原神IF -知っているようで、知らない世界-   作:白い花吹雪。

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2.神殿の遺跡

「あっ、ガイア先輩!ちょうどよかった、一緒に…」

 

「待て。知らない顔がいるな?」

 

「あっ…そうだった。」

 

アンバーは少し焦った様子で続ける。

 

「えっとね、こちらはガイア先輩。私たちの騎兵隊長。

この人は…遠い場所から来た旅人さん。それで、事の経緯は…」

 

 ガイアは話を聞き終えると、ゆっくりと頷いた。

 

「モンドへようこそ。…ただ、このタイミングは運が悪かったな。」

 

彼はふっと笑う。

 

「いや、俺にもわかるぜ?血縁者と離れ離れになる辛さってやつはな。それに、風神を探す理由も聞かないでおく。誰にでも話したくないことの一つや二つはあるだろ?」

 

「……ありがとう」

 

「まぁ、とにかく礼を言うよ。騎士団代表として。

さっきの件で、お前たちのことはすでにモンドの人々も見ている。代理団長も興味があるようだ。本部まで同行してもらえるか?」

 

「…もちろん」

 

——この会話、まさしくかつて初めてモンドの町に来たときと同じだ。

でも、アンバーもそうだったけど、どうやら彼らは私を知らない…いや、記憶がないのか?

 

 それとも、おかしいのは私の方なのか……?

いや、記憶は確かだ。これは間違いなく、私が経験した出来事。

 

そうなると……?

 

 

 

 

「代理団長様、連れてきたぞ」

 

 見覚えのある部屋。

目の前に立つのは、金髪の騎士団代理団長ジン。

そして、魔女のような姿をした司書リサ。

 

——二人とも、よく知っている人物だ。

 

 懐かしさが込み上げるが、それを共有できる人はこの場にはいない。

それが、悔やまれる。

 

「…なるほど、経緯は理解した。

モンドへようこそ、風と共に訪れし旅人よ」

 

 ジンは自らが代理団長であることを明かした後、隣のリサを紹介する。

 

「あら、可愛いわね。お手伝いに来た可愛い子ちゃんかしら?」

 

 変わらない。彼女は昔と何も変わらず、私を"可愛い子ちゃん"と呼ぶ。

でも、この二人は間違いなく私のことを知らない。

……やっぱり、変な感じだ。

 

「来てくれたのはいいけど、タイミングが良くなかったわね。

風魔龍が目覚めてからずっとこの辺りをうろついていて、街に混乱をもたらしているの。

おまけに、今のモンドは元素の流れと地脈の循環がぐちゃぐちゃになっていて…魔法使いにとっては最悪な状況よ」

 

リサは頭を抱えながら溜息をつく。

そういえば、彼女は本物の魔法使いだったっけ。

 

 昔、モンドの片隅でポーション作りとその販売を手伝わされたことがあったのを思い出した。

詳しいことは覚えていないけど。

 

「そういうことだ。それさえなければ、騎士団ももっと効率的に君たちを助けられるのだが…

もうしばらく、このモンドに滞在してほしい。我々が解決してみせる」

 

それなら任せるとして、宿屋はどこ?

そう聞いたら、すかさずパイモンが怒った。

 

「おい、サボるなよ!オイラたちも手を貸すべきだろ!」

 

……言われなくても、そのつもりなんだけどな。

 

 

 

 

「モンドに風魔龍が攻めてきたのは、逆に幸いだった。

それに、リサに調べてもらった結果、モンドを包む暴風の源がわかった」

 

「ほう?どこだ?」

 

「かつて『四風守護』の神殿だった廃墟よ。

風魔龍は、そこに残っている力を利用して暴風を引き起こしていたの」

 

 ジンが地図を広げる。

 

「放棄された神殿は4つ。そのうちの3つを攻略するのが目標だ。

1つを除く理由は……みんなも承知しているはずだ」

 

「?」

 

 パイモンが首をかしげる。

私が、代わりに答えた。

 

「モンドの人だけが知る、暗黙の了解ってやつだよ。

…もしくは、あとでわかるよ」

 

「ほう?よく知っているな。とにかく、だ。我々には時間があまりない。暴風が猛威を振るう今、守るだけでは意味がない。この災害が拡大する前に、神殿の遺跡へ向かおう」

 

 

 

 

 遺跡は、私が知っているものと何ら変わらなかった。

その場所も、内部にうろつく魔物も。

 

最深部にたどり着き、遺跡を1つ風魔龍から奪った時、リサが言った。

 

東風の龍(トワリン)南風の獅子(ダンディライオン)北風の狼(ボレアス)西風の鷹(セピュロス)

これらはモンドの四風守護であり、風神バルバトスの眷属の名前よ。

そして、風魔龍はトワリンというの」

 

 変わらない。

この話も、やっぱり。

 

「彼は、最初に"自身の力"を燃やし尽くしてしまったの。

…おそらくは"憎悪"。モンドへの憎悪。

それを力に変え、彼は魔龍となった」

 

「でも、もとは『四風守護』だったんだろ?

なんで、守るべき都市を憎むようになったんだ?」

 

「…言いにくいわね。とても言いにくい。

これを読んで」

 

リサが渡してきたのは、100年以上前のことが書かれている——であろう本だった。

 

 

 

 

 戦闘後、ガイアが拍手をする。

 

「優れた戦士だったとはな。勉強になったぜ」

 

そりゃそうだよ、とも思うし、何を今さら、とも思う。

 

「もしお前がモンドを救ったら、新たな伝説になるぜ」

 

 冗談半分なのだろうが、彼の言葉は正しい。

私の記憶どおりなら、このあと私は風魔龍トワリンを倒し、そして……。

 

「先に戻っていてくれ。ここからは、俺の後片付けの時間だ」

 

ガイアの言葉に従い、私たちは遺跡を後にした。

 

 

 

 

 帰りの道中で、私は1人考えていた。

 

やはり、私は……この世界を知っている。

理由はまったくわからないが、とにかくこのテイワットを再び生きている。

 

一度生きた世界を、もう一度生き直す。

そんなことが、実現するなんて。

……となると、もしかして運命を変える、なんてこともできたりするのだろうか?

 

 もしできるのなら、運命を変えたい。

そうして……傷ついたり、命を落としたりする誰かを救いたい。

 

もちろん、すべての人を助けることはできないかもしれない。

でも……可能な限り、みんなを助けたい。

 

 この世界にはたくさんの神様や偉大な存在がいるけど、確実な未来を知っているのは私だけだ。

それは同時に、未来の災いや悲劇を未然に防げるのが私だけだということでもある。

 

ならば、それを成し遂げたい。

私は、私にしかできないことをしたい。

きっと、それが私がこの世界にまた来た理由であり、私に課された使命なのだろうから。

 

 

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