぐああっ!」

 

夜刀神「ぐあっ!」

 

 幽冥は両腕から針束を伸ばすと、そのままミサイルのように発射してイバラキドウジと夜刀神を纏めて追い詰める。

 

夜刀神「…人間風情が…図に乗るな…!」

 

幽冥「さっきあいつ等を倒したやべえ技か…なら!」

 

《無間地獄!》

《判決之刻!一撃・必殺!》

 

夜刀神「滅びよ!」

 

幽冥「こいつで!」

 

《無間刑撃!》

 

夜刀神「…!?何だと…!」

 

幽冥「喰らえっ!」

 

夜刀神「く…うぐああっ!」

 

イバラキドウジ「ぐあっ!!」

 

 幽冥は夜刀神の禍々しい波動に対処するべく、その場でくるりとターンすることで無限の闇のフィールドを自身の手前に生成して波動を飲み込み、更には闇から伸ばされた無数の手によって夜刀神とイバラキドウジに攻撃を仕掛ける。

 

幽冥「こいつで…熱くいくぜ!」

 

《焦熱地獄!》

《判決之刻!一撃・必殺!》

 

幽冥「うおおおお…!」

 

《焦熱刑撃!》

 

幽冥「うおりゃあああっ!!」

 

夜刀神「くっ…うぐあああっ!!」

 

イバラキドウジ「うあああっ!!」

 

 幽冥は地獄の炎を両手の間に集約すると、凄まじい威力の獄炎を浴びせて夜刀神とイバラキドウジを圧倒する。

 

幽冥「まだまだいくぞ!はああっ!」

 

夜刀神「…ふん、だが良いのか?それだけの強い力で攻撃し続けて…この私を倒せば、元の肉体の持ち主である小娘も死ぬんだぞ?」

 

幽冥「っ…」

 

イバラキドウジ「隙あり!」

 

幽冥「っ…ぐあっ!!」

 

イバラキドウジ「…ホント、君等って分かりやすいよねぇ」

 

 幽冥は夜刀神相手に追撃を仕掛けようとするが、夜刀神は星海の無事を盾にすることで幽冥の攻め手を止めさせ、その隙にイバラキドウジが空間転移を利用して遠距離からの右腕による殴打を浴びせて幽冥を殴り飛ばす。

 

幽冥(…癪だが奴等の言うことは間違ってねえ。斜馬ごと倒すわけにいかねえし…どうする?……これでいくしかねえか)

 

イバラキドウジ「何、まだ何かするつもり?」

 

幽冥「黙って見てろ!」

 

《極寒地獄!》

《判決之刻!一撃・必殺!》

 

幽冥「そこで固まってろ!」

 

《極寒刑撃!》

 

幽冥「どりゃあああっ!!」

 

夜刀神「何…!?くっ…──」

 

イバラキドウジ「っ…そう来たか…けど、大技を連発している状況でそれだけ強固な氷の戒め…流石にその力も尽きるんじゃない?」

 

幽冥「…変身が…!」

 

 星海を救うための策として、幽冥は極寒地獄の力を利用して冷気を帯びたドロップキックを浴びせてかつてのオオタケマル戦のように夜刀神を倒さずに氷漬けにしてその動きを封じる。

 しかし、戦いの中で大技を連続で使っていたことや、夜刀神を封じるための氷の戒めのために相当量の妖力を用いた影響で地獄ヨロイの力が持たなくなってしまい、変身が解けてしまう。

 

《鬼!》

 

賢昇「…俺の力は…他にもあんだよ!」

 

《装填!》

 

賢昇「変身!」

 

《憑依装着!変化!

 

鬼気粉砕!鬼ヨロイ!》

 

幽冥「オラァッ!」

 

イバラキドウジ「ふっ…地獄ヨロイさえなければ…君なんて僕一人でも潰せるよ」

 

幽冥「言ってくれんじゃねえか!だあっ!」

 

 鬼ヨロイへと姿を変えることで間を持たせた幽冥はそのまま槍状態の妖之盾槍で突きを放つも、イバラキドウジには受け止められてしまう。

 

イバラキドウジ「はああ…だあっ!!」

 

幽冥「っ…ぐあっ!!」

 

イバラキドウジ「あれ?もう終わりー?口ほどにもないなぁ」

 

幽冥「舐めんな…っ!だああっ!!」

 

イバラキドウジ「ぐっ…!この…!」

 

《盾之刻!》

 

幽冥「へっ、何度も喰らうかよ」

 

 空間転移を通して離れた所から拳を叩き込み、幽冥を煽るイバラキドウジだったが、幽冥も負けじと一気に距離を詰めると、ドロップキックを浴びせ、更にはイバラキドウジからの反撃を妖之盾槍を盾状態に変えて受け止める。

 

イバラキドウジ「ふん、そんな小細工じゃ…僕には勝てないんだよ!」

 

幽冥「くっ…ぐああっ!!…成る程、これじゃ力負けするわけだ…なら」

 

 イバラキドウジは強い力を持つ右腕で連続で殴り付けることで幽冥の防御を強引に突破するが、それを受けた幽冥は力負けしてしまうことを実感し、別の手を打つ方向に切り替える。

 

イバラキドウジ「何しようと無駄だよ!」

 

幽冥「そいつはどうかな?」

 

《雲外鏡!》

 

《装填!》

 

幽冥「いくぜ!」

 

《憑依装着!変化!

