原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
「テイワット大陸」。
眼前に広がる、広大な世界。
それを見て、私は思った。
…あれ?何だろう。この景色、初めて見るはずなのに…
なんだか、初めて来たという感じがしない。
この景色…いつか、どこかで見たことがあるような…
そんな気がした。
不思議な光を放つ、大きな石の柱。
その頂上には、フードを被った神の彫像がある。
それを指さして、私のとなりに浮かぶ不思議な生物…
「パイモン」が言った。
「見えるか?あれが『七天神像』だ。
神を象った像は七神の象徴として、大陸に点在してるんだ。
で、あれは七つの元素のうち…」
「『風』を司る神の像、だね」
私がそう言うと、彼女は目を見開いた。
「えっ?なんでわかるんだ!?」
「なんでって言われても…」
正直、返答に困る。
これは意図したわけではなく、何となく頭に浮かんできたことだ。
それを、何となく口に出したのだ。
どちらかと言うと、衝動的な独り言に近いだろうか。
もちろん、事実かどうかなど、わからない。
「何となくわかった、って感じかな」
「…いや、おかしくないか!?おまえ、この世界に来たばっかりなんだろ?なんで、知ってるんだよ!?」
「…だから、わからないんだってば。私にも…」
私は頭を掻きながら言った。
すると、パイモンはひとまず納得してくれたようだ。
「…まあ、とにかくだ。この『風神』が、おまえの探してる神かはわからないけどな、風神の領地に連れてきたのには、ちゃんと理由があるんだぞ」
…となると、次に私がすべきことは。
七天神像に近づき、手を触れた。
像から、何かの文様がある緑の光の球が飛んできて、私の体に吸い込まれるように消えた。
「…どうだ?感じたか?この世界の、『元素』を」
「うん…」
「どうやら、おまえは神像に触れるだけで『風』の元素力を手に入れられるみたいだな。
普通の人…っていうか、この世界の人が力を得るには、おまえみたいに簡単にはいかないんだぞ」
「…おかしい、こんなの…」
この感覚、間違いない。私は、知っている…。
私は、この世界に来たことがある。
「うん、だっておまえは、この世界の人間じゃないからな。
ここから西には、『自由の都』と呼ばれるモンドの町があるんだ。七神のうちの『風神』を祀る、風の都市だ」
そう言えば、そうだった。
もう、何年前のことだったか…もはや覚えていない。
でも、あの町は確かに見たことがある。
そして、行ったことも…。
「おまえは神像から力を得られるし、何か情報を得られるかもしれない。あと、モンドには吟遊詩人がたくさんいるから、お兄さんの情報も手に入るかもな!」
「…そうだね。この世界の『元素』は、私の祈りに答えた。きっと、いい兆しだよ」
「だな!…って、それ今オイラが言おうとしてたセリフだぞ!」
そうだろうね。
だって、あの時も言われたから。
「ん?見ろよ、あれ…」
私たちは岩の陰に隠れ、「それ」を見た。
複数枚の翼を持った、蒼色の龍。
それと、一人の少年が何か話している。
「…怖がらないで。安心して」
その声が耳に届いた瞬間、胸の奥に激しい既視感と懐かしさがこみ上げた。
「あいつ…ドラゴンと、話してるのか?」
と、私の手元で緑の光が弾けた。
龍はそれに反応したのか、咆哮を上げた。
「…誰?」
少年は姿を消し、龍はどこかへ飛び去った。
そして、後には赤く光る…
まるで、「涙」のような形の石が残された。
「こんな石、見たことないな…なんだ?
危ないってことだけはわかるな。とりあえず、回収しとこう」
パイモンが「石」を回収するまで、私は考えていた。
これは、一体どういうことだろう。
あの龍と少年も、この石も、見た記憶がある。
これはもう、ただの既視感じゃない。
まるで、記憶の中に埋もれていた光景が、今ここで再現されているようだーー。
そう言えば、さっき龍に気づかれるきっかけとなった光…
あれも、なんか見覚えがあった。
私は、一体どうしてしまったんだろう?
かつての人生を、冒険を、追体験しているのか?
