原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
モンドの町中に戻ると、何やら聞き覚えのある声が飛んできた。
「旅人さん、パイモンさん!」
声がしたのは、鍛冶屋の向かいの建物の前・・・そこには、見慣れた施設がある。
こればかりは、この世界にも存在していてくれて嬉しいと思ってしまう。
いや、パイモンもそうだが、この施設はそれと同等かそれ以上だ。
「あっ、キャサリンか!」
パイモンが反応し、手を振る。
冒険者協会と、その受付担当であるキャサリン……彼女とこの施設は、テイワットならどこの国にもいる。
というか、いてくれないと困るまである……いろんな意味で。
前の世界では、毎日のようにここに来て「今日の依頼を達成した」とか言って、報酬をもらっていた。
本当に依頼を達成していたかはさておき、もらえる報酬はなかなかバカにできないものだった記憶がある。
「お二人のことを、先ほどガイアさんから聞きました。是非、冒険者として登録をなさっていってください」
もちろん、断る理由はない。
何故ガイア経由で話が来たのかが謎だが、まあそこは気にしないでおく。
彼のことだ、きっとこれから私たちが長い冒険に出ることを察して知ってくれたのだろう。
前の世界でも、モンドに来てすぐにここで冒険者登録を済ませた。
もっともその後、どこの国に行ってもまったく同じ顔のキャサリンが同じように立っていて、同じように反応してくる……という怪現象を経験することになったり、ナド・クライで彼女を「作った」人に出会ったりすることになったのだが。
「そうさせてもらうよ。……またよろしくね、キャサリン」
私は、思わず呟くように言った。
これから、また各地でこの人に会って、毎日のように「星と深淵を目指せ!」と言われるようになるのか。
まあ、それも悪くない。
そもそも私は、キャサリンのことは別に嫌いではない。
かつては、最初に彼女の正体を知ったのは確かスメールだったが、それでもさほど印象が変わったりはしなかった。
前の世界と同じなら、彼女を作った人とはナド・クライで会って、そのまま共闘して……偽りの月と共に去っていくはず。
しかし、スメールでナヒーダに憑依されても何ともなく、さらにそれからだいぶ経って、主が亡くなった後も特に不調を起こさず、普通に動いていたあたり、何気にすごいと思う。
まあ、仮に壊れてもナド・クライには凄腕の職人もいたし、誰かが頼めば直してくれただろうが。
ただ、ファデュイ……というかスネージナヤのロボットを、すんなり直してくれるかはわからない。
まあ、何かしらの甘いものをセットにすれば、快く引き受けてはくれるだろうが。
「では、さっそくですが依頼が入っていますので、引き受けていただけますか?」
その依頼というのは、要は人探しだった。
昨日の夕方、キノコを採りに行くといって町を出ていった子供が、今も戻ってきていないのだという。
依頼者からの情報によると、行方不明になった子供は身長1メートル程度で、白い髪に赤い目をし、赤い服に赤い帽子を被り、赤いリュックを背負っているという。
……そこまで聞いて、私は「ん?」と思った。
その特徴だけ聞くと、前の世界でも会った「ある人物」が思い浮かぶ。
何より、その次に出てきた……というかパイモンが読み上げた情報で、はっきりした。
「えーと……『該当の子供は炎の神の目を持っている』。え?子供が神の目を持ってるのか!?」
それで確信した私は、パイモンに答えを言った。
「要はね……クレーだよ。会ったことない?」
「クレー……?あ、あいつか!そういや、よく町の外に遊びに行くっけからな……」
モンドで、白い髪に赤づくめの格好……しかも、炎の神の目を持つ子供と来たら、出てくるのは間違いなくクレーだ。
あの子はかわいいし、お母さんもなかなかすごい人だが、ちょっと世話がかかる子ではある。
何しろ、かわいい顔してアンバーやヒルチャールもびっくりの爆弾魔で、しかも悪気はないのだから。
「でも、なんでキノコ採りになんか行ったんだ?それにあいつは、騎士団のやつらが面倒見てるはずだろ?」
「それはわからないけど……パイモン、あの子を騎士団の人たちだけで面倒見きれると思う?」
「うっ……それはそうだな。オイラだって、あいつの爆弾遊びで吹き飛ばされたとか、飛んできたものがぶつかって痛い思いをした……って人が何人もいるって聞いたことあるしな」
やっぱり、この世界でもそうなのか。
昔は、あの子の宝物を探すのを手伝ってあげたりもしたものだが……決して楽なものではなかった記憶がある。
他に炎の神の目を持ち、法器を扱う人……後に出会った煙緋なんかと比べると、良くも悪くも年齢相応の子だという印象があった記憶がある。
まあ、煙緋はちょっと特殊ないきさつのある人物だから、クレーと単純比較はできないが。
「とにかく、探しに行こう。放ってはおけないよ……あの子のお母さんのためにもね」
私としては、クレーももちろんだがその母親も強く印象に残っている。
モンドにいた時から名前や声は聞いていたが、実際に会ったのはナド・クライで……という珍しい人だった。
もっとも、それは大団長なんかもそうなのだが。
「そうだな!よし、キャサリン!この依頼はオイラたちが引き受けたぜ!」
「ありがとうございます。どうか、この子を見つけてあげてくださいね」
うん、もちろんだよ。
私はそう答えて、町の門の外に足を向けた。
しかしあの子といい、モナといいリサといい……なぜ、モンドの魔法使いは癖の強い人が多いのだろうか。
リサは、この世界で急に癖が強くなったが。