 

白日反射!雲外鏡ヨロイ!》

 

幽冥「ふっ!」

 

イバラキドウジ「光…!?」

 

 幽冥は雲外鏡ヨロイに姿を変えると、鏡面から光を発してイバラキドウジを牽制する。

 

《装填!一・撃・必・殺!》

 

幽冥「俺の明鏡止水の極意…たっぷり味わえ!」

 

《白日防撃!》

 

幽冥「だあっ!オラアッ!はあっ!どりゃあーっ!!」

 

イバラキドウジ「くっ…この…ふん!」

 

幽冥「はっ!効かねえなぁ!!ぶっ飛べ!」

 

イバラキドウジ「何…!?ぐああっ!!」

 

 幽冥は雲外鏡アヤダマを装填した妖之盾槍で連続で殴り付けつつイバラキドウジの攻撃を防いでエネルギーを溜め込むと、前面に展開された鏡型のエネルギー体から白い光線を発射してイバラキドウジを吹っ飛ばす。

 

《ギュウキ!》

 

幽冥「漸くこいつに切り替える隙が出来たぜ」

 

《インストール!》

 

《デンシソウチャク!ヘンゲ!

 

猛火Burning!ギュウキヨロイ!》

 

イバラキドウジ「くっ…そういうことか…!」

 

幽冥「うおおおっ!!」

 

イバラキドウジ「くっ…」

 

幽冥「はっ!どりゃあっ!」

 

 イバラキドウジが大きな隙を見せたところで、幽冥はギュウキヨロイへとパワーアップすると、レーザーブレードモードのアヤカシレーザーアタッカーで斬撃を放っていく。

 

イバラキドウジ「っ…」

 

幽冥「はああっ!!」

 

イバラキドウジ「うああっ!!…まさか逆転してくるとはね…けど…僕も…負けられないんだよ…!うおおお…っ!!」

 

幽冥「…何だ…この気配…!?」

 

イバラキドウジ「僕が…仇を取るんだ…!うあああっ!!」

 

幽冥「くっ…!?ぐああっ!!…何だ…この力…無茶苦茶じゃねえか…!」

 

 ギュウキヨロイになったことで逆転を許してしまったイバラキドウジ。しかし、左手で右腕をなぞると、その全身が禍々しいオーラに包まれ、やがてそのオーラが右腕へと集約されると、右腕はもはやはち切れんばかりに肥大化し、赤黒い棘が何本も生えた痛々しいものへと変わる。

 その右腕によって放たれる拳の威力はこれまでのものを大きく上回り、ギュウキヨロイとなっていた幽冥を容易く殴り飛ばす。

 

イバラキドウジ「うああ…消えろォォ!!」

 

幽冥「っ…うぐあああっ!!」

 

イバラキドウジ「うっ…ぐ…!」

 

 体勢を崩したままの幽冥に対し、イバラキドウジは容赦なく追撃を仕掛け、地面に拳を叩きつける。

 すると大爆発が幽冥を襲い、変身解除にまで追い込む。

 しかし、相当無茶なパワーアップであるためかイバラキドウジは苦しむ様子を見せる。

 

賢昇「ゲホッ…ったく、テメェも苦しむくらいなら止めりゃあ良いものを…」

 

イバラキドウジ「黙れ…!ここでお前は終わり…それがお前の運命だ…!」

 

賢昇「“運命”…か」

 

 変身解除されつつも悪態を吐きながら何とか立ち上がる賢昇。対するイバラキドウジはトドメを刺そうと賢昇に近付くが、その中で口走った「運命」という言葉に賢昇は思わずアリスとのことを思い出す。

 

イバラキドウジ「終わりだ…!うおああっ!!」

 

賢昇「…っ…まだ…終われるかよ…っ!!」

 

イバラキドウジ「!?」

 

賢昇「運命な…運命。アイツもそんなこと言ってたけどよ、んなもんに…いつまでも振り回されて堪るかってんだ。……俺は諦めねえ…どんな運命だろうと力で捩じ伏せて突き進む!」

 

イバラキドウジ「何をごちゃごちゃと。これで終わりに…なんだ…!?」

 

賢昇「!鬼神アヤダマが…地獄の炎を吸っていく…!?」

 

 イバラキドウジの拳を間一髪で避けた賢昇は、「運命」に対しての自らの結論を語ると、エンマ大王からお守り代わりとして渡されていた鬼神アヤダマに先の戦闘で地獄ヨロイの力によって発せられ、残っていた地獄の炎が集まっていき、紅蓮色に染め上げる。

 

賢昇「…ハッ。上等だ。こいつに賭けてやる!」

 

《鬼神!》

 

賢昇「ふん!」

 

《装填!》

 

賢昇「変身ッ!」

 

《憑依装着!変化!