だとしたら、運命を…
これから起きることを、変えられたりはしないだろうか。
普通に考えるなら、未来をすでに知っているのなら、過去の行い次第でそれを変えることができそうだ。
でも…どうだろうか。
「ちょっと、あんた!待ちなさい…!」
明るい声と共に、誰かが私たちの前に飛び降りてきた。
立ち上がるや否や、「風神のご加護があらんことを!」と言ってきた、うさぎを思わせる赤いリボンの少女。
名乗られるまでもなくわかる。
「…あんた、モンドの人じゃないね?身分の証明って、できる?」
「落ち着いて、怪しい者じゃないんだ…」
パイモンが説明しようとするが、通じるはずはない。
「…怪しい人は、みんなそう言うわ」
…だろうね。
とりあえず、名前を名乗った…あの時と同じように。
「…へえ?ここら辺じゃ、珍しい名前だね。それからその…マスコットみたいなのは?」
さて、どう言おうか。
ちょっと悩んだが、ここはとりあえず…
「これはパイモン。非常食」
「全然違う!マスコット以下じゃないかよ!」
…やっぱり、この反応か。
百合の趣味はないが、このパイモンの反応はいつ見ても可愛い。
「とにかく、旅人ね。近頃、モンド城の周辺で大きな龍が出没しているの。だから、早く城に入ったほうがいいわ。そうだ、ここからモンドまでそう遠くもないし、ここは…」
見事に聞き覚えのあるセリフだ。
さらにその後アンバーは、自分には任務があるが、それをしながらでも私たちの護衛はできる。
それに怪しい者を放っておくわけにもいかない…と言い、直後に失礼だったねと謝った。
前は、途中で私が「こちらを信用していないようだ」と言ったのだけど、それは今回はなかった。
…これは一体、どういうことなんだろう?
前と同じ選択肢を選ばずとも話が進んだから、過去の記憶を追体験している、というわけではなさそうだけど。
道中で、仮面を被った人型の魔物…「ヒルチャール」が3体現れた。
アンバーは弓を撃ち、爆発するうさぎの人形を投げた。
私は片手剣を振るい、手に風の力を握りしめて放った。
風元素の力を使って「風刃…!」と叫ぶ。
これも久しぶりだけど、アンバーのあの人形を見るのも久しぶりだ。
自分でよちよち歩くうさぎの人形。ちょっと可愛いけど、そのうち派手に爆発する。
つまるところ、動く爆弾だ。
正直そうは見えないのだが、一応炎元素の攻撃らしい。
敵の注意を引いてくれるから、役には立つんだけど。
「ふう、楽勝楽勝〜。でも、あんたも戦えるんだね。助かったよ!」
どう思ったかって?当然、楽勝だった。
何百回と倒してきた相手だし。
「なんでこんなところに、ヒルチャールが現れるんだ?こういう奴らは普通、都市から離れたところに巣を作るよな?」
「そうね、本来なら荒野にいるはずね。でも、最近は…」
最近は暴風を起こす元素龍、『風魔龍』が頻繁に姿を見せるようになり、その暴風による被害が増えている。
モンドの組織である
しかし、今回こうして1つ巣を潰せたから、進展はあった。
アンバーはそう言った後、私たちを町まで連れていった。
「改めて紹介するね。風と
得意げなアンバーの紹介を受け、私たちは晴れてモンドの町へと立ち入った。
これで野宿しなくて済むなと、パイモンが喜びの声を上げた。
同時に、みんなの顔はあまり明るくないなと、気を揉んだ。
まあそれはそうだろう…最近、みんな風魔龍の件で頭を悩ませているのだから。
「でも、ジンさんが…うちの騎士団の代理団長さんがいれば、大丈夫だと思う!」
「ん?誰だ、それ?」
「あ、ジンさんは
ここに来て、知っているのとちょっと違うセリフが出てきた。
内容的には、ほぼ同じだけど。
「そうだ、騎士団の本部に行く前に、これを受け取って」
そうして渡されたのは、翼を模して作られた黒いもの。
…忘れるはずもない。「風の翼」だ。
前の旅でも、幾度となくこれに助けられた。
「あれ?オイラには?」
「あー…えっと、パイモンちゃんには使えないね。でもその代わり、今夜は特別な料理をごちそうしてあげるから!」
特別な料理と聞いてパイモンは喜んでいたが、実際のところは、ニンジンと肉のハニーソテーだ…確か。
まあ、こいつは食いしん坊だから、気にすることはないだろうが。
「とにかく、私についてきて。高いところに、行きましょ!」
そうして、しばらく町中を歩いた。
モンドの町。もう久しく見ていなかった、懐かしい町だ。
以前こうして来たときと、なんら変わっていない。
…突如立ち込めてきた霧と、その中から飛び出して空を駆ける龍も。
龍は咆哮を上げ、竜巻を起こす。
今度は飛ばされない…と思ったが、思ったより竜巻が強力であっさり飛ばされてしまった。
風の翼を展開し、空中で静止する。
やはり龍はこちらに向かってきたので、素早く動いて回避し、再び静止して様子を見る。
すると、龍はどこかへ飛び去っていった。
地上に降りると、アンバーが安否を確認してきた。
そして同時に、パチ、パチ…という握手と足音が聞こえてくる。
「あの龍とやり合えるとはな…さて、我らにとっての味方か、はたまた新たな嵐の種かな?」
聞き覚えのある、渋い男の声。
その主は、氷の「神の目」を持つ青髪の騎士、ガイアだ。
『蛍』
世界をさすらう「旅人」、しかしこの世界をすでに知っている…かつて、この地を旅した「転生者」だから。
これから起こるすべての出来事を知っている者として、
運命に抗うことはできるのか…