原神IF -知っているようで、知らない世界-   作:白い花吹雪。

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20.元素液体と宝盗団

 私が一歩踏み出した瞬間、銀髪の男がナイフを構えて突っ込んできた。

狙いは単純だ。距離を詰めて、短剣で一気に仕留める。

だが――どちらかといえば遅い。

私は横に滑るように回避し、すれ違いざまに風元素の一撃を叩き込む。

 

「風と共に去れ!」

 

小さな竜巻が男たちの足元をすくい、そのまま体勢を崩させて吹き飛ばす。

そこまで威力のある攻撃ではないが、宝盗団相手には十分だ。

 

「ちっ……!」

 

 黒髪の男がクロスボウを構えたが、そこでリサの指先から紫電が走る。

 

「させないわよ」

 

雷は空気を裂き、クロスボウのボルトごと弾くように命中し、男の腕を痺れさせた。

 

「ぐあっ……!」

 

「立派な武器をお持ちだけど、所詮は盗賊ね」

 

リサは軽くため息をつきながら、余裕すら感じさせる動きで次の魔力を溜めている。

その背後で、リィルが静かに詠唱を始めた。

 

「茂り猛りなさい!」

 

 地面がわずかに揺れ、草の芽が一気に伸びる。

それはただの植物ではなく、魔力を帯びた拘束の蔓……元素スキルだ。

 

「なっ……!?くそ、動けねえ!」

 

茶髪の男が足を取られ、もがく。

そこへ、リサの雷が重なる。

 

バチン、と乾いた破裂音。

草と雷が触れた瞬間、爆ぜるような反応が起き、男の体を痺れと衝撃が同時に襲う。

 

「がああっ……!」

 

 一気に戦況が崩れた。

だが、銀髪の男だけは違った。

 

「くそ、舐めんなよぉ……!」

 

彼は懐から何かを投げた。

小さな緑色の瓶──あの“元素液体”だ。

それが地面に落ちた瞬間、空気がざわつく。

さっきの、狂風のコアの時と同じ反応だ。

 

「まずい……!」

 

 私は反射的に距離を取ったが、その直後に瓶が割れ、濃密な風元素が一気に噴き出した。

空気が引かれる。

視界が揺れ、吸い寄せられる感覚がする。

 

「うっ……これは……!」

 

リィルが一瞬体勢を崩す。

 

「すごい風圧……!」

 

リサも片膝をつくが、すぐに立て直す。

そこで、銀髪の男が歪んだ笑みを浮かべた。

 

「こいつを使えば、あの化け物も俺たちの言うことを聞く……!」

 

 化け物、というのは十中八九魔物のことだろう。

それが狂風のコアのことだとしたら、さっき襲われていたのは何だろう?失敗したのか?という疑問が湧くが、それはさておき……こいつら、たぶんただの盗賊じゃない。

 

私は剣を握り直した。

風元素が暴走する空間の中で、むしろこちらも同調する。

 

元素は、私にとっては敵ではない。

リサたちも見ているのだし、やることは1つだ。

 

「……ハァ!」

 

 掌に風を集め、男たちを吸い寄せてから吹き飛ばす。

風の元素スキル……最も基本的だが、決して弱くはない元素攻撃だ。

 

男たちが吹き飛んでいるうちに、リサがスキルの詠唱を始める。

そして着地したところでリィルが元素スキルを使い、蔓を蔓延らせて男たちを拘束する。

 

そこでリサがスキルを使って、一気に雷を落とす。

それによって激化が起き、男たちを襲う。

 

 リィルの蔓の拘束が解けたところで、私は再び元素爆発を使い、竜巻を発生させる。

ただし、今度は攻撃を目的としたものではない。

 

先ほど男が割った瓶から流れ出た液体は、やはり高濃度の風元素の液体だったようで、それは外気に触れて揮発し始めた。

それにより、周囲の空気中を漂う風元素が一時的に多くなっている。

 

このままでは、狂風のコアや風スライムなどの魔物が寄ってきてしまいかねない。

それを防ぐために、元素の制御を行うのだ。

 

 

 渦が逆回転し、瓶から漏れた風を中心へ引き寄せていく。

 

「なっ……何をしてやがる!?」

 

銀髪の男が焦る。

その隙を逃さず、リィルが動く。

 

蔓が一気に伸び、男の足を絡め取る。

同時に、リサの雷が走る。

 

「これで……終わりよ」

 

紫電が直撃し、男の身体が痺れで崩れ落ちる。

残りの2人もすでに戦意を失いかけていた。

 

 

 私は静かに息を吐く。

風の渦が収束し、空気中の風元素も徐々に薄まり出した。

これなら、魔物が近寄ってくる心配はないだろう。

 

「さて、この者たち……どうしましょうか」

 

リィルは、もはや虫の息の3人を冷酷な目で見つめた。

 

「縄でもあれば、縛りあげて連れていきたいところですが……」

 

「それなら、アカツキワイナリーに行ってもらってくればいいんじゃないかしら。あそこでは、ブドウの蔓を使った紐、なんてものも作ってるそうですもの」

 

「え、そんなのあったの?」

 

 私は思わず尋ねてしまった。

アカツキワイナリーで、そんなことをしていたなんて……前の世界では、聞いたこともなかった。

 

「あら、知らないの?まあ、無理もないわね。あなたはつい最近モンドに来たばかりだもの」

 

いや、それは……確かに「この世界の」モンドに来たのはつい最近なのだが。

「前の世界の」モンドになら、もう何年も前からちょくちょく行っていた。

冒険を終えた後も、アルベドの裁判やら、リサの店の手伝いやらがあって、その度にワープポイントで……。

 

 まあ、どれも今となっては過去の話だ。

今回は、リィルのように前の世界では見なかった人もいることだし、前の世界と今の世界とは切り離して考えるべきなのだろう。

 

……もっとも、私としてはリサがあんな趣味を持っていたことが何よりも驚きだし、ショックなのだが。

 

「ようし!それじゃ、オイラが紐をもらってきてやるぜ。おまえたちは、ちゃんとそいつらを見てろよな!」

 

 パイモンが名乗りを上げ、ワイナリーに紐をもらいに行ってくれた。

その間、私たちは宝盗団の男たちが逃げないよう監視していたが……男たちは、私たちの圧に圧倒されたのか、その場から動くことも、言葉を話すこともしなかった。

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