 

鬼面紅蓮(きめんぐれん)!鬼神ヨロイ!》

 

 賢昇が鬼神アヤダマを装填すると、通常の鬼ヨロイ同様に鬼が出現し、同時に足元に煮えたぎるマグマのようなエネルギーが展開される。

 そして妖書ドライバーを操作すると、一度鬼ヨロイの姿になった後、その全身を球体に纏まったマグマが包み込んでいき、やがて黒く固まる。

 そこに紅蓮色のヒビが無数に入っていき、次の瞬間にマグマの塊が弾き飛ぶと、中から新たな姿の幽冥が現れる。

 角はより鋭く、巨大化し、顎や胸部などに燃え盛る炎のような装甲が追加され、複眼は依然として青色に輝くその姿…仮面ライダー幽冥 鬼神ヨロイが爆誕する。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

イバラキドウジ「何だ…その姿は…!?」

 

幽冥「俺の…新しい力だ!うおらあッ!!」

 

イバラキドウジ「ぐうあああっ!!」

 

 未知の幽冥の姿に動揺するイバラキドウジに対し、幽冥は弾け飛んだ溶岩から生み出された黒を基調として赤い紋様の走った金棒“ 紅蓮爆砕(ぐれんばくさい)”を振りかぶって殴り飛ばす。

 

イバラキドウジ「ぐっ…はあっ!」

 

幽冥「効かねえ!ふっ、どりゃあっ!!」

 

イバラキドウジ「うぐあああ!」

 

 イバラキドウジは何とか右腕で反撃を図るが、幽冥の圧倒的なパワーにより右腕の殴打を受け止められ、そのまま突きで怯ませてからの金棒による連続打撃を浴びて地面を転がされる。

 

イバラキドウジ「うう…だったらァァ!!」

 

幽冥「…!ならこっちも…!」

 

《一・撃・必・殺!》

 

《鬼面剛撃!》

 

幽冥「ふんっ…うおりゃあーっ!!」

 

イバラキドウジ「!?くっ…ぐはああっ!!」

 

 イバラキドウジは空間を歪ませ、そこに強力な殴打を叩き込むことで凄まじい衝撃弾を生み出すが、対抗して妖書ドライバーを操作した幽冥が紅蓮爆砕に溶岩のようなエネルギーを纏わせてフルスイングすることで打ち返され、自身がダメージを喰らう。

 

幽冥「まだまだいくぜ!」

 

《一・撃・必・殺!》

 

《鬼面剛撃!》

 

幽冥「喰ら…えっ!!どりゃあああっ!!」

 

イバラキドウジ「ぐっ…がはあっ!!」

 

 幽冥は更に追撃を仕掛けるべく、紅蓮爆砕に再度溶岩状のエネルギーを纏わせ、それを用いてイバラキドウジを直接殴り飛ばす。

 

イバラキドウジ「こんな所で…終われるか…!っ…うっ…うぐあああっ!!」

 

幽冥「力に飲まれたか。……俺が…お前の復讐を終わらせてやるよ」

 

イバラキドウジ「うああああっ!!」

 

幽冥「はっ!だあっ!どりゃああっ!!」

 

イバラキドウジ「うっ…ぐああっ!!」

 

 強過ぎる復讐心と力に飲まれ、自我を失って暴れ狂うイバラキドウジ。

 しかし、幽冥はその攻撃を紅蓮爆砕で的確に受け止めると、左拳で怯ませ、右脚で横蹴りを撃ち込んでイバラキドウジを突き放す。

 

幽冥「終わりにしてやる」

 

《煉獄之刻!

 

鬼面爆炎!鬼神ヨロイ!煉獄!》

 

イバラキドウジ「うおおおっ!…!?」

 

幽冥「ふん…こっちの番だ。どりゃああっ!!」

 

イバラキドウジ「っ…あがあっ!!」

 

 幽冥は鬼神アヤダマ上部に設けられた煉獄押陣を押し込むと、紅蓮爆砕を溶岩状のエネルギーに変換し、その全身に纏う。

 そしてイバラキドウジは幽冥に拳を突き立てようとするが、その高熱の鎧に阻まれ、動揺した隙に灼熱の拳で反撃を受ける。

 

イバラキドウジ「うあああっ!!」

 

幽冥「ふっ…豪華絢爛に決めるぜ!」

 

《一・撃・必・殺!》

 

幽冥「はああ…!」

 

《鬼面焔撃!》

 

幽冥「ダアアアアッ!!!」

 

イバラキドウジ「うっ…ぐうっ…うぐああああっ!!」

 

 幽冥は跳躍すると、溶岩流を右脚に纏わせてボレーキックを放ち、イバラキドウジを蹴り抜くと同時、大きな爆発が起こる。

 

イバラキドウジ「うっ…うう…。!?生きて…る…?」

 

賢昇「……」

 

イバラキドウジ「どうして…僕を倒さなかった?…情けでも掛けたつもりか…!?」

 

