原神IF -知っているようで、知らない世界-   作:白い花吹雪。

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26.獣の縄張り

 捜索を本格的に始めてからしばらくして、花びらの部分が摘み取られた烈焔花や霧氷花を見つけた。また、その近くでは剣で切られたような跡がある木も見つけた。

断定はできないが、モナたちがここを通った痕跡であるように思えた。

一部では、ググプラムが採取された跡も見つけたが──まあ、こちらはアンバーの痕跡だろう。

 

雨に濡れた道を駆け、足音を立てながらバーバラが走ってきた。

 

「そっちはどう?」

 

「まだ見つけてない。けど、それっぽい痕跡はいくつか」

 

 花や木の話をすると、バーバラは「それはほぼ間違いないと思う」と答えた。

彼女曰く、モナは普段から烈焔花の花びらを採取することがあった他、ベネットやアンバーが一緒にいる時は霧氷花も採取していたそうだ。

 

おそらくこの世界でも、これらの花は水や氷、炎元素の攻撃を当てないと取れないのだろう。

そのような素材は、後にフォンテーヌやナタなどでもちょくちょく見かけることになったが。

 

「でも、あの花を取って何に使ってるんだ?」

 

「私は詳しくは知らないけど……やり方次第で食べられるから、ってモナは言ってたよ」

 

「……ええ!?あれ、食べられるのか!?」

 

 私もパイモンと同様に驚いた。

前の世界では主に薬剤やオイルに使っていた植物であり、食べるなんて考えたこともなかった。

でもまあ……モナなら喜んで食べそうだ。

別に好きなわけではなく、金欠故のことではあるだろうけど。

 

ちなみに傷ついた木に関しては、おそらくベネットが剣で切りつけて、リンゴや夕暮れの実を取った跡ではないかとバーバラは予測した。

確かに、その説は大いにありそうだ──こちらはそのまま食べることもできるし、何なら前の世界でも食材として使ったことがあったから、まだ納得はできる。

 

 

 

 ところで、少し不思議に思っていることが1つある。

さっきから、魔物がまるで出てこないのだ。

 

ここは奔狼領。本来なら、獣域ウルブズはもちろん、ヒルチャールやアビスの魔術師がちらほらいるエリアのはず……なのだが、それらの魔物が一切いない。

何なら、「敵」と呼べるもの自体が出てきていない──さっき出てきた、ファデュイの先遣隊以外は。

 

「しかし……魔物がいなくてラッキーだな!これなら、モナたちを探しやすいぜ!」

 

「そうね。アビスの魔術師なんかが出てきたら面倒だったけど……今のところそんなことないみたいで、助かるわ」

 

 パイモンとロサリアに同意する……と言いたいところだが、どうも嫌な予感がする。

これが、嵐の前触れでなければいいのだが。

 

 

 

 さらに探索を続けていると、秘境の入り口を発見した。

一瞬、まさか……と思ったが、まだ開かれていないようだったので、大丈夫そうだ。

 

周囲の地形と入り口の両脇に石柱が立っていることからすると、ここは前の世界で武器強化に必要な素材が取れた秘境の入り口だと思う。

しかし、かつてその前にいたはずのヒルチャールたちはきれいに姿を消している……なんだか不気味だ。

 

ちなみに、同様に前の世界で秘境の入り口の前にあった仙霊の庭や風の元素石碑も、今回は消えている。

宝箱が取れない……じゃなくて、ここまで変わっているとますます不気味に感じる。

 

「この辺りのどこかにいるんじゃないかな。いくらなんでも、あんまり遠くには行かないと思うし」

 

「どうかしらね」

 

 パイモンは秘境を見つめ、「この中に入ったんじゃないか?」と言うが、秘境の扉は赤くなっている……つまりまだ開いていない。

私が扉に触れたら青くなって、開いたが……とにかく彼らはこの中にはいなさそうだ。

 

「ここではないと思う。もう少し、付近を探してみよう」

 

 

 

 そこから北へと向かったところで、1頭の獣域ウルブズ……いや、正確には獣域ハウンドを見つけた。

しかしこの個体は、明らかに前の世界で見た個体より大きい。さすがにアンドリアスほどではないが、その半分くらいの体長はありそうだ。

 

そいつはこちらに気づくと、咆哮を上げて突っ込んできた。

そして両手を振るって引っ掻いてきたのだが、その威力が尋常ではないくらい高い。

蝕破だったか、体力を少しずつ削るバフを付与してくるのを抜きにしても、一撃の威力が異常だ。

 

私がその痛みに顔を歪めると、パイモンに割と本気の心配をされた。

「大丈夫だよ」と答えるが、正直そうでもない……これは、まさか。

 

 

「旅人!大丈夫!?」

 

 バーバラが駆け寄ってきて、回復をしてくれた。

また、アンバーがハウンドに向かってウサギ人形を投げつけたが、これには見向きもしなかった。

さらに、バーバラの攻撃の後にロサリアが元素スキルを使うと凍結したのだが、それは一瞬のことでしかなかった。

 

それらのことと異常な火力からして、私は確信した。

こいつは……おそらく「地方伝説」、世界各地に散らばっている、異常な強さを持つ特殊な敵だ。

まさかモンドに……いや、前の世界でもいたにはいたが、奔狼領にいるとは。

 

「こいつ、おかしくない!?わたしのウサギ伯爵はまだしも、どうして凍結が効かないのよ!」

 

 驚くアンバーに、私はさらっとではあるが説明した。

 

「こいつは、そこらの敵とはわけが違う……凍結はほぼ効かないし、デコイの効果も受け付けない。下手したら、風魔龍より強いかもしれない相手だ!」

 

身構える私たちを前に、ハウンドの伝説は再び咆哮を上げた。




岩を裂く巨爪“古の狼の末裔”
獣域ハウンド・岩の地方伝説。
モンド地域・奔狼領に鎮座している。
1メートルほどの大きさの岩を降らせる、大地を隆起させるなど、通常種とは異なる技を繰り出し、その威力も異様に高い。
旅人の記憶にはなかった敵だが……?
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