原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
今回のターゲット、つまりキノコ採りに出かけたまま行方不明になっていた少女は、わりとすぐ見つかった。
具体的には、星落としの湖のところにある七天神像の北、望風山地の川辺の西側にいた。
すぐ近くにワープポイントがあったので、それを解放しようと思って近づいたら、川辺でしゃがんでいるのを見つけたのだ。
前の世界でもお世話になったオブジェクト、もといワープポイント。これは今回の世界にもしっかり存在しており、前の世界と同じ感じで使える。
多くの人々は、これを「古代の神秘的なオブジェクトで、使い道はよくわからない」としか思っていない。
しかし、私にとっては元素力共々、旅の必需品とも言えるものだ。
使うには、手ごろなワープポイントに近づいた上で、目的かつ解放済みのワープポイントを思い浮かべて触れなければならないが、テイワットのたいていの場所にはある程度近くにワープポイントか七天神像があるし、「ポケットワープポイント」なんてアイテムもあるので、そこまで苦労はしない。
さて、肝心のクレーだが、川辺で何をしていたのかというと、なんとヒルチャールのタル爆弾を近くに置いて昼寝していた。
確かに、この辺りにはヒルチャールがちらほらいるし、クレーなら狙ってもおかしくはないが……だとしても、こんな危険なものをよく持って来られたものだ。
前の世界では、これはフィールドや秘境によくあるギミックの1つだった。
いろいろな元素のスライムを中に詰めてあるらしい爆弾で、風スライムのように弓の的として出てくることもあった。
風スライムに比べると、動かない分狙いやすかった記憶がある。
しかしながら、この爆弾は元素攻撃はもとより、落としたり何かをぶつけたりしただけでも爆発する危険物だ。
ヒルチャールはともかく、普通の人間にまともに扱えるようなものではない。
そんなものを、手で運んでこられるとは。
やはり、クレーはただ者ではない……いや、それはよくわかっていることだが。
「こいつ……呑気に昼寝なんかしてるぞ!しかも、タル爆弾のすぐ横で!」
パイモンが呆れる。
私もまあ、呆れているというか……驚いているが、とにかくこのままにはしておけないので、ひとまずクレーを起こした。
もちろん、爆弾に触れないよう注意して。
声をかけると、クレーはうっすらと目を開けて私を見、「お姉ちゃん、誰……?」と呟いた。
私は軽く名乗り、冒険者協会からあなたを探すよう依頼が出ている、みんながあなたを探していると話した。
すると、クレーは目を見開き、「もしかして、ジンさんからお話がいったのかな……?」と言った。
それはわからないけど、たぶん知っているだろうね、と言ったら、クレーはため息をついた。
「ああ……まあた反省室行きかあ……」
そう言えば、この子は反省室の常連なんだった。
定期的に何かを爆破したり、壊したり……お母さんには申し訳ないが、この子は間違いなくモンド屈指の問題児だ。
正直、ちゃんとしつけてほしい……と思ってしまう。
「それは自業自得だぞ!オイラだって、おまえの悪い噂は聞いてるしな!」
パイモンは怒ったように言ったが、まあクレーには響いていないだろう。
実際、身を起こしてすぐにタル爆弾の無事を確認して安堵していた。
「お、おい!やめろ、危ないぞ!」
「えー?大丈夫だよ。やさしく触れば、何ともないよ!」
クレーはタル爆弾を抱え、「ほら、触ってみて!」とパイモンに差し出す。
それで、パイモンは「わあ!?やめろ!」と悲鳴を上げる。
……悪気はないのだろうが、それが余計にこの子を怖くしているポイントだ。
「ところでクレー、なんでタル爆弾なんて持ってきたの?」
「うん……最初はキノコ採りをしてたんだけど、たまたまヒルチャールがこれを爆発させてるのを見たの!それでね、クレーもこれを改造して、新しい爆弾を作れないかなって思ったの!」
つまり、タル爆弾を改良してオリジナルの爆弾を作ろうとしていたわけか。
いかにもクレーらしい……というか、この子にそんな知恵があったのか。ちょっと意外だ。
「それで、何か考えついたの?」
「ううん……考えてたら、眠くなってきちゃって。それで、ここでお昼寝してたの」
そばに爆弾を置いた状態で昼寝するとは。
ヒルチャールでも、ギリギリやらない……かもしれない危険な行為だ。
ちなみにクレーは、最初はキノコ採りに来ていたが、その途中でタル爆弾とそれを爆破させるヒルチャールを見つけ、興味を引かれた。
そして、そこからキノコ採りそっちのけでタル爆弾をヒルチャールからくすね、その辺にあるものや持ち合わせの素材をフル活用して新しい爆弾を作ろうと悪戦苦闘していたらしい。
途中で何度か寝たりもしたが、そうこうしている間に時間が経っていき、夜が明けてしまった……ということのようだ。
いずれにしても、無事で良かった。
寝ている時に魔物に襲われたり、さらわれたりしなかったのは幸運だ。
ちょっと北に行けば、無相の風なんてのもいたはずだし。
「とりあえず、モンドに帰ろっか」
そう言うと、案外すんなり納得してくれた。
ただ、このタル爆弾は持って帰れない、ということを話したら、残念そうな反応をした。
でも、致し方ない。
いくらなんでも、こんな危険なものをモンドに持って帰らせるわけにはいかない。
クレーが作ったものではないが、文字通りの爆弾だ。
「おいで。私と一緒にくれば、すぐモンドに帰れるよ」
その言葉に、嘘偽りはない。
何しろ、私にはワープポイントがあるのだ。
本当に……大半の人が使っていないのがもったいないと感じてしまうほど、便利な装置だ。