賢昇「別に、そんなんじゃねえよ。…お前が襲った時雨から、頼まれてたんだ。お前の命までは奪わないでほしいって」

 

イバラキドウジ「妖魔が…僕を…?」

 

賢昇「…時雨は人とモノノケの共存を…誰もが共に笑い合える世界を望んでんだよ。…そのために、負の連鎖はここで断ち切りたいんだと」

 

イバラキドウジ「っ……」

 

 人間態に戻りつつも一命を取り留めたイバラキドウジは、何故自身にトドメを刺さなかったのか変身を解いた賢昇に問うと、賢昇からは時雨の頼みだからという答えが返って来たために驚く。

 そして、賢昇は先ほどの時雨との会話を思い返す。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

時雨「きっと僕のお願いは賢昇君を困らせる」

 

賢昇「…なんだ?」

 

時雨「その…今回の主犯のイバラキドウジのことなんだけど…」

 

賢昇「?アイツがどうかしたか?」

 

時雨「その…倒さないでほしいんだ」

 

賢昇「は?…いや待て、どういうことだ?お前ソイツにこんな目に遭わされたんだろ?」

 

 時雨からの意外な頼み事に困惑する賢昇。

 賢昇を困らせてしまっていることに眉を下げながらも、時雨は自身の意図を語る。

 

時雨「それは…そうなんだけど」

 

賢昇「そうなんだけど…なんだよ」

 

時雨「…その、僕の夢…知ってるでしょ?」

 

賢昇「…人とモノノケの共存…お前まさか…」

 

時雨「うん。…イバラキドウジとも、分かり合えたらなって」

 

賢昇「いやいやいや…無理だろ。これまで散々見てきたろ、人を嫌って害するモノノケ達を。だからそいつ等と戦ってきたんじゃねえか」

 

時雨「…イバラキドウジは違う気がするんだ。彼からは“僕”への憎しみを感じた。…彼の戦う理由はきっと、シュテンドウジを倒した僕への復讐。本人も復讐のためと言ってたし、エンマ様もそう言ってたんでしょ?」

 

賢昇「…けど、それならどっちにしろだろ。お前を殺したいほど憎んでる奴を放っておくわけにもいかねえ」

 

時雨「……勿論、放置する気はないよ。戦いは避けられないだろうし。…けど、命までは奪わないでほしいんだ。…お互いに奪い合っても、負の連鎖にしかならないだろうから。…難しいお願いなのは分かってるけど…頼めないかな?」

 

賢昇「…だー!もう!分かったよ。…善処する。けどな、イバラキドウジの野郎がどうしても分かり合うことは不可能だって思ったなら…俺は倒すぞ。良いな?」

 

時雨「うん。…それで良いよ。こんな頼み事しちゃってごめんね」

 

賢昇「気にすんな。…お前の言いたいことも、分からないわけじゃねえからよ」

 

 イバラキドウジを倒さないでほしい。そんな時雨からの頼み事を受けた賢昇は最初は反論していたものの、時雨の真剣な様子に矛を納め、その頼みを聞くことに決める。

 

賢昇「……だから、俺はお前を倒さなかった。お前…本当は戦いたくないんだろ」

 

イバラキドウジ「っ!…お前に何が分かるんだよ!!」

 

賢昇「俺だってこれまで色んな奴と戦って来たけど…お前ほど辛そうに戦ってる奴は見たことがなかった。…大体、お前がシュテンドウジの右腕だってんなら、なんであの時いなかったんだ?」

 

イバラキドウジ「それは…」

 

賢昇「…大切なものを奪われた、その憎しみは分からないでもないが…だからってまた別の誰かの大切なものを奪おうとしちゃイタチごっこになるだろ」

 

イバラキドウジ「…っ…煩い…!」

 

 賢昇の言葉に、段々と言葉の勢いを失っていくイバラキドウジ。

 そんなイバラキドウジに賢昇が一歩歩み寄ろうとしたところで、その背後で大きな破壊音が鳴り響く。

 

夜刀神「仮面ライダーを…滅ボす…!」

 

賢昇「夜刀神…もうあの拘束を破りやがったか…!」

 

夜刀神「ふんっ!」

 

賢昇「くっ!」

 

イバラキドウジ「うわあっ!?」

 

賢昇「!?…おい、何でお前まで襲われてんだよ」

 

イバラキドウジ「…夜刀神がコントロール出来ない」

 

賢昇「はぁ!?うおっと…!」

 

イバラキドウジ「うわあっ!?何するんだよ!」

 

賢昇「仕方ねえだろ!あそこで引かなかったらお前死んでたぞ!?」

 

イバラキドウジ「っ…」

 

賢昇「どうすれば…!」

 

夜刀神「ふん、目障りな契約も切れたしな。纏めて滅びるが良い…!」

 

イバラキドウジ「そんな…!」

 

賢昇「く…!」

 

汰月「させるか!」

 

夜刀神「!?くっ…」

 

賢昇「汰月!」

 

イバラキドウジ「…!」

 

