原神IF -知っているようで、知らない世界-   作:白い花吹雪。

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18.風に抗う術

 問題の依頼人は、確かにアカツキワイナリーの近くにいた。

しかし、行ってすぐに話をつけて、ものを渡して……というわけには行かなかった。

 

「……ん?あれって……」

 

ワイナリーの建物に向かって歩いていると、ふと視界に嫌なものが入った。

さっきも見かけた、空を飛ぶ緑の球体……狂風のコアだ。

 

しかも、それは明らかに臨戦態勢、というか攻撃をしてくる時の動きをしている。

私とは距離があるから、こちらに注意を向けているわけではないだろう。

 

 だが、そうなるとむしろ危険だ。

あの狂風のコアは、私よりもっと自分の近くにいる誰かを襲っている、もしくは襲おうとしていることになる。

 

スライム程度ならともかく、狂風のコアに一般人が襲われたりしたらひとたまりもない。

私はすぐに、建物の横に浮かぶ狂風のコアのもとまで走った。

 

 

 

 その結果、3人の若い男たちがコアに襲われていた。

両手で頭を抱えてしゃがみこんでいるが、コアにとってそんなものは無意味に近いだろう。

まあ前の世界でも、魔物に襲われた人は大抵ああいう反応をしていたから、間違いではないとは思うが。

 

「うわ!あの人たち……魔物に襲われてるぞ!」

 

パイモンが、だいぶ遅れた反応をする。

少なくとも数分前から、狂風のコアの姿は見えていたと思うのだが。

 

「このままじゃ危ない……すぐに助けよう!」

 

 コアは空中にとどまり、周囲の空気を吸い寄せて、3人を一気に引き寄せようとする。

そこに飛び込んでも、彼らを助けることは難しい……そう判断した私は、やむを得ず元素爆発を使った。

 

「風と共に去れ」の詠唱と共に飛び上がり、竜巻を一直線に飛ばす。

昔はこれでヒルチャールなどを飛ばして水や崖下に落としたりもしたが、まさか普通の人相手に使うことになるとは思ってもなかった。

だが、仕方ない。今は、3人の人の命がかかっているのだ。

 

 竜巻はうまく彼らを吸い上げ、コアの吸引を無視してまっすぐに進んでいき、そして消えた。

その下にすばやく私とパイモンが滑り込み、落ちてきた2人を受け止める。

 

1人は受け止められなかったが、彼が落ちてきたところにはちょうど低木があり、それが代わりに受け止めてくれた。

 

見た感じ、3人に怪我はなさそうだ。

すぐに私は彼らに「下がって!」と言い、パイモンと共に下がらせる。

そして、代わりに狂風のコアの前に立つ。

 

 狂風のコアは元素生命だが、スライムなどと違って顔や目鼻はない。それでも、こちらの姿を敵として認識されれば、はっきりとわかる。

言葉にならない視線と、それまでとはかすかに変わる環境の音が。

 

「……!」

 

剣を構えるが、私から手出しはできない。

コアは常に浮遊しているので、剣では攻撃が届かないのだ。

ただ、一部の攻撃の際に降りてくることがあり、そこを叩くことで反撃ができる。

逆に言うと、剣や槍ではそれくらいでしかまともに攻撃できない。

 

しかもこいつは風の元素生命なので、今の私の元素攻撃はすべて無効化される。

私だけじゃない、空を飛ぶ敵に対応できる攻撃を使えなければ、誰を出しても同じことだろう。

 

 やがてコアは、回転しながら突っ込んできた。

前の世界でも経験のある、見慣れた攻撃だ。

横を向いてさっと走り、攻撃を躱しつつ剣で斬り払う。

 

狂風のコアに体液などはないが、傷つけると風の元素力を含んだ液体やかけらを飛び散らせる。

これを素材として使えるのではないか……とも思うが、残念ながらそんなことはなく、落とすのはモラだけだ。

 

まあ、それはあくまで前の世界の話なので、今回どうなのかはわからないが。

 

「いっけぇー!魔物をやっつけろ!」

 

 パイモンが熱い声援を送ってくるが、あいにくそれに答えることはできそうにない。

風元素しか扱えない状態の私では、こいつとの相性は最悪と言ってよく、まともにやり合うことはとても……。

 

 

 そう思っていた矢先、思わぬ援軍が現れた。

突然、どこからか緑の球が飛んできてコアに命中したかと思うと、次にそれが紫の雷に打たれた。

コアはそのダメージで怯み、一時的にだが浮上できなくなったようだった。

 

「……えっ?」

 

 攻撃が飛んできた方を見ると、2つの人影が見えた。

1つはリサ。そしてもう片方は、この世界に来てから新しく出会ったモンドのシスター……リィルだった。

 

そう言えば、彼女は草元素の神の目を持っているんだった。

とすると、今のは激化反応か。

いずれにせよ、今の状況においては心強い加勢だ。

 

「大丈夫?……いいえ、詳しい話は後にしましょう」

 

 リサはそう言って、リィルと顔を見合わせ、再び手をコアに突きだした。

 

リィルが草元素の球を撃ち出し、リサの雷がそれに触れて原激化、さらにそれにリィルの元素攻撃が触れて草激化を引き起こす。

まさか、モンドの住人が激化反応を起こしている現場を見ることができるとは……。

 

「蔓よ、ここに迸れ!」

 

 リィルは詠唱し、浮き上がりつつ手を振るう。

すると、コアの足元から光る蔓が無数に飛び出し、コアに巻き付く。

そこにリサが元素爆発を使い、雷の追撃を行う。

 

草と雷のエフェクトが飛び交い、コアに強烈なダメージを与える。

それは言うまでもなく、私の剣の重撃などよりもずっと強力で……狂風のコアを数分もしないうちに撃破し、崩れるように消滅させた。

 

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