賢昇「あっ…まあ、取り敢えず今は良いか」

 

 氷の戒めを破った夜刀神は主であるはずのイバラキドウジにまで牙を剥き、賢昇は咄嗟にその腕を引いて攻撃を避けさせる。

 しかし、追撃が来ようとしたその時、ツクモブースターに乗った汰月がブンプクブラストフォンで銃撃を仕掛けながら駆け付け、夜刀神を怯ませる。

 その隙に乗じてイバラキドウジは賢昇の手を振り解いてどこかへ逃げてしまう。

 

夜刀神「…お前達を滅ぼす…!」

 

賢昇「取り敢えず二人でアイツを止めるぞ」

 

汰月「…いや、俺一人でやる。選手交代だ」

 

賢昇「は?アイツは強敵だぞ」

 

汰月「…お前、行く場所あるだろ」

 

賢昇「!…何でそれを…」

 

汰月「時雨経由で聞いた。…行ってこい。星海は俺が助け出す」

 

賢昇「…策はあるのかよ」

 

汰月「問題ない。…ほら、さっさと行ってこい。……俺達のために頑張ってくれるのは嬉しいけど、俺達だってお前達の幸せを願ってるんだ。忘れるなよ」

 

賢昇「……ありがとな。…お前等が親友で良かった」

 

汰月「ツクモブースターを使え。時雨から賢昇に貸してほしいと頼まれてるからな」

 

賢昇「おう。…アイツにも礼言いに行かねえとじゃねえか…」

 

 一人で夜刀神を相手取り、賢昇をアリスの元に向かわせようとする汰月。

 最初は中途半端な状態での離脱に抵抗感を見せた賢昇だったが、汰月の言葉を聞いて覚悟を決めると、ヘルメットを受け取ってツクモブースターに跨り、発進させる。

 

夜刀神「仮面ライダー…ここで滅ぼす…!」

 

汰月「待てよ。…お前の相手は俺だ。…星海は返してもらう」

 

夜刀神「ふん。…何を言うかと思えば…無意味なことを。この女の身体は既に私の物。…そういう“運命”なんだよ」

 

汰月「…前にもイバラキドウジが言っていたな。蛇の一族に生まれた星海はこうなる運命なのだと。…ふざけるな。星海の、誰かの命を、想いを踏み躙る権利は誰にもない。…それが、そんなのが運命だなんて…俺は絶対認めない」

 

 賢昇を逃さまいと構える夜刀神の前に立ちはだかる汰月。

 そして夜刀神の放った“運命”という言葉を聞いた汰月は真っ向から反論する。

 

汰月「星海を連れ戻して…皆と平凡で幸せな日常に戻る。…そんなハッピーエンドの運命を…掴んでみせる!そうだろ…星海!!」

 

夜刀神「ふん…何を言うかと思えば…。!?何だ…この輝きは…!」

 

星海『汰月さん…っ!』

 

汰月「…これが…俺の新しい力…!」

 

 汰月が星海に語りかけるように声を上げると、その言葉に反応して汰月、そして夜刀神の中に取り込まれた星海から淡い水色の光球が出現し、身に付けていた妖書ドライバーへと吸い込まれると、そこに時雨から託された無双アヤダマの破片が吸い寄せられ、優しい光を纏い、その姿を変えていく。

 そうして現れたのは無双アヤダマによく似ているが、その色合いは淡青色が差し込まれた銀色になり、龍の頭を模していた部分が八つの蛇の頭に変わった新たなアヤダマ…“無尽(むじん)アヤダマ”だった。

 

《無尽!》

 

汰月「…俺達の運命は…俺達自身が決める!」

 

《装填!無尽!》

 

汰月「変身!」

 

《憑依装着!超変化!

 

永遠不滅(えいえんふめつ)!無尽ヨロイ!》

 

 無尽アヤダマを起動した汰月は妖書ドライバーに装填し、解放栞を引き下げて表紙を展開させる。

 すると、中から白銀の八岐大蛇と水色の光が出現し、八岐大蛇は汰月の背後から夜刀神を威圧する。

 そして汰月は自身の目の前にある水色の光に向けて右手で鉄砲を作って撃つような動作で触れると、水色の光はそのまま汰月の頭上へと移動する。続けて前に向けた右手を大きく右に振り抜き、すぐさまその手を返して妖書ドライバーの表紙を閉じる。

 それに伴い白銀の八岐大蛇は美しい鎧へと形状を変え、銀色の陣が出現して汰月の身を通ることでこれまでにない水色と銀色を基調とした素体を作り出す。

 最後に鎧が素体の上から被さった後に水色の光が霊魂の腰から入ることでローブが出現し、同時に複眼や各所に色を与える。

 

 全身に銀色に煌めく鎧を纏い、腰には銀色のローブがたなびく最強の仮面ライダー霊魂 無尽ヨロイは顕現すると、その複眼を黄色に煌めかせる。

 

夜刀神「何だ…この凄まじい力は…!」

 

霊魂「仮面ライダー霊魂…無尽ヨロイ。この力で…最高の運命を掴み取る!」

 

夜刀神「ぐ…人間風情が図に乗るな!」

 

霊魂「そんな程度か?」

 

夜刀神「!?馬鹿な…!」

 

霊魂「ふっ…はああっ!」

 

夜刀神「っ…ぐああっ!!」

 

 想定外の霊魂の姿に驚きながらも、夜刀神は霊魂目掛けて禍々しい光弾を叩き込むが、霊魂には一切通じず、防御姿勢すら取らずに受け切られてしまう。

 そして反撃の拳を受けた夜刀神は、これまでのものとは桁違いの威力の殴打に大きなダメージを負う。

 

夜刀神「この…!」

 

霊魂「効かない…!はあっ!!」

 

夜刀神「っ…うぐああっ!!」

 

 夜刀神は接近すると、絡み付いた蛇を思わせる意匠の大剣“トビノオ”で斬りかかるが、霊魂には片手で弾かれ、逆に横蹴りを叩き込まれて後退させられる。

 

霊魂「星海を解放してもらうぞ」

 

《一・撃・必・殺!》

 

夜刀神「…マズい…!」

 

霊魂「逃さない」

 

《永遠剛撃!》

 

霊魂「はあーっ!!」

 

夜刀神「っぐ…うぐあああっ!!」

 

 クサナギガトリンガーを取り出した霊魂は妖書ドライバーを操作してその銃口に銀色のエネルギーを集約させると、夜刀神に向けて解き放つ。

 クサナギガトリンガーから放たれた銀色の光線が夜刀神を貫き、その身体に大きな銀色のヒビを入れる。

 

夜刀神「っ…!?」

 

星海「汰月さん…!」

 

霊魂「星海!掴め!!」

 

星海「っ…!」

 

霊魂「……おかえり」

 

星海「ただいま、ですね」

 

霊魂「星海は下がってて」

 

星海「はい…!」

 

 夜刀神の身体に生じたヒビの中から星海が現れ、その伸ばした手を掴んで引くことで霊魂は星海を呪縛から解き放つ。

 そして霊魂は蹌踉めいた星海を受け止めると、そのまま下がらせる。

 

夜刀神「器が…!…その小娘を渡せェ…!」

 

霊魂「…絶対にお断りだ」

 

《結界之刻!》

《一・撃・必・殺!》

 

《無尽結界剛撃!》

 

夜刀神「ふんっ!!」

 

霊魂「はあっ!」

 

 霊魂は無尽アヤダマの上部にあるスイッチを一度押し、両腕にある陣が刻まれた水色の結晶体を輝かせると、そこから光を集めて六角形が幾つか集まったような紋章が刻まれた水色の陣を展開する。

 そして夜刀神が放った禍々しい波動を陣から結界を展開して受け止める。

 

夜刀神「!?防がれた…!」

 

霊魂「それだけじゃ…ない!」

 

夜刀神「っ…身動きが…うぐあああっ!!」

 

 霊魂は更に陣に向けてブラストモードのブンプクブラストフォンを構え、夜刀神目掛けて撃ち出す。

 すると、足元に陣が移動したことで夜刀神の身体は結界に閉じ込められ、陣と同時に撃ち出された強力なエネルギー弾が結界の中で大爆発が起こし、夜刀神に大きなダメージを与える。

 

夜刀神「くっ…何だ…この力は…!」

 

霊魂「今度はこっちから攻めさせてもらおうか」

 

《式神之刻!》

《一・撃・必・殺!》

 

《無尽式神剛撃!》

 

霊魂「はっ…いけッ!」

 

星海「あれは…擬人式の式神…それをあんな大量に…!?」

 

夜刀神「ぐ…ぐあっ!」

 

霊魂「はっ!はあっ!」

 

夜刀神「うああっ!!」

 

 霊魂は無尽アヤダマ上部にあるスイッチを二度押し込み、両脚にある陣が刻まれた水色の結晶を輝かせると、擬人式の式神…所謂紙で出来た人型の式神が描かれた水色の陣を展開する。

 そして陣から大量の擬人式の式神を召喚すると、夜刀神目掛けて突撃させて攻撃を仕掛けさせ、その合間を縫って霊魂自らも斧状態の妖之斧火縄による斬撃を叩き込んでいく。

 

霊魂「はああーっ!!」

 

夜刀神「うぐああっ!!」

 

 大きな隙を見せた夜刀神に対し、霊魂は式神を結集させることで妖之斧火縄を巨大な斧に変え、振るうことで強烈な斬撃を叩き込む。

 

夜刀神「人間風情が…図に乗るなァァ!!」

 

霊魂「お前も執念深い奴だな…」

 

《銃之刻!》

 

霊魂「けど、俺は負けない…絶対に!」

 

《占星之刻!》

《一・撃・必・殺!》

 

夜刀神「ふんっ!!」

 

《無尽占星剛撃!》

 

霊魂「はっ!…はあっ!はっ…はあーっ!!」

 

夜刀神「攻撃が読まれている…!?うぐあああっ!!」

 

 霊魂は妖之斧火縄を銃状態に変えつつ、無尽アヤダマの上部にあるスイッチを三度押し、両肩にある陣が刻まれた水色の結晶を輝かせると、月と五芒星が描かれた水色の陣を展開する。

 そして陣を見つめた後、トビノオを片手に突撃してくる夜刀神を前に、妖之斧火縄を突き付けて頭上へと移動させた陣に向かって銃撃を放ち、そのまま夜刀神のトビノオによる連続斬撃を読み切って軽やかに回避しつつ、的確な反撃を喰らわせていく。

 

夜刀神「この程度…」

 

霊魂「お前の定めはもう決まってる」

 

夜刀神「!?ぐあああっ!!」

 

 霊魂に向かってなおも攻撃を仕掛けようとする夜刀神だったが、霊魂が頭上の陣へと放っていた銀色のエネルギー弾が時間差で陣から飛び出し、夜刀神を撃ち抜く。

 

霊魂「…終わりにしよう」

 

《終局之刻!》

《一・撃・必・殺!》

 

夜刀神「…!」

 

霊魂「お前の悪事は俺が終わらせる!」

 

《無尽終局剛撃!》

 

霊魂「はああ…はあーっ!!」

 

夜刀神「っぐ…うぐあああああっ!!!」

 

 霊魂は無尽アヤダマの上部にあるスイッチを四度押し込むと、解放栞を引き下げて妖書ドライバーの表紙を展開する。

 そしてその場でローブを翻すようにくるりとターンすると、右脚に銀色のオーラが集まり、水色の飛沫のようなエフェクトを迸らせる。

 表紙を閉じると同時に跳躍した霊魂はそのまま激流の如き勢いで夜刀神に跳び蹴りを放ち、そのまま蹴り抜き、爆散させる。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

星海「…ありがとうございます。汰月さん」

 

汰月「…星海。…無事で良かった…本当に」

 

 変身を解いた汰月の元に駆け寄る星海。

 そんな星海を見て、無事に助けられたことを汰月は心から喜ぶ。

 

汰月「…その、星海。聞いてほしい話があるんだ」

 

星海「?」

 

汰月「……正直、俺は今まで星海の持つ力のこと、ちゃんと分かってなかったんだと思う。だから、反人間連合を壊滅させた今、もう星海を狙うような奴はいないと思ってた。けど、今回の一件で分かった。…この平和な日常は、決してあって当たり前のものなんかじゃないって」

 

星海「汰月さん…」

 

汰月「…そう考えると、怖くなった。星海がまた誰かの悪意に傷付けられるのが…堪らなく怖いんだ。…だから」

 

星海「…?」

 

汰月「…だから、君さえ良ければ、僕に君を守らせてほしい。…ずっと一緒に、ずっと隣で」

 

星海「!…それって…」

 

汰月「…ああ。俺は…君のことが…斜馬星海のことがどうしようもないくらい好きなんだ。…だから、俺の恋人になってほしい」

 

星海「…嬉しいです。…私も、助けてくれたあの時から、ずっとあなたのことが好きでしたから。…ですが、一つだけ飲めないことがあります」

 

汰月「えっ?」

 

星海「…私は、一方的に守られるのは嫌です。…今回の一件で、私も痛感しました。私自身、自分の持つ力への理解が足りていないと。…だから、ちゃんと学んで力と向き合っていきます。…そうして…お互いに支え合っていける、そんな関係が良いと思いません?」

 

汰月「…そうだな。…これからもよろしく。星海」

 

星海「はいっ!」

 

 今回の一件を通してのそれぞれの想いを伝え、無事に結ばれた汰月と星海。

 互いに守り支え合える関係へと一歩踏み出すと、星海は満面の笑顔で汰月に抱き付き、そんな星海を汰月は優しい笑顔を浮かべて受け止めるのだった…。

 

汰月(そういえば賢昇…上手くいってるかな)

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

アリス「……」

 

 やや暗い面持ちでお見合い会場に入って行こうとするアリス。

 そこにバイクの音と共に駆け付ける者が。

 

賢昇「アリスッ!!」

 

アリス「…!賢昇!?何でここに…」

 

賢昇「…結佳に教えてもらったんだよ、お見合い会場。…その、こないだは悪かった」

 

 突如として現れた賢昇に驚くアリスに対し、賢昇は深々と頭を下げて謝罪する。

 

アリス「え…?…どうして賢昇が謝るのさ。いきなりお見合いの話して勝手に姿を消したのは私なんだよ?」

 

賢昇「けど…俺はお前との約束を果たそうとしなかった。だから…ごめん」

 

アリス「約束って…まさか」

 

賢昇「…交換留学から帰るあの日、俺はお前に約束した。祓魔師になるということがお前の夢を叶えるのに枷になるってんなら…俺が代わりをやるって」

 

アリス「けど、私の夢を叶えるためにお見合いをするんだよ?約束の範囲外じゃない?」

 

 賢昇の謝罪の理由がかつての約束を果たそうとしなかったことであると聞き、アリスは悲しそうな顔で反論する。

 

賢昇「…範囲外じゃねえよ。だって、お前が望んでないお見合いをするのなら…望んでない運命を背負わせられるなら、例え夢そのものは叶っても、んなもん枷でしかねえだろうが。…だから、俺は約束を果たす」

 

アリス「…そっか…賢昇はそう言ってくれるんだ…」

 

賢昇「…別に俺だって誰にも彼にもこんなこと言うわけじゃねえ。……一回しか言わねえぞ」

 

アリス「え?」

 

 アリスの反論を正面から説き伏せると、賢昇は真剣な光を灯した瞳でアリスを見据える。

 

賢昇「…アリス。俺は、お前のことが好きなんだ。ガキの頃からずっと。…だから…俺にも…お前の運命を背負わせてほしいんだ。…アリス、俺と結婚してくれ」

 

アリス「!……ふっ」

 

賢昇「ん?」

 

アリス「ふ…ふふっ…」

 

賢昇「な、何で笑うんだよ!」

 

アリス「いや、あの約束を交わした日、賢昇の言葉をプロポーズみたいって思ったけど…まさか本当にプロポーズされるなんてね。…それが何だか…堪らなく嬉しいんだ」

 

賢昇「てことは…」

 

アリス「…うん。…不束者ですが、どうかよろしくお願いします」

 

賢昇「よ…」

 

アリス「よ?」

 

賢昇「よっしゃあああっ!!」

 

アリス「!?…ビックリした…喜びすぎだよ」

 

賢昇「バカお前、俺が何年お前を想ってきたと思ってんだ。…それが漸く実を結んだんだぞ、嬉しくないわけないだろ」

 

アリス「へえ、賢昇ってそんなに私のこと好きだったんだー」

 

賢昇「っ…ああ、そうだよ!悪いか!」

 

アリス「別に?けどね…これだけは言っておくよ。…例え賢昇がどんなに私を想っていても、絶対大好き度合いは私の方が上だから」

 

賢昇「…言ったな?…言っておくが俺も負ける気はないぞ」

 

 まさかのプロポーズも成功し、無事に結ばれたかと思うと、賢昇とアリスの二人はくだらないやり取りを始める。

 そして何故かどちらが好きかでマウントを取り合い始めると、互いに顔を見合わせて笑い出す。

 

アリス「…ふふっ。…まあ確かに、恋人すら通り越していきなりプロポーズだもんね。…これは確かに強敵だ」

 

賢昇「いや!それはその…ただ恋人になりますだとイマイチだと思ったんだよ…」

 

アリス「…ありがとね、賢昇。…さて、私も頑張らなきゃ!…というわけでお見合い、サクッと終わらせてくるね!」

 

賢昇「…おう」

 

アリス「あ、気が抜けてるね?良いのかな?この後ラスボス戦が待ち受けてるのに」

 

賢昇「ラスボス…そうじゃんお前の親を説得しないとじゃねーか!」

 

アリス「…二人で報告に行こうね」

 

賢昇「…だな。…ま、俺に任せておけ!前にも言った気がするが…俺程の奴もそうそういねえだろうからな!新しい力も手に入ったし!」

 

アリス「お、それは頼もしい。…じゃ、行ってくるね」

 

賢昇「おう。また後でな」

 

 この後に控えるラスボス戦…アリスの親への挨拶と説得というイベントを思いながら、アリスはひとまずの前哨戦…お見合いへと挑むのだった…。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

「イバラキドウジは敗れ、夜刀神を倒されたか。…まあ良い、その程度は想定の内。…手に入れた無双の力は完全になった。世界は…滅びる定めにある。我々“空亡”の手によってな。…フフ…フフフフフ…!」

 

 暗がりから姿を現し、今回の一件について考えるのは、無双ヨロイを歪めたような容姿の怪物。

 赤い瞳をギラつかせ、世界は怪物…空亡の手によって滅びるということを宣言すると、一人高らかに笑い声を上げるのだった…。




Vシネマ前編をご覧いただきありがとうございます!
作者は最近風邪を引きまして、その影響で一時期執筆も止まったりしたため、何とかこちらの作品を世に出すことが出来て何よりです!
今回は汰月と賢昇主役ということでそれぞれの恋模様を描いていきましたが、いかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたなら何よりです。

さて、前編が終わったということでVシネマ後編のタイトルについても発表していきたいと思います!
都黎と真黒の二人が主役を務めるVシネマ後篇のタイトル…それは「仮面ライダー妖魔 アフターエピローグ ランタン・インザ・ダーク」となります!
ランタン・インザ・ダーク、というのは暗闇の中の灯火、ということで都黎と真黒の組み合わせを指すにはぴったりだな、ということに加え、それぞれ本編ではそれぞれの理由から敵として登場した二人の抱える罪と、その中で掴み取っていく未来への希望というものも描いていく作品となる予定ですので、是非ともお楽しみに!
また、公開日については2月13日(金)21時を予定しております!
本予告についてはまた公開日が近づきましたら公開いたしますので、お楽しみに!
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